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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「おつかれさま」~韓国・百想芸術大賞で四冠! 人生をふりかえり噛みしめたい時に見たい作品

2025年05月07日 | テレビドラマ(海外)
 韓国ドラマ「おつかれさま」が百想芸術大賞で4冠!
・作品賞
・脚本賞~イム・サンチュンさん
・最優秀助演賞(女優)~ヨム・ヘランさん
・最優秀助演賞(男優)~チェ・デフンさん

 最優秀演技賞(女優)ではIUさん、獲れなかったか……。
 演出賞でもキム・ウォンソク監督が逃した。

 この作品を観るきっかけとなったのが、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」と「ミセン」。
 韓国ドラマ好きの友人から「ぜひ観ろ」と薦められて観たのが、このふたつの作品。
 いずれもキム・ウォンソク監督作品。
「マイ・ディア・ミスター」にはIUさんも出ていた。
 最初はとっつきにくいんだけど、じわじわ来るのがキム・ウォンソク監督作品の魅力なんだよなぁ。

「おつかれさま」はともかく脚本が上手い!
 過去と現在が交錯して、ひとりの女性がたくましく生きていく人生を描いていく。
 貧乏で苦労やつらいことばかりだったが主人公エスンは人生を肯定する。

 たとえば──
「初めて経験することばかりで戸惑ったり苦労したりしたけど、すべてが新鮮でとても愛おしい思い出だわ。初恋とか初めての夜とか、初めての家、初めての船、初めての大漁、初めて子!
 初めての子は言葉にならない!」

 絶望の縁に立たされた時には──
「体がへばると心もへばる。人生を投げ出したい時も来るだろう。
 その時はじっとしていないで必死に足掻くんだ。
 毛布を引っ張り出して踏みつけろ! 畑を耕せ! 働きに出ろ!
 死ぬもんか! 何が何でも生きてやる! そう念じて這い上がれ!
 暗い海を抜けたその先にやがて空が見えて来る。また息が吸える」

 そして──
「幸せ! 言葉が出ないほど幸せ!」

 ここで涙腺の緩くなったおっさんは号泣してしまうのである。
 その他、この作品では人生の名言がいっぱい。
 自分の人生を振り返り、噛みしめたい時に観たい作品だ。

「おつかれさま」はネットフリックスで絶賛配信中。
 ………………………………………………………………

 その他、僕が見た作品の受賞作品は、
「オク氏夫人伝」~新人賞(男優)チュ・ヨンウさん。
「ソンジェ背負って走れ」~人気賞キム・ヘユンさん、ピョン・ウドクさん。
「トラウマコード」~最優秀演技賞チュ・ジフンさん

 ネトフリとU-NEXTに加入しているので、これらの作品は観られるのだ。
 一方、ディズニー・プラスの受賞作品は観られない。加入すべきか?

 作品では「オク氏夫人伝」がよかったなぁ。
 法律で不正と戦う主人公。
 波瀾万丈、山あり谷あり、時々笑いあり。そしてスッキリ!
 それでいて主人公たちがしっかり地に足をつけている。

 2025年、韓国ドラマは次にどんな面白い作品を見せてくれるのか?


※関連動画
 百想芸術大賞2025受賞発表(YouTube)

※追記
「おつかれさま」で助演演技賞を獲得したヨム・ヘランさん。
 ヘランさんは「ザ・グローリー~華麗なる復讐」にも出ていましたよね。
 最近、韓国の俳優さんの顔と名前が一致して来ました!

※追記
「おつかれさま」の脚本が素晴しかったので、同じイム・サンチュンさん脚本の「椿の花咲く頃」も観てみようと思います。

コメント (2)
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「イカゲーム2」~資本主義と民主主義の暗喩。だから面白い!

