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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「べらぼう」 第13回「お江戸揺るがす座頭金」~おまえは骨の髄まで女郎だった

2025年03月31日 | 大河ドラマ・時代劇
「不法かつ巧妙な手口で蓄財をなし得た検校たちはもはや弱い者にあらず!」

 相手を借金漬けにしてすべてを奪う盲(めしい)の当道座の者たち。
 これで鱗形屋は贋版に手をつけてお咎め。
 旗本は娘を売ることになったり家督を求められたり。

 この時代は「貨幣経済」で「米経済」ではないんですね。
 だから米で給料をもらっている武士は米の値段が下がれば困窮する。
 逆に商人は力を増して来る。
 士農工商で社会秩序を維持しようとしても、この流れは抑えられない。
 当初は弱者救済の当道座の特権だったが、この既得権で富を貪るようになって来た。

 この時代の流れを理解して糺そうとする田沼意次(渡辺謙)。
 その方法のひとつが「重商主義」「貨幣経済への移行」。
 もうひとつが「既得権の打破」。

 この作品は「経済」で江戸時代を表現している。
 面白い。実に面白い。
 ただ、これを推進する田沼意次もなかなか腹黒く、自分の権力維持に余念がない。
 まあ、権力を持たなければやりたいことは出来ませんからね。
 権力を手放せば、松平武元(石坂浩二)らが力を持って、たちまち昔に戻ってしまう。
 さて江戸城での政争も面白くなって来ました。
「西の丸様」の徳川家基(奥智哉)などは、部下の管理不行届きで今回面目を潰された。
 …………………………………………

 そんな中、蔦重(横浜流星)は悩んでいる。
 商売がたきの鱗形屋の没落を喜べないのだ。
「皆がツキまくる世ってのはねえもんですかね?
 誰かのつまづきの上にツキが成り立っているのは……」

 資本主義社会が到来すつつある時代に蔦重は戸惑っている。
 相手を追い落とすことに抵抗を持っている。
 この点、今回の蔦重は田沼意次と対比するキャラになっている。

 この悩みに対して平賀源内(安田顕)は「本屋」の意義を説く。
「本ってなぁ、人を笑わせたり、泣かせたりできるじゃねぇか。
 んな本に出会えたら人は思うさ『あぁ、今日はついてた』って」
「本屋ってなぁ、ずいぶんと人につきを与えられる商いだと俺ゃ思うけどね」

 この源内の言葉で蔦重は瀬以(小芝風花)とのことを思い出した。
 本は瀬以を慰め喜ばせた。
 本はふたりを繋いでくれた。
 しかし、ふたりを繋いでいた本が戻って来た……。
 …………………………………………

 鳥山検校(市原隼人)と瀬以。
 僕はすっかりいい夫婦になったと思っていたが、間違っていた。

 瀬以の心はいまだに蔦重にあり、鳥山検校はこれを見抜いていた。
 寂しさ、悔しさも感じていた。
「なぜ吉原の者といる時のように声がはずまぬ?」
「しょせん私は客ということか?」
「いくらカネを積まれようとも心は売らぬ。おまえは骨の髄まで女郎だった」

〝骨の髄まで女郎だった〟
 瀬以の心をえぐるすごい台詞だ。
 同時に哀しい。
 これを受けて瀬以。
「重三はわっちにとって光にござりんした」と蔦重に思いがあったことを認める。
 一方で検校にわびる。瀬以も理解していた。
「人の心を察し過ぎる主さんをわっちのいちいちが傷つけているということを」
「人というのはどうしておのれの心ばかりは騙せぬのでありんしょう?」

 すごいやりとりでした。
「すごい」「お見事」という他ない。
 これに加えて検校の逮捕という出来事が起こるのだから、脚本の森下佳子さんは意地悪だ。
 僕はどうしても鳥山検校に感情移入してしまうのだが、さて次回、検校は何を語るのか?
 瀬以の言葉も待ち遠しい。


※追記
 うつせみと新之助はあのまま足抜けだった。
 身代金のエレキテルと神隠しということで、このまま見逃してほしいのだが……。

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新世代の若手女優さんたち~髙石あかり、原菜乃華、當真あみ、見上愛、出口夏希、山田杏奈、南紗良

2025年03月30日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 今回は今後の活躍が期待される若手女優さんを紹介していこう!
                       以下、敬称略

