
職場でちょっとへこむできごとがあって、いろんなことを考えながら車を運転して自宅へ向かう時に、ふっと「えんやーとっと、えんやーとっと」とつぶやくショウケン(萩原健一」の姿を思い浮かべました。
何のことかわからないでしょうが、30年くらい前に観た映画「青春の蹉跌」の1シーンなのです。映画館で何回か観て、BSでも一度観ただけなのに何でか克明にいろんなシーンを覚えているのです。若い頃に観た映画に何本かこんなふうに刻印されたものがあります。
映画は石川達三原作 神代辰巳監督 出演 萩原健一 桃井かおり 壇ふみ 森本レオ 等の顔ぶれです。時代を背景として学生運動あり、貧困からはい上がろうとする青年、将来が約束されようとしている結婚、その前にたちはだかる欲望と過去そういったものがどろどろと描かれていくのです。
自分の周りにまとわりつく現実をふりほどいて、美化された将来に向かおうとする時に主人公の口から出てくるまるで呪文のようなことばが「えんやとっと、えんやとっと…」なのである。切ないテーマソングとこの呪文が妙に心に残る映画でした。
司法試験をめざし、次々に突破していき将来を嘱望されている矢先、妨害が入ってきて、事件を引き起こしてしまい、挫折していくというようなありきたりのストーリーなのですが、何ともいえない切なさがありました。観た時に自分が青春まっただ中だということがあると思いますが、いいとこのお嬢様役の壇ふみとすさんだ家庭の短大生の桃井かおりが対照的に描かれていて、女性観という角度から観ても面白いかもしれません。
大学に入ることで自分の生活もかわっていくんじゃないかという自分の中の変身願望やはい上がりたい気持ちが、この映画のテーマと波長があったのかもしれません。当時の小説の中でも、松本清張や森村誠一の中にもこのようなテーマがたくさんあったように思います。
映画の中で司法試験をめざしていた先輩方が次々に離脱していく姿を見せつけながら、そこからの帰りにもやっぱり「えんやとっと…えんやとっと…」のつぶやきながら歩いていく主人公…。
そんな映画のことをどうして思い出したんだろう?
「えんやとっと…えんやとっとと…まつしまの、えんやとっと…えんやとっとと…」
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