平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

映画「空母いぶき」~自衛隊、専守防衛で戦わば。「今後の外交交渉に影響する戦闘は極力回避せよ」

2021年04月14日 | 邦画
 映画「空母いぶき」
 原作コミックでは、尖閣をめぐる中国との戦いになっているのだが、
 映画では謎の海洋国家・東亜連邦との戦いになっている。

 さて、他国からの侵攻を受け「防衛出動」が発令された時、日本政府はどう反応したか?

 日本政府
「今後の外交交渉に影響する戦闘は極力回避せよ」
「戦闘から戦争に発展する行動は避けよ」

 正しい反応だと思う。
 国家間の紛争の最終的な解決手段は「外交交渉」。
 あくまで局地戦の「戦闘」に抑え、国と国が全面的に戦う「戦争」は避ける。
 劇中でタカ派の閣僚が「これではこのいくさは負けるぞ。全軍をあげて戦うのみ」と息巻いていたが、これは愚か。
 全軍で戦えば「戦争」になってしまう。
 あるいは、ひとりの閣僚はこんなことを言っていた。
「グローバル化の現在、国と国との全面戦争は国際経済に多大な影響を及ぼす」
 これがグローバル化の時代の戦争のリアリズムだと思う。

 アメリカの反応は──
「自制的な行動を求める。グッド・ラック!」
 おいっ、日米同盟はどうした?(笑)
 でも現実はこんなもんじゃないかな?
 紛争や局地戦は当事国に任せる。
 全面戦争になった時は、調停などに乗り出す。
 仮にアメリカと中国が全面戦争したら世界はボロボロになるからね。
 ネトウヨ界隈が言っている「アメリカが中国をやっつけてくれる」は幻想だ。
 ……………………

 では、秋津(西島秀俊)が率いる空母いぶきと護衛艦の自衛隊はこの事態でどう戦ったか?

 いぶきのスタンスはあくまで「専守防衛」だ。
 日本政府の命令
「今後の外交交渉に影響する戦闘は極力回避せよ」
「戦闘から戦争に発展する行動は避けよ」
 に従って戦う。

 そのために行なったのは──
・敵ミサイルの迎撃
・敵艦の無力化(撃沈ではない)
・いぶきに襲い来る敵潜水艦の魚雷を護衛艦が代わりに受ける。
・なおも魚雷を放とうとする敵潜水艦に味方潜水艦が体当たり。
 途中、敵潜水艦を沈める機会はあったのにそれをしない。
 撃墜された敵戦闘機のパイロットは助けるし、
 捕虜になった敵が味方を銃で殺害したのに報復しない。

 まさに「専守防衛」に徹した「自制的な戦い」だ。
 高性能のミサイルや魚雷をぶっ放して敵をやっつければスカッとするだろうが、
「戦争に発展すること」を避けるために愚直に戦い続ける。
 仲間を理不尽に殺されたら怒りも湧いて来るが、あくまで冷静に対処する。

 映画「空母いぶき」はこのような作品だった。

 僕はこの作品の日本政府や自衛隊の対応を「是」とする。
 国際世論もこんな日本の姿勢を支持するだろう。
 一時のスカッとする爽快感は道を誤らせる。

 さて仮に現実でこういう事態に陥った時、
 日本政府、自衛隊はどう対応し、国民はどのような反応をするのだろう?

コメント

映画「ビブリア古書堂の事件手帖」~びっしり本が詰め込まれた薄暗い店内の奥に美少女がいる

2020年09月06日 | 邦画
 映画「ビブリア古書堂の事件手帖」
 テレビドラマの剛力彩芽版じゃなくて、栞子役を黒木華さんが務める黒木華版だ。
 やはり地味な役は黒木さんがよく似合う……(笑)

 物語は、原作の「それから」(夏目漱石)、「晩年」(太宰治)を組み合わせたもの。

「それから」パートでは、大輔(野村周平)の祖母・五浦絹子(夏帆)のせつない恋愛話をふくらましている。
 50年前の絹子と田中嘉雄(東出昌大)を具体的に描いている。

