平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN~ファーストガンダムを熱狂して見ていた世代が40代50代になり、ふたたび『ガンダム』を見るという現象!

2019年05月11日 | コミック・アニメ・特撮
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(日曜・深夜放送中)、第1話2話はシャア視点のドラマだった。
 ジオン・レム・ダイクンの暗殺から始まり、幼き日のシャアとセーラさんの物語が描かれる。

 へえ、シャアとセーラさんを地球に亡命させたのはランバ・ラルとハモンさんだったのか。
 ザビ家の兄妹は昔からいがみ合ってたのか。
 シャアは子供の頃からキシリアに立ち向かえるほどのしっかりした子だったのか。
 一方、セーラさんは甘えん坊。

 こんな感じで、『ガンダム』ファーストシリーズで描かれなかった各キャラクターのバックボーンが描かれる。
 こうした裏設定や歴史は今作の原作・安彦良和さんが膨らませて物語にしたものなのだろうが、これが『ガンダム』なんですね。
 裏設定がしっかりしているから、物語やキャラクターのせりふに深みが出て、作品が豊かになる。
 作品が豊かだから、飲料ドリンク・カルピスの原液でさまざまなカルピスがつくられたように、さまざまなガンダムがつくられた。

 特異な作品でもある。
 何しろ視聴者のほとんどはファーストガンダムを見ていて、作品が今後どのように展開していくかを知っているのだから。
 視聴者はランバ・ラルやハモンさんがどんなふうにして死に、シャアはどんなふうにザビ家に復讐し、ザビ家の兄妹がどんなふうにいがみ合い死んでいくかを知っている。
 普通、物語は先が読めなくて夢中になるものだが、この作品にはそれがない。
 それでも作品が成り立ってしまう所が『ガンダム』の凄さ。
 とは言え、個人的には、甘えん坊のアルティシアがどのように成長して、しっかり者のセーラさんになっていくか興味がありますけど。

 マーケティング的にも面白い。
 何しろファーストガンダムを熱狂して見ていた世代が40代50代になり、ふたたび『ガンダム』を見るという特異な現象。
『ガンダム』シリーズは、その後もつくられていて、リアタイ世代でないファンもファーストガンダムを見ているだろうから、ファンの層はとてつもなく厚い。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』はこうした潜在的ファン層を抱えている。

 こうして見ていくと、『ガンダム』ってすごいコンテンツですね。
 日本のサブカルの凄さでもある。
 あと『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のエンディング曲は、ファーストガンダム劇場・第3作のクライマックスで流された『めぐりあい』。
 泣ける!
 スタッフさん、よくわかっていらっしゃる!

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『平成の大飢饉 予告編』(うめざわしゅん著/太田出版)~日本のことなんか知ったことかよ。 俺個人のハッピーが一番大事に決まってるだろ

2018年08月22日 | コミック・アニメ・特撮
 今回も、うめざわしゅん作品。
 ヘイト活動をおこなうグループ(=在特会?)の老リーダー山神は結婚式で新郎新婦にこんなスピーチをする。

「言うまでもなく、今のこの平和は先人たちの尊い犠牲の上に成り立っております。
 私が若い二人に伝えたいのは先人に恥じることのない誇りある日本人として立派な家庭を築いてもらいたいということです」

〝先人たちの尊い犠牲〟〝誇りある日本人〟
 ウルトラ保守のヤバいやつが言いそうなテンプレ発言ですな。
 一方、新郎ひろしの友人である主人公・三上は次のようにスピーチする。

「ひろし君、そしてサクラさん、ご結婚おめでとうございます!
 僕がひろし君と出会ったのはそう! 小学校の時でした。
 ある日、ひろし君が女子の体操着を盗み問題になったのです」

〝誇りある日本人〟であるひろしが体操着泥棒ww
 三上は山神を茶化しているのだ。
〝誇りある日本人〟なんて世迷い言。
 ひろしはそんな上等な人間ではないし、すべての人間がそうだ。
〝誇りある日本人〟なんて価値観を押しつけてくるな。
 これに対して山神は、
 
「君はひろし君の友人として相応しくないようだな。
 彼は生まれ変わったのだ、我々の同志として。
 君は自分のことしか考えられない利己主義者だ。
 ひろし君にとっても日本にとっても害悪でしかない」

