とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

「リコーダーの一斉指導でいろいろ考えました。」~苦手な算数への葛藤~

2013-05-23 23:48:04 | コーでないと

先日、ある小学校に行ってきました。

指導が難しい男の子いるのでどう支援したらいいか相談にのってほしいとのことでした。校長室で簡単な打ち合わせをしました。

担任からの気づきメモをもらったのですが、困った行動(指導上)についてたくさん記述してあり、これは相当困っているな…と思いました。

2時間目は体育館で合同音楽です。

リコーダーの導入ということで3クラス全員体育館に集合して、音楽メーカーからくる専門家から指導してもらいます。

きちっとした方で声は非常に通る方でした。
 
まず、見本ということで『千と千尋の神隠し』のテーマやトトロの『さんぽ』を演奏されました。

「この曲知っている人?」では反応しなかった彼も『さんぽ』の時は足が動いていました。

リコーダーを袋から出させてもすぐには吹かせません。

「穴はいくつあるか?」「左手がなのはどういう訳か」などいろんな導入部分があります。

姿勢と息の吹き入れ方などを徹底されます。話だけが長くなるとだんだん落ち着かなくなってきます。この間笛は袋に貼ったままです。

やっと袋から出すことができても、なかなか吹けません。まずは姿勢の徹底です。

口にくわえるのではなく、あごにあてて待たなくてはいけません。ここもなかなかきびしい。何人かは口に入れて遊んでいます。

右手でリコーダーの下だけを持ってタンギングだけの練習を延々します。

「おはようございます」「こんにちは」などやってみせますが、そのことの大事さについてなかなか伝わらない子どもたちは「だから何なんだよ~」と適当に吹き始めます。

「前に出てやってくれる人?」と先生が訪ねますが、誰も出てきません。

担任たちの再度の後押しで2人が前に出ます。

タンギングだけかと思っていると、二人の笛を両手で持っていきなり曲を演奏し始めました。

みんなびっくりです。前に出て成功体験を持った子と、「前に出ればよかったな~」と思うその他大勢の心の葛藤が手に取るように伝わってきます。

心だけでとどまる子がほとんどですが、中には気持ちが行動に出てしまう子がいます。そういう子どもたちが気になる子たちです。

一斉指導では、"シ"と"ラ"くらいしかできないので、子どもたちはあまり面白くないのかだんだん乱れがちになります。

今回注目している佐々木くんは課題が高くなってくるとできないので自己実現の方向に向かいます。

みんながやめた頃にピーと吹いてしまったり、みんなと同じだとわからなくなるので、強く吹くなど、自分だけ違う音でアピールし始めます。

最後に講師が、6種類の違うリコーダーを出してきて演奏するとみんな注目します。

一番最後にアルトとソプラノの2本を同時に咥えて演奏し始めるとみんな食い入るように見ていました。

どういう時に集中できなくてどういうときに集中できるのかがよくわかって興味深かったです。

でも、専門家が来て指導するといういうのは、子どもたちが『あこがれ』のようなものを持つことができるのは大きな収穫かもしれません。

その反面、子どもたちの実態が理解されていないまま、どんどん進んでいくのは教育としてどうなのかちょっと考えました。

それぞれの子に合った伝え方は、担任しかできないので、そこらあたりも考えていかなくてはと思いました。

教室に帰ると、リコーダーをロッカーに片付けてから行間体育にいくように指導されます。

佐々木くんはそんなことはお構いなく外に飛び出します。

教室の中は7名くらいしか残っていません。

残っている男の子の中でも乱暴な男の子がいて教室の後ろで首を持って友だちを倒しています。

「それはやり過ぎだよ。気をつけないと」と注意はしましたが、最近の子どもたちはどうも過剰な接触が多いように思います。

待っている間、後ろに貼ってある作文を見ました。佐々木くんの作文です。

「しょうらいのゆめ けさつかんはがっこいがらです」

「とくいなこと すこうです。すこうはたのしいがったです」

文字が抜けていたり、かとがの記述がはっきりしません。
 
いち早く帰った男の子も笛をしまっていませんでした。

その子はすぐに気づいて片付けに行ったので、「忘れてたね。ちょっと失敗だね」と声をかけるとちょっと笑顔で肩をすくめていました。

授業が始まります。

前の時間の黒板がまだ消されていません。黒板は係が消すようになっています。

係活動はもちろん大切なんだと思いますが、チャイムがなって授業が始まる時にまだ黒板が準備できていないことはどうなんろう?と思いました。

教師は子どもたちに対して「自分のことは自分で」「自分が使ったものは自分で片付けて!」と指導しますが、

それなら「自分が書いた文字くらい自分で消したら!」と思ってしまいます。

係活動として必要なら帰る直前だけくらいにとどめておいたらどうなんだろう?と思いました。

算数の授業を開始しようと思っている先生にアクシデント。

「パソコンがない。」「職員室に取りに行ったら?」「職員室じゃなくてお家に忘れたみたい。充電しておいたから」との会話が。

佐々木くんはツッコミをどんどん入れてきます。

パソコンなしで授業はスタートしました。

黒板に問題を書いて、「みんなノートに書いてね」「もう書いた?」

佐々木くんは、「ちょっと待って。1時間待って。1週間待って」ツッコミ満載です。

近くにいたので「いっぱい言うと面白くない。最初のは面白かったけどね。」と小さな声で話しかけました。

少し納得した様子だったので、このまま大丈夫なのかな?と思っていました。

問題を数問やって、佐々木くんも指名してもらっていました。

何問かの質問で他の子を指名した時に「何で僕を当てないんだ!」と騒ぎ始めました。

それに対して担任はスルーしていました。私は横から声をかけましたが、全く聞こうとしません。

担任の指示しか入らなくなっています。

少し時間をおいて担任が話しに来ましたが、もう納得はできていません。

当てられなかったことから怒り始めて定規でノートと教科書を机から落とし始めます。

注意されても「うーん。やりたくない。もうやらん。」机のまわりのものを片っ端から散らかし始めます。

ゴールがないようです。でも、大事なリコーダーは投げません。 

全部投げるものがなくなると、消しゴムを使い始めて、消しゴムのかすを投げ始めます。

教室から飛び出さないだけでも偉い!偉い!