「晩年」パートでは、栞子が持つ稀少本「晩年」を狙う謎の男・大庭葉蔵との戦い。
 サスペンスな展開になっている。

 いわば、恋愛ドラマとサスペンスドラマを両方、愉しめるというわけだ。
 ……………………

 本作の魅力と言えば、やはり「ビブリア古書堂」の雰囲気・匂いだろう。
 天井までいっぱいで、木製棚にぎっしり詰め込まれた本。
 店内は薄暗く奥行きがあり、御堂のようで、まさに「古書堂」という言葉がふさわしい。
 これが「古書店」だと明るくなってしまう。
 そんな薄暗い店内の奥──机に積み上げられた本の山の中に美少女・栞子さんがいる。

 何と幻想的な光景だろう。
 ビブリア古書堂に足を踏み入れることで、観客は異世界にトリップする。

 しかも、薄暗い古書堂の奥にいる美少女は名探偵。
 本の査定をしただけで、その本に関わった人たちのドラマを読み取る。

 本は読者をここではない異世界に誘うものだが、この作品はさらに面白い仕掛けを施している。
 古書「それから」が大輔の祖母の恋愛話に展開していったように、本が異世界への扉を開くのだ。
「それから」を読んで、漱石の書いた物語世界に浸るのは通常の読書行為。
 だが、この作品はそれだけでは満足しない。
 古書「それから」を通して、大輔の祖母の恋愛話の世界に誘っていく。
 この点で、映画版が大輔の祖母の恋愛話をていねいに描いたのは正解だ。

 ビブリア古書堂。
 これが街にあったら素敵だろうな。
「幻想スポット」が街中にある感じ。
「異世界への扉」がある感じ。

 でも現在はスクラップ&ビルドで街からこういうスポットが失われてしまった。

コメント (2)

映画「新聞記者」~森友、加計など、安倍腐敗内閣が生み出した作品。メディアと官僚は自分の矜恃と良心を取り戻せ!

2020年03月24日 | 邦画
 日本アカデミー賞の最優秀作品賞など各賞を総舐めした映画『新聞記者』。

 そこで暗に描かれているのは──
・森友事件
・伊藤詩織さん事件
・前川喜平さんを貶めるための新聞リーク事件
・加計学園事件
 すべて安倍案件だ(笑)
 まあ、東京新聞の望月衣塑子さんの著書を原案にしているのだからこうなる!
 冒頭のテレビ番組の討論番組では、望月衣塑子さんと前川喜平さんが出ている!
 この作品、こんなふうに現実が見え隠れしているから、映画の夢の世界に没入したい観客はシラけるんだけど、こういう作品があってもいいだろう。
 まさに2019年に生まれるべくして生まれた作品、安倍腐敗内閣が生み出した作品だ。
 今、森友事件で自殺された近畿財務局の赤木俊夫さんの手記と遺書が公開されたが、この作品の内容ともリンクする。
 
 面白いのは首相官邸まわりの事件を扱っているのに、首相や官房長官や総理補佐官がまったく出てこないこと。
 主人公の新聞記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)に敵として立ちふさがるのは、内閣調査室の多田智也(田中哲司)のみ。
 首相や官邸の顔が見えないことが、逆に権力の隠喩になっている。
 巨悪は決してオモテに出ず、下部組織を動かして暗躍するのだ。

 そんな巨悪の先兵である内調の多田が語っていた言葉は次のようなもの。
「安定した政権を持つことがこの国の国益なんだ」
「ウソか本当かを決めるのはお前じゃない。国民なんだ」
「この国の民主主義は形だけでいいんだ」

 多田は内閣調査室の職員を使って世論を操作する。
 スキャンダルをでっちあげ、権力に敵対する者を社会的に抹殺する。
 なかったことをあったことにして事実にしてしまう。
 何という傲慢!
 内調のやるべきことって、外国のスパイや国内の不穏分子を調べることだろう。
 権力批判をする人たちを取り締まることではない。
 まして、ウソをでっち上げて社会的に抹殺するなんて!
 結局、多田が守ろうとしているのは『政権』なんですよね。
 多田にとっては『国=政権』であって、『国=国民』ではない。