「いいかね、世の中には様々な意見や立場がある。
 原発の是非、憲法改正、社会福祉。
 中には我々の立場に否定的な人間もいるだろう。
 しかし、たとえ意見を同じくできないとしても、この日本を良くしたいと云う心は皆ひとつなのだ。
 君は本気で考えたことがあるかね?
 この国のために自分は何ができるかと」

 山神はウヨクだが、一応パヨクも認めてるんだね。
 山神が嫌いなのは、日本を良くしたい、国のために何かしたいと考えない三上のような人間。
 では、これに三上はどう答えたか?

「日本のことなんか知ったことかよ。
 俺個人のハッピーが一番大事に決まってるだろ。
 国のためなんか指一本動かしてたまるかってんだ。
 言っとくがなぁ、てめえら戦争好きのせいで戦争が始まったら、とっとと国外逃亡してやるぜ」

 徹底した個人主義ですな。
 痛快でもある。
 僕もこの三上の考え方に近い。
 山神のグループに入ってヘイトスピーチをおこなうことで日本のために戦っていると考えている新婦サクラの兄に対しても、三上は手厳しい。

「おい、尊重されたいってのは、てめーのことだろ?
 愛国者になって尊重されたかよ、間抜け」

 そう、政治運動の本質ってこれじゃないかな?
 愛国者になることで満たされる自我。
 愛国者というアイデンティティーを得ることで、ちっぽけな自分から抜け出せる。

 うめざわしゅん作品は現代社会の病巣を鋭くえぐりますね。
 この作品のタイトルは『平成の大飢饉』なんですけど、すべての登場人物の心は満たされず飢えている。

 では、この三上と山神の論争の勝者は誰か?
 この論争の最中、新郎のひろしと新婦のサクラはテーブルの下でエッチな行為をしている。
 おそらく真の勝者はエッチをしているひろしとサクラだろう。
 ふたりは、右も左も個人主義も関係なく、性を貪り、生きていることを謳歌している。

 言葉は虚しい。
 形而下の世界こそ本物。

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『パンティストッキングのような空の下』(うめざわしゅん著/太田出版)~テポドンが落ちてくることを待ち望む、現代の漠然とした絶望

2018年08月18日 | コミック・アニメ・特撮
 うめざわしゅんの登場人物たちは皆、生きづらさを抱えていて窒息しそうになっている。

『パンティストッキングのような空の下』の主人公・三上も次のようにぼやく。

「おっかしいな。
 普通の欲望と小さな希望と謙虚な心で、それだけ忘れないで生きてれば、平凡で幸福な人生が待ってるはずだったんだけどな」

 三上は息苦しさについて、こんな考察もする。

「イベント全体主義だな。
 やつは色んな形で、俺たちを支配しようとしてくる。
 たとえば、自由だとか、癒やしだとか、自分らしさだとか、平等とか、障害は個性だとか、人権だとか、若者には無限の可能性があるだとか、芸能人で言うと誰に似てるだとか、先行きの見えない不況が原因だとか、平和で明るい差別のない社会だとか、そーゆうのに逆らったらつまはじきにされるんだな。
 そーか、幸福な人生に必要なのは服従だ」

 自由、平等、人権、若者の無限の可能性、癒やし、自分らしさ……。
 三上は何も信じていない。
 実際、現実を見てみれば、〝自由〟〝平等〟なんてウソだし、若者は閉塞感でいっぱいだし、〝癒やし〟や〝自分らしさ〟なんてマスコミが金儲けのためにつくりだした虚妄だし、〝障害は個性〟とか〝差別のない社会〟なんて偽善だし。
 それどころか、これらはテレビや学校など、さまざまな形で圧迫してくる。
 たとえば、
「差別のない社会をつくりましょう」
「人間は自由で平等なんです」
「若者には無限の可能性がある。だからがんばれ!」
「自分らしさを演出するコーディネイト」
「癒やしグッズ」
「癒やしスポット」
 大きなお世話だ。
 放っておいてくれ。
 でも、そんなことを言うと、やつらはたちまち「悔い改めよ」と牙をむいてくる。
 そんな三上の唯一のリアルは〝セックス〟だが、これもパンティストッキングが立ちはだかるようになかなかたどり着けない。