4時間目に少し担任と話をしました。

急にどうこうなるわけでもないと思いますが、評価を求めている行動であることは間違いないので、

自己実現ができる方向で評価をしてあげる工夫であるとか、

先生はいつも見ているよという理解をどう進めていくのかなどの話をしていきました。

友だちへの暴力的な行為については、そのことだけでなく、なぜ起きたのかを共感的に理解することなど、少しずつ確認していきました。

いつも思うのですが、私たちは子どもを理解するための橋渡しをするだけで、

実践されるのはいつも教室の担任の先生方なのだということは肝に銘じています。

他にも気になる児童が数名いましたが、「継続的に話を進めて行けたらいいね」と双方で確認して学校を後にしました。

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子どもの事実が教師を変える。

2007-12-03 23:32:55 | コーでないと
先日、大変勉強になる出来事に出会いました。
結論から言えば「子どもの事実が教師も変えていく」ということです。

ある小学校に特別支援教育の支援に行きました。
その学校は、かつての同僚が赴任していた学校でした。
1学期に行った時は、個別の支援計画を見せていただいて、子どもたちの具体的な話を聞く程度でした。

その後、その学校の校内コーディネーターの方から市教委にに訪問するコーディネーターを変更してほしいという申し出がありました。
つまり、私では役に立たないので別の訪問者にしてほしいということでした。

事情を聞くと、かつての同僚の教育実践に非常に不満をもっている。何とかその実践内容を変えてほしいのに、かつての同僚では馴れ合になってしまうとのことでした。

別に馴れ合いをしているつもりはありませんでした。
一度目の訪問では、当たり障りのないことを話してきただけでした。

親御さんも強い不満をもっているということも聞いていたので、つてを使って親御さんとは直接話をすることにしました。
親御さんの話を要約すると、「自閉症の特質を理解していない。障害特性に応じた指導をしてほしい。今年になって不適応な行動が目立ってきた」というような内容でした。

校内コーディネーターと相談をして、まず授業を見てから支援についての話をしようということになりました。
授業を見せてもらうと確かに、子どもにわかりにくい授業が展開していました。
協議のなかで、相手が傷つかない程度に具体的なアドバイスをしました。
教材もできるだけ具体的に紹介してきました。

すると、1週間後に校内コーディネーターからもお礼の電話があり、親御さんからも子どもが落ち着いたというメールをもらいました。
文化祭に訪れたかつての同僚のIさんからも最近うまく行っているという話を聞きました。

やれやれ、何とかうまく行っているならいいかと思い、しばらく忘れていました。
すると金曜日の夜にIさんから電話がありました。
何の話だろう?と少し気になりながら電話に出ました。

すると、以下の話を一気に話し始めました。
「Aさんは、あれから落ち着いて勉強ができるようになった。でも、まだおしっこだけはトイレでしてくれなかった。それが、ここ数日自分でトイレカードを指さしてトイレに向かうようになってきた。何度かトイレでおしっこができるようになった。それだけでもうれしいのに、今日、市内の障害児学級の集まりで、初めて行った体育館のトイレでも2回おしっこをすることができた。」

すごいうれしくて、この喜びを誰かに話したくて仕方なかった。誰に話そうかと思っていたら、Dylanを思い出した。

…ということでした。

この同僚のIさんとはそんなに親しい仲ではありませんでした。
むしろ、敵対することが多かったように思います。
そのIさんが「誰かに話したい」と思って私に電話してきたことだけでも驚きです。

もう一つ、このIさんを「子どもの事実を我が子とのように喜び、誰かに伝えたくなる」ような教師に変えたのはまさに子どもの事実なのです。
そのことに感動してしまいました。

「子どもが変われば親が変わる」「子どもが変われば教師が変わる」そんな事実をまた確認させてもらったできごとでした。
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ボク当たってない!

2007-11-08 11:14:15 | コーでないと
幼稚園にいる気になる子どもを見てほしいと言う依頼があり、二日続けて幼稚園に行きました。
二日とも違う幼稚園なのですが、それぞれ面白い事例に合いました。



K幼稚園は、年少組の自閉症の子を何度も見ていたのですが、今回は年長の子どもを見てほしいという依頼でした。
注目している子が二人いて、どちらも落ち着きがなく乱暴な言動が目立ち、友だちつきあいがうまくいかない子どもだそうです。

何があってもいいと思ってギターを持って出かけました。
一番見てほしいと言われた子どもは欠席していて残念でしたが、もう一人もなかなか面白い行動を示してくれていました。

訪園すると子どもたちはすでに、園庭で遊んでいました。
年少の自閉症の男の子はすぐに私を見つけて「赤い鳥…」と近寄ってきました。
1学期に行った時にたっぷり揺さぶり遊びをしてあげたのを覚えているようで、「やってほしい」という訴えだったのですが、今回は年長を中心に見ることになっていたし、一度やり始めるとみんなが寄って来て収集がつかなくなるので握手だけして別れました。



年長の子どもたちを中心に、転がしドッチをやっていました。
丸い輪の中に入っている子どもたちにボールをぶつけるというルールで、当たると外に出て投げる側に回り、最後に残った子どもがチャンピオンで名前を名乗るという簡単なルールです。

Rくんは「ボクに当ててみなさい!」と線の近くまで行って挑発しながら最後の二人まで残りました。
後一人でチャンピオンなのです。
でも、惜しくもくるぶし近くにボールが当たりました。
Rくんは出ようとしません。
子どもたちは「当たったから出なさい」と言います。
それでも、「当たってない!」と靴を指さして主張します。
「当たった!」「当たらない!」の言い合いが始まります。
勝手に勝利者インタビューを始める子どももいます。
先生が近寄って来て、「当たった時は出ないといけないよね。いつまでももめていたら転がしドッチできんよ。どっちがいいか考えようね」と子どもたちに下駄を預けます。
何度か言い合いをした末に、Rくんは「ボクもうや~めた!」と砂場の方に走っていきました。