 こんな多田の姿勢に疑問を抱き、葛藤する者もいる。
「俺たちは何を守っているのか?」
 内閣調査室の杉原拓海(松坂桃李)だ。
 自殺した内閣府の神崎千佳(宮野陽名)も組織と自分の良心・信念の間で悩んでいた。
 健全な社会を維持するためにはこういう人たちが必要なんですよね。
 不正を告発する主人公・吉岡エリカのようなメディアの人間も。
 これは僕の持論なんだけど、
 社会のそれぞれの分野の人が、自分の矜恃と良心で仕事をしていれば、世の中はそんなに悪くならない。
 官僚は官僚の矜恃と良心を
 メディアはメディアの矜恃と良心を
 検察官は検察官の矜恃と良心を。

 最後に、この作品はあまりスッキリした形で終わらない。
 エンタテインメントのカタルシスはない。
 ネタバレになるので詳しく書かないが、このモヤモヤした感じこそが今の現実なのだ。
 森友、加計、桜──全部モヤモヤしている。

『新聞記者』はやはり2019年が生み出した作品なんですね。

コメント (6)

翔んで埼玉~上級国民、自虐、2.5次元……この作品には現代社会の隠喩がいっぱい!

2020年02月09日 | 邦画
『翔んで埼玉』を見た。
 ツイッターでは53万リツィートのトレンド入り。

 権力者と抑圧された者の闘いの物語である。
 革命と連帯の物語でもある。
 チェ・ゲバラを始めとして、世界史ではこうした闘いが繰り広げられてきたのだが、
 これを『東京と埼玉の対立図式』に当てはめるとナンセンスな物語になる(笑)
 この別次元に飛躍する面白さ!

 自虐の物語でもある。
 埼玉をディスり、千葉をディスり、茨城をディスって笑いにする。
 でも、自分を客観視して笑い飛ばすのって素敵なこと。
 高度な知的笑いでもある。
 一方、現在の日本のテレビや雑誌を見ると、『日本すごい!』が高視聴率を取り、売れている。
 僕は、日本を客観視して笑いにするくらいの方が大人の態度のような気がするけどなあ。
 昔のテレビには『ここが変だよ、日本人』といった番組があった。
『日本すごい』ばかりでは、どこかこそばゆい。
 自分を客観視して笑い飛ばす余裕が現代の日本にはなくなってしまったのか?

『翔んで埼玉』には、こうした時代の隠喩が盛り込まれている。
 ネットには『上級国民』という言葉があるけれど、今作はまさに上級国民との闘い。
 下級国民は互いにいがみ合ったり、上級国民に取り入ったり、ゲリラとして闘ったり、さまざまな形で現状を生き抜こうとしている。
 これはまさに現代日本の姿ではないか?

 あとは2.5次元。
 かつら、ウィッグ、コスプレのような衣装。
 僕はまだこれに違和感を抱いてしまうんだけど、若い人には抵抗がないようだ。
 みんな、フツーに受け入れている。
 完全に2次元が3次元に侵食して来てますね。
 でもまあ、考えてみれば、時代劇もかつらとコスプレの世界、2.5次元がフツーになってもおかしくない。

『翔んで埼玉』は現代を反映した作品だった。

コメント

君の膵臓をたべたい~誰かを好きになったり、嫌いになったり、手を繋いだり、すれ違ったりするすべてが愛おしい

2020年01月14日 | 邦画
 膵臓の病で余命幾ばくもない山内桜良(浜辺美波)。
 他人が自分の領域に入るのがイヤで他人を拒んでいる「僕」(北村匠海)。

 そんな「僕」の心の中に桜良はズケズケと入ってくる。
 他人を拒み、一定の距離を保っている「僕」は、膵臓の病のことを知っても気を遣ったり、悲しんだりしないからだ。
 これが親友の恭子(大友花恋)だったら泣き叫んで、桜良は否応なしに『自分が死ぬ存在であること』を認識してしまう。
 死を前にした人間にとって、気を遣われたり、哀しい顔をされることは逆につらいのだ。
 一方、「僕」はいつもと同じ距離とそっけない態度で自分に接してくれる。
 桜良にとって「僕」は普通の日常を与えてくれる存在であった。
 桜良はそんな「僕」と『死ぬまでにやりたいこと』を実行していく。
 …………