 どうしようもない絶望ですね。
 まあ、世の中の虚妄をすべて剥ぎ取っていけば、残るのはこうした現実なのかもしれないけど。

 だから三上は空を見上げてこう思う。

「テポドンでも何でも落ちてくりゃいいんだ」

 もしかしたら現代人はテポドンが落ちて来るのを望んでいるのかもしれない。

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『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』(平尾アウリ著/徳間書店)~アイドルオタクの無償の愛! みんなが舞菜のかわいさに気づいてくれたらいい

2018年08月15日 | コミック・アニメ・特撮
 ひさしぶりにコミックの話。
 今期はドラマがイマイチなので、TSUTAYAでコミックを借りたりしています。
 まずは『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』(平尾アウリ著/徳間書店)
 平成のアイドルオタクの生態を描いた物語。

 主人公はアイドルオタクのえりぴよ。
 えりぴよは、アイドルグループChamJamのメンバー市井舞菜のファンで、〝古株にして収入のすべてを貢ぎ、自らの服は高校時代の赤いジャージのみ〟という女の子!
 彼女は舞菜についてこんなことを考えている。

「舞菜が生きていることがわたしへのファンサだから。
 生きていてくれさえいればいいから。
 同じ時代に生まれたこと。そして舞菜のご両親の出逢いに感謝!」

 初詣で神様にお願いすることは、
「今年も舞菜が健康でありますように。
 舞菜がおいしいものを毎日食べられますように。
 舞菜が幸せでありますように。
 舞菜が武道館に行けますように」

 電車で偶然、舞菜と遭遇した時は、
「プライベートの舞菜。私服は白なんだな、天使かよ。
 天使が存在している電車の中で」

 えりぴよにとって舞菜は生活のすべてなんですね。
 寝ても覚めても舞菜のことを考えている。
 これは客観的に見ると、ストーカーっぽくて少しフツーじゃないんですけど、えりぴよが女性であることがそれを緩和している。
 そして、えりぴよは舞菜に見返りを求めない。

「わたしはアイドルとしてがんばっている舞菜が好きだから。
 だから、わたしのものにって言うよりは、みんなのものになってほしい。
 みんなが舞菜のかわいさに気づいてくれたらいいと思ってる。
 当然、その中でもわたしが一番舞菜のことを好きだと知っている。
 舞菜が武道館に行ってくれたら死んでもいい。舞菜が武道館に行ってくれたら死んでもいい。
 大事なことなので2回言いました」

 無償の愛ですなあ。
 ここまで徹底していると、清々しいし、えりぴよはきっと幸せなんだろうな。
 こんなふうに他人を思えるなんてすごいこと。

 えりぴよと舞菜の関係はどうなっていくのだろう?
 実は舞菜もえりぴよのことが好きで、内気で心を開けないために〝塩対応〟になっているんですけどね。
 見返りを求めないえりぴよと自分を上手く表現できない舞菜。
 すれ違いのドラマは今後も続いていくようです。

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「二度目の人生を異世界で」~原作者のヘイト発言で、出演声優が全員降板、アニメ化中止、出荷停止!

2018年06月07日 | コミック・アニメ・特撮
 アニメ化が決まっていたライトノベル「二度目の人生を異世界で」。
 その原作者がツイッターでおこなった中国や韓国に対する差別的な発言や作品に不適切な内容で出演声優が降板、アニメ化が白紙。
 出版元のホビージャパンはこれまでに刊行された計18巻を出荷停止にすることを決めたらしい。

 降板を決めた声優事務所はこんなコメント。

『日頃より増田俊樹への応援誠にありがとうございます。
 先日、増田俊樹が功刀蓮弥役として発表されましたアニメ「二度目の人生を異世界で」につきまして、この度降板させて頂く事が決定いたしました事をご報告させていただきます。
 スペースクラフト・エンタテインメント株式会社』

『日頃より弊社所属声優・中島愛を応援頂きまして誠にありがとうございます。
 先日、中島愛がローナ=シュヴァリエ役として発表されましたアニメ「二度目の人生を異世界で」につきまして、この度降板させて頂くことが決定いたしました。
 イーストーン・ミュージック』

