「将棋界(順位戦)の歪み その2」
「将棋界(順位戦)の歪み その1」の続きです。
昨期順位戦C級2組に於ける菅井五段の不運(順位6位、9勝1敗で昇級ならず)の原因は、順位戦のシステムが現状に即していない点(44人の大所帯で各10対局で上位3名を争う)と、棋界の緩さ(弱い者も生き残れる)にある。
後者がより根本的な問題と思えるが、後者の現状は前者(順位戦のシステム)に起因していると考えられ、総合的に考える必要がある。
まずは現状分析だが、棋士の強さを測る場合、実績(タイトル獲得や棋戦優勝など)や現在の地位(順位戦や竜王戦の所属)という観点もあるが、全棋士対象となると実数(勝利数や勝率)が一番間違いのない基準であろう。
その数値だけを並べれば一番間違いないが、ある程度の尺度を設けたほうが分析しやすい。今回の場合は、もちろん、「強さの尺度」である。
これを言葉で表わすと短絡的に表現すると「超一流」「一流」「二流」「三流」となろうが、あまりにも味のない表現であるし「二流」「三流」の範疇が判然としない。
「超一流」という表現も芸がないが、「一流棋士の中でも抜きんでた存在」という意味で分かりやすいと考えている。もっと適切な表現があったら訂正するとしよう。
そこで「二流」の範疇であるが、端的に言えば「一流ではない(一流よりは劣る)者」となる。まあ、「並の棋士」と言えば良いのか…これもさえた表現ではないので、「一般的にそこそこ勝っていて、一流棋士からも警戒される存在」という定義で「一般棋士」でどうか。ただ、この定義だと範囲が広いので、この範疇を二段階に分けたほうが良いかもしれない。
一般棋士の下のランクは、「一流棋士が普通に指せば、まず負けないであろうレベル」ということになる。名称は……「底辺棋士」。さらに、その下のレベルも設けたほうが良いかもしれないが、現段階では保留しておこう。(名称に1時間ほど悩みそうだ)
さて、この尺度を勝率に対応させるのが悩ましい。普通に考えれば、3勝1敗ペース以上、2勝1敗以上、2勝1敗未満1勝2敗以上、1勝2敗未満、1勝3敗未満となるが、将棋界は5割付近に集中しているので、もう少し工夫した方がいいようである。
区分を考える前に、現状を見てみよう。しかし、この勝率を観る場合、ひとつは通算勝率、もう一つは年度勝率の二つの観点がある。
1.通算勝率
まず、一つの目安になるのは「2勝1敗以上のペース(勝率.667以上)」。これは、ずいぶん昔になるが、一流棋士になる者は若い時は高勝率は当たり前で、頂上に立ってから7割を切ると第一人者の地位が危うくなり、.667を下回るとタイトルが保持できなくなる(トップ棋士の位置づけから落ちる)と言われていた。中原名人の軌跡をたどり、谷川九段かその周囲(観戦記者)がそれを意識していたように思う。
低段時代は、1次予選からの参加となり、低段者や全盛期を過ぎたベテラン棋士と当たることが多い。低段と言っても若手棋士なので段に以上の力を持っているので却って手強いが、平均すると楽な相手が多い。本戦まで進出しないと一流棋士と当たらないのも大きい。
逆に一流棋士になればなるほど、手強い相手ばかりとなる。だから、A級やタイトル保持者になると、勝率が落ちるのは、「勢いがなくなった」「マークされる」という理由もあるが、強い相手しか当たらないという根本的な理由があるからだ。
ともかく、7割と2勝1敗ペースが一つの目安となるのではないか。
まず、7割であるが、記憶によると数年前、渡辺竜王、深浦九段、木村八段、山崎七段がそのラインに顔を並べていたはず……そう言えば、通算勝率に造詣の深い方がいたはず……そう、nanaponさんだ。
氏の「棋士の成績移り変わり」(2012年1月24日)の記事が、2008年当時の勝率とも比較してあり、非常に参考になります。
引用させていただくと
【通算勝率】
(100局以上のみ・2011.12末まで 右は2008.4.30まで)
1位 羽生二冠 721 1位 羽生二冠 728
2位 豊島六段 717 2位 木村八段 706
3位 佐藤天六段 692 3位 片上五段 703
4位 広瀬七段 691 4位 山崎七段 698
5位 渡辺竜王 683 5位 渡辺竜王 689
6位 糸谷六段 682 6位 深浦王位 686
6位 稲葉五段 682 7位 丸山八段 672
8位 山崎七段 674 8位 橋本七段 671