・山田杏奈
・出口夏希
・茅島みずき
・南紗良
・見上愛
・白石聖
・當真あみ
・髙石あかり
・原菜乃華
・河合優実
 ……………………………………………

 すでに若手の世界では新世代が登場。
 若手と言われていた、今田美桜さん、永野芽郁さん、上白石萌音・萌歌さん、浜辺美波さん、杉咲花さん、川口春奈さん、清原果耶伽耶さん、堀田真由さん、伊藤沙莉さん、奈緒さん、森七菜さんらはすでに主役級。
 つーか、この世代はすごいな……。
 というわけで次の世代に注目せざるを得ない。
 まあ、河合優美さんは昨年大ブレイクしましたが。

・山田杏奈さん
 何と言っても「ゴールデンカムイ」のアシㇼパ役。
 映画「正体」にも出ていた。
 ビューカードのCMに出ていて、ガハハと笑う姿にはビックリした!

・出口夏希さん
 ネットフリックスで見た「舞妓さんちのまかないさん」がよかった!
 お母さんが中国の方で、中国語をバリバリに話せる。

・茅島みずきさん
 ドラマ「最高の教師」で注目。その流れで「教祖のムスメ」を見た。
 実写版「推しの子」では黒川あかね役。
 同じ「最高の教師」に出演していた田牧そらさんにも注目。

・南沙良さん
 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で大姫役。
「光る君へ」では賢子役。
 僕が注目したのは「ドラゴン桜2」だったが、
 北川景子さん主演の「女神の教室」では理知的な弁護士を目指す学生役を演じていた。
 つまりアホな子も賢い子もできる。笑
「ドラゴン桜2」つながりでは志田彩良さんにも注目。

・見上愛さん
 大河ドラマ「光る君へ」で彰子役。
 自分の意思を語れない少女から絶対的な国母へ。見事な演技でした。
 上白石萌音さんの「恋はつづくよどこまでも」や奈緒さんの「春になったら」などで
 さりげなく出ている。

・白石聖さん
 NHKドラマの「しもべえ」。
「大空港占拠」ではオペレーター役で実は重要な役割を果たしていた。
 出ていると必ず目が行ってしまう女優さんだ。

・當真あみさん
 昨年、僕はひたすら當真あみ推しだった。
「最高の教師」「さよならマエストロ」「ケの日のケケケ」。
「妻、小学生になる」の作家役もよかった。
 この流れで「パパとなっちゃんのお弁当」を見る。
 今年は映画作品が目白押しだ。

・髙石あかりさん
 何と言っても「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ!
 あのゆるさが素晴しい。
「御上先生」では最終回を飾る生徒役。
 んで秋から始まる朝ドラ「ばけばけ」のヒロインに抜擢!
 今年後半には髙石あかりブームがやって来る。

・原菜乃華さん
 僕の今の推しです。
 アニメ「すずめの戸締まり」で鈴芽役。
 実写版「推しの子」では見事に有馬かなを演じきった。
 この流れで劇場版「ミステリーと言う勿れ」を見て、過去の出演作「MIU404」「真犯人フラグ」を改めて見る。
「MIU」ではベビーメタル風のアイドル役、「真犯人フラグ」では西島秀俊さんの娘役だったんですね。
 郵便局のCMにも出演。
 映画「見える子ちゃん」「ババンババンバンバンパイア」も楽しみ。
 んで明日から始まる朝ドラ「あんぱん」ではヒロインの三番目の妹役。

・河合優実さん
 もはや説明はいらないでしょう。
 今年の日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞。
「不適切にもほどがある」の純子役。
 僕がすごいと思ったのはNHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて愛したのが家族だった」
 福地桃子さんが演じる親友「マルチ」とのやりとりがハマった。
「あんのこと」「ナミビアの砂漠」は気力と体力がある時にぜひ見たい。
 んで明日から始める朝ドラ「あんぱん」ではヒロインの二番目の妹役。

 というわけで新しい世代が登場して来ました!
 他にも朝ドラ「おむすび」に出ていた平祐奈さん、山本舞香さん。
 現在は河合優実さんが群を抜いていますが、この後誰が出て来るか?


