つれづれの記

日々の生活での印象

くじらの話 1

2012年09月05日 12時32分31秒 | 日記

2012年9月5日(水)  くじらの話 1

 

 

この夏、土用の丑の日に因んで、当ブログに

   今年の丑の日に その1 - つれづれの記 (2012/7/27)

   今年の丑の日に その2 - つれづれの記 (2012/8/1) 

 

の記事を掲載し、シラスウナギや、うなぎの蒲焼きの、異常な高値と、それに関連した、野性生物の保護と取引を規制している、ワシントン条約等について触れたところだ。

 日本人の食生活に関することで、今回のうなぎ以前に、資源保護の観点から、くじら(鯨)が国際的な大きな問題になり、現在では、商業捕鯨は禁止されている状況にある。

前稿の、うなぎの続編として、本稿と次稿で、この、くじらを巡る話題を取り上げたい。

 

○ くじらの国際的規制と保護

 くじらを巡る国際的な動きとしては、戦後間もない1946年に署名され、1948年に発効した、国際捕鯨取締条約(International  Convention for the Regulation of Whaling)があり、日本は、1951年に、この条約に加盟しているようだ。 この条約に基づいて設立された、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission:IWC)が中心となって、活動が行われている。

 日本などが、特に戦後、沿岸捕鯨だけでなく、海洋大国として、世界の七つの海をまたにかけ、いくらでもいる魚や、くじらを獲って何が悪い? と言わんばかりに、南氷洋などに、近代的な装備をした大捕鯨船団を繰り出し、くじらを大量に捕獲したわけだ。

 日本の捕鯨の目的は、主として食料資源の確保として行われたと思われるが、食料としてよりも、鯨油等が主目的の国もあるようだ。 

 

 この、くじらだが、資源保護を後回しにして経済原則主体に行動してきた事で、その後、水産資源としての枯渇が、大きな問題になって来ているのだ。

 IWCの場では、その資源保護のために、海域によって、特定種のくじらの捕獲を禁止したり、サンクチュアリ(保護区)を設けたり、して来ている。そして、現在では、商業目的の捕鯨を禁止するモラトリアムが実施されていて、以下の、大型13種のくじら

  髭くじら:シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、

        ミンククジラ、ザトウクジラ、コククジラ、ホッキョククジラ、

        セミクジラ、コセミクジラ                       10種

  歯くじら:マッコウクジラ、ミナミトックリクジラ、キタトックリクジラ     3種

の捕獲が禁止されている。(ただし、禁止種でも、原住民等が行う生業(なりわい)としての捕獲は例外的に認められている。)(日本捕鯨協会 - 捕鯨問題Q&A –より)

 一方、規制対象外の小型種については、国ごとの管理の下、限定的な沿岸捕鯨が行われている。日本では、ツチクジラ、ゴンドウクジラ、ハナゴンドウなどが対象のようだ。 

   主なくじらと大きさ(ネットより) 

 いるか等も含め、くじらとしては、世界では、80種ほど生存しているようだ。種としての絶滅も危惧されることから、ワシントン条約でも厳しく規制され、付属書Ⅰには、絶滅の恐れがあり国際取引が禁止されるものとして21種名(IWCで禁止されている13種を含む)が、付属書Ⅱには、残りの全種名が、列挙されているようだ。

前記のサイトには、種毎の推定資源量(生息数)も出ているが、シロナガスクジラ等は、極めて厳しい状況にあるという。

 ただし、日本などが、ワシントン条約での規制を逃れるために、付属書Ⅰに載っている種の中で、6種のくじら(マッコウクジラ、ツチクジラ、ミンククジラ・同亜種、イワシクジラ、ニタリクジラ、ナガスクジラ)について、資源調査の名の下に留保していて、半ば公然と、一定量の捕獲を行っている。

 調査捕鯨の方法については、殺さないでやる方法もあるようだが、日本は、捕獲後解体して調査する必要がある、としている。調査後の鯨の肉の処理はどのように行っているのか、気になるところだが、IWCの規定では、全て有効利用すべし、と好都合になっていて、国内の市場に流しているようだが、この規定が隠れ蓑になっている、との批判も強い。

 この調査捕鯨に反対する国際自然保護団体(グリーンピース、シーシェパード)が、南氷洋の捕鯨の現場で、実力行使で、日本を妨害する動きが行われているというニュースは、ごく、最近の話だ。

 

 例年のIWC会議でも、反捕鯨の加入国が増えている中で、日本や、ノルウエーや、アイスランドなどが、資源上は問題ないと苦しい弁明を行いながら、捕鯨を続けているようだ。

