ジェンダーからみるカンボジア

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都市に住む疎外化された女性の調査

2015年07月08日 | カンボジアのジェンダー規範

 

 

仕事の一環で、都市に住む疎外化された女性たちを支援する3団体の代表にインタビュー。この結果は、報告書としてまとめることになる。

 

カラオケで働く女性を支援する団体のトップを務めるパリーさんは、法律を学ぶ必要性を痛感して、大学に通いながら団体で支援活動をしている。彼女によると、「カラオケで働く女性が、一番支援しにくい。新しく登場してきた雇用形態をもつ女性たちで、雇用主に公私共に抱えられる形で生活しているので、アクセスすることも極めて困難。彼女たちは、モバイルチームといってもいいくらい移動していて、毎月のように住居を変える女性も少なくない。多くの場合、カラオケの建物の高層階(つまり職場と同じ建物)に住んでいて、仕事開始時間は決まっているけれど終了時間はお客さんがいなくなった時。契約は口契約がほとんどで、休みは一切ない(有給休暇すらない)。毎週か隔週に尿検査を強要され、中絶もかなり頻繁にやっている。彼女たちは、建物から出てくることがほとんどない。給与は、毎月封筒に入れられて雇用主かマネージャーから手渡されるが、どうやって計算されているのかわかってない。住居費として、光熱費などは給与から天引きされている。カラオケで働く女性は、昼間は寝ている場合がほとんどであるのと、雇用主が彼女たちに自分の権利をわかって欲しくない姿勢をとっているので、非政府組織が実施する能力向上研修などに参加してもらうのはとても困難。でも、最近の対話をつうじて、カラオケの女性たちが、新しい形態の搾取にあっていて、極めて困難な状況で働かされていることがわかってきている。」縫製工場やビール売りの女性と比較すると、カラオケの女性は団結力も少なく、女性同士の絆のようなものもほとんど見られないそう。頻繁に店を移動させて、女性たちの間で信頼関係を構築できないようにする雇用主の戦略なのかもしれない。

↓トゥールコックにある、女性団体がいくつも入ったビルを訪問

 

セックスワーカーなどエンターテイメントという業種で働く女性たち6433人を登録メンバー(会員)としてネットワーク化している女性組合の代表、ケオさんにもインタビュー。彼女も元セックスワーカーで、かなり高齢だけれどとても素敵な女性。会員の抱える問題としては、「働く場所をころころ変えざるを得ないような雇用形態にあるのが問題。夜中の2−3時に帰宅しなければならない女性がほとんどで、ひったくりや麻薬販売をしている男性グループからの暴力の被害にあっている。パトロール警官からのハラスメントや賄賂の強制も日常茶飯事。一番苦労しているのは、会員のうち公園などでフリーランスのセックスワーカーとして働く1073名。雇用主がいないから保護がなく、集団レイプなどの暴力の被害にあっている。一回のセックスは10ドル程度と、圧倒的にやすい。カラオケやマッサージの女性なら、一回30ドルから50ドルは稼いでいる。女性組合では、自治体と連携して彼女たちの保護をしてきているが、信頼関係を構築するには長い時間がかかる。」

 

縫製工場で働く女性を支援するために、プノンペン市内に6箇所「ドロップインセンター」を運営する団体のトップ、シターさんは、王立大学で講師をしながら、パートで団体の運営をしている。現在800程度ある工場で、70万人の女性が雇用されていて、その多くは組合を有する。ただし、組合のマネージメントはほぼ男性が占める。「多くの女性は、現金で給与を受け取り、工場から家に帰ります。その時、暗がりで強盗やひったくりに合うケースも多数あります。月給はまだ128ドルしかもらえていない女性もいて、彼女たちは安全な飲み水へのアクセスすらないし、栄養状況が極めて悪い中、田舎にいる家族に仕送りしています。職場環境も劣悪で、狭い工場でとても暑い環境での長時間労働です。彼女たちがとてもつらいと言うのは、トイレの数が少ないことで、何百人も働くような工場に2−3つしかトイレがないことも珍しくありません。賃貸している狭い家にトイレがないのも普通で、家から出て外の公共トイレに行かなければならい女性もたくさんいます。その場合、夜は、不安なので一切トイレに行かない人も多数います。家に戻ってきても、プライバシーがないような環境での生活です。」

まだまだ課題は多い・・・・それにしても、1日で3箇所インタビューはちょっときつかった。時間がないから仕方ないんだけれど。

 

3団体の代表にインタビューしてみて、「都市に住む疎外化された女性たち」が共通して抱える不安は、道路に電灯がない場所を通って帰宅しなければならないこと、生活環境が劣悪なこと、自治体が彼女たち安全保護につき無関心なこと、など。

↓とっても美味しい、カリフォルニアの玄米と新鮮な野菜料理

 

これからセックスワーカーのインタビューを集中してとるので、久しぶりに、彼女たちの話を聞いて、最近の動向を調査してみるのがとても楽しみ。