※追記
 前述したが、明日からの朝ドラ「あんぱん」のキャストがすごい。
 今田美桜さん、河合優実さん、原菜乃華さん。
 ヒロインの母親役に江口のり子さん。
 ヒロインの夫・柳井崇の母親役で松嶋菜々子さん。
 瀧内公美さんも出るし、志田彩良さんも出る。
 ちなみに「あんぱん」は「アンパンマン」を描いたやなせたかしさんの物語だ。

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「やまとなでしこ」~どんな誠実な男よりも信じられるのはお金。お金は絶対に裏切らない!

2025年03月28日 | 恋愛ドラマ
 ドラマ「やまとなでしこ」の神野桜子(松嶋菜々子)はこんな女性だ。

「恋なんかに落ちちゃダメ。あんなもんに落っこちるから人生とっ散らかるのよ。
 舞い上がったり落ち込んだり、そんなの単なるエネルギーのロスよ。
 本当に幸せになりたかったら一時の病気よりも冷静な判断力。
 どんな誠実な男よりも信じられるのはお金。お金は絶対に裏切らない」

「今、何と? このわたくしが失恋? 
 失恋というのは、恋を失うというあの失恋かしら?
 恋なんていうものはね、人間もどきにするものじゃなくてお金にするものなの。
 お金は女を裏切らないの。私の辞書に『失恋』なんて言葉はないの」

 桜子という主人公は画期的だ。
 何しろ恋愛ドラマなのに恋愛を否定してしまうのだから。
 当然、桜子は貧乏人の魚屋の中原 欧介(堤真一)を否定する。
「中原欧介、究極の貧乏で苦労しすぎて幻覚でも見たんじゃないの? おーほほほっ!」
「この人は貧乏が趣味なの。貧乏が生きがいなの。貧乏じゃないと生きていけないの」
    ↑
 見事なせりふ!笑
 脚本は中園ミホさん(相沢友子さんも5話・8話を担当している)。
「やまとなでしこ」の中園ミホさん、せりふが冴えまくってるなぁ!
 こんなせりふもある。
「バッカじゃ中目黒! 何祐天寺(なに言うてんじ)!」
 ※東京に住んでいないとわからないかもしれないが。

 一方、「貧乏が生きがい」の中原欧介を好きになる女性が出て来る。
 桜子の後輩CAの塩田若葉(矢田亜希子)だ。
 若葉は言う。
「がんばってお店を続けましょう! わたしは魚屋の欧介さんが好きなんです」

 若葉ちゃん、良い子だ。
 魚屋を手伝ってくれるし、すべてを受け入れてくれるし、
 僕を含めた世の男たちはほとんど〝若葉ちゃん派〟だろう。

 だが最終的に欧介が選んだのは桜子。

 数学の研究で魚屋をやめてニューヨークに行くことをためらう欧助に桜子は言う。
「要するに数学から逃げてるだけでしょう! 一歩踏み出しなさいよ!」
「何がニューヨークよ! 何が数学よ!
 ニューヨークに行ったってまた逃げて帰ってくるんじゃないの?
 とっとと行っちまえ! 行くなら一生帰って来るな! 今度は絶対逃げんなよ!」

 この桜子の言葉の方が若葉の言葉より、欧介の心に染み込んだんですね。
 なにしろ若葉の言葉は──
「がんばってお店を続けましょう!」
「数学にのめり込んだら欧介さんはわたしが見えなくなる」
「わたしは魚屋の欧介さんが好きなんです」

 欧介は現状維持より一歩踏み出すことを選んだ。
 魚屋よりニューヨークに行って数学の研究をすることを選んだ。
 その時、傍らにいるべき女性は──桜子。

「やまとなでしこ」ひさしぶりに見たが面白かった。
 ともかく神野桜子というヒロインが強烈で素晴しい。
 神野桜子はひとつの時代をつくった女性像になった。


※追記
 桜子のキャラクターについて書き加えておくと──
・桜子がCAになったのはファーストクラスのお金持ちと親しくなれるから。
・過労で倒れたのに病院から抜け出して合コンを掛け持ち。
・東十条さん(東幹久)との結婚が決まっているのに、
「結婚式の前日まで、さらに上の男を探すのよ!」と言って合コン。

 このバイタリティと貪欲さ──桜子さんから学ぶことはたくさんある。
 日本がまだ元気だった時代の象徴でもある。

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「御上先生」~さあ、考えて、自分の頭で

2025年03月26日 | 学園・青春ドラマ
「御上先生」
 文科省をぶっ壊して、国のシステムから教育を変えていこう、という話だった。
 過去の学園ドラマで主人公の教師たちが戦ったのは──
 生徒であり、校長・教頭、親、教育委員会であり、社会であった。
 この点ではスケールの大きい、意欲的な学園ドラマだった。

