民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

『民俗学断章』読了

2018-10-02 10:08:10 | 民俗学

最近図書館で、篠原徹さんの『民俗学断章』(社会評論社)をみつけて読みました。

見過ぎ世過ぎとして民俗学を標榜して生きてきたが、我が親友であった人類学者・掛谷誠は「人類学者は詩を書かない詩人なんや」と言っていた。その顰みに倣って「民俗学者は詩を書かない詩人なんや」と居直ることにしたい。詩は人びとの心に響くが、一銭のお金にもならず経世済民など何の関係もない。ただ、一編の詩がいつかどこかで世の中を変えていくことがあるかもしれないことを信じるしかないであろう。

「あとがき」に、篠原さんは来し方を振り返ってこんなことを書いています。これと同じようなことを新聞記者の前で語って、随分たたかれた思いが、若い頃の思い出としてあります。学問はすぐにでも役に立たなければならないという風潮は益々高まっていますね。若手の民俗学研究者は、どんなふうに読むのでしょうかね。

 この本はたまたま図書館で見つけて読みましたが、最近この手の本ーつまり自分の人生や研究誌を振り返るといったーを送っていただいたり買ったりして読む機会が多いです。福田アジオ『民俗に学んで六〇年 純粋培養民俗学徒の悪戦苦闘』松崎憲三『民俗学がめざすもの』田中宣一『柳田国男・伝承の発見』などです。名前を知っていたり交流させてもらっている研究者が、引退の時を迎えているということでしょうか。それに触発されてということもあり、自分でも前回出版した『民俗と地域社会』出版以後に書き散らしたものを、まとめて一冊にしようという気になり、現在編集中です。とはいえ、民俗学者ではありませんから、議論は錯綜し1冊の中で深まるような研究書とはなりません。あと2か月ほど先でしょうか。


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