英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

藤井五冠、名人挑戦権を獲得

2023-03-11 17:37:21 | 将棋
 3月8日、第81期名人戦A級順位戦のプレーオフで、藤井聡太五冠(竜王、王位、叡王、王将、棋聖)が広瀬章人八段を破り、渡辺明名人への挑戦権を獲得した。この七番勝負(第1局は4月5日、6日)に勝利すると、史上最年少での名人位獲得となる。これまでの最年少記録は谷川浩司十七世名人の21歳2カ月。
 藤井五冠は現在、羽生九段と王将戦七番勝負(防衛戦・現在、藤井王将の3勝2敗)、渡辺棋王と棋王戦七番勝負(現在、2勝1敗)を戦っている。棋王戦五番勝負が始まった時は、《藤井五冠、六冠なるか?》であったが、六冠を素通りするように七冠を達成してしまう可能性が大きい。もちろん、羽生九段が連勝して王将位奪取(藤井失冠)、渡辺名人・棋王も両タイトルを防衛する可能性もあり、七冠ではなく四冠になってしまう可能性もある(その可能性は、相当小さいが)

 3月2日に「2022年度A級順位戦 最終局(対局前)」という記事を書いたので、その結果をまとめておきたい。

最終局結果 (青字勝利)、
藤井竜王(7勝2敗)ー ⑩稲葉八段(4勝5敗)
広瀬八段(7勝3敗)ー ⑧菅井八段(5勝4敗)
①斎藤八段(5勝4敗)ー ⑥永瀬王座(6勝3敗)
豊島九段(6勝3敗)ー ③佐藤天九段(3勝6敗)
②糸谷八段(1勝8敗)ー ⑧佐藤康九段(1勝8敗)
・佐藤康光九段が全敗を免れたのは嬉しい

 この結果、
【A級順位戦最終成績】
広瀬八段 7勝2敗(ランク5位) 
藤井竜王 7勝2敗(ランク9位)
豊島九段 6勝3敗(ランク4位) 
永瀬王座 6勝3敗(ランク6位)
斎藤八段 5勝4敗(ランク1位)
菅井八段 5勝4敗(ランク8位)
稲葉八段 4勝5敗(ランク10位)
佐藤天九段3勝6敗(ランク3位)
糸谷八段 1勝8敗(ランク2位)
佐藤康九段1勝8敗(ランク8位)
 となり、広瀬八段と藤井竜王のプレーオフとなった。
 降級は糸谷八段と佐藤康九段。


 広瀬八段と藤井竜王の両者とも敗れれば、5者プレーオフとなっていた。観たかった。

 プレーオフは
○藤井五冠-広瀬八段×

 難解な中盤戦を藤井五冠が抜け出し、有利→優勢→勝勢のいわゆる“藤井曲線”を描いての勝利だった。
 とは言え、終盤、広瀬八段が捨て身の勝負手を繰り出し、「藤井ピンチか?」「どうやって凌ぐのか?」と大盤解説者が悩む局面も水面下で出現。
 一目、《必至だ》と思われた局面……ところが、桂打ちの妙手で後手の攻めは切れてしまう……
 桂の利きで直接攻められる地点を守ると同時に、玉の逃げ場を打った桂で埋めることで、打ち歩詰めを誘い、後手がこれ以上攻めることができないという巧守であった。

 (実戦では出現しなかった。広瀬八段も見えており、避けたとのこと)

 ABEMA将棋は将棋ファンにとっては非常に有り難い存在だが、解説者に不満を感じることが多い。
 ハイレベルな将棋をリアルタイムで映像で観戦できることは嬉しいが、解説がそれに追いついていないことが多々ある。
 個人の名を挙げるのは良くないと思うが、何度も不満を感じるので、書かせていただくと……井出隼平五段。
 大盤で話しながらの解説なので、深く正確に読みを入れるのは難しいが、上辺だけの読みで、自信ありげに語る……しかも、話し方が、感想戦や研究会での身内だけで話すときのような馴れ馴れしい口ぶり。
 AIの示す手順をチラ見することが多い。(AIを参考にしないで、的外れな解説をされるのも困るが)

