平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第43回「忠と孝のはざまで」~忠ならんと欲すれば孝ならず。進退これ極まれり

2012年11月05日 | 大河ドラマ・時代劇
 「うずき始めておる。うつつに生けるもののけの血が」
 清盛(松山ケンイチ)も老いた。
 中宮・徳子に子が授かったと聞くと、声をあげて涙を流す。
 自制が利かなくなったのだろう。
 自制が利かなくなったは涙ばかりではない、もののけの血も。
 今まで抑えられていたものが少しずつ現れ、狂気に走る。

 この正常と狂気が入れ替わり現れる松山ケンイチさんの演技は見事。

 清盛はおそらく国作りの目的を達成してしまったんでしょうね。
 厳島神社や福原の大規模な土木工事、日宋貿易、宋銭を全国に流通させる貨幣経済。
 だから重盛(窪田正孝)の問いに答えられなかった。
 そして、目的を失った者がたどり着くのは地位を盤石にすること。
 そのために手段を選ばず、敵対する者を粛正していく。
 ソ連のスターリンなど、権力者が常にたどる道だ。
 他人の意見を聞けなくなるのも権力者の常。
 「黙って、わしを支えよ」と聞く耳をもたない。
 今回ラストの重盛くらいに全身全霊で叫ばなければ、届かない。

 目的達成のために行ってきたさまざまな謀略、粛正、殺戮。
 これらは<修羅の道>というきれいな言葉で括られてしまったけど、どうなんだろう?
 そして、積み重ねてきた悪事は必ず心をむしばむ。

 重盛役の窪田正孝さんの演技は見事だった。
 「忠ならんと欲すれば孝ならず。孝ならんと欲すれば忠ならず。進退これ極まれり」
 <忠>と<孝>という現代っ子には馴染みのない価値観。
 このふたつの葛藤を激しく見事に表現した。
 鼻水とよだれと涙……、よほど気持ちを作っていなければ、これほどの演技は出来ない。
 せりふがここだけ文語調というのも巧み。
 おそらく作家さんは、ここで重盛の気持ちを表現するには<文語調>しかないと考えたのだろう。
 次回の窪田さんの演技も楽しみだ。


コメント (11)
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