 この作品、録画していてお涙頂戴の「闘病もの」かと思って放置していたが、実際に観てみると必ずしもそうではない。
 むしろ「僕」の成長物語だった。

「君、先生になりなよ」
「みんなと友だちになる練習をしよう!」
「真実か挑戦かゲームをやろう」

「僕」が桜良から学んだことは『他人と向き合うこと』だった。
 他人を拒む「僕」は教室でいつもひとりで本を読んでいる。
 必要なことしか話さないし、得意なのは図書委員の仕事(=図書館の本の分類をすること)だ。

「君にとって生きるってどういうこと?」と問われた桜良はすこし考えて、こう答える。

「誰かと心を通わせること。
 誰かを好きになったり、嫌いになったり、
 手を繋いだり、ハグしたり、すれ違ったり。
 楽しいのに鬱陶しくて、好きなのに嫌いで、まどろっこしいんだけど、それがわたしの生きている証明」

 桜良が人間関係のマイナスの部分、面倒くさい部分も肯定している所が興味深い。
 死にゆく人間にとっては、自分の目の前で起こることすべてが愛おしいのだ。
 死を目前にしていない人間は、このことになかなか気づかない。

 桜良も「僕」と関わることで得られる日常に救われていた。
「僕」は心を閉ざしているので、なかなか心を通わせることができなかったが、桜良にとっては、それが面白くて楽しい時間だった。
「僕」の心がすこしずつ開いて、ふたりの距離が縮まっていくのも喜びだった。
 ネタバレになるので書かないが、
 桜良が最後に語った言葉なんか、せつないんだけど、歓喜にあふれていてせつなさを圧倒してしまう。


 ハードディスクの録画を消さなくてよかったと思える作品でした。
 心の栄養、ビタミンをもらった作品でした。

コメント

カメラを止めるな!~ダメダメでクセのある連中が一致団結! トラブルを乗り越えて撮影に取り組む姿に拍手喝采!

2019年03月10日 | 邦画
『カメラを止めるな!』を見た!
 なるほどね~、DVDなどの特典についているメイキング映像を逆手にとったわけか。
 カメラのフレームの外では何をしてもOK!

 登場するのは、
・気弱で自己主張しない監督
・監督の妻で、役にのめりこむと台本無視で暴走する女優
・演出にいろいろ口出ししてくるイケメン俳優
・NGの多いアイドル系女優
・アル中の俳優
・売れたい俳優
・お腹の弱い俳優
・腰痛持ちのカメラマン
・なかなか自分で撮らせてもらえないカメラマン助手
・監督の娘で、クォリティにこだわるあまり現場でもめ事が絶えないAD
・テキトーなイケメンプロデューサー

 要はメチャクチャ、クセのある人たちばかりw
 だからリハーサルは大混乱!
 監督は彼らを制御できず、オロオロする。

 作品はゾンビチャンネルの生放送で、カメラは一台。
 生放送なので撮り直しはきかない一発勝負のライブ!
 カメラは一台なのでまわし続けるワンカット撮影!

 こんな制約とクセのある俳優・スタッフの中、作品はどうなってしまうのか?

 しかし、いったんカメラが回りだすと、
 やるっきゃないっ!
 皆は一致団結、協力し始める。
 アル中でゲロを吐いたり、お腹が弱くて便意を催すといったトラブルの中、互いにフォローし合い、時にはファインプレーもあって、困難を乗り越えていく!
 皆が一致団結する姿!
 必死で一生懸命な姿!
 これが痛快で、一種、感動なんだよなあ。

 同じ傾向の作品としては、三谷幸喜の『ラヂオの時間』があるが、ノンストップでスピーディな分、『カメラを止めるな』の方がスリリングで面白い。
 まあ、その分、『家族愛』とか『ダメな人間の再生』といったドラマは薄くなるんだけど、そんなものはこの作品では二の次のようだ。
 何かを得るためには何かを捨てなければならない。
 この作品がドラマにこだわっていたら、尖らない凡庸な作品になっていただろう。

 個人的には、腰痛で動けなくなったカメラマンの代わりに、女性カメラマン助手がカメラを担当し『回転レシーブ』で撮影するシーンに感動しました!

