2019年7月15日(月) 天皇陵が世界遺産に その1
6月30日から7月10日まで、カスピ海に面するコーカサス地方の、アゼルバイジャンの首都バクーで、第43回世界遺産委員会が開催されたが、この7月6日、日本から申請していた案件、「百舌鳥古市古墳群」(仁徳天皇陵など)を、世界文化遺産として登録することが決定された。
日本としては、ここ7年、連続して登録されたこととなり、登録総数は23件となった。
◎日本の登録状況
今回を含めた、日本の登録状況を地図に表すと、下図のようになる。(日本の世界遺産一覧 nippon.com. より引用)
図にあるように、登録遺産を、北から示すと、
自然遺産 4件 ⑬知床 ①白神山地 ①屋久島 ⑮小笠原
文化遺産 19件 ⑮平泉 ⑩日光 ⑱富岡製糸場 ⑳西洋美術館
⑰富士山 ⑥白川郷 ⑨古都奈良 ①法隆寺 ⑤古都京都
⑫紀伊山地 ㉓百舌鳥古市 ①姫路城
⑦厳島神社 ⑦原爆ドーム ⑭石見銀山
㉑神宿る島 ㉒潜伏キリシタン ⑲明治日本 ⑪琉球王国
である。(〇内の数字①~㉓は、登録順 ①の4件は、1993年初登録)
世界遺産に関して、当ブログでは、これまで、以下の記事を投稿している。
・富士山 2013/5/20 他多数
・富岡製糸場 2014/5/22、2014/5/25
・明治日本 2015/7/8
・神宿る島 2017/10/5
・世界遺産の保護・保全 (2015/8/11)
(姫路城 小笠原 富岡製糸場 明治日本(端島) 関連)
・世界遺産:登録後に維持する問題 1 (2017/10/11)
(富岡製糸場、ドレスデン(独) 関連)
世界遺産:登録後に維持する問題 2 (2017/10/15)
(ウイーン(墺) 関連)
・世界遺産:米国のユネスコ脱退 (2017/10/21)
◎今回の世界遺産委員会の概況
◇ユネスコの世界遺産条約は、1972年、パリで開催されたユネスコ総会で、採択された国際条約(発効は75年)で、日本は、1992年に加盟している。現在の加盟国は193カ国となっている。
毎年、世界遺産委員会が開催され、登録案件等の審議が行われている。(以上 世界遺産条約 - Wikipedia.url )
◇今回の審議・登録状況
今回の委員会向けに申請された案件の総数は45件のようで、これらの案件を審議した結果、以下のように、30件が登録されている。(第43回世界遺産委員会 - Wikipedia.url )
今回の登録状況 自然遺産 4件
文化遺産 24件 (日本からの案件 1)
複合遺産 1件
危機遺産 1件
登録までの手続きだが、各国からの案件の申請後に、ICOMOSから勧告があり、それに基づいて各国が対応して、委員会で審議・決定されるが、今回も、以下のように、いろいろなケースがあったようだ。
・申請後に、案件を取り下げ 数件
・ICOMOSの勧告通り措置されたもの:大半はこのカテゴリーに入る
勧告 決定
登録 →登録
不登録→不登録
・勧告と決定が異なったもの (理由は、未調査)
勧告 決定
登録 →不登録、登録延期、情報照会 数件
不登録→登録 数件
◇今回追加分を含めた、世界遺産の登録総数は、以下のようになったようだ。
自然遺産 213件
文化遺産 869件
複合遺産 39件
危機遺産 53件 (追加1 削除2)
◎世界遺産を巡って
◇ここで、登録遺産の国別分布をみると、以下のようだ。 (世界遺産 国別 登録数ランキング |世界遺産オンラインガイド を参照)
国別ランキング
1位 55件 イタリア・中国
3位 48 スペイン
4位 46 ドイツ
5位 45 フランス
6位 38 インド
7位 35 メキシコ
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13位 23 日本
何やら、先だってのG20サミット参加国のリストを見ているようだ。
登録案件が1件のみ(自然遺産/文化遺産)という国は38もあり、今回は変更はなかったようだ。
また、世界遺産条約に加盟している193カ国の中で、世界遺産のない国がまだ26もある、というのは驚きだが、今回、新たに保有した国はなかった。
この未保有国の、地域別内訳は以下のようだ。
アジア 5
アフリカ 11
欧州 1(モナコ)
中米 4
南米 1
オセアニア 4
全体として、登録案件の、欧州への偏りがあり、これを是正することが、長年のテーマになっている。
言うまでもないが、世界遺産として登録するには、遺産自体の価値に加えて、提案国の相応の国力が必要で、政情が安定していることも必須である。貴重な遺産が、紛争で破壊されている現実を見る時、世界遺産は、平和のシンボルとも言えようか。
◇本稿の前半にある記事で取り上げているが、2017年10月、パレスチナ問題に対する ユネスコの姿勢を不満として、イスラエルともども、アメリカはユネスコからの脱退を表明している。そして、予告どおり、昨年12月末に脱退が実行されたようだ。
アメリカは、世界で1番の分担金を拠出してきただけに影響には深刻なものがあろう。(米国がユネスコ離脱 中国の影響力増すことに - 産経ニュース.url)
◇今後の予定と日本の計画
次回(2020年)の第44回世界遺産委員会は、中国 福州市で開催の予定で、それに向けて、日本から、
奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島
の申請書を提出済である(2019/2/1)。
この案件は、2018年の第42回委員会向けに申請したのだが、ICOMOSの勧告により登録延期となり、推薦地域の見直し等を行い、再提出したものだ。日本の5件目の自然遺産として注目されるところだ。
次稿では、今回の日本の案件の構成資産等について、取り上げる予定である。