心を砕くとか身を粉にするとかそんな言葉があるが、いずれも自分自身を賭けて誰かを思ったり何かを為そうとする姿を表している。そんなときにはきっと粉塵が舞うはずだと思った。
粉っぽい人。
どんなにおいがするのだろう。
茨木のり子の詩に少女の視点から見てある奥さんについて書かれたものがある。正しくは忘れてしまったが、以下のような内容。
あの人の肩に積もっている美しいものはなんだろう、少女はそれをほしいと思った。やがて時が経ち少女も大人になり気が付いた。あの奥さんの肩に積もっていた美しいものは日々人を愛してゆくためのただの疲労であったと。
この詩からもそういった粉っぽさを感じた。
白粉や小麦粉や粉洗剤やベビーパウダーが混ざったような 何と言えない粉っぽさ。甘さが伴っているイメージがある。
桜餅の香りの成分のクマリンやヘリオトロープの香料を嗅ぐとそんなことを考える。
この夏初めてコンセプトをたててひとつの香水を調香する。そのときに最初に思い浮かんだものがヨコハマメリーというドキュメンタリー映画。戦後ヨコハマで米軍将校を相手に娼婦をしていたメリーさんと呼ばれる実在の女性を追ったストーリーになっている。
彼女は米軍がいなくなり街が時代と共に変わって年号が平成になっても街角に立ち続けた。
古い白レースのドレスに白いパンプス、それに舞踏の白塗りのような化粧、まるで大野一雄のような姿で人々が行き交う街に立っている。なぜ老いてなお、そうし続けたのか。そんな理由よりとにかくその日常に生きている物語のような彼女の姿に捕われた。自分の人生を演りきった人の無言の饒舌を感じる。語られない物語を孕んだ存在からイメージが沸き起こってきた。白粉、アンティークレース、古いドレッサーの引き出しに残った埃っぽい化粧品の残り香。
透明感のある京紫、白濁 。 菫、ヘリオトロープ、イリス、白檀、オークモス、アンバー、トンカ、ラベンダー、パチュリ。
虚構のような人生に纏われた香り。彼女のあまりに正直な偽りの為に。
心を砕き、身を粉にしてその体をはって生きる人のパウダリーを。
そんな香りを作りたいと思った。
粉っぽい人。
どんなにおいがするのだろう。
茨木のり子の詩に少女の視点から見てある奥さんについて書かれたものがある。正しくは忘れてしまったが、以下のような内容。
あの人の肩に積もっている美しいものはなんだろう、少女はそれをほしいと思った。やがて時が経ち少女も大人になり気が付いた。あの奥さんの肩に積もっていた美しいものは日々人を愛してゆくためのただの疲労であったと。
この詩からもそういった粉っぽさを感じた。
白粉や小麦粉や粉洗剤やベビーパウダーが混ざったような 何と言えない粉っぽさ。甘さが伴っているイメージがある。
桜餅の香りの成分のクマリンやヘリオトロープの香料を嗅ぐとそんなことを考える。
この夏初めてコンセプトをたててひとつの香水を調香する。そのときに最初に思い浮かんだものがヨコハマメリーというドキュメンタリー映画。戦後ヨコハマで米軍将校を相手に娼婦をしていたメリーさんと呼ばれる実在の女性を追ったストーリーになっている。
彼女は米軍がいなくなり街が時代と共に変わって年号が平成になっても街角に立ち続けた。
古い白レースのドレスに白いパンプス、それに舞踏の白塗りのような化粧、まるで大野一雄のような姿で人々が行き交う街に立っている。なぜ老いてなお、そうし続けたのか。そんな理由よりとにかくその日常に生きている物語のような彼女の姿に捕われた。自分の人生を演りきった人の無言の饒舌を感じる。語られない物語を孕んだ存在からイメージが沸き起こってきた。白粉、アンティークレース、古いドレッサーの引き出しに残った埃っぽい化粧品の残り香。
透明感のある京紫、白濁 。 菫、ヘリオトロープ、イリス、白檀、オークモス、アンバー、トンカ、ラベンダー、パチュリ。
虚構のような人生に纏われた香り。彼女のあまりに正直な偽りの為に。
心を砕き、身を粉にしてその体をはって生きる人のパウダリーを。
そんな香りを作りたいと思った。