golf130のクラシックお笑い原理主義

オッサンのしがない日常や妄想話とその日聴いた音楽。

シューマン「子供の情景、3 つのロマンス、フゲッタ形式の 7つのピアノ小品」他、デームス

2010-09-06 23:22:56 | Weblog
河村は若かった頃、夏休みが終わって学校に行くのが楽しみであった。

勿論、彼とても人の子。長い休みが終わり、登校するのはかったるくも感じた。

しかし、陽に焼けて元気な子供達の笑顔に接すると、教師になった喜びを改めて実感したものである。

そして、もう一つ大きな楽しみは宿題に出した自由研究。

「研究」とは言っても小学生のこと、内容が稚拙であったり、親に手伝って貰ったことが見え見えのものも多かった。

しかし、中には如何にも子供らしい発想、着眼が伺えるものもあり、新鮮な驚きを受けることも。

今でも良く覚えているのは、「食べ合わせの研究」。
5年生の男の子が、「ウナギと梅干し」、「天ぷらとスイカ」など俗に食べ合わせが悪いと言われる物を色々食べた記録。家族6人が食べてみて、お腹が痛くなったのが何人いたのか、味はどうだったのか等が詳しく書かれており、「食べ合わせには迷信が多い」と結論付けられている。

たまたま体調が悪くて腹痛を起こしたケースもあるだろうし、組合せによっては発ガン性物質などが生成され長期的に有害なものもあるかもしれないので、科学的とは言えない研究だが、一家6人が食卓を囲み真剣な表情で「食べ合わせの悪い物」にチャレンジしている姿を想像すると、微笑ましくも可笑しくもあった。

「犬の嗅覚の研究」も印象的だった。

飼い犬を散歩させる前に、街角の電柱や壁にジュースや酢、砂糖水など色々な液体を掛け置く。そして散歩に連れ出した犬が、それぞれの場所でどういう反応を示したのかの克明な記録。

いたずらっ子でもあるこの少年は、自分がおしっこを掛けた電柱をも犬に嗅がせているのには流石に閉口したが…。

毎年、子供らしい自由研究に接している中で、ある時、「光化学スモッグの研究」に出会う。

大気汚染の状況や天候と光化学スモッグとの関連を調べたもの。

色々と試薬を使用したり、結果の分析方法や結論に至る論理性など明らかに小学生の域を越えている。

確かに頭の良い児童ではあったが、あまりの素晴らしさに驚き、職員室で先輩の先生にその話をした。

ところが、田中というその先生は菓子パンを噛りながら、表情一つ変えず、「キットだよ、河村先生」。

最初意味が分からなかったのだが、「うちのクラスでも2つあったよ」と、同じ研究結果を見せられて初めて状況を理解した。

デパートやホームセンター、最近ではインターネットでも色々な自由研究キットが販売されている。

これを使って、お手軽に「それらしい」研究を提出する児童が急増したのである。

インターネットで調べて、適当に纏めて来る子供も多い。

「南極で良く見掛ける動植物」など、「お前、南極行ったことあるんか?!」と思わず呟いてしまった。

河村は、いつしか自由研究を見る楽しみを失っていた。

今年も、また同じような2学期が始まった。

子供達から提出させた自由研究を無表情に見て行く。

ああ、あの会社のあれか…、彼はどこからどんな自由研究キットが発売されているのか、主だった物を諳じてしまっていた。

こんな中で、妙に分厚いレポートを見付ける。

表紙のタイトルにこうあった…。

「大人の情景 ~大人の世界の建前と実態~」

なんじゃ、これは?

表紙をめくると、序文らしきものがある。

大人の世界は、建前と実際が大きく違っているものらしい。

僕はこの夏休みを利用して、大人の世界の建前と実態がどう違っているかということを調べてみた。僕も大人の本音と建前を勉強して、1日も早く大人らしい大人になりたいと思う。

…こんな事が綴られていた。

目次を見ると、レポートは13の章から成っている。

1.見知らぬ国と人々について
2.不思議なお話
3.鬼ごっこ
4.おねだり
5.十分に幸せ
6.重大な出来事
7.トロイメライ(夢)
8.暖炉のそばで
9.木馬の騎士
10.むきになって
11.怖がらせ
12.眠りに入る大人
13.死人は語る

