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『社長力-話題の経営者たちの実力と品格』(有森隆)- ゴシップ誌的な面もあるが、視点として面白い

2006-10-13 | こんな本を読んでいます
名の知られた経営者を、一般マスコミのような遠慮をせずに
(通常、広告主への配慮・取材活動への悪影響・訴訟リスクがマスコミを自縛する)
単刀直入に評価、或いは批判したユニークな本です。
『社長力-話題の経営者たちの実力と品格』(有森隆,草思社,2006)の紹介

松本大 社長のようにごく最近の成果だけで低く評価されるなど、一面的評価が散見
されますが、経済誌や経済紙では触れない側面からの鋭い指摘が多いです。
… 提灯持ちのような褒め言葉一辺倒、低俗週刊誌系の揚げ足取り・醜聞好みよりは
余程ましなのではないかと思います。

評価が高いのは鈴木修 スズキ会長、中村邦夫 松下電器会長、永守重信 日本電算社長、
武田國男 武田薬品工業会長(兼CEO)等々。特に、御手洗富士夫キヤノン会長(兼
CEO)がいかに凄い経営者なのかが、この本の数ページだけで分かります。

持田昌典ゴールドマン・サックス日本法人社長の、外資系と言うよりいかにも日本的
な手法、秋草直之 富士通社長の人望の低さ、三木谷浩史 楽天社長のTBS買収失敗
の舞台裏、イーホームズ買収に失敗したSBIホールディングスの北尾吉孝CEOは
本当に「M&Aの第一人者」なのか、など興味深い話が多いのです。

最も驚いたのは、あの宮内会長のオリックスが「パチンコとラブホテル業界への保険
のクロス販売で稼いでいる」という話です。確かにこれは、一般の媒体ではほとんど
聞けない話です。(既に御存知の方はいらっしゃいましたか?)

よく、「経営者を見て投資する」と言われる投資家の方が多いですが、
なかなか一般にはそうした経営者の実像は伝わりにくいものです。
御当人の自己意識が間違っている場合も多々ありますし、
単なる誹謗中傷と区別しにくい批判も少なくありません。
誰の、どのような評価が客観的なのか、と云う問題もあります。
「業績が出ている時は名経営者、業績が下がると駄目経営者」
という一般法則もしばしば成立しますから、経営者への評価は難しい話です。
前首相みたいですが、「総合的判断」しかないのですから。

最後に、日本航空への痛烈な批判があったので引用致します。


“「日航の経営者は、自由競争の本当の意味を理解していなかったの
 ではないか。製造業は、トヨタ自動車がそうだが、トヨタ以外でも
 それこそ乾いたぞうきんを絞るようなコスト削減に取り組み、それ
 は今も続行中だが、日航は国営企業の意識のまま。労働組合ともめ
 たくないため、世界の航空会社にも類を見ない高賃金で低労働生産
 の会社になってしまった」。外資系アナリストの指摘だ。”

“完全民営化から20年。結局、親方日の丸体質が改善されることは
 なかった。「どんな大企業でも民間企業であれば、倒産することは
 あり得る。倒産しないために、経営者も社員も、削るところは削ろ
 うと努力する。しかし、日航の経営者と社員はJALが倒産すると
 は考えたことがないのではないか」。国際舞台の最前線で闘ってい
 る日本経団連の首脳(製造業のトップ)はこう言い切る。「日航を
 立て直すには、日産のカルロス・ゴーンのような、しがらみのない
 経営者を招聘して、『競争とはこんなにシビアなものですよ』と言
 いながら、上から下まで首をすげ替えて、社内の意識改革をするし
 かないだろう」。”


… 全くその通りだと思います。
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