どうしてもチャンピオンになりたい思いが強くて、「当たっていない!」と主張するRくんをどう見るかなかなか興味深い問題です。
Rくんの思いに寄り添ってあげれば、ノーカウントにしてあげてもいいけど、他の子の手前それもできない。
どうしたら納得できるのか、難しい場面です。
今回は、Rくんが気持ちの再構築をはかって砂場に行ってくれたから事件は起きなかったけど、こういう事例は事件につながりますね。



朝の会が始まりました。「100%勇気!」の忍たま乱太郎のテーマをピアノで歌い始めたので「子どもたちと仲良くなるチャンス!」と思い、ギターを持ち込んでいきなりピアノと合わせ始めました。
「いい感じだ!」と思っていたら、女の子が突然泣き始めました。
どうしたんだろう?誰かとけんかしたのかな?と思っていたら…
何とギターの音に反応して泣き出していたのです。
大きな音は全部駄目だそうです。
雷のとはもとより、雨の音も駄目だそうです。
入園したての頃はピアノの音も駄目だったそうです。
近くの小学校の運動会に行った時も、応援合戦の太鼓の音でパニックになったそうです。

でも、この子は全くノーマークでした。
よほどの感覚過敏な子どもさんなんだろうと思います。
最初にチェックを入れていた子どもよりこっちの子どもの方が大変かもしれないということになりました。

それにしても、ギターを弾き始めて35年以上、障害児教育の現場でも有効活用してきたギターに対してこういう反応は初めてだったので泣いた女の子もショックだったと思いますが、私も十分ショックでした。



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大きくなりたいMくんの願い③

2007-06-24 00:13:30 | コーでないと
 課題が終わって、次は給食の準備になりました。準備が始まる前の“何でもない時間”この時間帯が大変危険な時間です。教室の後ろの方では絵本を読んでいる子どもたちがいます。Mくんはそこへさっと向かい、一人の女の子から絵本を奪い取り、それに対して注意した女の子の頭を叩いていました。女の子は泣かずに我慢していたので、「痛かったね。よく我慢したね」と賞賛しておきましたが、トラブル発生の兆しだと思えました。“何でもない時間帯”がトラブル発生のポイントかもしれません。

 Mくんは、女の子から取り上げた本を声を出して読んでいるので、「何て書いてあるの?」と聞くと、何か言ってくれるけど、ほとんどことばにはなりません。

 給食の前に、テーブルクロスがかけられます。工作の時には工作用のシートがかけられ、給食には給食のテーブルクロスがかけられます。でも机そのものは同じもの。そのことで切り替えは大変難しいことが予想されます。

 教室に給食が運ばれてきました。「静かに待っている班から配ります。」という保育者の声が響きます。6人ずつテーブルに着くけど、隣の子どもとすぐ接触する距離であるため、集中することができにくいです。

 Mくんは、テーブルの上のスプーンを持って遊び始めます。スプーンをどこに置いたらいいのか、どこからが自分の場所かわからないために難しいです。せめて、個人用のトレーかナプキンでもあれば違うのかもしれないと思いました。「Mくんチャンピオンになれるのかな?」という声がかかります。その時は少しはおとなしくなりますが長続きしません。

 給食は、各自で取りにいくことになっています。縦列で順番を待っています。待つということはなかなか難しいようです。順番を狂わせては友だちから注意を受けていますが、この時は目的がはっきりしているために立ち直ることができます。でも順番が近づくにつれて、いらだちが強くなっているような気がしました。

 「いただきます」の挨拶の前に保育者が「今日のチャンピオンは○○くんと…」と3名の子どもたちの名前を読み上げると、「Mは?」と聞いてきたMくんのことばが印象的でした。「チャンピオンになりたかった」「いい子でいたい」「ほめられたい」「人の手伝いがしたい」「でもなかなかできなくて…」そんなMくんの悲鳴が聞こえてきそうな気がしました。

 午後から園長、主任、担当保育者、市の保健師2名と協議し、以下のことを確認しました。
①少人数での指導の場面が必要である。

②言語だけの指導では理解できにくいのではないか。一斉指導だけでは難しい。

③場面の切り替えが難しい。切り替えの場面でいろんな問題が起こることが多い。問題が 起こる場面は予想できるのではないか。その場面での支援の体制は考えるべきである。

④活動が一つ終わったら、次への行動まで混乱しているのではないか。次に何をすべきか、わかっていても、不安な気持ちと楽しみな気持ちが入り交じって整理ができないのでは ないかと考えた方がいい。

⑤Mくんは、成功体験を望んでいるのではないか。「より大きな自分になりたい」と思っ ているのではないか。「できない自分はいやだ」と思っていることを前提に、支援の内 容を考えるべきなのではないか。

⑥友だちとの会話が成立しにくい。1対1ならできるが、人数が増えた時に難しさが増す。 工作や給食の時のグループは、子どもたちだけにすると問題があるのかもしれない。

⑦給食の待ち方(この日は準備だけで20分近くかかっている)に工夫がいるのではない か。スプーンの置き場所や、自分のスペースの確保も考えた方がいいのではないか。 
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大きくなりたいMくんの願い②

2007-06-23 00:48:03 | コーでないと
 集会は、園長が中央に出て、全員仏壇に整列し対峙して座ります。全員正座を指示されます。当番が出てきて、大きな仏壇の扉を開きます。

 エレクトーンの伴奏により何曲か、宗教的な歌を歌いますが、Mくんは、何の興味も示さずに念珠で遊び始めます。何度か、保育士が注意に来ますが、この時間の過ごし方について理解できていないために、注意される自分がいやになってしまいます。悪循環が続いているような気がしました。Mくんのこの時間の目標をどこに置くのか、考えないと全てにおいて注意しなくてはいけななくなるような気がしました。