各章に、シューマンの「子供の情景」に準えたタイトルが付いている。

河村は、2、3の章を拾い読みしてみた。

2.不思議なお話

悪い事をしたらいけない、犯罪を犯したら刑務所に入らなきゃいけない、と僕達は教わっている。

じゃあ、実際に犯罪を犯した人がどのくらいの間刑務所に入るのか?、真人間になって出所して来るものなのか?、これについて調べてみた。

猛くんの家が「組事務所」をやっているので、協力をお願いした。

まず、若頭だと言うマサさんに話を聞いた。

とても怖そうなお兄さんである。しかし、あまり賢そうでは無い。

マサさんは、少年時代を別にすれば、今まで3回警察に捕まったことがあるそうである。

しかし、少年院を別にすれば、刑務所に入ったのは2回だけ。なんでも、最初の時は「執行猶予」というのが付いたのだそうだ。

裁判で、「しっこうゆうよ」と聞いた時意味が分からず、裁判長がトイレに行くのかと思った、とマサさんは怖い顔に似合わない笑顔を作った。

傷害罪で捕まったのだけれど、初犯ということもあって刑務所に入らなくて済んだとのこと。

「俺よぅ、中学の時演劇部でよぅ、取り調べや裁判で反省している振りをしたのが良かったんだよな」、とマサさんは笑った。

その後、舎弟だと言う人からも、警察に捕まって裁判に掛けられても、刑務所に入る期間は、「どんどん目減りする」のだと教えられた、ということが書かれていた。

「求刑7年、実5年。仮付きゃ3年、猶予になりゃラッキーよ」、と舎弟に教わったそうである。

懲役7年が求刑されても、実刑は5年とかが多いらしい。裁判で懲役5年に決まっても、刑務所で真面目になった振りをしていれば、「仮出所」と言って途中で出られたりする。

そもそも、「執行猶予」が付けば1日も牢屋には入れられない。

僕はおかしいと思った。

囚人にも食事代や冷暖房費とかお金が掛かるからなのかな?それで、刑務所に入っている人を適当に減らして倹約しちゃっているに違いない。

だったら、死刑囚とかいつまでも刑務所に入れて置かないで、1日も早く死刑にしちゃえば良いのに。

おいおい、と河村は思った。

暴力団事務所に取材に行ったり、司法制度に対する批判。これ、小学生の自由研究のネタじゃないよ。

別の章にも目を通してみた。

12.眠りに入る大人

電車のシルバーシートに座っいる人は、他の座席の人よりも目をつぶっている率が高く、しかも「ウソ寝」が多い、という内容だった。

ウソ寝かどうか確かめる為に、目をつぶっている人の足を軽く踏んでチェックしたとも書かれている。

そして、シルバーシートという名前をやめて、「ウソ寝シート」に変えるべきであると結論付けられていた。

う~ん、正論と言えば正論かもしれないが…。

河村には、キットを使って自由研究を提出する子供が急に可愛く思えて来た…。

イェルク・デームス(ピアノ)(DOCUMENTS盤)

1.子供の情景 op.15
2.3つのロマンス op.28
3.フゲッタ形式の7つのピアノ小品 op.126
4.パガニーニの奇想曲による6つの演奏会練習曲 op.10

「子供の情景」は、「子供心を描いた、大人の為の作品」。

今まであまり聴き込んでいなかった超有名曲。今回、何回も聴き直してみたところ、聴けば聴くほど良い曲。

全編に優しさが充ちている。

シューマンの、いや大人みんなに共通する子供時代、子供の世界への憧憬でしょうか。

初めて聴いた、「フゲッタ形式の7つのピアノ小品」には驚き。

バッハの平均律の一部を思わせる内省的で深い作品。

後期曲は、独特のアクを感じることもあるシューマン(それがまたシューマンの魅力かもしれませんが)ですが、この曲は平明で素直な中にも透徹した境地を感じる秋の夜長に聴くに相応しい音楽。

段々にそんな季節が近づいております。

有名曲が初期作品に偏るシューマンのピアノ曲ですが、後期曲もまた一味違った魅力ある作品が揃っていますね。

「3つのロマンス」、「パガニーニの奇想曲による6つの演奏会練習曲」は、華のある作品。

いずれも、古いステレオ録音ながら、聴き飽きしない、デームスの味わい深い演奏を楽しみました。

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