ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

否定と肯定

2017-12-05 23:52:35 | は行

これは必見!

現代社会への
キツい一発になればいい。


「否定と肯定」79点★★★★


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1996年。
アメリカの大学で教鞭を取る
デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は

ホロコースト否定論者の
デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)から
「あなたを名誉毀損で訴える」という通知を受け取る。

アーヴィングは
「ホロコーストはなかった」と言う歴史学者で
リップシュタットは94年に出した自著で
彼を非難したのだ。

歴史の事実を否定する
こんなアホを
相手にする価値があるのか?

周囲は止めるのだけれど
悩んだ末、リップシュタットは
裁判で闘うことを選ぶ。


しかしアーヴィングが選んだのは
イギリスの法廷。

まったく勝手がわからないなか、
ロンドンの弁護団と組んで
リップシュタットの正義の戦いが始まった――。


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これはね、おもしろいですよ。


ホロコースト否定論者とユダヤ人歴史学者の、
現実にあった法廷対決を描いており、

裁判は2000年に行われ、
あのスピルバーグも裁判費用を応援したそう。

こんなことが起こっていたなんて
ちゃんと知らなかったので
ホント、驚きでした。


現代のヘイト問題、ポスト・トゥルース問題に繋がる
重要なキーがたくさんあるので、必見です。


実在の主人公リップシュタットを演じるのは
演技派レイチェル・ワイズ。


自身もユダヤ系にルーツを持つリップシュタットは
「ホロコーストはなかった」なんてアホな歴史学者アーヴィングを
許せるわけはなく、裁判を決意する。


リップシュタット女史が
情熱と信念にまっすぐな
“正しき人”なことに疑いの余地はないのですが

しかし、
それゆえ彼女は
「本人は一切、反論しちゃダメ」とか
「ホロコースト経験者に証言させるのはダメ」、とか
ちょっと変わった裁判方針に納得できない。


そんな彼女が起こす行動が
すべてをぶちこわしにするんじゃないか?!

もしや、最後に覆されるかも?!
かなりヒヤヒヤさせられました(苦笑)。

正しいはずの主人公に
感情移入しにくくする作りも挑戦的というか、おもしろいなあと。


それにね、すごく響いたところがあるんです。

「この裁判に協力して欲しい」と
在イギリスのユダヤ人団体を訪ねた彼女は
「否定論者なんて、まともにとりあうべきじゃないよ」と
当事者である彼らからも言われてしまう。

でも、そこで彼女は
「書かれつつある歴史には、みんなで参加すべき!」と言い放つ。

この言葉、心にカーン!と響きました。


いま、こうしてる瞬間にも
重要な歴史が動いている。

それを、ボーッと見ていたり
あとになって「あれはよくなかった」とか言ってもダメでしょ、と

彼女の壮絶な戦いは
教えてくれるのです。


「否認や嫌悪することも権利だ」なんていう人の根底にあるのは、
結局、差別思想なんだ、とも
よーく教えてくれている。


おなじみ「AERA」にて、
原作者にして主人公であるデボラ・E・リップシュタットさんへの取材が叶い
本当に、素晴らしい方で感激しました。


まさに現代の「ポスト・トゥルース」を先駆けて経験してしまった彼女が
それとどう闘ったのか?
この現状をどう思っているのか?

充実のインタビューになったと思います。

掲載は少し先の
12/25発売号くらいになりそうですが(「ホロコースト映画特集」に組み込まれます)
ぜひ、映画を先に楽しみつつ
読んでいただければと思います。


★12/8(金)からTOHOシネマズ シャンテほかで全国で公開。

「否定と肯定」公式サイト
コメント
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