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中小企業に過度の同情は禁物、自業自得の側面もかなりある -「経営管理層の劣化」「勘違い」も多い

2015-10-06 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
景況が改善すると中小企業の人不足が深刻になる。
今のような表層だけのインチキ好景気でも
中小企業が人不足に悩んでいると聞く。

政府の対策が求められることも多いのだが、
必ずしも同意し難い側面があるのも事実である。

個人的に、雇用・労働関連のジャーナリストとして
吉田典史氏を高く評価しているのだが、
企業や労働者の利己的な本性を見抜いた優れた記事を書いている。

雇用・労働関連では自分が正義のヒーローのように勘違いした取材や
思い込みジャーナリストがスタンドプレーを行う見苦しいケースも多いが、
吉田氏はそのような安易な道を選ばない。

吉田氏は、中小企業のいい加減さや経営・管理層の勘違い、
人材育成能力の低さを明確に指摘している。

勿論、そうではない卓越した中小企業もあるのだが、
それは決して多数派ではないのが悲しい現状である。
少なくとも、政策や労働者に責任転嫁するのは間違いなく低次元の企業だ。

▽ この中沢氏の取材も非常に良く、凡庸な中小企業の横暴と狡さが分かる

『中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇』(中沢彰吾,講談社)


雇用に関する報道は、いつも目先のことしか見ないものが多い。

「あれほど内定拘束の厳しかったバブル期に、厳しい若者バッシングがあっただろうか?
 バブル期の方が遥かに若者が優秀であったのなら、何故その後に成長率が低下したのか」

「そもそも世代によって極端に質が上下する筈はなく、
 もし若年層の質が本当に下がったとすれば
 間違いなく彼らを育てた上の世代の責任ではないのか」

「少し前の景況悪化期に民間企業が採用を絞っていた時には、
 これから働く若者をバッシングする言説が氾濫していた」

「定年の近い高齢層(特に公務員)が賃金水準や厚待遇に固執し
 中小企業に行きたがらないのと若者の行動様式は同じであろう。
 また、若い大卒層が大企業を目指すのは日本の特殊かつ差別的な待遇のせいで、
 企業規模によって生涯賃金が左右されているのだから当然である」

「若者バッシングは所詮、採用を絞らなければならない時期の企業側の論理に過ぎず、
 業績悪化した企業の自己正当化・責任転嫁である」

と当ウェブログが指摘した通り、自己正当化・責任転嫁の言説ばかりだ。

▽ 企業に対して厳しいスウェーデンの方が、日本より成長率が高い

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


今回の人不足騒動でも、当ウェブログの指摘が当たっていたことになるだろう。

「特に雇用分野で既得権を握っており優位にある連中の話は
 殆ど自己利益を図る薄汚いポジショントークである。
 頭から爪先まで打算だらけの彼らを、絶対に信用してはならない」

「我が国では終身雇用などごく一部の層にしか存在しなかったこと、
 高度経済成長期も現代も若年層の離職率は大して変わっていないことは、
 昔から言われてきた有名な事実である。
 労働環境が業種によって全く違うのも公然の秘密だ」

「「若者に忍耐力がなくなった」「すぐやめる」などと言っているのは、
 魅力に欠けた斜陽産業の職場で地位に胡座をかき、
 時代に適応できなくなった老害の言い草に過ぎない」

「言う迄もなく、優秀な中小零細企業ならば人材はとどまる。
 収益性が悪かったり、技術力に欠けていたり、経営陣が利己的で社員を搾取していたり、
 成長性が低かったり、雇用環境への配慮が乏しかったり、高い離職率には理由があるのだ」

「我が国の低成長とセーフティネットの脆弱さは依然として変わっていない。
 安定収入・安定職にありついた者は他人に無関心で
 社会的弱者や運悪く失職した者を無視して事実上彼らを見殺しにしている」

「成長率が恒常的に3%を超えていれば中小零細企業や低競争力企業にも
 それなりの恩恵が及び豊かさを実感できたであろう。
 ブラック企業にしがみつく必要性は大幅に低下されたであろう。
 悪質企業は人不足・採用難で市場から淘汰されたであろう」

「しかし人口動態と高齢者三経費の負担大幅増によって
 そうした高い成長率を取り戻すことは極めて難しくなった」

「だからこそ日本は北欧のように税負担を高めて福祉セクターに所得移転し、
 積極的労働市場政策で雇用を増やすべきだったのである。
 環境税やコージェネ推進で省エネ分野を成長させるべきだったのだ。
 それでこそ労働市場の需給がタイトになり、賃金が上昇するのである」