2025年02月07日 | テレビドラマ(海外)
『イカゲーム2』を観た。
 今回、主人公のソン・ギフン (イ・ジョンジェ)は戦うカッコイイおっさんに。
 シーズン1ではダメ男だったのに、
 シーズン2ではイカゲームとこれを運営する組織を潰すために戦う男になった。

 とはいえ、なかなか上手くいかないのが現実。
「こんなゲームをやめて、家に帰りましょう」と言っても、
 莫大な借金を抱えた参加者たちは、
「あともう一勝負!」
「自分だけは負けない!」
「自分だけは大丈夫!」
「こんなはしたガネで帰るわけにはいかない」
 とゲームを続け、泥沼にはまっていく。

 結果、ギフンは志を同じくする仲間と共に銃を持って戦い始めるのだが……。
 …………………………………………………………

『イカゲーム』が面白いのは、これが現代社会の縮図・暗喩になっていることだ。

 まずは資本主義。
 賞金を奪い合うために参加者は争う。
 参加者が死んで脱落すれば、その分、賞金の配分が多くなる。
 他人を蹴落とせば、その分、多くのお金をもらえる。
 同じパイの奪い合い。
 これでは足りない。もっと欲しい、という欲望の増幅。
 まさに資本主義だ。

 ゲームには個人戦があり、団体戦がある。
 個人戦では個人の能力が試される。
 他者と協力し合う団体戦は、会社組織か?

 負ければ命を奪われるゲームをしているのに参加者はゲームを続けたがる。
 なぜ続けるかと言えば、現実社会に戻れば地獄のような現実が待っているからだ。
 地獄に戻るくらいなら、ゲーム会場で一攫千金の夢を見た方が楽しい。
 現実社会は地獄のように過酷。
 競争があり格差がある。
 負け組になると悲惨。
 資本主義を剥き出しにすると、このような現実が見えて来る。
 
 ふたつめは民主主義。
 ひとつのゲームが終わると、参加者は「ゲームを続けるか」「否か」の投票をすることができる。
 結果は多数決で決められる。
 イカゲーム主催者は「このゲームは民主的なゲームだ」としばしば語るが、まさにそのとおり。
 投票と多数決ですべてが決まるイカゲームは民主主義社会の象徴なのだ。

 同時にイカゲームは民主主義の弱点を見せつける。
 多数決で負けた者は勝った者の意思決定に従わなくてはならない。
 自分はゲームを続けたくないのに、多数決で決まれば続けなければならない。
 まあ、本来の民主主義は多数決は絶対ではなく、
「少数者の意見も尊重する」という概念があるんですけどね。
 ただ多数決で大きな流れが決定するというのは確か。

 以上、述べたように、
『イカゲーム』の面白さは「資本主義」と「民主主義」を体現していることにある。
 さて、ギフンたちは銃を取って体制を打倒する「革命行動」をおこなったわけだが、
 その後の展開はパート3の最終章へ。
 今夏に公開されるパート3が楽しみだ。


※関連動画
「イカゲーム」シーズン2予告編(YouTube)

※追記
 参加番号222 キム・ジュニ役のチョ・ユリさんがかわいい!
 調べると、元IZ*ONEのメンバーだった!

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「涙の女王」~恋愛・セレブ・財閥・復讐・陰謀・難病・記憶喪失・親子愛、韓国ドラマのすべてがてんこ盛り!

2025年02月05日 | テレビドラマ(海外)
 昨年(2024年)、最大の話題となった韓国ドラマ『涙の女王』

 脚本はパク・ジウンさん。
『愛の不時着』を書いた脚本家さんだけあって物語の構造が似ている。
・自己中でセレブなヒロインが絶対的なイケメンに出会う。
・イケメンは庶民的でお金持ちではないが、頭脳明晰で身体能力も優れている。
・ヒロインとイケメンは生まれ育った価値観の違いで、しばしば対立する。
 つまりすれ違い。
・しかしヒロインの危機の時には必ず現れて、ヒロインを助けてくれる。
 つまり王子さま。
・ヒロインは反発しながらも次第に惹かれていく。

『涙の女王』の場合は、ヒロインとイケメンはすでに結婚しているが、
 第1話の段階で不仲で、男は離婚を考えている。
 そこからの愛の再生が描かれる。
 そこから始まる物語の構造は『愛の不時着』と同じだ。
 …………………………………………………

『涙の女王』は今までの韓国ドラマの要素を「これでもか」というくらいに詰め込んでいる。
・恋愛
・セレブ
・財閥
・会社買収
・陰謀
・復讐
・難病
・記憶喪失
・子供の頃の記憶
・田舎の素朴な人々
・親子愛
・家族愛
 これらがてんこ盛りで、密接に絡み合っているから面白い。
 ……………………………………………………