9位 戸辺六段 670 9位 村山五段 669
10位 木村八段 664 10位 広瀬五段 667
11位 深浦王位 660 11位 阿久津六段 663
11位 阿久津七段 660 12位 森内名人 660
13位 丸山九段 654 13位 松尾七段 658
14位 村山五段 651 14位 郷田九段 654
15位 松尾七段 645 15位 佐藤和五段 649
15位 橋本七段 645 16位 佐藤二冠 648
(赤字はランク外から、あるいは新)
このデータについては、記事中のnanaponさんの分析を引用する(楽させていただきます)
========================================
ずっとトップの座を譲らない羽生二冠。
若干落ちてはいるけど7割2分台をキープしてるのはさすがです。
それに続くのは当然といえばそうだけど、若手ばかり。
20代前半の棋士たちが上位の人たちとの戦いも増えてる中で通算勝率も伸ばしている。
その中でも、羽生二冠を脅かしているのがタイトル戦にも登場した豊島六段。
順位戦では苦戦しているものの、どの棋戦でも平均して勝ちまくっています。
このまま7割台をキープしつつ、羽生二冠とのマッチレースをしていくのか。
それとも、A級やトップの人たちの壁に阻まれ、3位以下と同じ6割台に飲み込まれていくのか、興味深いところです。
さらに菅井五段、阿部健五段、船江四段など、またその後を追いかける集団も迫ってきているので現在上位にいる佐藤天六段以下の棋士もこの勝率を保つことさえ油断できない状況です。
そして、8位の山崎七段あたりから30代の棋士も顔を出してきていますが、皆通算勝率は以前よりも下げています。このままどんどん自然の流れで若手に取って代わられるのか、それとも今期絶好調の橋本七段のようにまた勝率を上げていくことができるのか否か、これもまた注目です。
4年前はランクインしてたのに、現在は入ってないのが、
3位だった 片上六段 622 (703)
まだまだ若いので奮起してほしいところです。
そして、12位だった 森内名人 642 (660)
森内名人はこのところ11連敗だそうで、名人の成績としてはちょっと残念です。
春からの名人戦防衛に向けて、早くトンネルを抜け出して森内名人らしい将棋を見せてほしいものです。========================================
補足すると、上位に並んでいたA級棋士やタイトル保持者が率を落としている中、渡辺竜王が率を維持しているのは流石です。
また、文中の新鋭の菅井五段、阿部健五段、船江四段の名がデータにないのは100局に満たないから。
で、現在のデータを見ると…と言っても前年度末(2012年3月31日)のもの。少しデータが古いのは、この記事を書こうと思ったのが年度末で、その時エクセルにデータを打ち込んだきりなのです。全棋士のデータを入力するのはけっこう大変なのと、多少古くても半年程度ならそれほど齟齬は生じない……と甘えてさせてください。
それと、年度成績も考慮するので、その場合、並行して考えることができるという事もあります。
(はっきり見ることができない方は、記事の文末をご覧ください)
本来の記事の主旨とは外れるが、上記の流れもあり、まず上位について考えてみる。
このデータは対局数100局未満も含まれるので、菅井五段、船江五段、阿部健五段、永瀬五段らの活きの良い若手が進入している分、順位が下がって見える棋士も多いが、三か月しか経過していないので大きな変動はない。
ただ、トップ10は局数が少な良棋士が多いのと、高率で勝率の変化も大きいので、順位の変動も大きいようだ。
現在(10月24日)のトップ10の順位は、
1位 菅井 五段 .739 82勝 29敗 (1位 .747)
2位 羽生 三冠 .724 1211勝461敗 (4位 .723)
3位 豊島 七段 .719 200勝 78敗 (3位 .723)
4位 佐藤天七段 .698 166勝 72敗 (6位 .696)
5位 永瀬 五段 .696 87勝 38敗(15位 .659)
6位 阿部健五段 .691 76勝 34敗 (5位 .710)
7位 糸谷 六段 .687 202勝 92敗 (8位 .683)
8位 稲葉 六段 .685 128勝 59敗(10位 .677)