 園長は園児全員に話しかけていますが、Mくんは、自分に話されているとは思っていないし、内容も理解できていると思えません。次に理事長が出てきて、「足がだるい人?」と聞いてきました。正座を解くのかと思ったら、我慢比べの話しに持っていきました。「手をあげて!じっとして動いたら下ろします。」「最後まで頑張れる強い子は誰だろう?」我慢が大事だと子どもたちに解きますが、Mくんはまったく理解できていません。

 そのうち念珠を投げ出して、泣き声を出し始めました。保育士が横についても保育士を殴り始めます。保育士が本堂の外に連れ出して、「じっとできない人は入らなくていいです」と言うと、「帰りたい」「先生ごめんなさい」「Mくん、ちゃんとできるの?できる人だけ帰ります。もうちょっとだけがんばって!」と先生にくっついて元の位置に帰ってきました。しばらく保育士が横についていましたが、一旦外に出ることでクールダウンできています。その後、少しだけ落ち着いて参加できました。

 保育士が前に出て指遊びを始めました。すぐ別の保育士が横につきました。右手と左手を合わせて「お父さんとお父さんが曲がり角でぶつかって、お前が悪いんだぞ!お前が悪いんだぞ!ふたーりそろってごめんなさい」と続けていって赤ちゃん指の「アブブブブ…」で大笑いをしていました。

 本堂の集会が終わり、教室に帰ることになりました。くつを履きかえて園庭を通り抜けて、階段を上がって靴を脱いでさらに階段を上がってつきあたりの教室まで帰らなくてはなりません。

 一旦園庭に出ると他の子どもたちも一斉に遊具めがけて広がります。Mくんは大型遊具に上がってなかなか降りようとしません。「Mくん教室に帰ろう」と呼びかけても降りようとしません。担当の保育士が何とか呼び止めて教室へ移動し始めました。階段の移動中に隣の子に手を出していたので、ひやひやしながら見ていました。

 いよいよ靴を脱ぐところで座り込んで動こうとしません。声をかけてもなかなか動こうとしません。すると別の保育士が「Mくん、先生の手伝いしてくれる?」と友だちの帽子の入ったバケツを見せました。すると「いいよ!」ということでさっとバケツを手に取り、階段を上り始めました。年中の子には持ちやすい大きさのバケツではなかったのに、何度か途中で下ろしながら教室の近くまでたどりつくことができました。このあたりの所に、Mくんの指導の指針があるのではないかと思いました。

 教室に入ると、子どもたちは次の学習の準備に入っていました。ロッカーの道具箱からのりとマジックを出して机につき始めます。Mくんはいったんは教室に入りますが、すぐに外に飛び出してしまいます。教室では友だちが次の学習の準備を始めていた。自分は遅れて入ってしまった。そんな気持ちから、素直に次の学習には移れません。

 「Mくん手を洗ってきて!」と呼びかけるとまっすぐに手洗い場所には行きません。別の教室に何度か、入っていきます。それでも少しずつ手洗い場に近づいていきます。まっすぐに手洗い場に近づくことはありません。自分のペースで自分のやり方でないとできません。何とか手を洗って教室に入りますが、道具を出すことはなかなかできません。

 やっと教室に入ることができてもなかなか準備できません。ワークデスクに6人ぐらい座るために落ち着きがありません。この日の課題は時の記念日ということで時計の切り抜きです。台紙に書いてある○を切り抜き、数字や点を打ち、前の授業で作った魚に貼り付ける課題です。はさみは机につく前に保育者から渡されます。着席がほとんど終わった段階で作業の説明があります。ことばによる説明のためになかなか理解されていない様子が見られます。Mくんは、話の途中ではさみで遊び始めます。このままで大丈夫かな?と見ていると隣の子が注意したとたんに隣の子にはさみを向けます。丸い刃先なので危なくないのですが、どの段階で道具を渡すのか、説明はどうするのか考えていく必要があります。

 30数名の子どもたちに対して指導者は2名ということで、進度に差が見られます。できる子はどんどん進みますが、作業の理解できない子どもは取り残されたままになっています。年中の児童の難しさがあるのかもしれません。何人かできていない子どもに対しては介助に入ることにしました。Mくんは作業は終了したのですが、片付けがなかなかできません。活動の始めと終わりが難しいようです。活動の切れ目切れ目に配慮が必要な子どもであると思います。
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大きくなりたいMくんの願い

2007-06-21 23:57:26 | コーでないと
 先日出かけて行ったM保育園で、思ったことについて何日か、報告していきます。

 市の保健師から依頼があり、年中の子どもについて観察して指導について指導助言をしてほしいという依頼があり、保育園に出かけることにしました。はじめに園長室で概略についての説明を受けました。

 該当の子どもは2歳くらいから保育園に来ている。3歳児クラスに入っているが、トラブルが絶えない。行きと帰りの駄賃で友だちに手を出している。叩く、蹴る、ひっかくなどいろんな行動が出ている。別の機関からは「特別扱いしない方がいい」と言われているのでなかなか指導に行き詰まっているという内容でした。

 該当児のことが、最もわかる時の方がいいということで、集会行事を観察させてもらいました。M保育園は仏教系の保育園なので、月に1回本堂での集会があります。年中、年長の子どもが本堂に集合します。

 年中の担任が前に出て、「青さんいいですか?」「黄さんいいですか?」とグループ編成している子どもたちに声をかけます。子どもたちは「はーい!」と大きな声で返事をしました。本堂に響く声がとても大きいので少し気になりました。大きな声が苦手な子どもは少しきついかもしれません。「ののさま、お早うございます」の大きな声が響きます。子どもがMくんに話しかけたとたん、パンチで返していました。すぐに保育士が止めに入ります。

 「トントンぱー!」で整列しています。私がMくんに向けて模倣をして見せるとにっこり笑顔を返してきました。この人なつっこさと友だちへの暴力がくせ者です。「とんとんパー」が終わった頃からだんだん前に出て行ってしまい、保育士にもとの位置に連れ戻されますが、何度訂正してもまた前に出て行ってしまいます。正しい位置(いるべき場所)がわかりにくいということもあるのではないかと思えました。