 とはいえ、御上先生(松坂桃李)たちがぶっ壊すために暴こうとしたのは文科省の不正。
 これでは御上先生も認めたとおり「教育利権を貪るカネの亡者の物語」で終わってしまい、
 システムを変えることには繋がらない。

 教育を変えるのは、ひとりひとりの生徒なのだ。
 考える力を持った生徒がどんどん卒業していくことで社会は変わる。

 御上先生は語る。
「個人的なことは政治的なこと。すべては政治に繋がっている。さあ考えて、自分の頭で」
「個人のことは皆の問題、皆の未来に関わること。さあ考えて、自分の頭で」

 これが「御上先生」という作品だった。
 ……………………………………………………

 さて各論。
 各話エピソード。
 御上先生は生徒たちに何を伝えようとしたか?

・物事の表面だけを見るな。
 神崎拓斗(奥平大兼)が暴いた女性教師の不倫は表面的なもので、結果たくさんの人を傷つけた。
 ネット言論への警鐘でもある。
・教科書検定~生徒から考える力を奪っている。
・格差社会、相対的貧困率
・上級国民
・ビジネスコンテスト~社会問題を解決するビジネスとは何か?
・自分たちで勉強法をつくる。
・皆で力を合わせること
 御上宏太(新原泰佑)も真山弓弦(堀田真由)もひとりで戦って敗れていった。

 そして最終話。

・考える力とは何か?
 御上先生は生徒たちに議論をさせ、考えさせる。
 そこから出て来た答えは──
「考えても考えても答えの出ないことを投げ出さずに考える力のことだ」

 世の中は「考えても考えても答えが出ないこと」ばかり。
 考え続けることはしんどいことだから、多くの人は安易に答えを出そうとする。
 答えを求めてインフルエンサーの言葉を鵜呑みにしようとする。

 果たしてそれでいいのか?
 ……………………………………………………

 理屈っぽいドラマでしたね。
 毎回おこなわれるのは生徒たちの議論。
 画面は暗いし、感情移入しにくいドラマ。
 でも視聴率10%代キープで、今のドラマとしてはヒット作に入る。

 同様の理屈作品として朝ドラ「虎に翼」があったが、
 こういうドラマが受け入れられるとは日本もまだまだ捨てたものじゃない。
 とはいえ、これで終わってしまったら元も子もない。

 考える力とは何か?
 考えても考えても答えの出ないことを投げ出さずに考える力のこと。

 僕はこれを心に刻みつけておきたい。
 
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「べらぼう」 第12回「俄なる『名月余情』」~祭りだ、祭りだ、俄祭りだ!

2025年03月24日 | 大河ドラマ・時代劇
 祭りだ、祭りだ、俄祭りだ~!
 芸者、禿が芝居をして、店の二階から花魁が見ている。
 吟じるのは〝馬面太夫〟こと富本豊前太夫(寬一郎)。
 これに沿道の女性がキャーキャー!
 忘八はすすめおどり。
「いよっ、大文字屋!」「若木屋!」
 次郎兵衛さんも(中村蒼)踊っている。
 そして始まる大喧嘩!
 祭りと喧嘩は江戸の華!
 蔦重(横浜流星)は祭りの様子を描いた『名月余情』を出版!
 絵師は勝川春章(前野朋哉)で、序文は朋誠堂喜三二(尾美としのり)!
 これが飛ぶように売れた!
 祭りは一ヶ月続き、大文字市兵衛(伊藤淳史)と若木屋四八(本宮泰風)の喧嘩もやることが
 なくなった。
 だから傘と扇を交換し合って共に踊る。
 うつせみ(小野花梨)は小田新之助(井之浦海)に再会。
 松の井(久保田紗友)に背中を押されて、新之助と共に大門の外に。
 ラストは『名月余情』の喜三二の序文で締める。
「我と人との譲りなく、イ(ひと)と我との隔てなく、俄の文字が調(ととの)いはべり」

 まさに人と人とが交じり合い、融合し合った時間だった。
 だから神様もやって来た。
 これが祭りなんですね。
 でも、これはほんのひと時のこと、うたかたの夢──
 夢から醒めれば、厳しい現実が戻って来る。
 ………………………………………

