「助けて、だれか助けてくれ。暗闇ばかりじゃ。ここからの眺めは果てしない暗闇。手に入れても手に入れても、光には届かぬ!」
すごい!
これまでも大河ドラマは権力者の最後の姿を描いてきたが、これほど無惨で残酷で、狂気にあふれ、哀しい姿があっただろうか。
この松山ケンイチさんの演技を見られただけでも1年間見てきてよかったと思う。
仏御前(木村多江)に矢を向けて殺そうとする清盛(松山ケンイチ)。
これは白河院(伊東四朗)が舞子(吹石一恵)を殺そうとするシーンに他ならない。
もののけの血をいくら否定していても、清盛は白河院と同じことをしている。
清盛はほとんど白河院になってしまっている。
ここで矢を放つ命令をしてしまったら、清盛は完全に白河院になってしまっただろう。
しかし、母・舞子の記憶が何とかそれをやめさせる。
次に清盛を救ったのは、頼朝(岡田将生)の挙兵だ。
これで清盛は義朝(玉木宏)を思い出す。
思い出して、立て掛けてあった平家伝来の<宋の剣>にすがりつく。
頼朝は<ひげ切り>、清盛は<宋の剣>。
これで清盛は武士の魂を取り戻した。
若き日の、何も持っていなかった時の、理想に燃えていた時代を思い出した。
清盛は<もののけの血>と<武士の魂>の間を揺れ動いている。
だから源頼政(宇梶剛士)は「入道殿はこの国の宝か災いか?」と迷う。
一方、清盛にとって、頼政は義朝の分身に他ならない。
自分に協力し、いっしょに<武士の世>を作ろうとしている頼政に清盛は<義朝>を重ね合わせていた。
だから頼政の裏切りを知った時のショックは相当なものだっただろう。
清盛は「同じもののふの頼政でさえ、わしの国造りをわからぬか!」と悲憤慷慨する。
清盛は頼政を失うことで<義朝>を失った。
そして<義朝>は頼朝の挙兵という別な形で清盛の前に現れた。
上手い暗喩表現ですね。
そして、もうひとりの清盛の若き日の友・西行(藤木直人)。
美しく生きるために世を捨てた西行は、友人として清盛を諫める。
「奪い合い殺し合う怖れていた世の到来。そのいただきにいるのは誰あろう、お手前。これがお手前の目指した武士の世でございますか?」
西行は世を捨てて、何事にもとらわれていないから物事が鮮明に見えるんですね。
清盛の危機の時はいつも現れてアドバイスをおこなってきた。
しかし今回、清盛は聞く耳を持たなかったようだ。
だから、西行の言葉が届かないのなら自分が出ていくしかないと考えた<義朝>が<頼朝の挙兵>という形で現れた。
義朝と西行。
このふたりの友人は、暗闇の中を彷徨う清盛に「そろそろ休め」と言っているようだ。
上手い脚本ですね。
これまでもオモテに現れない裏の文脈に<白河院>がいることは把握していましたが、<義朝>も描かれていたとは!
頼政と頼朝がそうであったとは!
だから頼政も頼朝も<清盛の良き理解者>であったのですね。
まあ、そんな分析はともかく、今回の松山さんの演技は凄まじかった。
凄まじい演技は「やめーーーい!」と叫んだ盛国の上川隆也さんにも伝播した。
いい脚本は役者さんにいい芝居をさせ、いい芝居は他の役者さんにもいい芝居をさせる。
今回はそれが実現した至福の回だったと思います。
すごい!
これまでも大河ドラマは権力者の最後の姿を描いてきたが、これほど無惨で残酷で、狂気にあふれ、哀しい姿があっただろうか。
この松山ケンイチさんの演技を見られただけでも1年間見てきてよかったと思う。
仏御前(木村多江)に矢を向けて殺そうとする清盛(松山ケンイチ)。
これは白河院(伊東四朗)が舞子(吹石一恵)を殺そうとするシーンに他ならない。
もののけの血をいくら否定していても、清盛は白河院と同じことをしている。
清盛はほとんど白河院になってしまっている。
ここで矢を放つ命令をしてしまったら、清盛は完全に白河院になってしまっただろう。
しかし、母・舞子の記憶が何とかそれをやめさせる。
次に清盛を救ったのは、頼朝(岡田将生)の挙兵だ。
これで清盛は義朝(玉木宏)を思い出す。
思い出して、立て掛けてあった平家伝来の<宋の剣>にすがりつく。
頼朝は<ひげ切り>、清盛は<宋の剣>。
これで清盛は武士の魂を取り戻した。
若き日の、何も持っていなかった時の、理想に燃えていた時代を思い出した。
清盛は<もののけの血>と<武士の魂>の間を揺れ動いている。
だから源頼政(宇梶剛士)は「入道殿はこの国の宝か災いか?」と迷う。
一方、清盛にとって、頼政は義朝の分身に他ならない。
自分に協力し、いっしょに<武士の世>を作ろうとしている頼政に清盛は<義朝>を重ね合わせていた。
だから頼政の裏切りを知った時のショックは相当なものだっただろう。
清盛は「同じもののふの頼政でさえ、わしの国造りをわからぬか!」と悲憤慷慨する。
清盛は頼政を失うことで<義朝>を失った。
そして<義朝>は頼朝の挙兵という別な形で清盛の前に現れた。
上手い暗喩表現ですね。
そして、もうひとりの清盛の若き日の友・西行(藤木直人)。
美しく生きるために世を捨てた西行は、友人として清盛を諫める。
「奪い合い殺し合う怖れていた世の到来。そのいただきにいるのは誰あろう、お手前。これがお手前の目指した武士の世でございますか?」
西行は世を捨てて、何事にもとらわれていないから物事が鮮明に見えるんですね。
清盛の危機の時はいつも現れてアドバイスをおこなってきた。
しかし今回、清盛は聞く耳を持たなかったようだ。
だから、西行の言葉が届かないのなら自分が出ていくしかないと考えた<義朝>が<頼朝の挙兵>という形で現れた。
義朝と西行。
このふたりの友人は、暗闇の中を彷徨う清盛に「そろそろ休め」と言っているようだ。
上手い脚本ですね。
これまでもオモテに現れない裏の文脈に<白河院>がいることは把握していましたが、<義朝>も描かれていたとは!
頼政と頼朝がそうであったとは!
だから頼政も頼朝も<清盛の良き理解者>であったのですね。
まあ、そんな分析はともかく、今回の松山さんの演技は凄まじかった。
凄まじい演技は「やめーーーい!」と叫んだ盛国の上川隆也さんにも伝播した。
いい脚本は役者さんにいい芝居をさせ、いい芝居は他の役者さんにもいい芝居をさせる。
今回はそれが実現した至福の回だったと思います。