円安に依存した次元の低い経済政策をダラダラ続けているために、
日本の低成長と保守退嬰は一向に改善しないのである。

 ↓ 参考

離職率を決定するのは「業種」、就職三年以内の離職率に大きな変化なし - 不本意就職の反動が出るだけ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/ada1631fc18d3ae0d379bd4b10cf5871

若者バッシングが減った「大人の事情」- 内定辞退続出に慌てふためく企業、採用絞り込みによる自業自得
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/a98e28c2240d87e88fae719ea3b117f3

小学校レベルの算数ができない大人の方が、分数のできない学生より深刻 - 教授と職員の雇用が問題の根源
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/36d01d0a1821489cb81687115c191e4e

▽ 「企業規模による賃金格差」は先進国として異常な水準に達している

『日本の景気は賃金が決める』(吉本佳生,講談社)


▽ 世代間格差が拡大すると、失業率が上昇し成長率が低下する(つまり、若者のせいではない)

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


中小企業で「一定のキャリアを積んだミドル人材」の人気高まる でもホントのところは?(careerconnection.jp)
https://news.careerconnection.jp/?p=15835
”日本商工会議所の調査によると、中小企業2625社の50.2%が「人員が不足している」と回答したという。
 最も深刻なのは介護・看護(72.2%)で、運送業(60.9%)や建設業(60.7%)も割合が高い。割合の低い金融・保険業(44.4%)や製造業(44.1%)でも4割を超えており、どの業種でも人手不足のようだ。
 それでは中小企業は、どのような人材を求めているのか。長く働ける新卒の学生が人気かと思いきや、最も高かったのは「一定のキャリアを積んだミドル人材」と答えた企業が67.9%にのぼったという
■管理職を経験者した「シニア人材」は不人気
 ミドル人材は全ての業種において最も人気が高く、「高校卒業新卒社員」(40.4%)や「大学卒業新卒社員」(32.1%)を大きく上回っている。
 一方で不人気だったのは「管理職経験者等のシニア人材」で12.4%にとどまった。高い給与を希望するからか、自分から動こうとしないからか。バブルのやり方に染まっていて、いまのやり方に対応できないからかもしれない。
 ミドル人材が求められる背景には、そもそも新卒者の採用がうまく進まないという事情もありそうだ。中小企業からは、
「新卒者の採用が難しくなってきている。採用、選考時ルールが分かりにくい」(長野県、卸売・小売業、飲食店)
「新卒者を採用したいが、学生の多くが大企業に集中する。中小企業の人材獲得についてご支援願いたい」(大阪府 建設業)
といったコメントがあがっており、できることなら新卒者を迎え入れたいというホンネがにじみ出ている。〔以下略〕”

中小企業がミドル人材を求める理由は明白だ。
人材育成ができず、すぐ辞める若者を引き留めることができないからである。
管理職ではなく、黙々と素直に働いて辞めないミドル人材を求めるのだ。


なぜ、中小企業では人材が育ちにくいのか?(@DIME)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150527-00010000-dime-bus_all
”規模の小さな会社では、社員をきちんと育成できていないケースが目立つ。
 ここ数年、景気は回復しているように見えるが、80年代、90年代と比べると、新卒にしろ、中途にしろ、大企業に就職することは難しくなっている。となると、中小企業に就職する人が増えていることになるが、当然、大企業と比べると多少なりともリスクが伴う。そして、規模の小さな会社(※ここでは正社員の数が300人以下とする)では、社員をきちんと育成できていないケースが目立つ。なぜ、そうなるのか? 今回は、なかなか中小企業で人が育たないいくつかの理由について、私のこれまでの取材経験を元に分析したい。

1.見習うべき社員が少ない
 これはつまり、人事労務の言葉でいうと「離職率が高い」ということ。事実、30代前半ぐらいまでに辞めていく人の数は多い。これは厚生労働省や地方自治体の労働経済局などが発表するデータを見ても明らかだ。データをみると、1980年代から大企業でも20代のうちに会社を辞めていく人が増えていることがわかるが、その数は中小企業のほうがはるかに多い。
 辞めていく人が多いということは、ある程度のキャリア、実績、成果を持っている人材がその会社には少ないことを意味する。中小企業の社長がよく言うところの「人材難」だ。これでは、20~30代前半までの社員のお手本となるべき社員が存在しないことになる。
〔中略〕
 こういう状況では、経験の浅い人が一定のペースで仕事を覚えて、高いレベルに成長するのは難しい。人事コンサルタントらが指摘する「ロールモデル(見習うべき人)」が少ないということだ。

