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オオサンショウウオに交雑の恐れというが・・・(4)

2010-10-29 00:00:57 | 生物・生態系・自然・環境
 また、オオサンショウウオの交雑種についての記事が朝日新聞に掲載された。
 25日の夕刊の1面トップだった。
 それほど注目に値する問題だろうか。

 アサヒ・コムの記事から引用する。

中国種と交雑、絶滅危機 賀茂川のオオサンショウウオ

 国の特別天然記念物「オオサンショウウオ」が生息する京都・賀茂川で、中国原産のオオサンショウウオとの交配が進み、日本固有種が絶滅する可能性があることがわかった。京都大の松井正文教授(動物系統分類学)の研究グループが調査した。外来種と分離するなどの対策の必要性が指摘されている。

 松井教授が8月までの1年間、計79匹のオオサンショウウオを賀茂川で捕獲し、DNA型を鑑定した。その結果、揚子江流域などに生息する中国原産と同じ遺伝子型のチュウゴクオオサンショウウオが9匹確認され、チュウゴクオオサンショウウオなどの外来種との交雑種が67匹を占めた。日本固有種は3匹(4%)だけで、うち2匹は体長4、5センチの幼生だった。

 研究グループによると、2008年の調査では捕獲した36匹のうち固有種は15匹(42%)いたが、09年は50匹中14匹(28%)に減っていた。

 チュウゴクオオサンショウウオはペットや食用として1970年代に日本に輸入され、その後、野生化して各地に広がったと見られる。過去の調査では、徳島県でも確認されている。

 チュウゴクオオサンショウウオは固有種と比べて動きが活発で、エサを食べる量が多く、成長が早い。このため、賀茂川では固有種が外敵から身を守るために隠れる場所やえさを奪われているとみられている。また、固有種が幼生の段階で魚やカニに食べられる危険も高まっているという。

 松井教授は「このままでは交雑種が増えるばかりだ。行政と研究機関が連携し、日本固有種以外のものと分離するなどの対策が必要だ」と指摘する。(渡辺秀行)
ウェブ魚拓



 また松井正文教授か。

 何度も言うが、交雑種が増えると何が問題なのか私には理解できない。
 わが国のオオサンショウウオとチョウゴクオオサンショウウオは、別々の祖先から進化してたまたま似たような形質を備えたわけではあるまい。
 同じ祖先をもつ者が、異なる地域で長期間世代交代を経ることにより、若干異なる形質を獲得するに至ったのだろう。
 だからこそ、交雑が可能なのだろう。

 交雑の何が問題なのだろう。
 わが国のオオサンショウウオの独自の形質、あるいは遺伝子が失われるから?
 しかし、交雑しても遺伝子が消滅するわけではない。それは次世代に受け継がれていくのである。
 そして、より環境に適応したタイプのオオサンショウウオが残ってゆくのであろう。
 それはオオサンショウウオという生物の存続にとってむしろ有利なことではないのだろうか。

 上記のウェブ魚拓のグラフを見ていただきたい。
 わずか2年でこれほどまでに交雑種の割合が増加するとは私には信じがたいのだが、この変化が賀茂川におけるオオサンショウウオの交雑状況の実態を本当に反映しているのだとすれば、ここまでくればもう交雑種の増加を抑えることは不可能だろう。
 
 松井教授は「「このままでは交雑種が増えるばかりだ。行政と研究機関が連携し、日本固有種以外のものと分離するなどの対策が必要だ」と指摘」しているというが、さてどうやって分離するというのだろうか。
 分離されるのはチョウゴクオオサンショウウオとその交雑種だろうか、それとも日本固有種のオオサンショウウオだろうか。
 数から言えば後者の方が容易そうだが。

 で、一体一体DNA鑑定して分離するというのだろうか。
 そんなことに何の意味があるのだろう。
 
 わが国固有のトキやコウノトリは絶滅した。
 佐渡や豊岡ではわざわざ中国やロシアからそれらを移入してまで復活を図っている。
 地域的な遺伝子の特性を重視して、交雑はもちろん、国内における移動までをも問題視するような人々は、こうした動きにも大いに反対すべきではないのだろうか。

 また、朝日新聞は不偏不党を掲げている。
 少しは、こうした外来種の問題に寛容な立場の見解も載せてもらいたいものだ。

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