 そして登場人物。
 すべての登場人物に設定があり、ドラマがあり、魅力的だ。

 個人的には、ヒロインの横暴を的確に処理するナ秘書(ユン・ボミ)が好き♪
 ナ秘書は事態を一番客観的に見ていてヒロインに的確なアドバイスをしている。
 出番は少ないが、なかなかの存在感がある。

 ホン・スチョル(クァク・ドンヨン)の妻チョン・ダヘ(イ・ジュビン)もいいな♪
 結構なワルなんだけど、少しずつ「人生で大切なもの」に気づいていく。
 ダメ男スチョルの良さを理解しているのもいい。

 主人公側と悪の側をコウモリのように行き来するグレイス・コ(キム・ジュリョン)もいい♪
 敵になったり味方になったり、ともかくこの人のたくましさは見習いたい。
 実は裏で物語をまわしている存在でもあり、彼女が動くと何かが起きる。

 最後にヒロインのホン・ヘインを演じたキム・ジウォンさん。
 すっかりファンになりました♪
 今度、新大久保に生写真を買いにいこう!
 ホン・ヘインは最初は本当に嫌なやつなんですよね。
 でも物語が進むにつれ、彼女の意思の強さや崇高なプライドやツンデレが魅力になる。
 マイナスから始まったヒロインがプラスに転じた時に生まれる魅力の爆発力!

 ヘインに限らず、この作品、すべての登場人物が魅力的になっていくんですよね。


※関連動画
「涙の女王」オフィシャル予告編(YouTube)

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「京城クリーチャー」~日本軍が悪役のドラマ。これを受け入れられる大人になろう

2024年11月06日 | テレビドラマ(海外)
 韓国ドラマ「京城クリーチャー」を見た。

 舞台は太平洋戦争末期、日本が支配統治する朝鮮・京城(現・ソウル)。
 日本軍が人体実験をおこない、生物兵器のモンスターをつくるという物語だ。

 主人公のチャン・テサン(パク・ソジュン)の人物造形が面白い。
 チャン・テサンは京城で質屋を営み、莫大な富をもっている。
 日本の有力者とも人脈があり身分を保障されている。
 当然、朝鮮独立のために戦っている周囲からは評判がよくない。
 彼がこんな生き方をしているのには理由がある。
 母親から「生きろ」「どんなことをしても生き残れ」と教えられていたからだ。
 だからテサンは生き残るためにクールで合理的だ。
 しかし──
「俺はどうしてこんなことをしているんだ?」
 京城の病院で人体実験がおこなわれ、同胞を苦しんでいるのを知って
 彼は身を捨てて日本軍と戦うという「非合理」なことを始める。
 足手まといになる子供を助けることは非合理なのだが、それをやってしまう。

 人体実験で生み出されたクリーチャー(怪物)の造形も面白い。
 クリーチャーは、チェ・ソンシム(カン・マルグム)という朝鮮の女性なのだが、
 決して飼い慣らされない。
 母親の気持ちを忘れずに持っていて娘を助けようとする。

 京城の街の人々も飼い慣らされていない。
 テサンたちがおこなう救出作戦に街をあげて協力する。
 虐げられているが、反抗の気持ちは心の奥底に持っている。

 人体実験がおこなわれている病院にも「独立軍」の潜伏者がいてテサンたちを助けたりする。
「東京が空襲を受けて日本はまもなく開けるだろう」という地下新聞も配られている。
 
 つまり、この作品、朝鮮の人々の反抗の物語なのだ。
 日本軍が悪く描かれているのでネトウヨさん流に言えば「反日」ドラマ。
 だからわれわれ日本人としては見ていて居心地悪い。
 韓流ドラマ好きの知り合いに「京城クリーチャー見た?」と聞いたら、
「1話しか見ていない。日本が悪く描かれているから」と言われた。

 でも、僕たちはこれを乗り越えていかなくてはならないと思うんだよなぁ。
 これまでの映画の悪役の定番と言えば「ナチス」。
「インディー・ジョーンズ」シリーズなどでもそうだった。
 でもドイツの人は「悪役・ナチス」を受け入れている。
 一部不快に思っているドイツ人はいるかもしれないけれど。

「インディー・ジョーンズ」を楽しむドイツ人のように、
 僕たちもエンタメはエンタメとして割り切れる成熟した大人になりましょう。

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おっさん、パク・ソジュンさんのドラマをいっぱい見ていたことに気づく!

