トラッシュボックス

日々の思いをたまに綴るブログ。

石原慎太郎4選に対する一部の反応を見て

2011-05-22 09:36:02 | 現代日本政治
 先月の都知事選での石原慎太郎4選を受けて、石原に票を投じた都民を「愚民」と罵る反応をいくつか見た。

 先々月、ある記事にトラックバックをいただいたEric Progさんは、選挙の翌日にこう書いている

 選挙運動が「盛り上がらない」中,当初の予想通り石原「ナルシスト」慎太郎が4回目の当選を果たした訳です。東京都はさらに4年の「暴徒知事」時代を選んだということですね。

 昨年「東京には170万の愚民がいる」のようなことを書いた人が居ます。ならば今回はこう言って差し支えないでしょう。

 東京には260万の愚民が居る

 つまり,実際には愚民の数は170万なんてものではなかった訳ですね。
 でも,まさかこの260万の中に,昨年の170万人を批判した人が居る訳無いですよね!

 それと,これは聞いておきたいんですよね。原発推進の石原を4選させた訳ですから,当然次の原発は東京都区内に作ることを想定しているんですよね?

2010年参議院選挙東京都選挙区:蓮舫 1,710,734票
2011年東京都知事選挙:石原慎太郎 2,615,120票


 さすが、冒頭に

今回は思ったことを特に検証もせずに書きます。


と断っているだけあって、ほとんど支離滅裂だ。

 時々訪問しているJinne Lou さんのブログでは、選挙翌日に掲載されたある記事のコメント欄でこんなやりとりが。


一言メッセージの「石原に投票したすべての都民に天罰下れ 」ナイスです☆
結果を知ったとき、あたしはうっかり「都民は馬鹿だ」とおもってしまいましたが、
馬鹿じゃない都民の方々も大勢いらしたんでしたね。
一つにしちゃってすみません。
2011/4/11(月) 午前 2:44[ ゆまりん ]

一言メッセージ、気付いていただき嬉しいです。
馬鹿が多いですが、馬鹿ばかりではないということです。
2011/4/11(月) 午前 2:51[ Jinne Lou ]

〔中略〕

誰か石原をこっそり尾行して酒飲んでる姿でも激写してほしいもんです。
2011/4/11(月) 午前 8:28[ tom@いやし系(ら抜き) ]

あっ、ニュース見て「都民は馬鹿だ」と言ったあとに、ちゃんと、
「道民も馬鹿だ」とおもいました。
2011/4/11(月) 午前 8:52[ ゆまりん ]

〔中略〕

>tomさん

今ごろ勝利の美酒に酔いしれてるんじゃないですか。

思いは誰にも見えないけれど、思い上がりは見える。
2011/4/12(火) 午前 1:24[ Jinne Lou ]

>ゆまりんさん

ようするに国民が馬鹿なんですね。

思考は誰にも見えないけれど、思考停止は見える。
2011/4/12(火) 午前 1:29[ Jinne Lou ]

> 思考は誰にも見えないけれど、思考停止は見える。

このコメント (↑) に、傑作ポチ!
2011/4/12(火) 午後 7:11[ omori ]

ありがとウサギ
2011/4/13(水) 午前 0:32[ Jinne Lou ]

お互いテレビ漬けの毎日を送っているみたいですね。
飽きもせず 。。。
2011/4/13(水) 午前 6:10[ omori ]

大阪府民も負けずにバカが多いですよ(@_@;)
2011/4/25(月) 午後 4:44[ ガリレオ ]

それは以前から存じています(笑)
2011/4/26(火) 午前 1:54 [ Jinne Lou ]


 私には彼らの「自分たちは愚民ではない」という思い上がりと思考停止が見える気がする。

 『週刊文春』4月28日号に掲載されていた中村うさぎの連載エッセイ「さすらいの女王」第632回は、こんな書き出しで始まる。

 原発騒ぎの中で都知事選が終わり、その結果に心の底から絶望した女王様である。みんな……そんなに石原が好きなのか? 誰か、石原のいいところを教えてくれ! 女王様には、何ひとつ思い当たらんわい。
 福島原発の事故によって「原発は安全だ」という神話が脆くも崩れ去ったこの状況で「原発推進派」の都知事を選ぶからには、皆さん、覚悟がおありなんだと思う。連日のように余震が続く中、さらなる原発事故が起きたとしても、石原に投票した人々は「いや、これくらいの放射能、屁でもありませんわ」とばかりに胸を張り、進んで放射能を浴びるつもりなんだろう。また、それはそれで、大した腹の括り方であるな……と感心しそうになったのだが、世間の騒ぎっぷりを見ると、そこまでの気概はなさそうだ。都知事選が終わった後に「レベル7」の発表があるや、皆さん、青ざめていらっしゃるのだ。おい、石原に投票したヤツと棄権したヤツには、青ざめる権利ないからな! リスクを承知で「推進派」に都政を任せる決断をしたんだろ? 腹ぁ括れや!
 女王様は常々「衆愚政治」とか「愚民」といった言葉を平気で口にする人々に違和感を抱いていた。あら、ずいぶん高い場所から物を言ってらっしゃるねぇ、何様かしら、といった不快感である。が、今回の都知事選の後、大嫌いなはずのこの言葉が思わず脳裏を横切った。直後に「しまった! 私は何様だ!」と猛省したものの、石原を当選させた人々が自分と同じ都民だとはどうしても思えない。ねぇ、これって本当に「民意」なの? 都民の大多数が「原発OK!」と本気で思ってるの?


