舞台はグアテマラ。
やはり「見たことのない、世界を見た!」感覚が大きいですね。
「火の山のマリア」73点★★★★
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17歳になるマヤ人のマリア(マリア・メルセデス・コロイ)は
火山のふもとで農業を営む両親と暮らしている。
マリアの両親は、
妻に先立たれた地主の男に
マリアを嫁がせようとしていた。
だがマリアは村の青年に想いを寄せ、
彼に従って身を任せてしまう。
しばらくしてマリアは
自分のお腹に宿った命に気づき――?!
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グアテマラ出身の監督が、
マヤ人の娘と母を描いた作品。
第65回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞しています。
彼らの生活は
実にプリミティブで、その新鮮さがまず第一。
例えば冒頭、
ブタを交配させようというシーンで
連れてきたオスのブタがその気にならない。
17歳のマリアが「やる気、ないよ」と言うと
母いわく「ラム酒でその気にさせるんだよ」。
そして本当にブタに、グビグビとラッパ飲みさせるんですよ!(笑)
このズバリさに笑いがこみ上げてしまいます。
そんなマリアには
親の決めた結婚相手がいるんですが
彼女は村の青年に想いを寄せていて、彼に処女を捧げてしまう。
でもね、この青年が「酒の勢いで……」なんですよ。
その符合に生々しい性と生を感じて、またにんまり。
万事この調子で、
その営みの“ナマ”な様子に圧倒されます。
結局、マリアは青年の子を妊娠してしまうんですが
彼女の母親も結局、状況を深い懐で受け止める。
ただ、それだけではないのがこの映画のおもしろさ。
マリアの出産と赤ん坊をめぐって、
事件が起こるんです。
そして
スペイン語を話せないマヤ人に対する差別や
実際に多発している警察などもグルになった
ひどい犯罪が浮き彫りになってくる。
単なる「知らない土地の、知られざる暮らし」だけではなく
もっと大きな問題を発信し、
社会的な意義があるのがこの映画の見どころですね。
熱い大地を踏みしめて生きるマリアは
グアテマラ出身で、現地でのオーディションに現れたそう。
母親役のマリア・テロンもやはりグアテマラの人で
やっぱり、そのリアリティの強さは大きい。
主人公マリアにはちょっとUAやCoccoを思わせる雰囲気があって
自然の神秘と生きる暮らしも
どこか沖縄の世界観に近い印象を受けました。
★2/13(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
「火の山のマリア」公式サイト