『日頃より安野希世乃へ応援頂き誠にありがとうございます。
 先日安野希世乃がシオン=ファム=ファタール役として発表されました、アニメ「二度目の人生を異世界で」につきまして、この度降板させて頂く事が決定いたしました事をご報告させていただきます。
 エイベックス・ピクチャーズ株式会社』

 など。
 …………………

 いい傾向ですね。
 ヘイトスピーチはほんと醜い。
 憎悪と差別以外の何ものでもない。

 最近、ブログ「余命三年日記」に煽動されたネトウヨが弁護士へ懲戒請求をおこない逆に訴えられたり、YouTubeのヘイト動画が相次いで削除されるという事態(=ネトウヨ春のBAN祭り)が起きているが、大人は「ダメなものはダメ」とはっきり言うべきだ。
 この点で、声優事務所、弁護士、YouTube(=グーグル)はしっかり大人の仕事をしている。
 …………………

「二度目の人生を異世界で」の作家はツイッターでこんな謝罪をしているらしい。

『事実関係を正確に把握せず、深い考えもなく行った発言ではありますが、行きすぎた内容であったことを深く反省しており、不快に思われた皆さまのお許しを頂けるとは思っておりませんが、心より謝罪させて頂きたい』

〝事実関係を正確に把握せず、深い考えもなく行った〟のかいっ!
 もっと強い信念、あるいは作家としての暗い情念があるのかと思っていた。
 作品も〝日中戦争中に3000人を日本刀で斬り殺した主人公が異世界に転生してまた殺戮する〟という過激な内容らしいし。

 弁護士への懲戒請求もそうだが、ネトウヨさんはネットの情報に踊らされて発信しているんだよな。
 その根っこにあるのは他者をおとしめることでストレスを発散したいだけ?
 まあ、このことは同じネットで発信する者として僕も注意しなくちゃいけないんだけど。
 …………………

 アニメ化をやめたレコード会社、出荷停止を決めた出版社はどうなんだろう?

 レコード会社の対応はわかる。
 内容も問題だが、出演声優が降りて、ヘイトというイメージのついた作品だからビジネスが成り立たない。
 レーベルのブランドイメージにも関わる。
 まあ、プロデューサーがこの作品の何に魅かれてアニメ化を決めたのかという問題はあるが。

 では、出版社の出荷停止は?
 編集者がチェックして18巻も出してきた作品なのだから、当然、内容を容認してきたのだろう。
 だとしたら、いきなりの出荷停止は情けない。
 これがリスク管理ってやつなのかね?
 ヘイト発言を繰り返している百田尚樹の作品なんか、いまだにたくさん出ているぞ。

 僕は〝作品はどんな表現も許される派〟なので、今回の「二度目の人生を異世界で」自体は否定しない。
 嫌ならば読まなければいいし、内容が酷ければ批判すればいい話だ。
 それはヘイト本を置いている書店には二度と行かないのと同じ。

 それよりも「表現の自由」を規制されることの方が怖い。
「二度目の人生を異世界で」は18巻も出ているのだから、それなりに人の心に訴えるものがあるのだろう。
 今回のことを経て、この作家さんが次にどんな作品を書くのか興味がある。


※関連記事
 原作者の差別発言で主演声優全員一挙降板、「二度目の人生を異世界で」アニメ化中止で小説版は出荷停止に(BUZZAP)

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銀河英雄伝説 第5話 「第十三艦隊誕生」~安全な場所に隠れて主戦論を唱えることはやさしい

2018年05月12日 | コミック・アニメ・特撮
 アスターテ会戦の戦没者慰霊祭で国防委員長のトリューニヒトはこう演説する。

「彼らは尊い命を祖国の自由と平和を守るために捧げたのだ。
 彼らが散華したのは個人の命より、さらに貴重なものが存在するということを後に残された我々に伝えるためなのだ。
 150万の兵士はなぜ死んだのか?
 彼らは祖国の自由を守るために命を投げ打ったのだ。
 帝国との講和を主張する平和主義者たちよ、眠りからさめよ。
 平和を口で唱えるほどやさしいものはない」