 渡辺名人や森内九段の解説は、非常に局面(形勢)を把握するのに優れている。
・トップ棋士の読み筋を看破し、指し手の意図を解説してくれる
・AIの示す手に対しても、その意味を理解したうえで、「人間では無理」とか「正着を指し続けるのは困難」とか人間(トップ棋士レベル)の目線で語ってくれる
・局面での本筋の手を示してくれる
・実践的(人間的)に嫌な筋や勝負手も解説してくれる


現在、王将戦第六局、ここ数手で形勢が藤井王将に傾きつつある……
何とか頑張って、最終局に持ち込んでほしい。
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2023王将戦第5局(2022年度) その6「△3七歩と打つと?④」

2023-03-11 00:38:45 | 将棋
 簡単にこれまでの経緯を説明すると…

 △3七歩と打つと“変化図1の2”に進むのがほぼ必然で、ここから①△4九と、②△7二銀、③△5一金、④△6二金、⑤△4二銀、⑥△4二金など変化が多岐に亘り、①②③⑤は先手良し、④は後手が指せそう。で、⑥は“変化図1の10”から△7二銀と受けて▲6一銀の割打ちを喰らうのを覚悟しなければならない。

 図から△6二玉の一手。この時、A▲7二銀成、B▲5一銀、C▲5三桂右成、D▲5三桂左成、E▲8四銀、F▲4二龍など多くの危険な手が見えるが、A▲7二銀成は後手が良さそうB▲5一銀も難解な変化をかいくぐれば、後手が良さそう。
 C▲5三桂右成、D▲5三桂左成も後手が良くなるようだ。(←申し訳ありません。変化など省略させていただきます)



 今回は、E▲8四銀、F▲4二龍について。
E▲8四銀
 ▲8四銀は、後手玉に詰めろを掛けると同時に、7五に利かせることで先手玉の詰めろを解消する“詰めろ逃れの詰めろ”。
 しかし、△5九と▲6八玉△6九と▲7七玉と大きな利かしを入れられてしまう。銀を手放したので持駒が歩だけとなり、”△5九と”“△6九と”を▲同玉と取ると合駒ができず詰んでしまう。

 例えば、“1の25”の△6九とに▲同玉だと△4九飛▲5八玉△4八金▲6八玉△5九角▲6九玉△7七角成まで。

 ▲7七玉と追われた局面はかなり後手が得したようだが、意外と難しい。

 でも、△4一金打と実践的に指せば後手が勝ちやすそう。他に良い手……△8七歩成とがあるかもしれない。▲8七同歩なら△5五角と出て、▲6六歩に△同角▲同玉△4四角▲7六玉△6六飛▲7七玉△7六金▲8八玉△6八飛成▲8九玉△7八龍以下詰み。▲8七同玉には△8五飛で8四の銀を抜いた手が詰めろ。
 ▲8四銀は詰めろ逃れの詰めろだが、その瞬間、合駒をする駒がなくなるので、先手が負けのようだ。

 次に、▲4二龍の変化に進むが、その前に――
 「その4」で、

 “変化図1-11”は△6二玉の一手。そこで、A▲7二銀成、B▲5一銀、C▲5三桂右成、D▲5三桂左成、E▲8四銀、F▲4二龍など多くの危険な手が見える【補足】現状、先手玉には詰めろが掛かっている(詳しくは「その6」で)と述べた
ので、その説明を
 どういう詰み筋があるかというと(ここで手番が後手だとすると)……
 △5九と▲同玉△3七角成(△3九飛でも詰む)▲4八銀△同馬▲同玉△3七角以下詰み。△3七角成に合駒せずに▲6八玉と逃げても、△5九角▲6九玉△5八金▲同玉△4八角成以下詰み。
 また、初手△5九とに対して▲6八玉と逃げても、△6九飛▲7七玉△4四角▲6六銀△同角▲同歩△7六銀以下詰む。
 つまり、現状で後手の持ち駒に飛角金があると詰む(飛角銀では詰まない)

