主として安曇野市域で行われるお船祭りの文化庁がらみの調査を分担し、このところ足繁く安曇野市に通うことが多くなりました。私の分担の一つが安曇野市三郷中萱の熊野神社の祭礼にでるお船です。祭礼は今度の土日なのですが、昨日今日はお船の枠組みの組立がおこなわれ、一日半参与観察してきました。ここでひかれるお船は、(安曇野では山車を船形に作って飾り物を乗せ、お船と呼んでいる所が多いのです)お船の中では一番大きいといわれるもので、数十年前から紫石会という同好の人たちで担われています。お船の組立と曳行は人手が必要になるので、地域から人々を集めて行うものの、人形作りと飾りつけは紫石会の会員の人々が行っています。他地域の保存会をイメージしてもらえばいいのですが、お船の規模が大きいですから、保存会などという生易しいボランティアではありません。7月になると毎晩8時に神社境内の作業場に集まって、人形作りの作業をしています。そして、一週間前に枠組みを組立、飾り始めるというわけです。
ざっと出来上がる順に写真で示しました。台車の枠にヤマギという木を交差させて固定し、その前後に船の腹にあたる部分を欅の枝を縦横に組んで縛り、ふくらみを持たせて作ります。これを作るのが多くの人手を必要とする作業です。毎年新しく作るので大変です。この部分は大きな幕で覆ってしまうので、観客には見えないのですが、生き生きとした青葉でつくるのに意味を感じているようです。地域の行政の最末端である「組」の長が参加して、労力を提供し紫石会の会員(20名ほどいます)が指導して、半日で作り上げます。午後は紫石会の会員だけで、人形を飾るための床をはったり背景を張るための壁を作ります。ここになると、職人仕事です。まるで演劇の大道具屋さんのような仕事です。例えば私にこれをやれといわれても、とてもできません。皆さん高所作業に慣れていて、道具をつけた腰のベルトには、命綱を固定するためのフックがついています。多くの方が職業は職人さんみたいです。でなければできません。お船の組立は組み合わせてボルトでしめるというものではなく、紐と針金でしばるという方法です。町のサラリーマンが集まって、さあやりなさいといわれても、たぶん何一つできないと思います。マチトビがやったような仕事を、ムラの人々がやっているのですから、どこでもできる行事ではありません。
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