 またまた神回だった。
 こんなふうに祭りを描いた作品は初めて。
「我と人との譲りなく、イ(ひと)と我との隔てなく」
 この祭りを喜三二の序文で締めた所もお見事!
「俄の文字が調(ととの)いはべり」
 昔の人はこういう言葉遊びもできたんだねえ。

 平沢常富は〝朋誠堂喜三二〟だった。
 武士なのに、吉原に精通した粋な遊び人。
 戯号でバカバカしい話も書いている。
 んでもって恋川春町(岡山天音)とも友達。
 春町も武士だった。

 軽くて粋で、遊びやバカバカしいことに一生懸命になる。
 祭りも大好き。
 こういう江戸人のスタイルを学びたい。

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「こどもたち」 茨木のり子~子供から大人になるとはどういうことか?

2025年03月23日 | 
 こどもたち
              茨木のり子

 こどもたちの視るものはいつも断片
 それだけではなんの意味もなさない断片
 たとえ視られても
 おとなたちは安心している
 なにもわかりはしないさ あれだけぢゃ

 しかし
 それら一つ一つの出会いは
 すばらしく新鮮なので
 こどもたちは永く記憶にとどめている
 よろこびであったもの 驚いたもの
 神秘なもの 醜いものなどを

 青春が嵐のようにどつと襲ってくると
 こどもたちはなぎ倒されながら
 ふいにすべての記憶を紡ぎはじめる
 かれらはかれらのゴブラン織を織りはじめる

 その時に
 父や母 教師や祖国などが
 海蛇や毒草 こわれた甕(かめ) ゆがんだ顔の
 イメージで ちいさくかたどられるとしたら
 それは哀しいことではないか

 おとなたちにとって
 ゆめゆめ油断のならないのは
 なによりもまづ まわりを走るこどもたち
 今はお菓子ばかりをねらいにかかっている
 この栗鼠(りす)どもなのである

 ………………………………………………

 茨木のり子さんの詩「こどもたち」

 そう、こどもたちが見ているものって〝世界の断片〟なんですよね。
 硬かったり柔らかったり、熱かったり冷たかったり、痛かったり楽しかったり。
 それが何を意味するのか、わからない。
 同時にすべてが新鮮で驚きに満ち溢れている。

 大人になるということは、バラバラだった〝世界の断片〟が繋がっていくこと。
 思春期になり自我がうまれた時、子供たちに世界はどのように見えているのだろう?
 茨木のり子さんはこう綴る。

『その時に
 父や母 教師や祖国などが
 海蛇や毒草 こわれた甕(かめ) ゆがんだ顔の
 イメージで ちいさくかたどられるとしたら
 それは哀しいことではないか』

 本当にそうですね。
 成長した子供たちの見る世界が「歪んだ醜い世界」だったら哀しい。
 茨木のり子さんの人生で言えば「軍国主義の社会」を意味するのだろうか?

 この前のパートの言葉のチョイスが秀逸。
「どっと襲って来ると」
「なぎ倒されながら」
「ゴブラン織」
 これが詩を詠む楽しみだ。

 ラストは見事なユーモアで落とした。

『おとなたちにとって
 ゆめゆめ油断のならないのは
 なによりもまづ まわりを走るこどもたち
 今はお菓子ばかりをねらいにかかっている
 この栗鼠(りす)どもなのである』

 それまでは「認識論」や「子供論」や「社会論」を語っていたのにクスリと笑わせて終わった。

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「Dr.コトー診療所」~地道に誠実に接していれば人は心を開いてくれる。世界は調和する。

2025年03月21日 | 職業ドラマ
「Dr.コトー診療所」をイッキ見した!

「信頼」の物語である。

 志木那島にやって来た医師・五島健助(吉岡秀隆)。
 彼は島民からまったく信用されていない。
 今まで島にやって来た医師がひどすぎたから健助も同じだと思われたからだ。
 おまけに島に来る時、船酔いでゲロを吐きまくって、漁師たちからは総スカン。

 こんな後藤健助が「コトー先生」になっていく。
 その方法は医師としての地道で誠実な対応。
 これを重ねて健助は信頼を勝ち取っていく。

 第1期の後半では、コトー先生の過去があきらかになって、いったん信頼を失うのだが、
 回復していく過程がドラマになっていく。
 ………………………………………

 さて、ここで島の人々のコトー先生への信頼度を確認していこう。

・星野正一(小林薫)
 コトー先生を島に連れて来た人物だから、心から信頼してる。
 ちなみに小林薫さんと吉岡秀隆さんは「コタツのない部屋」で共演!
 悪口を言い合う大ゲンカが面白かった。