9位 広瀬 七段 .6814 216勝101敗 (7位 .687)
10位 渡辺 竜王 .6809 416勝195敗 (9位 .683)
11位 船江 五段 .674 56勝 27敗 (2位 .737) (カッコ内は年度当初のランクと勝率)
菅井、阿部、永瀬五段らが100局を突破し(正式にランク)、船江五段も到達間近。
年度当初に5人いた7割台が3人に減少、全体的に率が落ち気味で、やはり7割キープは難しいか。
その中で、率を上げたのが羽生三冠、佐藤天七段、永瀬五段、糸谷六段、稲葉六段。特に永瀬五段は一気に4分近くアップさせ7割に迫る勢い。永瀬五段は今期27勝7敗(.794)と好成績、実は羽生三冠も34勝9敗(.791)なのだが、対局数が多いので1厘しかアップしていない。
この他に、新四段の八代四段が21勝3敗 .875、斉藤四段が16勝5敗 .762と勝ちまくっている。
前年度終了時で、目安と考えた7割台が3人、.667以上が12名と、高率維持が難しいのが 明らかになったデータである。
一昔前に言われた、.667がタイトル保持者(トップ棋士)のボーダーラインというのは、その顔ぶれを見ると、そのラインを下げた方が妥当に思える。
森内名人が.642、郷田棋王が.641、佐藤王将が.639(現在は.642)と並んでいるので、6割4分がトップ棋士のボーダーラインと言えるかもしれない。
3月末の勝率表がはっきり見えない方は、こちらをご覧ください
氏名 局数 勝数 負数 勝率
1 菅井竜也 91 68 23 0.747253
2 船江恒平 57 42 15 0.736842
3 豊島将之 253 183 70 0.72332
4 羽生善治 1629 1177 452 0.722529
5 安部健治郎 93 66 27 0.709677
6 佐藤天彦 217 151 66 0.695853
7 広瀬章人 294 202 92 0.687075
8 糸谷哲郎 268 183 85 0.682836
9 渡辺明 589 402 187 0.682513
10 稲葉陽 167 113 54 0.676647
11 戸辺誠 207 140 67 0.676329
12 山崎隆之 654 440 214 0.672783
13 木村一基 712 472 240 0.662921
14 深浦康市 1044 690 354 0.66092
15 永瀬拓矢 91 60 31 0.659341
16 阿久津主税 531 349 182 0.65725
17 牧野光則 78 51 27 0.653846
18 丸山忠久 1110 724 386 0.652252
19 村山慈明 333 216 117 0.648649
20 門倉啓太 34 22 12 0.647059
氏名 局数 勝数 負数 勝率
21 橋本崇載 437 282 155 0.645309
22 森内俊之 1259 808 451 0.641779
23 松尾歩 519 333 186 0.641618
24 飯島栄治 438 281 157 0.641553
25 郷田真隆 1111 712 399 0.640864
26 佐藤康光 1384 884 500 0.638728
27 中村太地 228 145 83 0.635965
28 屋敷伸之 1037 658 379 0.634523
29 阿部光瑠 38 24 14 0.631579
30 佐藤和俊 302 190 112 0.629139
31 谷川浩司 1926 1210 716 0.628245
32 久保利明 921 578 343 0.627579
33 澤田真吾 112 70 42 0.625
33 佐々木勇気 48 30 18 0.625
35 行方尚史 758 473 285 0.624011
36 高崎一生 223 139 84 0.623318
37 宮田敦史 335 207 128 0.61791
38 中川大輔 978 604 374 0.617587
39 中田宏樹 1070 660 410 0.616822
40 片上大輔 287 177 110 0.616725
「将棋界(順位戦)の歪み その1」の続きです。
