山本理顕
APL 2007
RC+1F / 12,095m2
http://riken-yamamoto.co.jp
夏休みは美術館へ出かけることが多いです。去年は横浜美術館で奈良美智展を見て、おまけにマリノスタウンにまで行きました。海外旅行へ行くわけでもなく、まあせいぜいその程度です。さて今年はどこへ行こうか?と考えていたら、突然ひらめきました。夏なのでやっぱり海がいい。というわけで、ロケーションで決めた横須賀美術館へ行って来ました。
偉そうな感想を言わせてもらうと、非常によくできた建築でした。企画展と常設展の空間構成が面白かったです。特に地下の常設展の吹抜け空間は、ヌルッとした不思議な感覚があって、外観とのギャップが絶妙でした。要所に丸い窓があって、自然光が降り注いだり、遠くの海を船が通ったりするのが見えたりします。そういう遊び心が美術館というアカデミックな雰囲気を和らげていて、コントラストの利いた心地よい空間を作り出していました。
そして、マニアを釘付けにしたのが天井裏です。いや、果たして天井裏と呼んでいいのかどうか。屋上から螺旋階段を降りて行くと、まさにその空間が目の前に広がります。おおっ!なんという美しさ。建物の構成として、白い箱がガラスの箱に入れられたような構造になっているのですが、その隙間の空間がもう本当に美しい。鉄骨の支持材が整然と並ぶ中、電気配線は全てモールに納められて、設備配管と同様真っ白に塗装されています。意匠と構造と設備のヒエラルキーの崩壊。踊り場でしばし動けなくなりました。
ものの見方というのは、実にいろいろあるものです。写真で見た時は、もっと堅いイメージを持っていました。やはり、建築は実物を見てなんぼです。空間は実際に体験してなんぼです。メチャクチャ遠かったけど、来て良かったなあ。子供から大人まで、ついでに天井裏マニアのおっさんまで、存分に楽しめる素晴らしい建築でした。