・原剛洋(富岡涼)と子供たち。
 子供たちは囚われがないからすぐに受け入れる。
 剛洋はコトー先生に憧れて医師になる決意をする。

・星野彩佳(柴咲コウ)
 診療所の看護師。
 コトー先生の誠実な医療行為を見て全幅の信頼を寄せる。
 その後、信頼が「恋愛」に変わっていくのだが、その恋の結末やいかに。

・和田一範(筧利夫)
 診療所の補助スタッフ。
 彩佳同様、コトー先生の誠実さに触れて信頼を寄せる。
 今、僕は「やまとなでしこ」を見ているのだが、
 筧利夫さんはワンポイントのギャグメーカーの役が多い。
 とはいえ時折、するどい本質的なことを言ったりする。
 和田さんの将来にも注目。
 劇場版ではあの人と結婚している!

・西山茉莉子(大塚寧々)
 お食事処まりの経営者。
 客観的に物事を見られる人なので、コトー先生の本質を見抜いて信頼を寄せる。
 ドラマではこういう第三者的な人物が必要なんですよね。
 ちなみに茉莉子の息子役は子役時代の神木隆之介さん。
 神木さんと吉岡秀隆さんが「ゴジラー1.0」で共演している!

・坂野ゆかり(桜井幸子)、山下明夫(あきおじ・今福將雄)ら治療を受けた島民たち。
 命を救ってもらったのだから信頼を寄せるのは必然。
 ちなみにゆかりの夫役は大森南朋さんがやっている。

 そして、ここからが厄介なふたり!

・原剛利(時任三郎)
 剛宝丸の漁師。
 妻が以前いた医師の不誠実な治療で命を落としたことがあり、医者をまったく信用していない。
 静かでともかく頑固。
 この剛利の心が溶けていく過程が第1シリーズの縦糸になる。

・安藤重雄(泉谷しげる)
 漁業協同組合漁労長。
 ラスボスです!
 乱暴で口が悪いが、実は人情派。お祭の時は仕切る。
 こういう人は必ず町にひとりくらいいますよね。
 そして、こういう役をやらせたら泉谷しげるさんの右に出る者はいない。
 重雄はじわじわ良さが伝わって来る人物で、第2期後半になると本当に魅力的になる。
 ……………………………………

「Dr.コトー診療所」本当に愉しませてもらいました。
 今見てもぜんぜん古さを感じない。

 ちなみに第2期では、蒼井優さんが新米看護師・仲依ミナ役で登場。
 蒼井優さん本当に可愛いな!
 そして、第2期はミナが島民たちの信頼を勝ち取っていく物語になる。

 人間、生きていると、時として「人間不信」になる。
 自分のまわりが違和感でいっぱいになる時がある。
 そんな時はコトー先生のことを思い出したい。
 地道に誠実に接していけば、人は心を開いてくれる。
 世界と調和できる。
 コトー先生は島民に信頼され、志木那島という居場所を見出した。


※関連動画
「銀の龍の背に乗って」中島みゆき(YouTube)

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ケネディ暗殺文書公開へ~CIA犯行説、マフィア犯行説、軍産複合体犯行説など、陰謀論うずまく事件に決着?

2025年03月19日 | その他
 トランプ大統領が「ケネディ暗殺に関する文書」を18日に公表すると発表した。
 この文書、当時の政府が50年後の2025年に公表すると決めていたからこれが実行されたわけだ。

 J.F.ケネディ暗殺。
 1963年11月22日 テキサス州ダラス。
 自動車でのパレード中にケネディが撃たれた。
 その1時間20分後にリー・ハーヴエイ・オズワルドが逮捕。
 24日、報道陣に紛れてジャック・ルビーがオズワルドを殺害。
 ウォレン委員会のリンドン・ジョンソンは「オズワルド単独犯行」を発表。