F▲4二龍
 ▲4二龍には△6一玉の一手。

 ここで、①▲4一龍、②▲3一龍があり、それぞれに対して合駒も多種類あり、その後も多岐に枝分かれするが、簡潔に記します(手抜きです)。
①▲4一龍
 これに対しては、金合いが最善(理由は後述)。


 ここで▲5三桂右不成と迫るのが最善で、以下△同角▲同桂不成△6二玉とするのが最善の応手(6四の角が消えたので、先手玉への詰めろ持消えたのは後手にとって痛いが)。▲5三桂右不成に対して、さらに二度目の桂不成に対して5一の金を見捨てて7一に逃げる手も有力だが、先手良しとなる(説明省略)。
 △6二玉▲9五角に△7三桂(変化図1の29)と跳ねて合駒を節約できるのが金合いの利点。

 5一に銀を合駒した場合は▲6一桂成が利く。

 5一の駒が金ならば、▲6一桂成に▲同金と取れるので何でもないが、5一の駒が銀なので当然取れない。△6一同玉と取ると、以下▲5二銀△7一玉▲5一龍△8二玉▲8三銀以下詰む。△6一同玉では△5三玉と逃げる手もあるが、以下▲5一龍△5二桂▲6二銀△6四玉▲7三銀不成以下詰み。この詰みがあるので、▲9五角には△7三桂打としなければならなくなる。それなら、5一には金を打っておいた方が良い。
 △7三桂(変化図1の29)以下、▲6一金△同金(こう取れるのも金合いの利点)▲同桂成△5三玉▲8六角△7五銀▲5一龍△5二桂と進みそう。

 こう進むと、先手玉には△5八角以下の詰めろが掛かっており、角取りも残っているので、後手が良さそう。

②▲3一龍
 ▲3一龍には銀合いが正着。
 ▲3一龍に△5一金と打つと、以下▲5三桂右不成△同角▲同桂不成△6二玉▲9五角△7三桂と同様な手順を進めると、今度はここで▲4二銀が成立する。

 ①の▲4一龍なら図で△4一金と龍を取れるが、金は1マスしか動けない。
 図で先手玉の詰めろも解けているので、王手でない▲4二銀が利く。以下、△4二同金なら▲同龍以下追い詰み。

 よって、▲3一龍には△5一銀と打つ。この時、後手の持ち駒が飛角金なので先手玉は詰めろ。よって、先手も一手の余裕もない。
 以下、これまでと同様に、▲5三桂右不成△同角▲同桂不成△6二玉▲9五角△7三桂▲6一金と迫る。
 ここで、5一の駒が銀なので6一の金を取ることができないのが△5三玉の時に桂が取れる、△5三玉▲8六角△7五桂(銀がないので桂合)▲5一龍△5二桂(変化図1の33)と進む。

 ”変化図1の33”と並べて“変化図1の30”(▲4一飛△5一金の変化)を提示したが、両図とも先手玉には詰めろが掛かっている。33図は△5八角▲6八玉(▲同玉は△4八飛)△6九飛▲7七玉△6七角成以下詰み。30図は△5八角▲6八玉(▲同玉は△4八飛)△6九飛▲7七玉△7六金までの詰み。(33図の方が角取りが残っている分だけ有利が大きい)
 両図とも▲6二銀や▲4二銀や▲5四銀や▲7五角と攻める手はあるが、いずれ、▲6八銀と手を戻すことになりそう。
 33図の方が角取りが残っている分だけ後手の有利分が大きく、①▲4一龍②▲3一龍では②▲3一龍の方が優る
 ”変化図1の33”では▲6八銀と一旦、手を戻して、まだまだこれからの将棋。(若干、後手よしか?)



《第1図から△3七歩と打ったらどうだったか?》という疑問だったが、《以下、変化図1の2まで進み、ここで△6二金か△4二金で後手も指せそう》とさせていただく。
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