ケイの読書日記

個人が書く書評

町沢静夫 「なぜ『いい人』は心を病むのか」

2009-03-15 17:53:57 | Weblog
 この町沢先生も、とても有名な精神科医。以前あった西鉄バスハイジャック事件の母親が相談していた先も、この町沢先生じゃなかった?

 こういった本を読むと、症例の所は興味があるのでしっかり読むが、学術的な所になると読み飛ばしてしまうことがよくある。(香山リカの本などそう)しかしこれは比較的きちんと読んだ。
 特に岸本葉子さんが自分の本の中で紹介していた『森田療法』これはなかなか共感できる。「日常の持つ重み」…いい言葉です。

 この本の中で印象に残った箇所を抜き書いてみる。


 衝突やケガのない人生というのは、人間のスケールを小さくしてしまいます。いつも相手の言葉や顔色をうかがいながら行動したり発言したりするわけですから、周りから見れば邪魔にならない「いい人」かもしれませんが、本人は小さくこじんまりとまとまらざるを得ない、ということになってしまいます。

 しかし、それは本人が外に向かった時の話です。逆にカメラをその人の心の内側に向けたとき、実はその幻想の世界では「本当の自分はすごいんだ」という自己愛が渦巻いているのです。

 現実の中では自分はちっぽけな存在でしかない、ということは十分自覚しているのですが、幼い時から母親によって与えられた自己幻想「おまえはすごい能力を持っているんだよ。特別な子なんだよ」というメッセージが心の中にしっかり残っています。


 とっても耳の痛いお言葉だが、この「自分は特別な子」という自己愛がなければ、どんな物語も成立しないよね。
コメント (3)
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