ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

女の一生

2017-12-08 23:07:25 | あ行

「母の身終い」(12年)
監督が
モーパッサン文学を映像化。


「女の一生」71点★★★★


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1819年、仏・ノルマンディー。

10代のうら若き乙女ジャンヌ(ジュディット・シュムラ)は
神父から近くに越してきた
子爵ジュリアン(スワン・アルロー)を紹介される。

両親の勧めもあり、
また若くハンサムなジュリアンに好印象を抱いたジャンヌは
彼との結婚を決める。

だが。

ほどなくしてジュリアンの
ケチケチぶりや、横暴さが明らかになる。

さらに、彼は無慈悲な方法で
彼女を裏切ることに――!


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「母の身終い」で
息子の立場から、母との関係を深掘りした監督が
19世紀の作家モーパッサンの文学を映画化。


清純な娘が愛を信じて結婚し
しかし、あっさり夫に裏切られる。

愛情を注いだ一人息子は、
成長して、家には寄りつかず、金の無心ばかり。

寄る辺なきヒロインは
ついに無一文になり――という、悲惨な話なんです。

でも、不思議と
メソメソした感じはない。

なんだか力すら感じる。

これは
登場人物の内面描写やセリフでの説明を廃し、


さらに
ヒロインの過去と現在、さらに未来の姿までを
自在にカットバックし、
つなげた手法によるものだと思います。

過去、現在、未来、交錯する時間軸が
静けさ、躍動感、温かみ、喜び、悲しみ…
あらゆる要素を生き生きとさせる
不思議な力を持っている。

そして
古臭くなりそうな古典の世界に息を吹き込み、
現代につながる感覚を与えてくれているのです。


誰にとっても
庇護者である両親はいずれいなくなる。

夫は所詮他人で論外だし、
子どもにも、期待出来ないかもしれない。
こうして、誰もがいずれは
独りになる。


どんな人も我が身に照らし、
心の準備をせねばと思うんではないでしょうか。


★12/9(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「女の一生」公式サイト
コメント
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