2.刺激に乏しい
 中小企業にいると、人数的にもなかなか“組織の力”を生かした戦いができない。辞めていく人も多いため、社員たちが1つのチームになろうとしてもうまくいかない場合もある。それぞれの社員の考えや意見、価値観などがバラバラのままでは“チーム”を作ることも難しい。つまり、各自が独自の考えで仕事をする傾向が強いと、互いに支えあって、助け合うという文化が浸透しにくいのだ。
〔中略〕
3.上司の指導力が弱い
 一般的な話だが、上司が仕事をわかりやすく、丁寧に教えると、部下は次第に心を開いて、熱心に仕事をするものだ。そして、仕事自体が面白くなる。成果や実績も少しずつ出るようになる。こうなると「人を育てる流れ」ができるわけだが、中小企業の場合、これができないケースが多い。最初の「上司が仕事をわかりやすく、丁寧に教えること」が十分にはできていないのだ。もちろん、中小企業にも部下を育てる力を持った人はいるだろう。ただ、大企業と比べると数は少ないし、比率も低い
〔中略〕
4.会社として社員を育成しようと思っていない
 信じられないと思う方もいるかもしれないが、そもそも中小企業の中には、同族経営のため、社長や役員が社員(管理職/非管理職)を真剣に育てようと思っていないケースがある。例えば、オーナー経営者が息子を役員にしている場合、当然、その息子を後継者にする可能性が高いだろう。息子より優秀で会社への貢献度が高い社員がいたとしても、その人物を社長にするということはまずないだろう。むしろ、あまりにも優秀すぎて、将来、息子にとって脅威になりそうな人材なら、辞めさせてしまうこともある。
 中小企業のオーナー経営者は、大株主であることが多いため、ワンマンで自己中心的な考えに陥りやすい。例えば、社員が会社のあり方について批判めいたことを言えば、それがいかに正しいものであったとしても、認めないものだ。それだけではなく、退職させようとすることすらある。

〔中略〕
 中小企業は経営陣の意向に沿える人のみを雇い続けたいのであって、その人物が優秀であるか否かは、二の次だ。経営陣の意向に沿える人たちだけを揃えないと、規模が小さいため、組織として機能しなくなってしまうのだ。そうなると、結果として「仕事はあまりできないが、おとなしいイエスマン」ばかりが会社に残るようになる。

5.脆弱な「OFF-JT」の体制
 日本の企業の場合、大企業にしろ中小企業にしろ、人材の育成は「OJT」が中心となる。上司や先輩などが仕事の合間に「こうするように」「こうしたほうがいい」と教えていくのが「OJT」だ。これとは別に「OFF-JT」という制度がある。こちらは職場を離れ、例えば、他の会社が主催する研修講座などを受講するもの。ところが、中小企業の場合、予算的な問題等もあって「OFF-JT」に力を入れることができない。そうなると「OJT」中心の人材育成となるわけだが、前述の通り、上司の指導力が弱いため、どうしても好い結果が出ない
〔中略〕
 最後に、ひとつ補足したい。これはあくまで個人的な意見だが、新卒で就職活動をしている人は、最初から中小企業を目指すのは避けたほうがいいと思う。人材を育成する体制があまりにも不十分だからだ。それでも、入社したいというのなら、それも1つの考え方だ。ただし、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないようにすること。現在、中小企業で働いている人も、もし、会社に対して強い不満を持っているのなら、人材を育てる体制が整っている会社に移ることを考えてもいいだろう。〔以下略〕
文/吉田典史”

これが吉田典史氏の記事。
よくある凡庸な中小企業の実態を赤裸々に書いている。
関係者は、これがありがちな実態であることをよく理解していることだろう。

ただ、同情すべき点として「入ってくる労働者の質がバラバラ」であることも指摘しておきたい。
社会的常識やまともな勤労意識に欠けた者すら誤って採用してしまうこともあるのだ。


なぜ中小企業の管理職は“勘違い”してしまうのか?(@DIME)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150708-00010000-dime-bus_all
”つい先日、30年近いキャリアをもつ人事コンサルタントを取材した。中小企業(この場合、正社員数が300人以下)の管理職は、なぜ、自分のことを「優秀」と思い込んでいるのか、どうして自信満々なのか、といったことが話題に上がった。少なくとも、そのコンサルタントの方と私の間では、そのあたりの認識が一致した。今回は、中小企業の管理職が勘違いしやすい理由について考えてみたい。