2024年10月31日 | テレビドラマ(海外)
 僕は基本、男の俳優さんには興味がなくて、まして韓国ドラマの男優さんになると
 ヨン様とかイ・ビョンホンさんくらいしか認知していなかった。←おいおい!

 で、『京城クリーチャー』を観ていてふと気がついた。
 あれ? チャン・テサン社長の俳優さんってどこかで見たことがあるなぁ。
 なんと、『キム秘書はいったい、なぜ?』のイ・ヨンジュン副会長ではないかーーーっ!

 
 ※パク・ミニョンさん、お美しい!←そっちかよ!

 で、チャン・テサン社長とイ・ヨンジュン副会長を演じているのは、パク・ソジュンさん。
 で、パク・ソジュンさんを検索してみると──
 な、なんと!
『梨泰院クラス』の主人公パク・セロイ
『花郎』のムミョン
 も演じているではないかーーーっ!

 どうして今まで気づかなかったのか!?
 おっさん化の度が過ぎる!
 いや、アイドルと女優さんならいくらでもわかるのだが。

 というわけで、パク・ソジュンさんの作品をいろいろ見ていたことに気づきました。
『花郎』の時はまだ荒削りな印象。
『梨泰院クラス』では、復讐に燃える青年とやさしい青年を二面性が見事だった。
『キム秘書』では完璧な自己愛ぶり。笑わせてもらいました。
『京城クリーチャー』では見事なアクション俳優。
 ハン・ソヒさん、実に凜々しくて美しい!←やっぱりそこかよ!

 これからは心を入れ替えて韓国の男優さんにも注目していこう。


※追記
『無人島のディーバ』のチェ・ジョンヒョプさん。
 二階堂ふみさんの日本のドラマ『Eye Love You』に出ていたよね。←これは気がついた。
 ただ『ストーブリーグ』の若手投手役には気づかなかった。
 あの若手投手が『無人島のディーバ』でパク・ウンビンさんの恋人役をやっている!

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イカゲーム~だるまさんが転んだ、ビー玉、綱引き……認知症のおじいさんが大活躍するデスゲーム!

2021年10月21日 | テレビドラマ(海外)
 netflixの「イカゲーム」を見た!

 

 この画像を見ただけで、いかに『頭のおかしいドラマ』かがわかる。
 世界中で大ヒットしたかがわかる。

 内容は巷で言われているように韓国版「カイジ」。
 いわゆるお金と生命を賭けたデスゲームものだ。
「カイジ」を分析しまくってヴァージョンアップした感じ。

 どのようにヴァージョンアップしたかと言うと──

①ゲームが子供の遊び
 だるまさんがころんだ、ビー玉、綱引きなど。
 これらのゲームで負けたら死んでしまう。
 これらで、なぜ死んでしまうかは実際に見て確かめて下さい。

②刑事が潜入する
 今までこうしたデスゲームものでは警察は不介入だったが、
「イカゲーム」では刑事が潜入して、真相に迫り、告発しようとする。
 ゲームを取り仕切る敵のボス(通称フロントマン)との駆け引きが面白い。
 その他、このデスゲームを利用して裏で別の犯罪をおこなっている連中もいる。

③ゲーム参加者が多彩
 通常、こうしたゲームに参加するのは借金を抱えた人や悪党などがほとんどだが、
「イカゲーム」では、脱北者(←韓流ドラマらしい)や認知症の老人などが登場する。
 認知症の老人などはすぐに負けて死んでしまいそうだが、意外と活躍する!

④結構、民主的
 参加者の過半数が「ゲームをやめたい」と言えばゲームは中止になる。
 男女、老人・若者などの差別がなく、ルールの下で平等。
 仲間からはぐれた者には救済措置がある。

 僕たちのいる一般の現実社会はこうしたことすらない弱肉強食の世界。
 だから、ゲーム参加者の中には現実社会よりゲームの世界の方がマシだと考える人もいる。
 このひねり方が面白い。

⑤頭をつかわなくても勝てる
 デスゲームものでは、数学の確率などを駆使した頭脳戦が展開されるが、今作ではあまり必要がない。
 結構、力業(ちからわざ)で勝てたりする。
 もちろんズルいやつは相手をダマして勝ち残ったりするが。

 ラストの真相は、僕はドラマオタクなので、第3話くらいでわかりました。
「イカゲーム」の黒幕は誰か?
 黒幕の動機は何か?
 なぜ「子供の遊び」なのか?

