エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

カラスの子

2014年05月25日 | ポエム
カラスの子育てが、終った。
晩春から初夏似かけて、カラスは子育てをする。

昨年の今頃、一日かけてカラスを観察した。
従って、昨年の今頃の句である。




 鴉の子 十句

屋根に降り影の小さき鴉の子
子鴉の来て鳩の群れはじけたり
鴉の子鳩の群れには近づかず
子鴉の飛び去る高さ変えもせず
二回り命小さき鴉の子
雨も無く萎れる木々の鴉の子
子鴉の行く当ての無し空茜
鳩帰り子鴉二羽の鳴き立てり
子鴉の夕日に染りし濡羽色
子鴉のまだ呼びている夕焼けかな




 
 季語探勝「鴉の子・子鴉」

鴉は学習能力を備えている。だから念のいった悪戯もする。夏、鴉の子育てと子鴉の親離れの時期である。
巣立ちを促す声と甘える鳴き声が交差する。地方都市では当たり前の風景である。反面、都会ではなかなか見られなくなったが、公園に行くと出会うことがある。一回り小さな子鴉が、降り立って歩く様は可愛い。一夫一妻の鴉。子育ては愛情に満ちているが、親離れを促す時期には父鴉も母鴉も厳しい。ケルト神話やギリシャ神話に登場する鴉である。その鴉が吉兆の象徴から転落して久しい。もし鴉を害鳥と言うなら、その責めは人にある。


 鴉の子自句自解

  屋根に降り影の小さき鴉の子
ビルの屋根に営巣しているのだろう。時折親鴉が来ては、また飛び立っていく。小さな影が羽を広げて歩いている。そろそろ巣立ちなのだと知れる小さな影である。
  子鴉の来て鳩の群れはじけたり
公孫樹並木の一本の枝に数羽の鳩が留っている。まるで五線譜に描かれた音符のようだ。そこに子鴉が来て一声鳴いた。鳩は慌てふためくように乱れ、飛び去った。
  子鴉の夕日に染まりし濡羽色
濡羽色は、女性の黒髪の艶やかさを例えて言う。鴉の羽は生まれた時から黒々として鮮やかである。その子鴉の黒い羽が、夕日に染まった。けれども夕日の赤と交じり合うこともなく、漆黒の闇を描き出した。
  雨も無く萎れる木々の鴉の子
並木の木々が、空梅雨に喘いでいる。嗚呼、雨がほしい。そう思ったのである。そこに、一羽の子鴉が飛んできた。子鴉は、生命力にあふれて並木に元気を与えた。
  子鴉の飛び去る高さ変えもせず
親鴉は、帰巣する時高い空を飛ぶ。時として、それが鴉なのかと訝る。子鴉は、そんな高さは飛べずただ巣の周辺を羽を広げて歩きまわっていることが多い。巣立ちの時、子鴉は一定の高さで飛ぶ。そう見えたのである。


上記の原稿は、主宰から言われて書いたのである。
「うん、これで良い!」
と言われた。

何が「これで良い!」のか,未だに不明である。
人に原稿を書かせて、そのままという事の多い主宰であった。



      荒 野人