ケイの読書日記

個人が書く書評

皆川博子「アルモニカ・ディアボリカ」

2015-11-27 16:11:56 | Weblog
 以前読んで、すごーく面白かった『開かせていただき光栄です』の続編。ふつう、続編というと、あまりいい出来ではない作品が多いが、これは第1作より面白いと思う。

 なんていったってキャラが確立している。ただ、その分ストーリーが強引。だいぶ無理がある。
 前作の『開かせて~』は、ミステリ仕立てのストーリー展開はすごく良いが、誰が主人公で話が進んでいくのか、はっきりしなかった。解剖医のダニエル先生?それとも、ダニエル先生の一番弟子のエドやナイジュル? どっち?

 ところが今作品では、中心となるのは、容姿端麗なダニエルの元一番弟子・エドや、天才素描画家でダニエルの元弟子ナイジュルの二人という事がハッキリしている。(二人とも前の作品に書いてあるが、トラブルに巻き込まれ出奔中)
 作品中には、他のアルやベンやクラレンスといったダニエルの元弟子たち、盲目の治安判事サー・ジョンや、その助手のアンたちの方が、出番はうんと多いが、話は、エドとナイジュルを中心に回っている。


 1775年ロンドン。愛弟子エドたちを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、事情があってダニエルの元を離れたアルたちは、盲目の治安判事の要請で、犯罪防止のための新聞を作ろうとしていた。
 そこへ、奇妙な広告依頼が舞い込む。
 採掘場で、天使をかたどった奇妙な死体が発見され、その胸には 〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ〉 という文字が記されていた。
 その正体不明の死体の情報を、求めようというのだ。
 さっそく調査を始めようとするアルたちは、妨害にさらされることに…。


 物語の初めの方で、棺の中からナイジュルがあらわれた時、私も少しうるっときました。ダニエル先生や、アルやベンやクラレンスと同じように、嘘だろうと思った。これは精巧に作られたナイジュルの人形だって。
 ナイジュルの死のあとも、彼の手記で、彼の数奇な運命がつまびらかにされる。そしてエドへの想いも。
 「僕は、僕が望むように君を変えた。でもエド、君と再会できたら、君が望むように僕を変える」


 皆川博子って、1930年生まれだけど、元祖・腐女子だね。生まれてくるのが早すぎた。
 それに、80歳過ぎてて、どうしてこんな素晴らしい長編がつぎつぎ書けるのかな。ゴーストライターでもいるの? それとも妖怪?
コメント
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