先日、ある小学校に行ってきました。
指導が難しい男の子いるのでどう支援したらいいか相談にのってほしいとのことでした。校長室で簡単な打ち合わせをしました。
担任からの気づきメモをもらったのですが、困った行動(指導上)についてたくさん記述してあり、これは相当困っているな…と思いました。
2時間目は体育館で合同音楽です。
リコーダーの導入ということで3クラス全員体育館に集合して、音楽メーカーからくる専門家から指導してもらいます。
きちっとした方で声は非常に通る方でした。
まず、見本ということで『千と千尋の神隠し』のテーマやトトロの『さんぽ』を演奏されました。
「この曲知っている人?」では反応しなかった彼も『さんぽ』の時は足が動いていました。
リコーダーを袋から出させてもすぐには吹かせません。
「穴はいくつあるか?」「左手がなのはどういう訳か」などいろんな導入部分があります。
姿勢と息の吹き入れ方などを徹底されます。話だけが長くなるとだんだん落ち着かなくなってきます。この間笛は袋に貼ったままです。
やっと袋から出すことができても、なかなか吹けません。まずは姿勢の徹底です。
口にくわえるのではなく、あごにあてて待たなくてはいけません。ここもなかなかきびしい。何人かは口に入れて遊んでいます。
右手でリコーダーの下だけを持ってタンギングだけの練習を延々します。
「おはようございます」「こんにちは」などやってみせますが、そのことの大事さについてなかなか伝わらない子どもたちは「だから何なんだよ~」と適当に吹き始めます。
「前に出てやってくれる人?」と先生が訪ねますが、誰も出てきません。
担任たちの再度の後押しで2人が前に出ます。
タンギングだけかと思っていると、二人の笛を両手で持っていきなり曲を演奏し始めました。
みんなびっくりです。前に出て成功体験を持った子と、「前に出ればよかったな~」と思うその他大勢の心の葛藤が手に取るように伝わってきます。
心だけでとどまる子がほとんどですが、中には気持ちが行動に出てしまう子がいます。そういう子どもたちが気になる子たちです。
一斉指導では、"シ"と"ラ"くらいしかできないので、子どもたちはあまり面白くないのかだんだん乱れがちになります。
今回注目している佐々木くんは課題が高くなってくるとできないので自己実現の方向に向かいます。
みんながやめた頃にピーと吹いてしまったり、みんなと同じだとわからなくなるので、強く吹くなど、自分だけ違う音でアピールし始めます。
最後に講師が、6種類の違うリコーダーを出してきて演奏するとみんな注目します。
一番最後にアルトとソプラノの2本を同時に咥えて演奏し始めるとみんな食い入るように見ていました。
どういう時に集中できなくてどういうときに集中できるのかがよくわかって興味深かったです。
でも、専門家が来て指導するといういうのは、子どもたちが『あこがれ』のようなものを持つことができるのは大きな収穫かもしれません。
その反面、子どもたちの実態が理解されていないまま、どんどん進んでいくのは教育としてどうなのかちょっと考えました。
それぞれの子に合った伝え方は、担任しかできないので、そこらあたりも考えていかなくてはと思いました。
教室に帰ると、リコーダーをロッカーに片付けてから行間体育にいくように指導されます。
佐々木くんはそんなことはお構いなく外に飛び出します。
教室の中は7名くらいしか残っていません。
残っている男の子の中でも乱暴な男の子がいて教室の後ろで首を持って友だちを倒しています。
「それはやり過ぎだよ。気をつけないと」と注意はしましたが、最近の子どもたちはどうも過剰な接触が多いように思います。
待っている間、後ろに貼ってある作文を見ました。佐々木くんの作文です。
「しょうらいのゆめ けさつかんはがっこいがらです」
「とくいなこと すこうです。すこうはたのしいがったです」
文字が抜けていたり、かとがの記述がはっきりしません。
いち早く帰った男の子も笛をしまっていませんでした。
その子はすぐに気づいて片付けに行ったので、「忘れてたね。ちょっと失敗だね」と声をかけるとちょっと笑顔で肩をすくめていました。
授業が始まります。
前の時間の黒板がまだ消されていません。黒板は係が消すようになっています。
係活動はもちろん大切なんだと思いますが、チャイムがなって授業が始まる時にまだ黒板が準備できていないことはどうなんろう?と思いました。
教師は子どもたちに対して「自分のことは自分で」「自分が使ったものは自分で片付けて!」と指導しますが、
それなら「自分が書いた文字くらい自分で消したら!」と思ってしまいます。
係活動として必要なら帰る直前だけくらいにとどめておいたらどうなんだろう?と思いました。
算数の授業を開始しようと思っている先生にアクシデント。
「パソコンがない。」「職員室に取りに行ったら?」「職員室じゃなくてお家に忘れたみたい。充電しておいたから」との会話が。
佐々木くんはツッコミをどんどん入れてきます。
パソコンなしで授業はスタートしました。
黒板に問題を書いて、「みんなノートに書いてね」「もう書いた?」
佐々木くんは、「ちょっと待って。1時間待って。1週間待って」ツッコミ満載です。
近くにいたので「いっぱい言うと面白くない。最初のは面白かったけどね。」と小さな声で話しかけました。
少し納得した様子だったので、このまま大丈夫なのかな?と思っていました。
問題を数問やって、佐々木くんも指名してもらっていました。
何問かの質問で他の子を指名した時に「何で僕を当てないんだ!」と騒ぎ始めました。
それに対して担任はスルーしていました。私は横から声をかけましたが、全く聞こうとしません。
担任の指示しか入らなくなっています。
少し時間をおいて担任が話しに来ましたが、もう納得はできていません。
当てられなかったことから怒り始めて定規でノートと教科書を机から落とし始めます。
注意されても「うーん。やりたくない。もうやらん。」机のまわりのものを片っ端から散らかし始めます。
ゴールがないようです。でも、大事なリコーダーは投げません。
全部投げるものがなくなると、消しゴムを使い始めて、消しゴムのかすを投げ始めます。
教室から飛び出さないだけでも偉い!偉い!
4時間目に少し担任と話をしました。
急にどうこうなるわけでもないと思いますが、評価を求めている行動であることは間違いないので、
自己実現ができる方向で評価をしてあげる工夫であるとか、
先生はいつも見ているよという理解をどう進めていくのかなどの話をしていきました。
友だちへの暴力的な行為については、そのことだけでなく、なぜ起きたのかを共感的に理解することなど、少しずつ確認していきました。
いつも思うのですが、私たちは子どもを理解するための橋渡しをするだけで、
実践されるのはいつも教室の担任の先生方なのだということは肝に銘じています。
他にも気になる児童が数名いましたが、「継続的に話を進めて行けたらいいね」と双方で確認して学校を後にしました。