 何と欺瞞に満ちた言葉だろう。
「個人の命より大切なものがある」
「それを守るために命を捨てることは尊い」
 国家主義者はこういう発想をする。

 これに対してヤン(CV 鈴村健一)はこうツッコむ。
 150万の兵士が死んだのは、
「首脳部の作戦指揮がまずかったからさ」

 平和を口で唱えるほどやさしいものはない、という発言に対しては、
「いや、安全な場所に隠れて主戦論を唱えることもやさしい」

 参列者が立ち上がって「同盟万歳!」「共和国万歳!」を叫ぶ時は、ヤンだけ立ち上がらずに、
「この国は自由の国です。
 起立したくない時に起立しない自由を行使します」

 ヤン、カッケー!
 すごい皮肉屋でもある。
 でも、言っていることは正しい。
 つまり、
〝戦争を説くやつは自分は戦場に行かずに安全な場所にいる〟

 アスターテ会戦で婚約者のラップを失ったジェシカも同じことを問いかけていた。
「委員長、あなたはどこにいます?
 死を賛美なさるあなたはどこにいます?
 国民に犠牲を説くあなたの家族はどこにいます?」

 悲痛な叫びだ。

 というわけで、第4話を見て思ったこと。

 戦争や何かに殉じて死ぬことの尊さを説くやつは、まず自分が軍隊に入って手本を見せてほしいものだ。
 手本を見せてくれたら、あんたらの話に耳を傾けてやろう。


※追記
 自分がアスターテ会戦の〝英雄〟に祭り上げられたことに対してもヤンは言う。
「同盟軍は敗れた。
 だから英雄を必要とするんだ。
 敗れた時は民衆の視線を大局から逸らさなくてはならない」

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銀河英雄伝説 第4話 「不敗の魔術師」~独裁者が生まれるのは民衆が楽をしたがるせいさ

2018年05月01日 | コミック・アニメ・特撮
 独裁者・銀河帝国皇帝ルドルフはどうして誕生したか?

 幼いヤン(鈴村健一)の質問にヤンの父親はこう答えたらしい。

「民衆が楽をしたがるせいさ」

 その詳細は、
「民衆が自分の努力で問題を解決しようとせず、どこからか超人や聖者が現れてひとりで背負い込んでくれるのを待っていたからだ。そこをルドルフにつけ込まれた」

 確かに、自分で考えることって不安で大変なんですよね。
 何が正解かわからないし、まわりから批判を含めたさまざまな意見が入ってくる。
 だから、大きくて強そうに見えるリーダーに判断を委ねてしまった方が楽。
 その方が面倒なことは何も考えなくていい。

 ヤンの父親は独裁者が生まれる理由をこう説明したのだ。
 そして人々が考えを委ねた指導者は決して〝超人〟でも〝聖人〟でもない。

 ヤンの父親はこんなことも語ったらしい。

「独裁者を出現させるのは出現させる側に多くの責任がある。
 積極的に支持しなくても黙って見ていれば同罪だ」

 以前も書きましたが、『銀河英雄伝説』ってすぐれた政治学の教科書なんですよね。
 人々が考えることをやめて大きなものに自分を委ねる時、ファシズムや独裁者が生まれる。
 決して楽をしてはいけない。

 さて、次回(第5話)は、ジェシカの演説が聴けるのかな?
 戦争で婚約者ラップを失ったジェシカの必死な叫び。

 それと今作では、ヤンがジェシカに想いを寄せていたような描写がありましたね。
 もしかして新解釈?

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銀河英雄伝説 第2話 「アスターテ会戦」~ラインハルト、中央突破作戦をヤンに逆手に取られて、 「何たる無様な陣形だ!」 

2018年04月14日 | コミック・アニメ・特撮
 銀河英雄伝説 第2話「アスターテ会戦」
 今回は同盟視点でした。

 ヤン・ウェンリーのCVは鈴村健一さん。
 若い感じのヤンになりましたね。

 逆にヤンの温かみがなくなったかな?
 前アニメシリーズでヤンを務めたのは故・富山敬さん。
 富山さんの声は〝温かみ〟や〝やさしさ〟がありましたからね。
 オールドファンとしては、どうしてもヤン=富山敬になってしまう。
 とはいえ、鈴村さんのヤンが回を重ねていくうちに、どう変わっていくか楽しみ。
 ………………

