「五輪雑感 ~女子バレー その1~」の続きです。
準々決勝 対中国戦
中国が相手だと勝てる気がしなかったが、この日の中国には、いつもの迫力が感じられなかった。激戦リーグで消耗していたのかもしれない。
それに対して、日本は気迫があふれていた。特に江畑と木村のスパイクの切れがよく、面白いように決まった。第1セット、4点差を追いつきデュースの末、取ったのが大きかった。第1、第3セットを取り、ゲーム(セット)を先行したのも精神的に優位に立てたのも勝因と言える。
各セット、競り合い、第5セットもシーソーゲーム。8-6でリードを奪ってのチェンジコートしムードは良かったが、ここで大友がサーブミス。一気に中国に流れが傾き、9-11と苦境に立たされた。
ただ、このゲーム、簡単に終わらない流れとなっていたようで、日本が押し返し13-13。そして14-13。このまま一気にと思われたが、逆に中国が連取し14-15と逆にマッチポイント。
そこで日本も踏ん張り、17-16と3度目のマッチポイントを握る。ここで中道がサーブを決め、勝利した。当然の采配だとは思うが、大友に替えての中道のピンチサーバーの起用は、真鍋監督の殊勲だ。
準決勝 対ブラジル戦
準々決勝のロシア×ブラジルは、ブラジルがグループB4位だったので、ロシアが勝つと思っていたら、ブラジルの勝利。意外な結果だったが、リーグ表を見ると、3勝2敗の実質2位タイの成績だったので、不調というほどではなかったのかもしれない。
ブラジルの予選リーグは、トルコに勝った後、アメリカ、韓国に連敗してしまい苦境に立たされたが、そこから中国、セルビアを連破。上げ潮ムードと言えた。
準々決勝のロシア戦は、まさに激闘で、24-26、25-22、19-25、25-22とフルセットにもつれ込み、最終セットは21-19と死闘の様相。この激戦を制したブラジルは、「怖いものなし」の状態だった。
第1セットは、サイドアウトを繰り返し15-15。この段階では、両チームとも硬さがあり、ペースをつかめていない。
1点リードのブラジルで迎えた16-15で、日本がサーブレシーブが乱れ2点差となる。そこから江畑のスパイクが2度ブロックに捕まり16ー20と苦しくなる。こうなると、ブラジルは伸び伸び、乗り乗りでプレーし、25-18と第1セットを先取。
第2、第3セットもゲーム中盤辺りまで競るが、15-25、18-25と勝ち味が全くないゲームとなってしまった。
サーブ、サーブレシーブ、スパイク、ブロックなどブラジルが上回り、レシーブだけが互角では、勝つのは難しい。
得点の上では競っていたセット序盤も、ブラジルのプレーは乱れることはなく、日本がペースを握ったという場面は一度もなかった。
木村の動きは切れがなく、江畑は徹底的にマークされていた。サーブも弱くブラジルのサーブレシーブが乱れることはほとんどなかった。ブラジルはサーブごとにベンチ(監督)からの細かい指示が出ているようだった。日本の真鍋監督は作戦タイム時も一言「がんばれ」というような励ましの言葉を言うだけで、指示らしい指示はほとんどなかった。
その他、日本のプレーで感じたことは、やはりセンターが弱い。まず、ブロックが弱過ぎ。ブラジル戦は荒木が1本止めただけ、次の韓国戦はゼロだったと思う。攻撃では竹下~大友コンビはある程度(最低限)機能していたが、荒木は第2セット終盤まで打数が4、決定が1と通用する以前の問題で、相手との相性や、サーブレシーブの出来にもよるかもしれないが、竹下は荒木を信用していないのかと思えるほどであった。
