思い出したのは
「酔うと化け物になる父がつらい」70点★★★★
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ある地方都市に暮らす、田所一家。
サラリーマンの父(渋川清彦)と専業主婦の母(ともさかりえ)、
小学生のサキと妹の4人家族は
一見、ごく普通の一家・・・・・・だった。
父がいつも酔っ払っていることと、
母が新興宗教にのめり込んでいることを除けば。
やがて高校生になったサキ(松本穂香)は
相変わらず日々、酔っ払っている父にうんざりしていた。
そんななか、シャレにならない父の話をマンガに書いてみたところ
親友やクラスメートに好評。
そして
サキはマンガを描くことを、心のより所にしはじめるが――。
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いや~、これはタイトルを聞いただけで
尻込みしちゃいそうですが
でも、それではもったいない気がする。
普通ならシャレにならない話、しかも実話を
電球色のタッチで
よく描き切ったなあ、というのが率直な感想です。
いや、決して「いい話」や、あったかい家族話じゃないし
実際、シビアですが
ところどころにコミカルさをもたせ
目を背けずに、観られる風合いを持ち続けたことによって
この映画は
ダメな人間を断罪するだけでは得られない、
何かを伝えてくれるかも、と思えたんですよね。
それに酔っ払って正体をなくしても
このお父さんは、家族に暴力を基本、振るわない。
そこが救いだった。
(原作コミックも拝見しましたが、実際「1度きりだった」そうでホッとした)
主役の松本穂香さんもすごくよいですが
父親役の渋川清彦氏が
ダメでしょうがないけれど、憎みきれないお父さんを、まあ見事に演じていて
娘たちに服を脱がされて
「おいはぎ~!」と抵抗する様子とか笑ってしまうし
「いっとき、いろいろを忘れるために、
(酒に)頼っちゃうんだよねえ・・・・・・」というつぶやきは
わかる・・・・・・と身に染みすぎた。
人間は弱いもの。
自分だって足を踏み外す可能性は大いにあるし
酒に限らず、ギャンブル、薬物――家族の問題を抱える人はたくさんいる。
でも、自分のことも家族のことも
そういう「負」の部分を人に話すことって
なかなかできるもんじゃない。
そうした人たちに
「ああ、おんなじだ」と思ってもらえるように
原作も、この映画も、作られたのかなと思うのでした。
というようなことを
パンフレットにも寄稿させていただきました。
映画館でお手にとっていただければ幸いです。
それにしても。
原作コミックを探しに、本屋さんに行ったのですが
「コミックエッセイ」の棚が、あまりに壮絶なタイトルだらけで
かなりびっくりしてしまった。
虐待、毒親、病気に依存・・・・・・
そういえば「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(18年)もコミックエッセイが原作だった。
多くの人がつらい経験をし、
それを、こういうかたちで外に出しているのだ・・・と
改めて考えさせられました。
こうしたコミックエッセイ、って
日本独特のものなのでしょうかね。
★3/6(金)から全国で公開。