 それにしても、netflixなどのサブスクは面白いコンテンツばかり。
 世界で配信されるから、世界的な大ヒットに繋がるかもしれない。
 世界的な大ヒットを見込めるから予算もかけられる。
 表現規制もゆるい。
 こうなると民放地上波の視聴者離れはどんどん加速していくだろう。
 テレビをつければ、芸能人が飯を食べてる番組ばかりですから。

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ソウル1945~境遇の逆転を描いた壮大なドラマ!

2012年03月15日 | テレビドラマ(海外)
 韓流ドラマ『ソウル1945』は、日本の敗戦・朝鮮半島の独立・朝鮮戦争・南北分離までを描いたドラマである。
 この作品を見ると、戦中・戦後の朝鮮半島の歴史がよくわかる。
 名もなき民衆の息づかいや歴史に翻弄させる姿も。

 メインの登場人物は4人。
 侍女で後に半島ホテルのマネージャーになるヘギョン。
 故郷・咸興の秀才で、社会主義運動を行っていくウニョク。
 天才ピアニストでお嬢様のソッキョン。(ヘギョンは彼女の侍女だった)
 そして名門家一家の御曹司で、心優しいドンウ。

 面白いのは彼ら4人の境遇が、歴史の変転によって、どんどん変わっていくことだ。
 日本が朝鮮半島を統治していた時は、日本の軍閥・政治家に寄り添っていたソッキョンやドンウの一家は隆盛を誇っている。
 ソッキョンは「お嬢様」と、ドンウは「お坊ちゃん」と呼ばれ、苦労知らず。
 ところが日本が負けて、朝鮮が解放されると、日本と歩みを共にすることで利益を得ていたソッキョンたちの家族は糾弾される。
 実際、ソッキョンの父親は、<売国奴>とののしられ、誇りを踏みにじられることを潔しとせず、切腹する。
 隆盛を誇っていた者が衰えて滅びるのは、歴史の必然だが、まさにそれがソッキョンたちの上にも襲いかかる。

 ところが今度は南北対立が起きる。
 すると南朝鮮では、保守派が台頭し、今まで忍従を強いられていたソッキョンやドンウの父親が再び勢いを取り戻していく。
 逆に解放された朝鮮の国家像を<社会主義国家>に置いて活動していたウニョクは<アカ>として逮捕・糾弾され、ウニョクと婚約していたヘギョンも巻き込まれ、死刑で銃殺されそうになる。

 ところがここで三たび境遇の逆転が起きる。
 朝鮮戦争が起こり、ソウルが北朝鮮によって占領されると、今度は<人民の敵>としてソッキョンやドンウの父親が逮捕・糾弾される。
 逆に社会主義運動を行っていたウニョクは政府の要職に抜擢され、ヘギョンは<人民の英雄>として賞賛される。

 すごいですね、この変転。
 激動の歴史に生きた人々ならではのドラマ。
 主人公のヘギョンなどは、別に<社会主義>や<共産主義>を思想として持っていたわけではない。
 ただの普通の庶民で、家族を大事にし、恋人ウニョクと幸せになりたいと願って生きてきただけ。
 なのに、ウニョクを守ったその行動から<人民の英雄>に祭り上げられてしまう。
 逆にソッキョンは<人民の敵>として糾弾され、<自我批判>を強いられる。
 「わたしは間違っていました。わたしは多くの人民を搾取して、苦しめてきました。わたしは思想を改めます」と<自我批判>するソッキョン。
 今までの豪華な服はブルジョワの服であるため、人民服も着る。
 彼女は別に思想を改めたわけではないが、死刑にならないためには表面上はそうするしかないのだ。

 しかし、ここで四たび境遇の変転が起きる。
 アメリカを中心とする国連軍が盛り返し、南朝鮮がソウルを奪回するのだ。
 するとウニョクは逆に追われる身になり、<人民の英雄>ヘギョンは逮捕される。