1.「管理職」になることが簡単
 中小企業が抱える問題のひとつに、社員の定着率が低いということがある。短い期間に次々と辞めていくため、なかなか人材を育成することができないという事情がある。結果的に、業績が長い間、伸び悩むという負のスパイラルが生まれる。ただ、こういった組織の中で管理職になるのは、大企業に比べるとはるかにスムーズだ。要は、ライバルが少ないのだ。
 ここ十数年、大企業では管理職になれない人が溢れているが、一方で中小企業の多くは、30代前半で何らかの役職に就くケースが多い。中には20代後半でマネージャーになる人もいる。こういった具合に部下の育成力がないまま、簡単に数人の部下を持つようになる。取材する立場から見ると、「ここまで簡単に管理職になると、部下は大変だろうな」と思ってしまう。社員の定着率が低い理由は、このあたりにもあるのだ。しかも、大企業のような厳格な人事制度や評価システムがないため、管理職になった瞬間、「自分は優秀だ」と勘違いをしてしまうのも無理はない。

2.“勘違い”しやすい環境
 小さな会社では、同世代の社員たちが次々と辞めていくから、いったん管理職になると、部下や後輩から何かと頼りにされやすい。当然、社長や役員など経営者たちからも期待される。こういう生活が何年も続くと、やはり“勘違い”してしまうものなのだ。大企業の場合、管理職になるのは30代半ば以降が多い。新卒で入社し、十数年間、煮え湯を飲まされる。この経験により、少なくとも中小企業の管理職よりは自らを顧みる習慣が身につく。また、勘違いするような状況も生まれにくい。

3.人事異動や配置転換が少ない
 中小企業は、大企業のような、定期の人事異動があまりない。行なわれたとしても、異動する人の数は大企業よりはるかに少ない。つまり、同じ部署にいる期間が自ずと長くなるのだ。例えば、私のつきあいのある中小規模の出版社では、経理課や書籍編集部に30年近く在籍している社員がいる。
〔中略〕
 大企業に勤めている人からすると信じられないかもしれないが、こういう会社はたくさんある。
 だが、人事異動がないと、その仕事については経験や知識などが豊富になるわけだが、長く携わっているという事実だけで、「自分は優秀だ」と思い込みやすくなる。一方で、部下や後輩が次々辞めていくと、新人に自分が教科書だと言わんばかりに教える。その繰り返しによって、いつしか「自分がいないとこの部署(仕事)は動かない」と思い込んでしまうのだ

4.経営者になることが比較的、簡単
 大企業と比べて、中小企業では、役員や社長になることは、単純に「確率」という観点からみても、はるかに容易なことである。しかも、同世代の社員や後輩、部下たちは大量に辞めていく。つまり、ライバルが少ないのだ。さらに、社員のレベルは大企業に比べると、全般的に低い。例えば、就職活動で大企業に入ることができなかった人が、中小企業に流れる傾向は依然として強い。だが、中小企業でも役員になってしまえば、やはり、勘違いしやすくなる。どこかで「自分は優秀」だと思い込んでしまうからだ。

5.劣等感が強い
 中小企業の役員や社長を取材していると、同じ業界の大企業に対し、嫉妬したり、ねたみを感じている人が多い。露骨に批判めいたことを口にする人もいる。これもまた、勘違いをする理由のひとつだ。つまり、劣等感を抱いているからこそ、社内では自分を大きく見せようとするのだ。早々と、管理職や役員になれてしまうから、ますます、勘違いをしてしまう。本来なら、これはよくない流れだが、小さな会社ではこの歯止めがない。
 中小企業においても、意識が高く、部下などの育成が上手な人もいるし、謙虚な人もたくさんいる。こういう管理職こそ、経営者になっていくべきだ。勘違いをし、威張っている上司の下では、部下は成長しないし、簡単に辞めていくだろう。そうなると、結果的に業績も低迷する。今後、少子化が進むと、優秀な社員を確保することがますます難しくなる。当然、中小企業は人材確保に苦労するはずだ。〔以下略〕
文/吉田典史”

こちらも鋭い取材だ。中小企業にはチャンスがあるのも事実だが、
大企業では珍しい馬鹿馬鹿しい勘違いも多い。
役職への居座りも、確率的に見れば大企業より発生し易い。
「中小企業だから支援しなければならない」と考えるのは根本的に間違っている。
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