昨期順位戦C級2組に於ける菅井五段の不運(順位6位、9勝1敗で昇級ならず)の原因は、順位戦のシステムが現状に即していない点(44人の大所帯で各10対局で上位3名を争う)と、棋界の緩さ(弱い者も生き残れる)にある。
後者がより根本的な問題と思えるが、後者の現状は前者(順位戦のシステム)に起因していると考えられ、総合的に考える必要がある。
まずは現状分析だが、棋士の強さを測る場合、実績(タイトル獲得や棋戦優勝など)や現在の地位(順位戦や竜王戦の所属)という観点もあるが、全棋士対象となると実数(勝利数や勝率)が一番間違いのない基準であろう。
その数値だけを並べれば一番間違いないが、ある程度の尺度を設けたほうが分析しやすい。今回の場合は、もちろん、「強さの尺度」である。
これを言葉で表わすと短絡的に表現すると「超一流」「一流」「二流」「三流」となろうが、あまりにも味のない表現であるし「二流」「三流」の範疇が判然としない。
「超一流」という表現も芸がないが、「一流棋士の中でも抜きんでた存在」という意味で分かりやすいと考えている。もっと適切な表現があったら訂正するとしよう。
そこで「二流」の範疇であるが、端的に言えば「一流ではない(一流よりは劣る)者」となる。まあ、「並の棋士」と言えば良いのか…これもさえた表現ではないので、「一般的にそこそこ勝っていて、一流棋士からも警戒される存在」という定義で「一般棋士」でどうか。ただ、この定義だと範囲が広いので、この範疇を二段階に分けたほうが良いかもしれない。
一般棋士の下のランクは、「一流棋士が普通に指せば、まず負けないであろうレベル」ということになる。名称は……「底辺棋士」。さらに、その下のレベルも設けたほうが良いかもしれないが、現段階では保留しておこう。(名称に1時間ほど悩みそうだ)
さて、この尺度を勝率に対応させるのが悩ましい。普通に考えれば、3勝1敗ペース以上、2勝1敗以上、2勝1敗未満1勝2敗以上、1勝2敗未満、1勝3敗未満となるが、将棋界は5割付近に集中しているので、もう少し工夫した方がいいようである。
区分を考える前に、現状を見てみよう。しかし、この勝率を観る場合、ひとつは通算勝率、もう一つは年度勝率の二つの観点がある。
1.通算勝率
まず、一つの目安になるのは「2勝1敗以上のペース(勝率.667以上)」。これは、ずいぶん昔になるが、一流棋士になる者は若い時は高勝率は当たり前で、頂上に立ってから7割を切ると第一人者の地位が危うくなり、.667を下回るとタイトルが保持できなくなる(トップ棋士の位置づけから落ちる)と言われていた。中原名人の軌跡をたどり、谷川九段かその周囲(観戦記者)がそれを意識していたように思う。
低段時代は、1次予選からの参加となり、低段者や全盛期を過ぎたベテラン棋士と当たることが多い。低段と言っても若手棋士なので段に以上の力を持っているので却って手強いが、平均すると楽な相手が多い。本戦まで進出しないと一流棋士と当たらないのも大きい。
逆に一流棋士になればなるほど、手強い相手ばかりとなる。だから、A級やタイトル保持者になると、勝率が落ちるのは、「勢いがなくなった」「マークされる」という理由もあるが、強い相手しか当たらないという根本的な理由があるからだ。
ともかく、7割と2勝1敗ペースが一つの目安となるのではないか。
まず、7割であるが、記憶によると数年前、渡辺竜王、深浦九段、木村八段、山崎七段がそのラインに顔を並べていたはず……そう言えば、通算勝率に造詣の深い方がいたはず……そう、nanaponさんだ。
氏の「棋士の成績移り変わり」(2012年1月24日)の記事が、2008年当時の勝率とも比較してあり、非常に参考になります。
引用させていただくと
【通算勝率】
(100局以上のみ・2011.12末まで 右は2008.4.30まで)
1位 羽生二冠 721 1位 羽生二冠 728
2位 豊島六段 717 2位 木村八段 706
3位 佐藤天六段 692 3位 片上五段 703
4位 広瀬七段 691 4位 山崎七段 698
5位 渡辺竜王 683 5位 渡辺竜王 689
6位 糸谷六段 682 6位 深浦王位 686
6位 稲葉五段 682 7位 丸山八段 672
8位 山崎七段 674 8位 橋本七段 671
9位 戸辺六段 670 9位 村山五段 669
10位 木村八段 664 10位 広瀬五段 667
11位 深浦王位 660 11位 阿久津六段 663