 このように『ソウル1945』は、歴史の流れの中で翻弄されながらも必死に生きる人々の姿を描いた秀作である。
 先程述べたように、主人公のヘギョンたちの行動は、ウニョクを除いて、<社会主義・共産主義の思想>から出たものではない。
 ただ、家族と愛する人と幸せに暮らしたかっただけ。
 なのにそれを許さない歴史という怪物。
 この作品を見ると、思想やイデオロギーとは何なのかと考えさせられますね。
 思想やイデオロギーがあるから争いが起きる。
 同じ朝鮮民族なのに、どうして北と南で憎み合い、殺し合わなくてはならないのか?
 これは現在の紛争やテロも同じで、過激な宗教思想が(宗教自体は人々に心の拠り所と安らぎを与えるもので悪くないのだが)争いの原因になっている。

 さてラスト。
 ネタバレになるので、これからご覧になる方はパスしてほしいのですが、五たび境遇の逆転が起きる。
 それは……





 死刑になりそうになるヘギョンを、ソッキョンが逃がすのだ。
 その時に彼女らはこんなことをする。
 ヘギョンが<雨月夕景>というお嬢様になり、ソッキョンが侍女になる。
 これは、ヘギョンを日本に逃がすための偽装なのだが、ここで<境遇の逆転>が起きている。
 ただし、これは歴史の流れの中で強制されたものでなく、彼女たち自らの意思で行った<境遇の逆転>。
 この違いは大きい。
 何しろ彼女たちは自らの意思で<境遇の逆転>をすることで、歴史の流れに抵抗したのだ。友を守ったのだ。

 『ソウル1945』は<境遇の逆転>のドラマである。
 その<境遇の逆転>というモチーフを、ラストで<ヘギョン救出>というドラマに結びつけた所が実にあざやか。


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ソウル1945~愛と血を吐くような魂の叫び。

2011年11月09日 | テレビドラマ(海外)
 韓流ドラマ「SEUOL(ソウル)1945」を見ている。
 舞台は、太平洋戦争前の日本統治下の朝鮮から1945年の終戦、1950年の朝鮮戦争まで。
 壮大なドラマ。群像劇。

 この作品を見ると、日本統治下の朝鮮がどの様な状態だったかがわかる。
 統治者である日本に取り入り、日本化して、出世するムン・ジョングァン(キム・ヨンチョル)。
 彼は鉱山を経営する資本家でもあり、労働者を酷使する。
 その労働者を酷使する兄に反対し、日本からの祖国独立を目指す弟のムン・ドンギ(ホン・ヨソブ)。
 彼は共産主義革命にその活路を求める。
 また、過酷な労働に拠って愛する姉を失ったチェ・ウニョク(リュ・スヨン)。
 姉を殺された恨みから資本家を憎むウニョクはドンギの共産主義思想に共鳴し、共に活動する。
 一時、裁判官の試験に受かり、父や母、妹たちのために立身出世の道を選ぶが、運命は彼にそれを許さず、革命のための厳しい道を歩ませる。
 そして、ジョングァンの娘で、著名なピアニストのムン・ソッキョン(ソ・ユジン)。
 彼女は恵まれたお嬢様だが、自立心が強く、ウニョクのことが好きになり、シベリアを越えて、ソ連のレニングラードまで彼を追いかけていく。
 「私は芸術と愛の神に愛されたの。私は愛を選ぶ」と語るソッキョンは激しい情熱家だ。
 また、そのソッキョンの侍女で、聡明なキム・ゲヒ(ハン・ウンジョン)。
 彼女は自分が使えるソッキョンのことだけを思い、自分の置かれている境遇に何の疑いもなく生きてきたが、妹たちと父親を殺されて、世の中の矛盾に気づいていく。
 そして、最後には名前をキム・ヘギョンと変え、自分たちを苦しめたジョングァンの一族を没落させる決意をする。

 この作品を見ると、なぜ当時の人々が共産主義に共鳴し、行動していったかがわかる。
 貧しい生活、理不尽な扱い、受け入れてもらえない人として当然の主張や要求、不当逮捕、拷問……、すべての矛盾は資本家、資本主義という体制にあることを人々は理解するのだ。
 現在の立場で、つまり現在の北朝鮮の状態やソ連の崩壊を見てみると、共産主義とは何だったのだろう?と思ってしまうが、当時の人々にとっては矛盾を一気に解決する思想、社会体制だったのだろう。