 「糸をまきまき」の歌が始まりましたが、全然やろうとしません。どうしてやらないのか聞くと「俺、むずかしい」と答えました。拳の旋回はそれほど難しい課題ではないのに…と不思議でしたが、「できた。できた」の振り付けが上、前、横と複雑な動きになっているのを見て、この部分ができないことをすでに知っていて、そのために前半部分から拒否していたことがわかりました。
 
 「できない自分はいやだ!」という思いがあって、できないことには始めから取り組もうとしない、独特の価値観をもっているのだと思いました。ということは、やっぱりできる自分になりたいという思いや願いをもっているんだということが強く感じました。
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一日幼稚園教諭体験③

2007-06-08 22:47:21 | コーでないと
 給食が終わってから少し教室で自由遊びがありました。絵本を読む子、ままごとをする子、お絵描きをする子、粘土遊びをする子など、様々な活動が展開していました。本当に子どもたちはよく遊びます。勤めている養護学校だと遊ばせることに苦心しているのですが、ここではその必要はないようです。「遊びが発達の原動力」とはよく言ったものだと思います。

 それでも、あえて子どもたちを集めて歌遊びを始めてみました。最初はSちゃんとAちゃんがどれだけ遊べるのか調べることが目的でした。でもあっという間に何人もの子が寄ってきて、Sちゃんは遊びそのものに集中できなくなっていました。いくつかやってみましたが、「キャベツはキャ!」が一番乗ってきてくれました。でも、そのうちSちゃんがみんなの笑い声に同調して、行動が過激になってきました。本人としては一緒に遊んでいるつもりなのだろうけど、かなり乱暴な行動に出ていました。情緒的に未分化な子どもはこのあたりも注意していく必要があるかもしれないと思いました。

 しばらくしてもう一度外遊びをして「帰りの会」に入りました。帰りの会では、絵本を読むことになっているようです。何の本を読むかは、子どもたちのリクエストに応えるようです。この日は「コアラの本」でした。写真がたくさん入った図鑑的な本でした。指導者が読み聞かせに入った時に、「なるほど…」と思わせる場面に出くわしました。注意してほしいと言われた子ども3人が一斉に問題を示し始めました。
 
 Sちゃんはすぐに私のひざに来ました。Aちゃんはごそごそ始めて友だちの服などを触っていました。Yちゃんも前の友だちを触って後ろを向いたりごそごそし始めました。遊びの場面ではそれほど目立たなかった子どもたちですが、課題が難しくなると集中力が持続しなくなるようです。

 幼稚園や保育園の時にはさほど目立たなかった子が小学校に入ると発達障害の疑いをかけられるというのはこういうことなのかもしれないと思いました。幼児期は、遊びや運動課題が中心の生活をしています。だからその時はさほど目立たないのですが、小学校に入って着席行動が中心の活動になると問題が目立ってくるということなのかもしれません。
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一日幼稚園教諭体験②

2007-06-07 23:40:42 | コーでないと
 設定保育の時間になりました。今回ははさみと糊を使った造形のようです。「線の外を切ってください」という指示を出し、画用紙に描いたキャンディーの壺の絵を切り抜いて、色画用紙に貼る課題について口頭で説明がありました。糊とはさみと作業用の新聞を用意させました。ここで面白い現象を発見しました。子どもたちの何人かは新聞の広げ方がなかなか理解できていないようでした。Rくんは「これどうやってやるん?」と紙の大きさにこだわっていた。どうでもいいことだけど、みんなと同じでないと始められない子どもたちの特徴がよく出ていたと思います。

 指導者が「色画用紙の色はこれだけあります」と画用紙の色の説明をしてから、「どの色がいいですか?」と子どもたちに尋ねます。何人かの子は、自分の色を選んでいましたが、何度も手をあげている子どももいて、この発達段階の子には「○○がいい人?」の質問は難しいことがわかりました。

 「ここに置きます。並んで好きな色を取ってください。」と紙をまとめて机の上に置きました。一度に集中した子どもたちに「並んで!やり直し!」と一度抵抗を入れました。子どもたちはさっと並び替えました。色画用紙を前にして何枚かめくって好きな色を選んだ子もいましたが、上から順番に取っていく子も多く、置き方にもよるんだということがわかりました。

 Mちゃんは「ピンクがいい!」と強く主張していたのに、最後尾についていたためにピンクの紙はなくなっていました。Mちゃんは少し不満そうな顔をしていました。それを見ていた指導者が「同じピンクじゃないけどピンクを用意してあげるね」ともう1枚台紙を用意しました。どういう意図でこの子の要求にだけ応えたのか、少し疑問が残りましたが、Mちゃんは安心したような顔になったのでMちゃんにとってはいいことだったのだと思いました。

 課題は、それぞれ一所懸命やっていてなかなか面白いものがありました。長方形の中に描かれている壺をどうやって切ったらいいのか、最初のはさみはどこから入れるのか悩んでいる子どもが数名いました。はさみを使うのをじっと見ていたら、淵は切れているのに途中からスパッと壺の首のところにはさみを入れる子が目につきました。Yちゃんです。注意して見てほしいと言われていた3名のうちの一人です。それまでは、ほとんど目につかなくて、どの子かわからないくらいの存在でしたが、課題になってから、目につくことが多く見られました。

 課題が終わって、給食まで外遊びになりました。Sちゃんはずっと友だちと手をつないで過ごしています。非常に自然な状態に見えました。Yちゃんが皿を4枚並べて遊んでいたので側に寄って見ていると「あっち見て!」「友だち見て!」と違う方を指さします。「Mちゃん見たらダメなの?」と聞くと「うん!」と言って一人遊びを続けます。