11位 阿久津七段 660 12位 森内名人 660
13位 丸山九段 654 13位 松尾七段 658
14位 村山五段 651 14位 郷田九段 654
15位 松尾七段 645 15位 佐藤和五段 649
15位 橋本七段 645 16位 佐藤二冠 648
(赤字はランク外から、あるいは新)
このデータについては、記事中のnanaponさんの分析を引用する(楽させていただきます)
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ずっとトップの座を譲らない羽生二冠。
若干落ちてはいるけど7割2分台をキープしてるのはさすがです。
それに続くのは当然といえばそうだけど、若手ばかり。
20代前半の棋士たちが上位の人たちとの戦いも増えてる中で通算勝率も伸ばしている。
その中でも、羽生二冠を脅かしているのがタイトル戦にも登場した豊島六段。
順位戦では苦戦しているものの、どの棋戦でも平均して勝ちまくっています。
このまま7割台をキープしつつ、羽生二冠とのマッチレースをしていくのか。
それとも、A級やトップの人たちの壁に阻まれ、3位以下と同じ6割台に飲み込まれていくのか、興味深いところです。
さらに菅井五段、阿部健五段、船江四段など、またその後を追いかける集団も迫ってきているので現在上位にいる佐藤天六段以下の棋士もこの勝率を保つことさえ油断できない状況です。
そして、8位の山崎七段あたりから30代の棋士も顔を出してきていますが、皆通算勝率は以前よりも下げています。このままどんどん自然の流れで若手に取って代わられるのか、それとも今期絶好調の橋本七段のようにまた勝率を上げていくことができるのか否か、これもまた注目です。
4年前はランクインしてたのに、現在は入ってないのが、
3位だった 片上六段 622 (703)
まだまだ若いので奮起してほしいところです。
そして、12位だった 森内名人 642 (660)
森内名人はこのところ11連敗だそうで、名人の成績としてはちょっと残念です。
春からの名人戦防衛に向けて、早くトンネルを抜け出して森内名人らしい将棋を見せてほしいものです。========================================
補足すると、上位に並んでいたA級棋士やタイトル保持者が率を落としている中、渡辺竜王が率を維持しているのは流石です。
また、文中の新鋭の菅井五段、阿部健五段、船江四段の名がデータにないのは100局に満たないから。
で、現在のデータを見ると…と言っても前年度末(2012年3月31日)のもの。少しデータが古いのは、この記事を書こうと思ったのが年度末で、その時エクセルにデータを打ち込んだきりなのです。全棋士のデータを入力するのはけっこう大変なのと、多少古くても半年程度ならそれほど齟齬は生じない……と甘えてさせてください。
それと、年度成績も考慮するので、その場合、並行して考えることができるという事もあります。
(はっきり見ることができない方は、記事の文末をご覧ください)
本来の記事の主旨とは外れるが、上記の流れもあり、まず上位について考えてみる。
このデータは対局数100局未満も含まれるので、菅井五段、船江五段、阿部健五段、永瀬五段らの活きの良い若手が進入している分、順位が下がって見える棋士も多いが、三か月しか経過していないので大きな変動はない。
ただ、トップ10は局数が少な良棋士が多いのと、高率で勝率の変化も大きいので、順位の変動も大きいようだ。
現在(10月24日)のトップ10の順位は、
1位 菅井 五段 .739 82勝 29敗 (1位 .747)
2位 羽生 三冠 .724 1211勝461敗 (4位 .723)
3位 豊島 七段 .719 200勝 78敗 (3位 .723)
4位 佐藤天七段 .698 166勝 72敗 (6位 .696)
5位 永瀬 五段 .696 87勝 38敗(15位 .659)
6位 阿部健五段 .691 76勝 34敗 (5位 .710)
7位 糸谷 六段 .687 202勝 92敗 (8位 .683)
8位 稲葉 六段 .685 128勝 59敗(10位 .677)
9位 広瀬 七段 .6814 216勝101敗 (7位 .687)
10位 渡辺 竜王 .6809 416勝195敗 (9位 .683)