次にラリーで競り負けることが多い。これは、やはり決定力(スパイク力)が低いことが原因だが、センター攻撃が少ないこで、的を絞られやすかったのではないだろうか。それと、バックアタックも少ないのも、オープン攻撃が捕まりやすい一因であろう。
これは、何度かバックアタックが1枚のブロックで止められてしまったからかもしれない。
あと、リベロの佐野は、レシーブ力は超一流であるが、トス能力が低いことも痛い。もちろん、リベロは基本的にオーバーハンドパスは禁止なのだが、後衛ゾーンではトスはOKで、ブラジルのリベロは上手くオーバートスを上げていた。
また、アンダーパスにしても、速さを意識していたのかもしれないが、全体的に短く低く、スパイカーは打ちにくそうであった。アンダーパスはブロック側は合わせやすいし、スパイクは打ちにくい。
この点、メンバーから漏れてしまった座安は、この点素晴らしく、後衛ゾーンから前衛ゾーンにジャンプしてオーバートスを上げていた。
3位決定戦 対韓国戦
ベスト8進出チームの中では、ドミニカ共和国の次に勝ちやすいと思われる韓国と3位決定戦を争えたのは幸運だった。
とは言え、エース、キム・ヨンギョンが乗ると非常に厄介だ。ここまで勝ち進んできたからには、好調と考えなければならない。ただ、ハッキリ言って、キム・ヨンギョンのワンマンチームなので、脆さもある。
とにかく、彼女にストレスを与え続ければチームの雰囲気は悪くなる。ゲームをリードすれば自ずと焦り始めるし、彼女の攻撃を何本か止めるのも有効、それが無理なら、他の選手の攻撃を防ぐ、或いは、キムにサーブを集中させる。(日本チームも当然、周知しているはず)
試合は、日本も動きが硬く、特に木村は動きが鈍く、動き出しの反応が普段よりワンポイント遅いように感じた。これを救ったのは、この日江畑に代わって先発した迫田。もともと、韓国戦は相性が良いことを考慮しての起用だった。出場機会が少なく、彼女の欲求が溜まっていたのが幸いした。それに、最初の彼女の攻撃が決まったのが精神的にプラスに作用した。
韓国はミスが多く、終始、日本がリードできたのも大きかった。ただ、第2セットは、序盤8-1と大きくリードしたにもかかわらず、追いつかれデュースに持ち込まれた。ただ、なんとかこのセットを取れたのが大きかった。このセットを逆転されていたら、どうなったか分からない。
第3セットは、序盤から競り合ったが、2セット先取して精神的に優位なのが幸いし、セット終盤は競り勝ち、銅メダルを獲得。
あと、ゲームの山場で日本に有利な判定が2度あったことも、ゲーム展開に影響したと思う。
今回のメダル獲得は「運が良かった」と思うが、選手の敢闘、そして、何よりチームの雰囲気が良かった(サッカーのナデシコジャパンと同様)。
しかし、選手の選考や起用には疑問を感じた。
荒木・大友の活用の仕方などの選手起用、そして、木村の補助となるべき栗原を選考しなかったのは、致命傷になる危険性が大きかった。
また、ピンチのムードを変える力のある石田、攻撃に幅を持たせることができ、佐野の補助となる座安なども選んで欲しかった。
銅メダル、おめでとうございます!