 年長のHくんにも注意してほしいと連絡を受けました。Hくんは落ちている枝を7,8本持って、うろうろしていました。木ぎれにはこだわりがあるようでどんな時もしっかり握っていました。何をしているのかと聞くと、木ぎれを植木の穴にさしこんで「調べている」と言っていました。何を調べているかは答えてくれませんでした。4,5名のグループで行動していました。一人の子どもが「Hはたたかいをする人なんだから」と他の子に状況を説明していました。Hくんと直接他の子どもが関わるより、この子がHくんとの間に入って関係を作っているような気がしました。他の子がいろんな遊びをしている時に、枝をずっと離さず、一つの遊びにこだわることができるのは、少し注意が必要かもしれません。

 昼前に、他の作業のため集まっているお母さんと一緒に、トマトの支柱を立てることになりました。朝からとても人なつっこかったTくんが母親を見て態度が変わりました。作業を終えてから母親に対して、帰らずに別の教室に行くように指示をしています。他の母親は帰り始めたのに、どうしても帰らそうとせずに、階段の所に座って動こうとはしません。他の子どもたちはお弁当給食を楽しみにすでに教室で座っています。指導者が母親には帰るように言われて、さっとTくんを抱っこして連れて行こうとしました。Tくんは大泣きです。場面転換は必ず必要だけどこの後どう展開するのか、とても興味がありました。

 教室に連れて入っても泣きやみません。他の子どもたちは見慣れた光景のように耳をふさいで笑っています。

 Tくんはみんなが食べ始めるのになかなか切り換えることができません。「Tくん食べなくていいから用意だけして!」と指導者の声がします。Tくんはたじろぎながら、給食の用意をして席に着きます。「ぼやぼやしないで席に着いて!」と言ったらもっとこじれていたと思います。「無理に食べなくてもいいよ」と一旦は共感しながら、乗り越えられるハードルを次々に用意していくこの指導はすぐれた指導だと思いました。

 そのうち、他の友だちが弁当に入っていた高野豆腐の絵の話を始めました。「私はアンパンマン」「僕は食パンマン」「「Tくんのお弁当は何かな?食べないでもいいから開けて見てみよう」だんだんみんなの輪の中に入ってきます。時間はかかったけど、自分の力で立ち直って食べ始めました。発達的抵抗を乗り越えるいい場面を見せてもらった気がしました。
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一日幼稚園教諭体験①

2007-06-06 23:40:21 | コーでないと
 今やっているコーでないとの関係で、幼稚園に出かけることになりました。園長が学校に訪ねてきて、子どもたちの様子を見てからいろいろコメントをしてほしいという依頼があったので、朝から一日幼稚園を訪問することになりました。

 今までに、歌遊びや、集団ゲームの指導に幼稚園に行ったことは、何度かありましたが、今度みたいに内部に入って一日を過ごすことはありませんでした。園長の依頼によると年中組に3名気になる子どもがいるのでその子どもたちを中心に見て欲しいとのことでした。

 園児が登園する前から幼稚園に入り、登園風景から観察することになりました。家庭から、園への切り替えの場面なので、どんなドラマが待っているのか楽しみでした。先生たちは、思い切りの笑顔で子どもたちを迎えます。

 一人目は施設からバスで登園するSちゃんです。目がくりくりとしたとっても愛らしい子です。足に装具をつけています。来るなり先生に飛びついて、すぐに教室に入って行きました。友だちがすぐに「Sちゃんよだれ出てるよ」と注意していました。Sちゃんはいやがらずに、自分でよだれかけで拭き取っていました。ここらへんが、幼児の素直さと危なさが共存しているところでしょうか。

 教室では自分でロッカーにカバンを入れるなどの態度を見せていたので「年中さんでここまでできるならそんなでもないじゃん」という感じでした。ソファーからいきなりJUMPして見せるなど、なかなか活発な子どもさんのようです。「Sちゃんお帳面出した?」と聞かれてロッカーにノートを取りに行って、出席シールを貼って、所定の位置にタオルを掛けていました。やっぱり「それほどでもないね。」思わせました。

 次に来たのが、Aちゃんです。この子は母親にも子育て支援が必要と聞いていたので、注意してみていました。先生が「おはよう!」と声をかけると母親の後ろに隠れます。何度かやりとりの後ですっと下駄箱に向かいました。少しおどおどしているので少し気がかりになりました。

 もう一人は少し遅れてくるということで、まずこの二人の様子を観察することにしました。教室内は25人くらいの子どもたちであふれます。食べ物のプラスチック模型を使ったままごとを展開しているグループ、ジグザグに落ちてくるビー玉落としに熱中しているグループ、机についてお絵描きをしているグループとそれぞ夢中で遊んでいます。

 Sちゃんは、お絵描き用のノートとクレヨンを出してきていきなり絵を描き始めました。白い紙に力いっぱいぐるぐる巻きの円錯画を描き始めます。一つの色で描いたら、すぐに違う色を取り出して同じところに何重にも描き始めます。横に行って「Sちゃん○描ける?」と聞きました。するとほとんど閉じた○が描けました。閉じた○が描けるのに顔ではなくて、ぐるぐる巻きが中心になっているところがこの子の現在の発達状況なのかな?と思われました。

 Aちゃんはままごとセットの中のホットケーキを両手に1個ずつ持って近寄ってきました。「それなあに?」と聞くと「ケーキ」と答えました。「ケーキ好きなの?」と聞くと「うん」と答えたものの、この人よく知らないというような感じで去っていきました。

 ある女の子がAちゃんのホットケーキを取り上げました。Aちゃんは、慌てて追いかけました。意地悪をしているのかな?と思いましたが、“取り上げると追いかけてくる”Aちゃんを見て楽しむ一種のおふざけのようなもののようです。子どもの世界では日常茶飯なのかもしれません。Aちゃんもさしていやがらずにいました。

 Aちゃんはそのうち、ビー玉落としのグループに入って行きました。ビー玉を転がすと鉄琴のところでチリリンと音がします。「あーいい音だね」と言うとやっと目が合いました。「もう一度やって!」「いい音だねー」と何度もやりとりしているとしっかりとした笑顔を向けてくれるようになりました。