 物語では「アスターテ会戦」の名セリフを聞けました。

★まずはヤン。
 艦隊が指示どおり動かず作戦が失敗したらどうするか? と副官ラオに問われてこう語る。

「頭をかいて謝るさ」

 カ、カッケー!
 ヤンの洒脱な感じがよく現れている。
 ヤンは常にやわらかいんですよね。
 臨機応変、しっかりした戦術眼を持ちながら、物事はなるようにしかならないとも思っている。
 このゆったりとした腹の据わり方。

 私事ですが、仕事でまずい状況になった時、僕はヤンのこのせりふを思い出し、自分に言い聞かせていました。
「頭をかいて謝るさ」

★ラインハルトはこれ。
 中央突破作戦をヤンに逆手に取られ、両軍が互いに追いかけまわす陣形になった時のひと言。

「何たる無様な陣形だ!」

 ラインハルトには美学があるんですね。
 戦術も生活も、あらゆるものが整然として美しくなくてはならない。
 一方、ヤンは、被害少なく勝てばいいので〝無様な陣形〟など気にしない。
 逆にこの無様な陣形を楽しんでいる感じすらある。

 凡庸な作品なら、ここでのラインハルトのせりふは「敵にもなかなかの戦術家がいるようだな」みたいになったりするんですけど、今作では「何たる無様な陣形だ!」
 ラインハルトが〝美しさ〟で生きていることがよくわかります。

★3つめはキルヒアイス。
 同盟軍の艦隊の2/3を壊滅させたが、ヤンが率いる1/3の艦隊にしてやられたことを悔しがるラインハルトに

「これ以上お望みになるのはいささか欲深いというものです」

 ラインハルトは〝帝国乗っ取り〟というとんでもない野望を抱えているので、完全勝利できなかったことに満足できないんですね。
 それを冷静にたしなめるキルヒアイス。
 アクセルを踏みすぎるラインハルトの良いブレーキ役になっています。
 副官キルヒアイスがいるから、ラインハルトは暴走せずにいられる。
 ………………

 というわけで、今回のアスターテ会戦。
 ラインハルトとヤンが初めて遭遇し、ライバルと認め合ったエピソードでした。

 そう言えば、ラストでこんなやりとりもありましたね。
 
 ラインハルトが伝聞で、
『貴官の勇戦に敬意を表す。再戦の日まで壮健ならん』
 とヤンにメッセージを出したことに対して、ヤンは、
「勇戦と評してくれたか。恐縮するね」
 と言って伝聞に返事をしない。

 これまた、ふたりの性格の違いを表したやりとりですね。


※銀河英雄伝説PV第2弾はこちら
 銀河英雄伝説PV第2弾(YouTube)


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銀河英雄伝説 第1話「永遠の夜の中で」~不敗の魔術師ヤンの名セリフ 「心配するな。私の命令に従えば助かる。負けはしない」

2018年04月08日 | コミック・アニメ・特撮
 そう言えば、『銀河英雄伝説』のアニメ新作がオンエアされてますね。
 原作を熟読したなあ。
 旧作のアニメも全話見た。
 ファンの間では、帝国派、同盟派で分かれるんだけど、僕は断然同盟派!
 ヤン・ウェンリー推し!

 この作品、人物設定の言葉のチョイスがすごい。
 帝国元帥ラインハルトが<常勝>。
 では、ライバルの同盟軍提督ヤン・ウェンリーは何かというと<不敗>。
 この言葉のチョイスができた時点で、この作品は画期的なものになった。
 さすが田中芳樹先生。
 ………………

 さて新作アニメの第1話「永遠の夜の中で」。

 何とヤンが最後の最後で出てくる。
 しかも、やっと登場したと思ったら背中だけ。
 なるほどね、こういう登場のさせ方もあるのか。

 その前には、全艦隊に向かってのアナウンスせりふ(=つまり声だけ)があるんですけどね。
 帝国軍ラインハルトの各個撃破作戦で壊滅的な打撃を受けた同盟軍。
 その際にヤンは全兵士に告げる。