 速すぎるオズワルドの逮捕など、この暗殺事件には不審な点が多く、
 さまざまな犯行説が唱えられている。

 ①共産主義者犯行説~オズワルドは共産主義者だった?
 ②ベトナム犯行説 ~ベトナムのゴ・ディン・ジエム大統領暗殺への報復?
 ③保守派犯行説  ~自由主義的な政策をとるケネディへの反発?
           ケネディの石油課税政策への反発?
 ④マフィア犯行説 ~キューバのカジノ利権や組織犯罪取り締まりへの反発?
 ⑤CIA犯行説  ~アレン・ダレス長官解任への反発?
 ⑥軍産複合体犯行説~武器商人の彼らにとってベトナム戦争を終わらせようとするケネディは邪魔。

 JFKに関する映画などを見ると、
 保守派、マフィア、CIA、軍産複合体の共同犯行みたいな解釈が多い。
 ケネディは彼らの共通の敵だったので手を組んだのだ。
 東西冷戦の時期なので、共産主義者を犯人にでっちあげればいいとも考えた。

 その中心的な人物は、ジョナサン・バンキン、ジョン・ウェイレン氏に拠ると
 チャールズ・ウイロビー氏らしい。

 チャールズ・ウイロビー。
 日本でゾルゲ事件を暴き、占領統治するマッカーサの情報参謀を務め、
 米国に戻るとフロリダの極右組織のボスとなった反共主義者だ。

 さて18日に公開される文書には何が書かれているのか?
 闇に葬られた50年前の真実が暴かれる?
 ………………………………………

 それにしても50年代のレッドパージから始まるアメリカの1960年代は面白い。
・CIAのさまざまな工作
・MKウルトラ(マインドコントロール)の研究
・超能力研究
 これに加えて
・ドラッグ、ヒッピー文化
・ウッドストック
・キング牧師の公民権運動 など。

 政治まわりのことでは、CIAの暗躍など「陰謀論」まがいのことが多いが、
 さまざまな陰謀論が飛び交う2025年、JFK暗殺に関する文書が公開されるのは興味深い。
 DSの支配を唱えるトランプ氏はこの文書を公開することで、
 自らの主張の正しさを証明しようとしているのかもしれない。


※追記
 ケネディ暗殺にはこんな珍説もある。
・実は自動車に同乗していたコナリー州知事がターゲットだった説
・夫の女遊びに激怒した妻ジャクリーン・ケネディ犯行説

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「べらぼう」 第11回「富本、仁義の馬面」~馬面太夫、粋だねえ、芸人だねえ、江戸っ子だねえ

2025年03月17日 | 大河ドラマ・時代劇
 この作品、今までバラバラだった江戸の知識を結合させてくれるから有り難い。

 花魁・女郎・禿・遣り手
 絵師・彫り師・摺師
 書物問屋・地本問屋
 歌舞伎役者・浄瑠璃役者
 太夫
 検校
 戯作者
 蘭学者

 これらがすべて繋がった。
 彼らがさまざまな思いを抱えて生きていたこともわかった。

 吉原や茶屋の仕組みもわかったし、吉原、浅草の風景もビジュアルとして提供してくれた。
 これで落語とかを聴いたら、もっと深く楽しめる。
 江戸の文学はもちろん谷崎潤一郎などの文学もより深く味わえるようになった。
 僕は江戸文学をほとんど読んでいないから、読もうと思うきっかけを与えてくれた。

 この作品は江戸時代をいきいきとインプットしてくれる。
 ………………………………

 さて今回は〝馬面太夫〟こと富本豊志太夫(寛一郎)を俄(にわか)に呼ぶために口説き落とす話。
 馬面太夫は差配を間違えた結果、吉原にいい印象を持っていない。
 おまけに敵対する鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)ががっちりガードしている。
 ではどう口説くか?
 太夫を束ねる当道座を検校が仕切っていることがわかって鳥山検校(市原隼人)に頼みに行く。
 しかし検校はいい顔をしない。
 その背景にあるのは、瀬以(瀬川・小芝風花)が蔦重(横浜流星)に心を許して笑っていることへの嫉妬だろうか?
 瀬以と蔦重の間には検校の入り込めない歴史と世界がある。
 蔦重も、これ以上頼み込むと瀬以に負担をかけると考えたのか、あっさり引き上げた。
 では次に蔦重が打った手は?