 Sちゃんが、トイレの方へ向かいました。職員は誰もついていかないので大丈夫なのか少し心配していましたが一人で帰ってきました。でも、結局お尻が少し濡れていて、着替えになってしまったようです。

 Sちゃんに気を取られている間にAちゃんはビー玉落としをやめて乳母車遊びに移っていました。人形の乗った乳母車を前後させながら遊んでいました。職員が「Aちゃん、赤ちゃんはもう寝ましたか?」と話しかけるとにっこりしていました。やりとり遊びの中にはそれほどの遅れは感じませんでした。

 子どもたちの中で突然「あ~ん!」という大きな声が聞こえました。見ると、ビー玉を転がしたHくんのビー玉を他の友だちが取っているのです。「返して!それは僕の!」と言えばいいのにそれがなかなか言えないのです。「あ~ん!」という悲鳴ともパニックともつかないことばで、不満を出しているようです。これだけで相手に通じるわけはないのでこのあたり難しさを感じました。この時期の発達段階の子ども特有のものなのか、最近の傾向なのか少し課題が残りました。

 10:00になってトイレを済ませて、手を洗って全員集合がかかります。指導者はピアノ伴奏で「小鳥はとっても歌が好き」を歌っています。子どもたちには「カギがかかった体育座りを」指示します。教室の外では何人かの子どもが出遅れて手を洗っています。「Mちゃん急いで!」その間にも歌は続いていきます。歌はほとんど終わりそうです。Mちゃんは手を洗いながら小さな声で「小鳥はとっても歌が好き…」と口ずさんでいます。本当は、みんなと一緒にピアノ伴奏で歌いたかったのに間に合わなかったから、手を洗いながら歌っているところがとてもけなげな気がしました。

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ある小学校の苦悩(詳細報告)

2007-05-29 15:22:48 | コーでないと
 関●機●連●携協議会の専門家チームの指導を受けたいという依頼を校長を通して受けました。特定の講師(Dr)を希望していましたが、専門家チームの性格上特定の講師を派遣する制度ではないこと、具体的な場面を見て気づきやアドバイスをする、課題についてい協議するということで理解してもらったうえで、状況を把握するために事務局として訪問しました。

 先方の希望により、登校時より観察を開始しました。情緒障害学級を中心に見てほしいということで、情緒障害学級に在室して観察をしました。すでに、男子1名、女子が1名登校していました。登校後、かばんをロッカーに入れると、連絡帳やノート類を出し、プリントに今日の日程を書き写す学習をしています。

 事前に話していることもあり、Aくんが「お客さんがきたね。勉強見に来たん?」と何度も聞いていました。先生に付き添われて挨拶にきます。人なつっこいことや、注意が転動することなど、行動特性からADHDの傾向のある子どもかと思われました。

 男児が登校してきました。教室に入るなり、小さな声で独り言を繰り返しています。鞄をロッカーに入れる、連絡帳を出すことは、何の問題もなく行っています。二人とも担任に付き添われて挨拶に来ましたが、手を添えるだけで握手はしません。

 教室の配置は右図の通りです。この配置にしたのは今年の4月からで昨年までは個人用の机はなかったようです。学習スペースとリラクゼーションスペースは衝立で仕切られているがまだまだ雑多な刺激を感じました。



 日課表を書き写したら、朝の会まで自由に過ごしていい時間になっています。 「Hくん本読む?」と担任が促します。課題の後の自由時間に何をしたらいいのかが決まっていないと子どもたちは混乱するのではないかと思えました。結局自閉症の2人は絵本を読むことになりました。もう一人のAくんは担任と一緒に教室を出たり入ったりたえず動いています。

 Bくんが独り言のように絵本を読み出したので、横について彼の声をまねして絵本を読んでみました。するとすぐに振り向いてバイバイと手を振り、「あっちいけ!」のサインが出ました。次にCさんのところに行きました。彼女は、絵本の文字をちゃんと認識しているようで、アナウンサーか、ドラマのような口調で読んでいました。でも、全文読むのではなくて好きなキーワード「焼き鳥」だけで読んでいるようなので、正しく「焼き鳥弁当」と読んでみました。すると間髪いれずに「焼き鳥弁当じゃな~い!」と強い調子で返されてしまいました。

 タンブリンの合図で、いよいよ朝の会が始まります。タンブリンの音と「席についてください」の声が響くとBくんが耳をおさえています。タンブリンの音と、怒ったような「席についてください」の声は今から始まる朝の会の緊張をより高める効果になるのではないかと思われました。

 「立ってください」何度も当番のAくんの声が響きます。なかなか一斉には立ちません。ここで担任の注意が入ります。「みんな見てますか?」何度でも起立を繰り返させます。ここは、何の目的なのか指導上疑問が残ります。「今日は5月22日天気は晴れ」を全員で動作化を交えて復唱しています。黒板には左図のように担任の文字で書かれています。カレンダーが表示されているのではなく、毎日担任が書き換えているようです。1週間、1ヶ月の見通しを考えるとカレンダーとの併用が望まれるのではないかと考えます。続いて、今日の日課が読み上げられます。


 その後で担任による健康観察、当番のハンカチ、ティッシュの確認と流れていきましたが、そのほとんどは、言語による指導のみに頼っていて視覚的な条件の支援は準備されていませんでした。自閉症の子どもたちには難しい課題であったように思います。

 次に今月の歌ということで、CD伴奏による「さんぽ」が流れます。子どもたちは教室の周りを歩き始めます。Cちゃんは、CDプレーヤーの前から動きません。CDプレイヤーの音に興味があるのか、係になったような感じなのかわかりませんが、動こうとしません。他の子どもたちは机の下をくぐったり、担任二人が作ったトンネルをくぐったりと楽しそうにやっていました。教室という狭い空間がわかりやすい環境を作っているのかもしれません。ただ、朝の会の組み立てからすると、導入の部分と逆の流れになっているような気がしました。動からスタートして静に持っていき、2時間目の学習につなげていくのが理想なのではと思えました。