準々決勝 対中国戦
中国が相手だと勝てる気がしなかったが、この日の中国には、いつもの迫力が感じられなかった。激戦リーグで消耗していたのかもしれない。
それに対して、日本は気迫があふれていた。特に江畑と木村のスパイクの切れがよく、面白いように決まった。第1セット、4点差を追いつきデュースの末、取ったのが大きかった。第1、第3セットを取り、ゲーム(セット)を先行したのも精神的に優位に立てたのも勝因と言える。
各セット、競り合い、第5セットもシーソーゲーム。8-6でリードを奪ってのチェンジコートしムードは良かったが、ここで大友がサーブミス。一気に中国に流れが傾き、9-11と苦境に立たされた。
ただ、このゲーム、簡単に終わらない流れとなっていたようで、日本が押し返し13-13。そして14-13。このまま一気にと思われたが、逆に中国が連取し14-15と逆にマッチポイント。
そこで日本も踏ん張り、17-16と3度目のマッチポイントを握る。ここで中道がサーブを決め、勝利した。当然の采配だとは思うが、大友に替えての中道のピンチサーバーの起用は、真鍋監督の殊勲だ。
準決勝 対ブラジル戦
準々決勝のロシア×ブラジルは、ブラジルがグループB4位だったので、ロシアが勝つと思っていたら、ブラジルの勝利。意外な結果だったが、リーグ表を見ると、3勝2敗の実質2位タイの成績だったので、不調というほどではなかったのかもしれない。
ブラジルの予選リーグは、トルコに勝った後、アメリカ、韓国に連敗してしまい苦境に立たされたが、そこから中国、セルビアを連破。上げ潮ムードと言えた。
準々決勝のロシア戦は、まさに激闘で、24-26、25-22、19-25、25-22とフルセットにもつれ込み、最終セットは21-19と死闘の様相。この激戦を制したブラジルは、「怖いものなし」の状態だった。
第1セットは、サイドアウトを繰り返し15-15。この段階では、両チームとも硬さがあり、ペースをつかめていない。
1点リードのブラジルで迎えた16-15で、日本がサーブレシーブが乱れ2点差となる。そこから江畑のスパイクが2度ブロックに捕まり16ー20と苦しくなる。こうなると、ブラジルは伸び伸び、乗り乗りでプレーし、25-18と第1セットを先取。
第2、第3セットもゲーム中盤辺りまで競るが、15-25、18-25と勝ち味が全くないゲームとなってしまった。
サーブ、サーブレシーブ、スパイク、ブロックなどブラジルが上回り、レシーブだけが互角では、勝つのは難しい。
得点の上では競っていたセット序盤も、ブラジルのプレーは乱れることはなく、日本がペースを握ったという場面は一度もなかった。
木村の動きは切れがなく、江畑は徹底的にマークされていた。サーブも弱くブラジルのサーブレシーブが乱れることはほとんどなかった。ブラジルはサーブごとにベンチ(監督)からの細かい指示が出ているようだった。日本の真鍋監督は作戦タイム時も一言「がんばれ」というような励ましの言葉を言うだけで、指示らしい指示はほとんどなかった。
その他、日本のプレーで感じたことは、やはりセンターが弱い。まず、ブロックが弱過ぎ。ブラジル戦は荒木が1本止めただけ、次の韓国戦はゼロだったと思う。攻撃では竹下~大友コンビはある程度(最低限)機能していたが、荒木は第2セット終盤まで打数が4、決定が1と通用する以前の問題で、相手との相性や、サーブレシーブの出来にもよるかもしれないが、竹下は荒木を信用していないのかと思えるほどであった。
次にラリーで競り負けることが多い。これは、やはり決定力(スパイク力)が低いことが原因だが、センター攻撃が少ないこで、的を絞られやすかったのではないだろうか。それと、バックアタックも少ないのも、オープン攻撃が捕まりやすい一因であろう。
これは、何度かバックアタックが1枚のブロックで止められてしまったからかもしれない。
あと、リベロの佐野は、レシーブ力は超一流であるが、トス能力が低いことも痛い。もちろん、リベロは基本的にオーバーハンドパスは禁止なのだが、後衛ゾーンではトスはOKで、ブラジルのリベロは上手くオーバートスを上げていた。
また、アンダーパスにしても、速さを意識していたのかもしれないが、全体的に短く低く、スパイカーは打ちにくそうであった。アンダーパスはブロック側は合わせやすいし、スパイクは打ちにくい。