コメント

シンゴジラ~ここで描かれた日本の復権。「日本も捨てたもんじゃない」思想

2017年11月14日 | 邦画
『シンゴジラ』を見た外国人の感想は、「日本はこんな緊急時に会議をしているのか……」だそうである(笑)

 確かに。
 でも、これが庵野秀明監督の描きたかったことのひとつなんでしょうね。

・会議ばかり開き、何も決められず対処できない日本。
・有識者会議が大好きな日本。
・法律に基づいてしか行動できない官僚(=これは法治国家として正しいことなんだけど)。
・官僚の縦割り。
・会議の名称や作戦名へのこだわり。

 こんなのもある。

・アメリカ追随(=すべてはアメリカ様の言うとおり)

 庵野監督はこんな日本を揶揄し、笑う。
 そして最終的にはぶっ壊してしまった。
 ゴジラの熱線で総理以下、閣僚が一気に死んでしまうのが、その象徴だ。
 日本の自衛隊やアメリカ軍がまったくゴジラにまったく歯が立たないのも、そのひとつ。
 ……………

 しかし、ドラマが進むにつれて、日本は復権する。

 主人公・矢口蘭堂(長谷川博己)が官僚の縦割りの垣根を越えたチームをつくり、ゴジラ対策に乗り出すのだ。
 それはまさに日本の官僚たちの英知を集めたチーム。
 環境省からは、市川実日子さんが演じる動物の専門家も参加する。
 そしてゴジラ対策で、皆が徹夜を重ねる中、矢口はこうつぶやく。

「この国も捨てたものじゃないな」

 政治家も機能し始める。
 ゴジラ撲滅のために東京に核爆弾を落とすことに対して、NOと言うのだ。
 今までは「アメリカ様の言うとおり」「国連の決議に従うしかない」だったのが、これに異を唱え、矢口の作戦を実行することを決めた。
 外務省は総力をあげてフランスなどを動かし、核ミサイルの使用を遅らせることにも成功した。
 これらの日本政府の動きに対して、アメリカの国務長官は言う。

「危機は日本の外交を進化させたようだな」

 そして、自衛隊以下、日本の総力をあげて、ゴジラの冷却に成功する。

 つまり、この作品のクライマックスからエンディングまでは『日本ってすごい!』である。
 僕はひねくれているので、『日本も捨てたものじゃない』『日本ってすごい!』ってメッセージを素直に喜べないんだけど、これを観た他の日本人はどう思ったのだろう?
 ある人がツイッターで「『シンゴジラ』をすごいとは思うけど、感動はしない」とつぶやいているのを見たが、僕も同じ感想。

 あるいは庵野監督は『日本も捨てたものじゃない』についてどう考えているのだろう?
 まあ、主人公を官僚にして、素直に物語をつくっていけば、必然こうなるんでしょうけどね。
 作品とは一定のイデオロギーや思想を伝えるものでなく、観る人によって、さまざまに解釈できるものですし。

 今回は『シンゴジラ』を別の切り口で、新たにレビューしてみました。
 前回のレビューはこちら。

『シンゴジラ~ゴジラは暴走する原発か?』

 なお、今回、ゴジラの進化の第5形態が明らかになった。

 

 これって、僕たちオタクにいろいろ深読みさせるよな~。

コメント

「BAD FILM」園子温~むき出しの現実と人間の姿を目の当たりにして、観客は絶望する

2017年02月08日 | 邦画
 高円寺で繰り広げられる日本人不良グループと中国人不良グループの抗争。
 憎み合う日本人と中国人。

 まるで近い将来を暗示しているようだ。

 その抗争はヤクザの手打ちによって、いったん集結させられる。
 このヤクザっていうのはアメリカのことかね?
 日本と中国が戦争を始めたら、おそらくアメリカが仲裁に入る。

 こうして親睦を深めるようになった日本人と中国人の不良グループ。
 親睦野球をおこない、香港が返還になった時はいっしょにお祝いする。

 しかし、人間というのは争うことをやめない。
 虐げられていたゲイとレズのグループがグループの主流派に反旗を翻すのだ。
 日本人と中国人が仲良くするのを面白く思わない連中もこれに荷担する。