 最後に先生のお話のコーナーがあって、「先生の方を見てください」「目玉こっち」という注意が飛んでいましたが、具体的な「お話を聞いてください」という注意は聞かれませんでした。2時間目の生活単元学習についての注意と3時間目以降の担任の研修のための時間変更についての説明がありました。

 その間、保護者は小さい子も一緒に教室に待機していました。それに対して担任の側は、保護者がいないがごとく振る舞っていたので、何か違和感を抱いていました。

 2時間目は体操着に着替えをして、帽子をかぶって運動場に出ました。Cさんだけが着替えずにスカートのままで運動場に出ました。「この子はどうしても着替えないんです。」と担任の説明があったので、「服装についてはこだわりの強いお子さんがいるので気にしなくていいですよ」と答えておきました。全員揃ったかに思われましたが、Aくんが帽子をかぶらずに外に出てきました。どうするかな?と見ていると、「Aくん、帽子を忘れています。教室に取りに行ってください」と言われて「みんな待っててよ」と言いながら教室に取りに帰りました。このような巻き戻しや失敗経験は、かんしゃくを引き起こす誘因になりがちなのですが、子どもも大人も気にしないでのんびりしたもので意外でした。

 この地点で、保護者が帰り始めました。Aくんは「ママいってらっしゃい!」と声をかけていました。この光景は逆なのではないかと思えました。

 子どもたちは外に出て、どこに行くのかと思ったら校舎の外からじょうろを一人ずつ持ち、教室のすぐ裏の花壇に植えてあった野菜に、水をやる活動をしました。「野菜さんのどが乾いているかもしれないのでお水をあげてください」「大きくなあれと言ってあげてください。」という注意を聞きながら実行していましたが、Cさんは「雨が降ります。」と自分独自の理解の中で活動をしていました。絵本の時と同様、自分のメルヘンの世界を持っているようです。

 水やりが終わると、運動場に整列して、手つなぎで遊具へ移動していきました。一つずつ遊具に挑戦してクリアーしていく学習になっています。「最初に準備体操をします」の声にCさんは、すぐにその場から離れて走って行きました。でも顔はちゃんと担任の方を向いていました。どうするのか見ていると、少し間をおいてから迎えに行きました。ちゃんとこっちを向いて離れて行ったのだから、もうしばらく様子を見てもいいのではないかと思いました。

 CさんはAくんの「1,2,3,4」のかけ声が嫌いみたいで、体操の場面では嫌なことがあることを予想して、逃げ出したのではないかと思いました。

 最初は鉄棒から始めました。隣の知的障害の学級の子どもたちは積極的にいろんな工夫をしてやっていました。でも情緒の学級の子どもたちはいろんな気になる行動を示していました。Bくんは最近、金属には一切触らなくなったそうです。こだわりはいろんな形で出てくるので、こだわりにこだわる必要はありませんが、どうして出てきたのか、サインとして理解しておいた方がいいのではないかと思えました。どうしても鉄棒に触らせたいのなら、手袋などの工夫も必要なのではないかと思えました。

 Bさん、Cさんはいろんな遊具の所で、集団から外れようとする動きが見られました。教室の中では集団の行動を見ることができましたが、運動場という広い空間では集中できずに、別行動に出てしまうのではないかと思えました。「これが終わったらこれ!」「いつになったら活動は終わるのか?」見通しを支える補助教材が必要なのではないかと思えました。

 結局、時間いっぱい運動場で過ごして教室に帰りました。この時間は生活単元になっていますが、「これで生活単元?」というのが率直な感想でした。子どもたちの工夫や自由な発想はどこにも感じられませんでした。生活単元というよりは、遊びの指導とした方がいいのではないかと思えました。

 3時間目から校長室に場所を移して、協議に入りました。3人の担任以外に教頭、聴覚障害学級の担任で生徒指導主任の担任が参加しました。

 まず授業を見た感想から入りました。それから子どもたちの行動から気づいたことについてコメントしていきました。その後で本題に入りました。出された問題を要約すると以下の通りです。

①保護者と担任のが子どもの教育の方針について共通理解が得られていないということが出されました。保護者が1時間目に小さい子ども連れで教室にいるために、子どもたちが集中した学習ができていないという意見も出されました。

②4月の始業式をもって教室の配置を変えた。個人用の机は昨年はなく、丸テーブルが中央にあって、いつでも遊べるトランポリンが目につくところにあった。
→それに対して保護者は反発している。自由な空間がある方が子どもたちに良い。急な変更によって子どもたちに様々な問題行動が現れてきた。
→学校は、この配置はいろんな先生たちのアドバイスを受けて実施したもので、事実子どもたちは落ち着いて行動できるようになった。と反対の見解をもっている。

③「登校後はしばらく自由遊びにしてほしい。」という親の願いがある。それに対して学校は何度も話し合いの機会を持っているが歩み寄る気配がないと感じている。
 結果、親たちを説得するためには、ある程度権威ある方を呼んで、親に理解してもらうことが大切だと考える。そのためにドクターに来校してほしい。という要望を持っている。

協議の中で、以下のことを確認しました。
①親とのコンセンサスを取り付けるには子どもたちの事実を語っていかないといけない。子どもの事実から出発して、そのことをどう見るか、どのように考えて、どのような願いをもって子どもたちに接しているかを語らなければいけない。

②校内委員会を開いて、学校全体の中で子どもたちの教育環境について考えていかなければいけないということを確認すべきであること。

③親と意見が合わないために担任が負担を感じているということについては、職場の中でそれを支える環境造りをめざしていかなければいけないこと。特に校長、教頭が間に入って支えていく必要があること。

④教育の出発点は、子どもたち自身の教育的ニーズから出発すべきこと、そのことを代弁している親の願いも一旦は受けとめてから、話し合いを持つことが大切なのではないか。

 いずれにしても、子どもたちが困らない方向で考えていかなければいけないということを確認しました。 
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