 宿屋の襖を開けると、きらびやかな女郎たち。
「水も滴るいい男をもてなすのよ」
 馬面太夫が来ないのならこちらから出向いて吉原の接待をすればいい。
 もてなしが終わると、太夫に一節吟じてもらうように頼む。
 太夫は快く応じ、役者の市川門之助(濱谷ノリタカ)が舞い、大文字屋市兵衛(伊藤淳史)と
 りつ(安達祐実)が三味線を弾く。
 浄瑠璃と吉原のコラボだ。
 これに女郎たちは涙。
「こんな座興にどうして涙を流すのか」と馬面太夫が尋ねると
 蔦重は、女郎たちはまことの芝居を見たことがない、祭で女郎に太夫の声を聴かせてやりたいと
 答える。
 これを聞いた馬面太夫は即決。
「やろうじゃないか」

 馬面太夫、漢(おとこ)だねえ。
 粋だねえ。
 芸人だねえ。
 江戸っ子だねえ。
 人情ってものがわかっている。

 これに加えて、鳥山検校が働きかけてくれて馬面太夫の襲名が決定。
 蔦重は「直伝本」の出版の権利を得る。

 鳥山検校も立派だねえ、
 心が広いねえ。
 瀬以の蔦重への思いも含めて、瀬以を愛している。

 すべての登場人物がいきいきと動いて、今回もいい話でした!


※追記
 恋川春町・倉橋格(岡山天音)は鱗形屋で「金々先生」を安い金額で書いている。
 その理由は、主君が鱗形屋に迷惑をかけたから、「漢」として当然だから。
 その前に馬面太夫も「漢」という言葉を使っていたが、今後のキイワードになるのかもしれない。

※追記
 次郎兵衛(仲村蒼)さん、今回は遊び人の本領発揮。
 蔦重に浄瑠璃と馬面太夫について講釈をたれた。
 交渉にはまったく役に立たなかったけれど。笑

 平沢常富(尾美としのり)はついに台詞をしゃべった。笑
 予告に拠ると、次回ついに作家デビューか?

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「御上先生」~人間は最強で最弱の生き物なんです。今の生徒たちは最強です

2025年03月16日 | 学園・青春ドラマ
 日曜劇場「御上先生」
 作品のレビューは最終話まで見終わった後に書きたいと思うが、第8話でこんな言葉があった。

「42.195キロを走れるのは人間だけなんです。だから人間は地上最強の生き物なんです」

 これはどういう意味だろう?
・意思の力
・考える力
・目標をもって行動する力
 42.195キロを走るには、これらの力が必要だ。
 これらの力が人を最強の生き物にしている。

「人間は最強で最弱の生き物なんです。今の彼らは最強です」

 御上先生(松坂桃李)が「今の彼らは最強です」と語った時、
 彼ら(生徒たち)は個々の勉強法をシェアし話し合って、自分たちの勉強法を作ろうとしていた。
・力を合わせること
・ノウハウをシェアし合って、ノウハウをヴァージョンアップしていくこと
・集団の力
 これが〝最強の人間〟の姿なのだろう。
 逆にひとりで孤立している人間は生物として弱い。

「高三は生命力が強くて、それでいて繊細です。細胞は日々増殖して成長しています」

 これが若さなんですね。
 おっさんになると、このみなぎる生命力がうらやましい。
 逆におっさんになると、すれっからしになって大抵のことに傷ついたり驚かなくなっている。
 果たしてこれは良いことなのか?
 ……………………………………

 この作品のモチーフのひとつである真山弓弦(堀田真由)の心の中が次第に明らかになって来た。
 弓弦はチェ・ゲバラの「世界があなたを変えれば、あなたは世界を変えられる」という言葉を
 自分なりに「世界を変えることで自分も変えられる」と解釈して犯行に及んだ。

 確かに世界は醜く愚かで「ああしろ」「これはダメ」「言うことをきけ」「順応しろ」「服従しろ」と個人を抑圧してくる。
 真山弓弦、そして御上の兄・宏太(新原泰佑)は世界に反抗して戦ったわけだが、
 弓弦は殺人犯となり、宏太は自ら命を断った。

 そんな弓弦たちとは対照的なのが御上先生の3年2組の生徒たちだ。
 彼らも世界に疑問を持ち、変えようとするが、弓弦の戦い方とは違う戦い方をする。
 彼らは話し合い、問題解決のために、世界を変えるためにどうすればいいかを考え、行動する。
 つまり前述の〝集団の力〟だ。

 醜い世界を変えるにはどうしたらいいか?
「御上先生」のテーマが明らかになって来た。

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