 この様に、「ソウル1945」は激動の歴史物として抜群に面白いものだが、何よりもその登場人物たちが魅力的だ。
 前述した人物たち以外の人々も、それぞれ自分の人生を背負い、血を吐くような言葉を叫んで生きていく。
 皆、自分の信念や愛する者のために、必死に闘っている。
 それらの言葉は、資本家、労働者という枠を越えて、どれも胸を打つ。

 以下は、現在見ている14話~17話にあった登場人物達の叫び。

 「私はあなたへの愛にすべてを賭けたの! すべてを捨ててきたの! 私を受け入れて!」
 「貧困や貴賤のない世界を作りたい。そのために先生や多くの人は命を賭けている」
 「君の痛みは君の芸術に深みを与える」
 「人の恨みをかう者はいつか報いを受けるのさ。栄華は永くは続かない」
 「私は恩も恨みも必ず返してきた男だ。この恩は必ず返す」
 「私は築いてきたものを壊したくない。娘の破滅を見たくない」
 「私は君を恨んでいない。幼なじみが名士になって誇りに思っていた。君のために死んだ娘たちのことも運命だと思って諦めていた。だが、ゲヒだけは助けてくれ! 子供の頃からの友達じゃないか!」
 「お父様は結局、自分の人生を守りたいだけなのよ」
 「今度会ったら絶対にパク・チャンジュを殺してやる!」
 「心で血を流しながら耐えてきました。この人(夫)の看病があるから死ねなかった。この人がいたから生きてこれた。でも、死んでしまったので、もはや生きる未練はありません」

 どれもが激しい魂の叫びだ。
 この作品を見ていると、日本の薄味大河ドラマが物足りなくなる。時には薄味もいいが、やはりフルコースの肉料理を食べたい。
 作品は全71話という長さ。
 71話を通して、面白く見せる構成力(まだ僕は途中ですが)も見事!
 現在、韓国と北朝鮮は敵対して、休戦状態ですが、この作品を見ると、相互理解に繋がるかもしれない。
 両者は、同じように苦しみ、必死に生きてきた同胞なのだときっと理解するはず。


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刑事コロンボ~その見事な人物造形

2011年09月28日 | テレビドラマ(海外)
 AXNミステリーで放映されている「刑事コロンボ」。
 シリーズで全69話あるそうだが、月曜日の夜は毎週これを見ている。

 さてコロンボ。
 その人物造形は実に見事である。
 まず、コロンボというだけで、<レインコートに葉巻、もじゃもじゃ頭のさえないイタリア系の小男>という姿が浮かぶ。
 次に「うちのかみさん」という世間話から入る聞き込み手法。
 これに関しては「うちのかみさん」だけでなく、「かみさんの親戚」「うるさい上司」といった人物も話題にしている。
 そして、ポンコツ寸前の車(←実はフランスの車でアメリカに3台しかない貴重なものらしい)に、怠け者の犬(←最後まで名前がつけられることはなかったらしい)。

 行動のディティルも、しっかり<コロンボ>している。
・聞き込みの際に筆記用具を持っていなくて、他人から借りるが、必ず返すのを忘れて「返して下さい」と言われる。
・パーティで美味しそうなパンがあると、コートのポケットに入れて持ち帰る。
・貧しい人の救護院に聞き込みにいった時は、施しを受けに来た人とシスターに間違われる。
・高い所が苦手、運動が苦手、船が苦手(←必ず船酔いする)
・射撃が苦手。警察官が受けなければならない射撃テストを10年間受けていなかったらしい。

 こんなディティルもある。
・かつては朝鮮戦争に従軍していた。
・ギャング映画が大好きだった。

 このようにコロンボは実に見事に作り込まれている。
 これは日本の刑事ドラマにも影響を与えていて、「古畑任三郎」は「コロンボ」のオマージュであろうし、「踊る大捜査線」の青島のコートはコロンボのそれを思わせる。
 「相棒」の右京さんは、コロンボと正反対の人物像を狙ったのではないか。

 そしてコロンボの捜査手法。
 コロンボは「細かいつじつまの合わないことを突き詰めていくと、大きな真実にぶつかる」と語っているが、これがコロンボ捜査の基本。
 たとえば、<自殺した人間がなぜ大爆笑する楽しい本を読んでいたのか?><非力な男がなぜ240ポンドのバーベルを持ち上げようとしたのか?><コンタクトレンズをはめていたのになぜ眼鏡をかけていたのか?>など。
 そして犯人だと思った人間に徹底的につきまとい、イライラさせてボロを出させる。