 おまけに彼らは銃を手にしたから暴力はエスカレートし、事態はますます凄惨になっていく。
 この〝銃〟に象徴されるものは、〝核兵器〟かな?
 人間は強力な武器を持てば使いたくなる。
 使えば、とんでもない事態になるのにそれをやめない。

 人間に対する絶望の物語である。
 人間は争うことをやめないし、武器を持てばそれを使い、凄惨な殺し合いを始める。
 日本人と中国人の女の子、カナとマギーはレズビアンで国境を越えて愛し合うが、〝LOVE&PEACE〟など、圧倒的な憎しみと暴力の前では霧散してしまう。
 マギーは醜い世界を一掃する<地球撲滅運動>の看板を掲げて街を歩きまわるが、これこそが人間に対する絶望の叫び。

 後味の悪い映画だが、後味の悪さこそが、この作品の目指す所だ。
 観客は、むき出しの現実と人間の姿を目の当たりにして、絶望する。
 ……………

 この作品は1990年代に園子温監督が主催した路上パフォーマンス『東京ガガガ』の参加者たちによって演じられている。
 手持ちカメラによる、渋谷のスクランブル交差点や新宿アルタ前で街宣活動やマジゲンカのゲリラ撮影。
 これでパトカーがやって来ることもしばしば。
 うん、この作品はこういう撮り方じゃないと成立しないし、リアリティが失われてしまう。

 路上パフォーマンス『東京ガガガ』については、改めて書きます。

コメント

超高速! 参勤交代~雲隠段蔵、内藤政醇、コメディなのに<カッコいい男たち>が出てくる新時代劇!

2016年09月24日 | 邦画
 4日間で参勤交代しなければ藩がお取りつぶしになる!
 だから、江戸までを四日間で走り抜ける、超高速! 参勤交代(笑)
 そんなコメディでありながら、この作品にはたくさんの<カッコいい男たち>が登場する。

 まずは忍びの雲隠段蔵(井原剛志)。
 段蔵は<雇われ忍者>だ。
 カネで繋がった関係で、湯長谷藩に何の義理もない。
 参勤交代を阻止しようとする隠密と対峙した時には、「わしは牛久でいなくなるから一行を襲うならその後にしてくれ」と裏切りを宣言する。
 しかし、湯長谷藩の殿や家臣たちの人の良さや民を思う気持ちに魅入られて最終的には加勢してしまう。
 その時のせりふがこれだ。
 隠密の首領に「牛久でいなくなると言ったではないか!」と問われて、
「わしは雲よ。
 好きな時に好きな場所に行く」

 カ、カ、カッケーーー!
 自由人の段蔵らしいせりふだ。
 おまけに、世の中を斜に構えて見ていると思いきや、実は<熱い心>を持っている。

 隠密と戦って、しびれ薬を塗った手裏剣が足に刺さった時はこう言う。
「わしに毒は効かん。
 効くのは酒だけよ」

 カ、カ、カッケーーー!
 何だ、このカッコ良さは!
 先程の「わしは雲よ」もそうだけど、一度は言ってみたいせりふだ。
 おまけに段蔵は戦う時、必ず葉っぱを口にくわえている。
 どんなピンチの時にも離さない。
 口に葉っぱと言えば「ドカベン」の岩城だが、段蔵は岩城を超えた。
 ……………………………

 湯長谷藩の殿・内藤政醇(佐々木蔵之介)もカッコいい。
 内藤政醇は、言葉は田舎訛りだし、お人好しだし、閉所恐怖症だし、一見、いいところが全然ない。
 ところが、実は物凄い<居合いの達人>なのだ。
 襲ってくる隠密を居合いの技で切りまくる。
 その技の美しいこと。
 これを見るだけで、この作品を見る価値がある。
 しかもメチャクチャやさしい。
 遊女のお咲(深田恭子)が折檻で木に縛られているのを見て気の毒に思い、お咲を買う。
 しかしエッチなことはしない。
 肩や背中を揉ませながら話を聞いてやる。
 咲が隠密に捕まって人質にされた時は刀を捨てる。
 これで、固く閉ざされていたお咲の心はとろけてしまった。
 身分にもこだわりがない。
 侍も百姓もないと思っている内藤の信条はこうだ。
「時に侍、時に百姓。
 移りゆく世を楽しく生きるのみじゃ」

