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若者バッシングが減った「大人の事情」- 内定辞退続出に慌てふためく企業、採用絞り込みによる自業自得

2013-09-03 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
若年層にまつわる報道は元々シクリカル(循環的)なもので、
報道されるテーマのサイクルを観察すると
マッチポンプを飽きもせず繰り返していることが分かる。

そうしたルーチンを観察すると、大衆の学習能力が低いこと、
大衆が現実をありのままに見るのではなく
欲望や願望によって歪めて捉えていることが分かる。

少し前の景況悪化期に民間企業が採用を絞っていた時には、
これから働く若者をバッシングする言説が氾濫していた。

「若い労働者の質が下がった」
「若者はつべこべ言わず中小企業でも何でも働け」etc

若者の搾取的労働によって成り立つ職場の質の低い中高年が
いかにも好みそうな偏見である。彼らが自己正当化できる便利な論理だが、
お前たちの近くに若い優秀な人材が近寄るとでも本気で思っているのか。
若い世代を批判し攻撃したところでお前の能力も評価も上がらないのが何故分からないのか。

こうした言説は採用において苦戦する所謂ブラック企業にとって好都合で、
彼らを増長させた要因の一つが若者バッシング報道である。
目が曇っていなければこれらの正体は社会問題であるとすぐ分かる。

定年の近い高齢層(特に公務員)が賃金水準や厚待遇に固執し
中小企業に行きたがらないのと若者の行動様式は同じであろう。
また、若い大卒層が大企業を目指すのは日本の特殊かつ差別的な待遇のせいで、
企業規模によって生涯賃金が左右されているのだから当然である。

▽ この「企業規模による賃金格差」は先進国として異常

『日本の景気は賃金が決める』(吉本佳生,講談社)


そもそも世代によって極端に質が上下する筈はなく、
もし若年層の質が本当に下がったとすれば
間違いなく彼らを育てた上の世代の責任ではないのか。

「若者バッシングによって誰かが利益を得ているのではないか、
 何か他の目的をカモフラージュするための陽動作戦ではないかとの見方ができる」

「あれほど内定拘束の厳しかったバブル期に、厳しい若者バッシングがあっただろうか?
 バブル期の方が遥かに若者が優秀であったのなら、何故その後に成長率が低下したのか」

しようもない情報操作と脊髄反射のサイクルがまた始まっている。

 ↓ 参考

呪うべき人材コンサルタントという職業 - 他人の不幸でビジネス拡大、就活に失敗した若者の絶望を深める
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/fdec937031caa6cda95e63920e6a4fea

小学校レベルの算数ができない大人の方が、分数のできない学生より深刻 - 教授と職員の雇用が問題の根源
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/36d01d0a1821489cb81687115c191e4e

▽ 日本の成長率低下とともに、失業率も高齢層への所得移転も一貫して上昇している

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


▽ 重税で公共部門の雇用を増やしたスウェーデンの方が日本より成長率が高いという事実

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


花束、握手で「感動の演出」内定辞退対策に奔走する企業(AERA)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130829-00000003-sasahi-soci
労力をかけて学生に内定を出したものの、辞退されてしまい、再び採用活動に追われる――ここ数年、このような悩みを抱える企業が増えている。背景にあるのは、少数の学生が複数の会社の内定を独り占めする「内定長者」の出現だ。マイナビ研修企画統括部課長の山田功生さんは解説する。
「バブル崩壊以降、ほとんどの企業が量より質を重視した採用活動をするようになりました。多くの会社が少数精鋭を目指した採用活動をすると、優秀な学生にだけ内定が集まります。結果、辞退される企業が増えてしまうのです
 採用で質を求める傾向が一度強まると、景気が上向いてもそれは変わらない。より多くの人材を採用できる余力があっても、基準を満たした人材をとれないのであれば、募集を締め切ってしまう企業が増えているという。
 辞退の多発を受けて、企業の側も対策を練り始めている。これまでの採用活動は、学生を選考して内定を出すことをゴールとしている企業が圧倒的に多かった。しかし、最近は内定を出すまでのプロセスや内定の伝え方、そして内定者のフォローなど丁寧な採用活動を重要視する企業が増えてきた。
 この傾向にいち早く気づいた企業のあいだでは、優秀な人材を競合などに奪われないためにあの手この手の対策合戦になっている。ある中小企業は、対面で内定を出した後、学生が帰宅するまでに家にバイク便で花束を送っている。
〔中略〕
 別のIT系企業では、花束ではなくバイク便で内定証書を送る。内定を出す段階で、家に何時に帰るか聞いておいて、その時間に着くように手配するという気の使いようだ。
〔中略〕
 ソフトウエアを扱う中小企業は、学生に内定を伝える時の言葉がけにひと工夫がある。必ず「おめでとう」といって本人と握手をするのだ。日本人は握手などのスキンシップをする習慣がないので、学生は喜ぶという。他社よりも学生を大事にしている印象を与えるための「戦略」だと担当者は断言している。

このような小細工では離職率を下げることはできない。
企業の慌てようがよく分かるが、所詮は一時的効果しかない。
OJTで評価が大きく変わって無駄骨になるリスクもある。

若者バッシングは所詮、採用を絞らなければならない時期の企業側の論理に過ぎず、
業績悪化した企業の自己正当化・責任転嫁である。

収益が悪化しても役員報酬が減額されないふざけた企業経営を見れば、
彼らを信用できないのは明白である。
当然、プロパガンダを発信しているものと疑わなければならない。

下の著書では企業側の行動からその本音を見抜いて、
「景気が悪かったら「最近の若者は物足りない」と言い、
 景気が良くなれば「期待しているぞ」と言うのが役員面接の仕事」

であると真相を鋭く喝破している。これこそ企業側の「不都合な真実」である。

▽ こちらを参照のこと

『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動』(沢田健太,ソフトバンククリエイティブ)


現在のようにブラック企業批判が強まり、転職が活発化する時期には、
次に来る流行の言説は容易に予想できる。

ベンチャーとキャリアアップに対する無定見な礼賛と、
日本人の採用に苦労する企業側からの雇用規制緩和の賞揚である。
そうして非正規労働者と外国人労働者がまた罠に陥るのだ。
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