 全く何様だ。


 私も基本的にはアンチ石原である。
 そして以前にも書いたとおり、こんな人物を当選させる都民の気が知れないと思っていた時期もある。

 しかし、選挙というのは、誰かを落選させるためのものではない。誰かを当選させるためのものだ。
 石原に票を投じた都民を批判する者は、では誰に投票すべきだったと言うのか。

 今回の選挙では11名が立候補したが、有力視してよいのは次の4名だろう。

石原慎太郎 78 無所属 現 自民都連・公明推薦
東国原英夫 53 無所属 新 推薦なし 前宮崎県知事
渡邉美樹 51 無所属 新 民主都連推薦 実業家(ワタミ株式会社前会長)
小池晃 50 無所属 新 共産推薦 前参議院議員

 元々、石原は立候補しないと表明し、松沢成文・神奈川県知事を後継候補として推していた。しかし、震災直前に撤回して立候補を表明し、松沢は結局立候補しなかった。東国原と渡邉は予想だにしない石原との戦いに苦戦することとなった。

 私だったら、誰に投票しただろうか。
 私は反共だから小池は論外だし、東国原は宮崎県知事としての手腕はともかくそれを1期で辞めて都知事への転身を図るという姿勢に不信感を抱いている。渡邉は経営の視点を行政に取り入れるという主張にやや疑問があるし、政治経験の不足も気がかりだ。
 結局、強いて投票するとすれば、石原を選択せざるを得ないように思う。
 それをためらわせるだけの失敗が、石原都政にあったのだろうか。

 また、Eric Progさんかや中村うさぎが言うほど、原発は争点となっていたのだろうか。
 都民でない私が言うのも何だが、そんな主張が声高に語られていた記憶はない。
 例えば東京新聞のサイトに、投票日直前の6日付の都道県知事選についての記事が残っているが、原発のある4道県で「原発の在り方が大きな争点に浮上」しているとはあるが、同じ投票日である都知事選で争点になっているとの記述はない。

 都知事選の結果はウィキペディアによると次のとおり。

石原慎太郎 2,615,120票 43.40%
東国原英夫 1,690,669票 28.06%
渡邉美樹 1,013,132票 16.81%
小池晃 623,913票 10.35%

 アサヒ・コムには、次のような東国原と渡邉の弁が載っている。

■「情報発信少なかった」

 「知事選をやっていることを知らない人が結構いた。やはりメディアの情報発信が少なかった」。東国原氏は新宿区の事務所で、東日本大震災の影響で戦略が狂った悔しさをにじませた。

 1月に宮崎県知事を退任し、都知事選の準備を進めた。約200項目の公約を練り、宮崎での実績を紹介した本も出版。メディアの取材にも積極的に応じた。ワイドショーなどで関心を呼び、票を集めるという、4年前に宮崎で成功した手法を意識していた。

 だが、3月11日に二つの想定外の出来事が起きる。一度は引退を決めていた石原氏が出馬を表明し、直後に大震災が東日本を襲った。「石原氏は強い。立候補しない方がいい」。支援者の指摘に「ですよねえ」。数日後には「メディアは当分、地震報道ばかりだ」と不安を打ち明けた。

 悩んだ末に出馬を決めたのは告示2日前。「やめれば石原氏から逃げたと見られる」との思いもあった。

 しかし、対立軸を明確に打ち出せなかった。石原氏が進める築地市場移転についても「再検討」にとどめた。陣営幹部は「当選後の失敗を恐れ、思い切ったことを言えなかった」。

 支持が広がらないため、選挙戦中盤から石原氏批判を前面に打ち出した。常に携帯電話のカメラに囲まれ、そのたびに笑顔を振りまいた。しかし、周辺には「人は集まるけど冷やかし半分だ」と漏らした。

 不安は的中、政治家として初めて挫折を味わった。

■「何が争点かわからぬまま…」

 「都民が現状に対してある程度満足しているのを感じた」。渡辺美樹氏(51)は中央区の事務所で敗因を語った。

 当初描いた当選のシナリオは、石原氏の不出馬が前提だった。その上で、ワタミを飲食チェーン大手に育てた経営実績と知名度を生かし、メディアを活用しながら支持を広げていくという戦略だった。

 だが、石原氏の立候補で思惑が外れた。事前に「引退は確実」との情報を得て、石原氏を支えてきた自民、公明両党などの支援も期待していただけにダメージは大きかった。

 震災後は「都民の反感を買いたくない」と拡声機の使用を減らした。震災報道でテレビ出演も激減。渡辺氏は敗戦の弁で「都政をどうするのか、の議論をテレビの前ですることができなかった。何が争点かわからないうちに終わってしまった」と嘆いた。

 自民、公明が石原氏の支援に回った一方、都議会民主党が告示前日に渡辺氏の支援を決めた。だが、「勝手連的な側面支援」(会派幹部)にとどまり、党本部や都連の動きは鈍かった。


 「何が争点かわからないうちに」と言うが、そもそも争点らしい争点があったのだろうか。

 2人とも石原が立候補しないことを前提としての立候補だったのであり、所詮石原の敵ではなかったのだろう。

 それでも、投票率と石原の得票率をウィキペディアで見ると、

2003年(前々回) 投票率44.94% 石原の得票率70.21%
2007年(前回) 投票率54.35% 石原の得票率51.06%
2011年(今回) 投票率57.80% 石原の得票率43.40%

と、投票率が上がりつつ、石原の得票率は下がっている。
 これは、石原への支持が徐々に低下していることを示している。

 しかし、その代わりとなる受け皿がなければ、選挙では票の投じようがない。
 民主党がその役割を全く果たしてこなかったことを、私はひどく歯がゆく思う。

 アンチ石原にかまけているだけでなく、石原に対抗できるだけの人材を育てていかなければ、悪くすれば4年後にもまた同じ光景が再現されるのではないだろうか。


(関連過去記事
 石原慎太郎3選の報を受けて
 「悪さ加減の選択」としての石原支持