昨日は、足尾銅山の世界遺産登録を推進する会の第8回勉強会に参加したワケだが、参加の動機となったのは、歴史館の長井館長の
「(株)古河機械金属(旧(株)古河鉱業)の社員がお出でになって、鉱山施設の何を撤去し、何を残すかの説明があると思うんです。」
のひと言。
製錬所の解体が進む中で「何を残すか」は、カメにとっちゃ大問題!
ま、勉強会の骨格は、「世界遺産暫定リスト入り出来なかったことの検証及び、暫定リスト入りを目指した今後の課題」だったのだけど、世界遺産はねぇ・・・と、色々と思うところしきりなので、置いといて、と。
カメにとって肝心の「何を残すか」の古河側の説明を要約すると、
・選鉱所は残す意向。
調査の結果、建物その他に危険性があると判断されなかった。
有害物質はなく、建物の鉄骨が丈夫で崩落の心配はないであろう。
WAO☆第一関門クリア。
良かった♪
・製錬所は基本的に解体する意向。
昭和63年に製錬を停止してから、将来的には解体する条件付きで除却(←これって簿記なんかの専門用語。難しい・・)扱いになったものの、その後二十数年間に渡って放置、いよいよ政府から解体命令が出されて現在解体中。
内部の調査を進めながら慎重に解体しており、解体に掛かる費用の総額は約10億円と思われる。
既に解体が完了した硫酸工場と集塵棟に関しては、鉱業史上に残るような価値のある設備はなかったので全てを解体した。
現在、製錬所の中で残すものとして検討しているのは、
・大煙突
・自溶炉
・転炉2つ
・鋳造機
・硫酸タンク3つ(内部は洗浄済み)
・ちょこう(?)
尚、自溶炉の図面は「未来遺産」に登録され、これは日本で11番目の登録となる。
それにしても、解体決定後になって世界遺産登録の話が浮上したのは皮肉なものである。
・・と、まぁこんな風。
悲観したほどには製錬所が酷いことにならなそうで、良かった、良かった。
↑転炉
↑鋳造機(アノード型銅)
それにしても、勉強会の中でもしきりに出た話なのだが、この足尾銅山は、栃木県のものでも日光市のものでもなく、(株)古河機械金属の所有である。
鉱山法の中の「会社がある限りは、閉山施設等を管理する」に基づいて、(株)古河は足尾銅山を管理しているのだけど、未だ公害防止だけで年間15億もの経費を掛けているそうで、それ以外にも修復保存費用や解体費用がかさんで来るので、かなりの額を廃鉱山となった足尾につぎ込んでいることになる。
それを思うと、世界遺産登録のせめて暫定リスト入りを果たして、保護のための予算を国から調達出来たら良いのかなぁ・・などと考えてしまった。
しかし、それってのは世界遺産登録の本来の目的から逸脱しているのだけどね。
勉強会終了後は、この日のために特別に運行されたトロッコ列車に乗せてもらった。
↑この「安全専一」の言葉に注目!
これは、銅の採鉱と精錬技術の調査のために足尾からアメリカに行った小田川全之が、新しい技術と共に持ち帰った安全運動の「Safety First」を「安全専一」と訳したもの。
それが、やがて「安全第一」となって全国に広まった。
今、工場や作業現場で当たり前に目にする「安全第一」は、この足尾から発せられたものなのだ。
「足尾銅山の世界遺産登録を推進する会」の働きかけと、(株)古河の意向がイイ感じで融合して行くと、精錬所は危険なものが取り払われ、取り払われた土地は緑化され、鉱山史上価値のあるものだけが整然と配置された公園のようになって行くのかも知れない。
イギリスには、鉄骨の橋と転炉の二つだけで世界遺産(文化遺産・製鉄所カテゴリ)に登録されたものがあるけれど、そんな感じになって行くのかなぁ。
最早、製錬所の解体は免れぬもの・・・それは仕方がない。
ならば、残せるものは出来うる限り良き方向で残して欲しいなぁ・・と思う。
ところで「ちょこう」って何だろ?
お分かりの方がいらっしゃったら、是非教えてたもれ。