この点、メンバーから漏れてしまった座安は、この点素晴らしく、後衛ゾーンから前衛ゾーンにジャンプしてオーバートスを上げていた。
3位決定戦 対韓国戦
ベスト8進出チームの中では、ドミニカ共和国の次に勝ちやすいと思われる韓国と3位決定戦を争えたのは幸運だった。
とは言え、エース、キム・ヨンギョンが乗ると非常に厄介だ。ここまで勝ち進んできたからには、好調と考えなければならない。ただ、ハッキリ言って、キム・ヨンギョンのワンマンチームなので、脆さもある。
とにかく、彼女にストレスを与え続ければチームの雰囲気は悪くなる。ゲームをリードすれば自ずと焦り始めるし、彼女の攻撃を何本か止めるのも有効、それが無理なら、他の選手の攻撃を防ぐ、或いは、キムにサーブを集中させる。(日本チームも当然、周知しているはず)
試合は、日本も動きが硬く、特に木村は動きが鈍く、動き出しの反応が普段よりワンポイント遅いように感じた。これを救ったのは、この日江畑に代わって先発した迫田。もともと、韓国戦は相性が良いことを考慮しての起用だった。出場機会が少なく、彼女の欲求が溜まっていたのが幸いした。それに、最初の彼女の攻撃が決まったのが精神的にプラスに作用した。
韓国はミスが多く、終始、日本がリードできたのも大きかった。ただ、第2セットは、序盤8-1と大きくリードしたにもかかわらず、追いつかれデュースに持ち込まれた。ただ、なんとかこのセットを取れたのが大きかった。このセットを逆転されていたら、どうなったか分からない。
第3セットは、序盤から競り合ったが、2セット先取して精神的に優位なのが幸いし、セット終盤は競り勝ち、銅メダルを獲得。
あと、ゲームの山場で日本に有利な判定が2度あったことも、ゲーム展開に影響したと思う。
今回のメダル獲得は「運が良かった」と思うが、選手の敢闘、そして、何よりチームの雰囲気が良かった(サッカーのナデシコジャパンと同様)。
しかし、選手の選考や起用には疑問を感じた。
荒木・大友の活用の仕方などの選手起用、そして、木村の補助となるべき栗原を選考しなかったのは、致命傷になる危険性が大きかった。
また、ピンチのムードを変える力のある石田、攻撃に幅を持たせることができ、佐野の補助となる座安なども選んで欲しかった。
銅メダル、おめでとうございます!
しかし、栗原は怪我で代表を外れ、荒木は不調(というよりも ご指摘のように竹下選手に信頼されていない?)。この傾向は5輪最終予選時より顕著な傾向だった。
江上、三屋でセンターラインが機能していた28年前とはずいぶんと趣きが変り、拾ってのサイドアタック&バックアタックのみの攻撃では木村・江畑選手に負担がかかり過ぎて(しかも、木村選手はサーブレシーブも受けており負担増)両選手の決定率の低さはしょうがないのかも知れないですね。
韓国戦の迫田選手は体力温存で切れていましたし・・・。
オープンスパイカーの人材は豊富なので、ミドルブロッカーの育成が急務な大会の印象でした。
あと、竹下選手は引退でしょうから、替わりの大型セッターの育成(中道選手では竹下選手と大差なし)も急務ですね。
>江上、三屋でセンターラインが機能していた28年前とはずいぶんと趣きが変り、拾ってのサイドアタック&バックアタックのみの攻撃では木村・江畑選手に負担がかかり過ぎて(しかも、木村選手はサーブレシーブも受けており負担増)両選手の決定率の低さはしょうがないのかも知れないですね。
おっしゃる通りで、日本の一番の弱点です。
江上、三屋の頃とは、他チームのセンターの能力が進歩しているので、大変です。
横道にそれますが、「ミドルブロッカー」という名称は変ですよね。ブロックしかしないような感じです。センターでいいと思います。それにオポジットって、どういう意味?セッター対角の方が分かりやすいです。
ディグやレセプションとか、最近のバレーボール用語は分かりにくいですね。
>木村選手はサーブレシーブも受けており負担増
なので、栗原選手をメンバーに入れて、木村選手の負担を減らすべきでした。(栗原選手はサーブレシーブは苦手かもしれませんが、攻撃面では期待できます。あと、サーブも)
竹下選手は、トス捌き、レシーブ、存在感は抜群でした。彼女が抜けるのは相当大きな穴になりそうです。
ただ、戦術面(攻撃の振り分け)では、疑問があるので、そこが秀でたセッターを望みます。