 ただし、このコロンボの捜査手法、現在から見ると、犯人を特定する詰めの部分では甘い所がある。
 多くの場合、コロンボは犯人を特定するために<罠>を仕掛ける。
 たとえば、<待ち構えていて、犯人が証拠の品を隠しにきた所を捕まえる>とか<協力者にウソの芝居をさせて犯人に真実を語らせる>とか。
 この罠に犯人が乗らなかった場合、犯罪の立証は難しくなるのだが、コロンボは敢えてそんな詰めを行う。
 名探偵ポワロなどのような論理的鮮やかさはあまりない。

 だが、いずれにしても「刑事コロンボ」は、人物造形や後の刑事ドラマに与えた影響など、偉大な作品であることは間違いない。


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アイリス~銃を持てば格好よく、恋愛には初心なソンファ様!

2011年09月21日 | テレビドラマ(海外)
 「アイリス」のヒロインと言えば、スンヒ(キム・テヒ)だが、僕はキム・ソンファ(キム・ソヨン)を推す。

 ソンファは北朝鮮の工作員。
 黒ずくめの衣装で、クールなデキる女性。
 頭も切れるし、銃の腕も正確。
 言葉は少なく表情を変えない。

 そんなソンファが、ヒョンジュン(イ・ビョンホン)に助けられたことから行動を共にする。
 北朝鮮の工作員でありながら、ヒョンジュンのことが好きになってしまったのだ。
 ヒョンジュンと共にソウルでの核爆弾によるテロを阻止するために戦うソンファ。
 彼女は優秀な工作員であるため、ヒョンジュンの片腕として見事な働きをする。
 その身のこなし、表情、すべてがカッコイイ。
 銃を持たせてサマになる女性はあまりいないが、ソンファの場合は見事に決まる。
 日本で言えば、「ブラッディ・マンデー」の吉瀬美智子さん、「SP」の真木よう子さん、「ジウ」の黒木メイサさんのイメージだが、僕はキム・ソヨンさんが演じるソンファを一番に推す。

 さて、このソンファに僕が惹かれるのは、恋心を内に秘めた女性だからだ。
 先にも書いたように彼女はヒョンジュンのことが好きで、行動を共にするのだが、自分の気持ちを語ることをしない。
 あくまでヒョンジュンの相棒として振る舞う。
 だが、そんな彼女の中では、恋心が激しく渦巻いている。
 ヒョンジュンが恋人スンヒのことを思い出している時は、寂しそうな顔で静かに見守る。
 スンヒが生きていることをヒョンジュンが知れば、彼の気持ちがスンヒの方に行ってしまうのがわかっているので、黙っている。
 ヒョンジュンとスンヒが出会いそうになると、それを回避するために行動する。
 見ている方は、ヒョンジュンとスンヒが再び結ばれることを求めながらも、ソンファの気持ちもわかるので、許してしまう。

 そんな彼女が自分の気持ちをあらわにするシーンがふたつある。

 ひとつは、スンヒが生きていることを黙っていたことを告白するシーンだ。
 「なぜ黙っていたんだ?」とヒョンジュンに尋ねられて、ソンファはただうつむいて黙っている。
 「あなたのことが好きだから」と言ってしまえばいいのだが、ソンファは言えない。
 何という健気な女性だろう!
 任務や戦闘に関してはクールなプロフェッショナルなのに、恋愛に関してはまったく初心だ。

 こんなシーンもある。
 ソウルでの核爆弾テロを阻止して北朝鮮に帰ることになるソンファ。
 ヒョンジュンに別れを告げる時に彼女は、最後の最後にやっとこう言う。
 「私を名前で呼んで」
 これまでヒョンジュンはソンファのことを名字で呼び、名前で呼ぶことがなかった。だからこう言って頼んだのだ。
 何という恋する女心!

 そして、われわれ男性は、クールな女性が見せる純情に<ギャップ萌え>するのである!

 本当に映画やドラマの世界には素敵な女性がたくさんいるな。
 というか現実にいないから、魅力的に見えるのか?
 確かに頭脳明晰で戦闘能力に長け、一方で恋愛に初心な女性なんていませんよね。


コメント (8)
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