11位 船江 五段 .674 56勝 27敗 (2位 .737) (カッコ内は年度当初のランクと勝率)
菅井、阿部、永瀬五段らが100局を突破し(正式にランク)、船江五段も到達間近。
年度当初に5人いた7割台が3人に減少、全体的に率が落ち気味で、やはり7割キープは難しいか。
その中で、率を上げたのが羽生三冠、佐藤天七段、永瀬五段、糸谷六段、稲葉六段。特に永瀬五段は一気に4分近くアップさせ7割に迫る勢い。永瀬五段は今期27勝7敗(.794)と好成績、実は羽生三冠も34勝9敗(.791)なのだが、対局数が多いので1厘しかアップしていない。
この他に、新四段の八代四段が21勝3敗 .875、斉藤四段が16勝5敗 .762と勝ちまくっている。
前年度終了時で、目安と考えた7割台が3人、.667以上が12名と、高率維持が難しいのが 明らかになったデータである。
一昔前に言われた、.667がタイトル保持者(トップ棋士)のボーダーラインというのは、その顔ぶれを見ると、そのラインを下げた方が妥当に思える。
森内名人が.642、郷田棋王が.641、佐藤王将が.639(現在は.642)と並んでいるので、6割4分がトップ棋士のボーダーラインと言えるかもしれない。
3月末の勝率表がはっきり見えない方は、こちらをご覧ください
氏名 局数 勝数 負数 勝率
1 菅井竜也 91 68 23 0.747253
2 船江恒平 57 42 15 0.736842
3 豊島将之 253 183 70 0.72332
4 羽生善治 1629 1177 452 0.722529
5 安部健治郎 93 66 27 0.709677
6 佐藤天彦 217 151 66 0.695853
7 広瀬章人 294 202 92 0.687075
8 糸谷哲郎 268 183 85 0.682836
9 渡辺明 589 402 187 0.682513
10 稲葉陽 167 113 54 0.676647
11 戸辺誠 207 140 67 0.676329
12 山崎隆之 654 440 214 0.672783
13 木村一基 712 472 240 0.662921
14 深浦康市 1044 690 354 0.66092
15 永瀬拓矢 91 60 31 0.659341
16 阿久津主税 531 349 182 0.65725
17 牧野光則 78 51 27 0.653846
18 丸山忠久 1110 724 386 0.652252
19 村山慈明 333 216 117 0.648649
20 門倉啓太 34 22 12 0.647059
氏名 局数 勝数 負数 勝率
21 橋本崇載 437 282 155 0.645309
22 森内俊之 1259 808 451 0.641779
23 松尾歩 519 333 186 0.641618
24 飯島栄治 438 281 157 0.641553
25 郷田真隆 1111 712 399 0.640864
26 佐藤康光 1384 884 500 0.638728
27 中村太地 228 145 83 0.635965
28 屋敷伸之 1037 658 379 0.634523
29 阿部光瑠 38 24 14 0.631579
30 佐藤和俊 302 190 112 0.629139
31 谷川浩司 1926 1210 716 0.628245
32 久保利明 921 578 343 0.627579
33 澤田真吾 112 70 42 0.625
33 佐々木勇気 48 30 18 0.625
35 行方尚史 758 473 285 0.624011
36 高崎一生 223 139 84 0.623318
37 宮田敦史 335 207 128 0.61791
38 中川大輔 978 604 374 0.617587
39 中田宏樹 1070 660 410 0.616822
40 片上大輔 287 177 110 0.616725
5分5分の方がもう少しいるのかと思いましたが、裏読みすると、勝率2~3割の方が結構いることになりますね~。
確かに、そう考えると順位戦が祖語があると言われても仕方がないですね。
>裏読みすると、勝率2~3割の方が結構いることになりますね~
それがですねぇ、実は……、詳しくは「その4」で。