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引揚者の中絶強制の歴史

2015年07月20日 | LGBT-KR調査分析

 

「沈黙の40年ー引き上げ女性強制中絶の記録」

戦後、中国から福岡に引き上げてきた女性たちが、健康診断を受けて、妊娠している場合には強制中絶させられたという記録。

「させられた」というよりも、「医療行政が女性たちを救った」と表現したほうがいいかも・・・・タイトルをみると、「え??」って感じで、思わず買ったんだけれど、実際には、お医者さんたちが女性のために必死になって中絶をした話が紹介されてる。

終戦後直後、大陸に残されていた日本人は悲惨な目にあった人がたくさんいる。その中でもソ連軍とかにレイプされた女性たちで、妊娠してしまった女性たちを救うというミッションを与えられたお医者さんたちの話。かなりナマナマしくて、慣れているわたしでも、読みながら、なんどか休憩しないとつらくて読めないくらいの内容。

 

「暴行をうけたときのショックからまだ立ち直れなず、精神的にも非常に不安定になっているものもおおいはずだ。そういう女性を手術する場合、手術に耐えられる状態かどうか、あらかじめたしかめておく必要がある」。

実際、引揚者が最初に戻ってきて健康診断にきた時、「なんで男がまじってるんだ?」って思った状況だったそう。がりがりでぼろぼろ、レイプから身を守るためにほぼ剃髪している女性たち・・・・地獄絵が展開された。

↓巨大な鯖のランチ、日本食はほっとする・・・

レイプされて妊娠してしまった女性たちについては、差別の目があるために中絶を、というのも、大名義として説明された。「病気にしろ妊娠にしろ、ここできれいな身体になって帰郷しても、郷里の人たちから白い目で見られ、郷里にはいられなくなるだろう。この国には、そういう偏見がまだまだ根強く残っているからな。だから、被害者は必死になって被害を隠そうとするんだ。

 

健康診断を名目に性犯罪の被害者をスクリーニングしていた、厚生省の指示による大学の医師たち。彼らも、戦場から戻ってきたばかりだったり、中絶などしたことなかった医者ばかり。さらにジェンダー配慮なんて、そもそも???ってかんじだっただろう。

 

貴重な歴史の記録で、男性なのに筆者はよくがんばって資料を集めたりインタビューをとったなと感心。

 

カナダにいるエラがクメールルージュ時代に出産した時に赤ん坊をとりあげてくれた助産婦は、内戦後もコンポンスプーにいたんだけれど、5年くらい前になくなったのがつい先日確認された。歴史は、早く記録しておかないと、証言者が次々に死んでいく。この本を読みながら、次の調査の構想もしっかり練るのである。

 

 

 

 


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