 ネタバレになるので書かないが、こんな内藤が、自分たちを苦しめた悪の老中・松平信祝(陣内孝則)に対して最後に何を言うのかは大きな見所。

 湯長谷藩の7人の侍たちもカッコいい。
・西村雅彦
・寺脇康文
・上地雄輔
・知念侑李(Hey! Say! JUMP)
・柄本時生
・六角精児
・近藤公園
 基本ボケで、ふんどし姿で道を走りまわるようなキャラでありながら、実は彼らは<一騎当千の強者>ばかりなのだ。
 まさにギャップ萌え!

 コメディなのにカッコいい男たちが出てくる「超高速! 参勤交代」。
 参勤交代に着目してコメディドラマにした所もお見事。
 新しい時代劇が誕生した!

 
コメント

シンゴジラ~ゴジラは暴走する原発か? 3・11を再現した映画。そして現在の日本そのもの

2016年09月09日 | 邦画
 3・11の再現だった。
 最初のゴジラの上陸は<津波>。
 海から上がってきて町を破壊し尽くす。
 官邸は大混乱。
 根拠のない楽観論と前例重視の官僚主義と無能な有識者会議。
 二度目は<放射能>。
 進化したゴジラは<暴走する原発>であり、放射能をまき散らす。
 ゴジラを倒す方法が冷却というのも、水をぶっかけて原子炉を冷やしたのと同じ。
 凍ったゴジラが東京の真ん中で立つ姿は、現在の福島第一原発を思わせる。
 この作品、3・11がなければ完成しなかった作品だろう。
 庵野秀明監督が3・11や原発について、どう考えているのか、聞いてみたい。
 ………………………………

 ゴジラに対抗したのが、霞ヶ関のはみ出し者・オタク官僚だったのも面白い。
 昆虫のアリの世界は働き者ばかりだが、その中の何%かは働かずに遊んでいるアリがいるそうだ。
 彼らは何のために存在しているかというと、いざという時に力を発揮して危機を乗り越えるためらしい。
 はみ出し者・オタク官僚たちはまさにそれだった。
 はみ出し者は日本を救う。
 オタクは日本を救う。
 日本の中心で偉そうにふんぞり返っているやつはどうなんだろう?
 頭が硬直して斬新な発想が出てこない。
 ゴジラに対して彼らが考えたことは、自衛隊の投入や米軍の力を借りること。
 そして国連決議に基づく核ミサイルによる攻撃。
 何かこれは現実に起こりそう。
 日本がどこかの国と戦争になった時は絶対こういう流れになるよね。
 ………………………………

 シンゴジラの到来を予言した牧博士(岡本喜八)。
 博士はゴジラのデータを提示し、「私は好きなようにした。君たちも好きにしたまえ」というメッセージを残した。
 これは日本人に対する絶望のメッセージか?
 たとえば、ゴジラ=原発と読み解くと、「私は原発の危険を提示した。さて、君たちはどうする?」となる。
 経済優先の経団連や経産省、電力会社から献金をもらっている政治家など、日本の中枢は、3・11など忘れて原発を使い続けるんだろうけど。
 ………………………………

 これほど、<法律の適用>にこだわった映画もめずらしい。
 政治家、官僚、自衛隊は、法律を厳格・実直に適用してゴジラに対処する。
 拡大解釈はするが、法律に外れることは絶対にしない。
 これがアメリカ映画だと、法律などお構いなく、敵とガンガン戦っていく(笑)

 でも、これは現在、自民党がすすめている憲法改正の<緊急事態条項>に繋がりそう。
 <緊急事態条項>では、緊急事態が宣告されると、一切の法律は停止され、すべての権限が総理大臣に集中する。
 安倍ちゃんなどは、「ゴジラのような事態が起こったら法律は邪魔でしょう? だから緊急事態条項は必要なんです」と言い出しそう。
 だが、緊急事態条項には危険がある。
 もし首相がバカだったらバカに権力が集中することになるし、独裁的な人物だったら、それが長く続いた場合、独裁国家が誕生する。


『シンゴジラ』
 これは現在の日本そのものを描いた作品だった。

コメント