 この2012年7月の1WC年次総会(パナマ)では、調査捕鯨を縮小する一方で、沿岸捕鯨を緩和する(ミンククジラの復活など)と言う日本の提案は認められず、日本から見て、基本的に厳しい状況は変わっていないようだ。総会も、毎年行われて来たのが、今後は隔年開催となったようで、国際的なコンセンサスが、ますます得にくい状況となろう。

 結局、国際的に後ろ指を指されながらも、捕鯨を強行し続けるか、諦めて捕鯨を止めるかであり、答えは見えていて、時間の問題だろう。

 

○ くじらの食文化と関連産業    

 自分のように、終戦近くから戦後を経験した人間にとっては、鯨肉の缶詰は、食料不足の時代に、大変に貴重であったとともに、あの何とも言えない香りや味覚は忘れられない。また、キャベツやジャガイモの味噌汁に、鯨皮の脂身を入れて作る、鯨汁の美味しさは、捨てがたく、懐かしい思い出でもある。

渋谷には、くじらの刺し身や、ステーキなど、鯨料理を食わせる専門店もあって、何度か行って食べた事もあるが、今はどうなっているだろうか。

 捕鯨が規制されるようになって、くじらが、一般家庭の食卓から遠くなって久しく、くじらの食文化も忘れられつつあるのだろうか。

最近の自分の実感としては、食料としては、鯨肉でなければ、という魅力はそんなには強くなく、無ければ無いで、済まされるようだ。

 

 わが国には、沿岸捕鯨を中心に、くじらを利用して来た長い歴史があり、その中で、食文化が培われ、関連産業も育って来ている。

日本国内では、現在でも、沿岸捕鯨の基地として、和田(千葉南房総)、太地(和歌山南紀)などがあり、限られた種類のくじらを、決められた数量だけ捕獲しているようで、現地では、今でも、くじら料理が食べられるようだ。 

 

 鯨肉を、珍味としてではなく、食料資源全体の中で見た場合の重要性はどれほどだろうか。以前、くじらの缶詰等を普通に食べていた時期では、魚或いは肉の全体の消費量の中で、鯨肉は、どの位の割合を占めていたのだろうか。

鯨肉が供給されなくなれば、他の食料(肉、魚)が、必要になる訳で、食料自給率が、可なり低いわが国にとって、相当に重要なものだろうか。

 四方を海に囲まれた我が国として、目の前に手近にある資源を、利用しない手は無く、くじらを、重要な水産資源として確保しようとする我が国のスタンスは、当然の権利でもあろう。

 工業的な利用の面での、くじらの必要性は、よくは分らないが、他の化学品などの代用品があって、無くても済まされる面が多いのではないか。 

 

 商業捕鯨の禁止等に伴い、業界では大きな変化があった訳で、そのための緩和策も実施されたろうが、産業の保護と転換と言う点では、関連する事業者は大変だったと思われる。

以来、可なりの年月が経つ中で、くじらを獲るサイド(船の措置など)、加工するサイド(工場など)、流通・消費するサイド(料理屋など)それぞれで、産業的な構造転換が、何とか進んだのであろうか。

 

 日本人には、自分も含めて、命あるものに対して、対立するのではなく、一体となるような、自然主義的な感覚がある。 

古来、四足の獣の肉は敬遠して、魚を好んで食べ、古代神話にもあるように、海の幸として、感謝して来た風土である。くじらは、姿・形から、魚と同列で食べられ、余すところなく、利用されてきた。

でも、海の幸に感謝する気持ちは大事なのだが、残念ながら、乱獲による種の絶滅の危機、と言った見方までは及ばなかったのだ。木は見えるが森は見えない、と言うことたろうか。

 

  国際的な反捕鯨の機運に対して、自分は一頃、 

   “くじらは、魚ではなく、人間と同じ哺乳動物なので、捕獲するのは可哀想だから、欧米人は反対するのだ。なのに、牛や豚は、平気で殺すして利用しているのは可笑しい。”

などと、反発した事もあるのだが、少し違っていたようだ。

  獣であれ魚であれ、飼育や養殖を行い、資源として保護しながら再生可能な状態にした上で、利用するのは構わない、というのが、欧米人の合理的な思想だろう。

 鯨は養殖できないので、野性の生体を捕獲するほかはない。資源維持のためには、捕獲を制限し、種の存続のためには、捕獲を禁止するしかなく、くじらの殺生そのものが悪い、と言っている訳ではない、ということだ。

 日本人的感覚の原点に戻って、野性で生きるくじらも人間も、同じ地球上の生き物として、共存していく道を探す事が重要だろう。


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