「私はパレッタ総司令官の次席幕僚のヤン・ウェンリー准将だ。
 旗艦パトロクロスが被弾し、パレッタ総司令官は重傷を負われた。
 総司令官の命により私が全艦隊の指揮を引き継ぐ。
 心配するな。私の命令に従えば助かる。
 生還したい者は落ち着いて私の指示に従ってほしい。
 わが艦隊は現在負けているが、要は最後に勝てばいいのだ。
 負けはしない」

 カ、カ、カッケー!
 まさに<不敗>ヤン・ウェンリーならではのせりふ。
 兵士の命を大事にして、出来る限り被害を少なくしようとする姿勢にも共感できる。

 見事な司令官だよね、ヤンは!

 一方、同じ同盟軍・第6艦隊の司令官ムーア中将は、ヤンの友人であるラップ少佐の忠告を聞かず艦隊を壊滅させ、帝国が降伏勧告すると、こう語る。

「降伏だと? 俺は無能であっても卑怯者にはならん」

 ったく、この人は兵士の命をどう考えているんだろうね?
 そんなに死にたいのなら自分ひとりで死んでくれと言いたい。


※銀河英雄伝説のPVはこちら。
『銀河英雄伝説 Die Neue These』第1弾PV(YouTube)


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アニメ版「心が叫びたがってるんだ。」~傷ついていいからお前の本当の言葉を聞きたいんだ

2017年07月30日 | コミック・アニメ・特撮
 心を閉じて、しゃべることをやめた成瀬順(CV 水瀬いのり)は声を振り絞って叫ぶ。

「いい加減にしろ! 消えろとかそんな簡単にいうな! 言葉は傷つけるんだから、絶対にもう取り戻せないんだから!」

 言葉は傷つけるんですね、自分もまわりも。
 そして世界を壊してしまう。
 だから、順は〝タマゴの呪いに掛けられた〟と理由をつくってしゃべるのをやめた。
 でも、順の心の中には、しゃべりたいことがいっぱいあった。
 その中のひとつが先程のせりふ。

 そんな順を解放したのが、坂上拓実(CV 内村昴輝)だった。
 拓実は言う、
「歌だったらしゃべれるんじゃない?」
 だから、ミュージカルをやるか否かを決めるホームルームで、田崎大樹(CV 細川佳正)と拓実が言い合いになる時、突然歌い出す。
♪ わた~しはーやれーるよー。不安はーあるけど~、きっと ♪

 順が「口の出したら終わってしまう」とメールで語った時は、
「口に出して言わないとわからない」

 拓実と仁藤菜月(雨宮天)が縒りを戻し、順が失恋し、ふたたび心を閉ざしてしまった時は、
「傷ついていいから、お前の本当の言葉を聞きたいんだ!」
 すると、順の口から次から次へと出てくる拓実と菜月への悪口(笑)
「思わせぶり」「いい格好しい」「あの女はウソつき」「いい子ぶりっこ」(笑)
 順~、こんなことを考えていたのか~~(笑)
 でも、こうやって毒を吐くのも大事だよね。
 そうしないと、自分の中で、どんどん毒がまわってしまう。

 

 言葉は人を傷つける。
 耳を傾けてみれば、周囲には、人を傷つける言葉でいっぱいだ。
 自分が何かを言ったら傷つく言葉も返ってくる。
 だから言葉を封印し、周囲をシャットアウトするのは自分を守るひとつの方法。

 だが一方で、言葉は人を救うこともある。
 順にとっては拓実の言葉がそうだった。
 拓実も順の言葉によって救われていた。
「わたしのお陰? (わたしの)せいじゃない?」
「お前の言葉で、うれしくなったから」

 心の中の言葉をすべて吐き出した時、順が見た世界とは?
 それは、とてもやさしくて美しい世界だったのだと思う。

 さあ、自分の心の中を語ってみよう。
 傷つくこともあるかもしれないが、理解してくれる人もきっと現われる。

 やさしい映画だった。
 ラストのミュージカルの大団円。
 ベートーヴェンのピアノソナタ『悲愴』とミュージカル映画『オズの魔法使い』の『Over The Rainbow』という正反対のものが、こんなに合うとは思わなかった。


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