「京都を舞台にゆったりとした流れの中で豊かな生活を送る人々を描いた作品だ。『かもめ食堂』、『プール』を手がけた製作チームが集結し、今回は松本佳奈監督が演出を務めた。出演は小林聡美、もたいまさこ、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子といった実力派が揃う。独特の京都の街並みや、何気ない風景、そして川のせせらぎに癒される。」
公式サイトにはこのように紹介されています。
「マザーウォーター」とは本来の意味からするとウイスキーの仕込み水のことだったと思います。
でも、この映画を観ていると"母なる水"と考えた方がいいのかもしれないと思いました。
いつものように何も起きなく、何の主張もない、この上なく生活感のない映画です。
これを癒しとでもいうのでしょうか?よくわかりませんが。
せっかちな私としては、このような空気感のの中ではとても暮らせそうにありません。
まず出てくるのは、ウイスキーしか置いていないバーを経営しているセツコ(小林聡美)出たー!という感じの存在感を遺憾なく発揮しています。
8オンスタンブラーに大きめの氷を入れてウィスキー(それも「山崎」いいウィスキーを使っています。)を目分量で注ぎます。
それをバースプーンでゆっくりゆっくりかき回していきます。
それから市販のミネラルウォーターではない水を加えて、またゆっくりゆっくりまぜて、客へと差し出します。
客が一口飲んだのを見計らって、自分は水をグラスに注いで、独特のタイミングでそれを一口飲みます。
まさに「けっこうなお手前で!」といいたくなるような流れです。
それを幾度となく観客にみせます。馴染みの客に加瀬亮が出てきます。
続いては、喫茶店を営むタカコ(小泉今日子)が登場します。
この喫茶店も大変小さな店で、席の数も知れています。
客が来るとミルでコーヒーを挽いて1杯1杯入れてくれます。
これがまた優雅でオトメ(光石研)ならずもずっと見ていたいと思わせる優雅さです。
客が入っているのかどうなのかは、定かではありませんが、タカコのため息だけが聞こえてきそうなそんな店です。
もう一つ水つながりでハツミ(市川実日子)の作る豆腐屋です。
ここの豆腐は、買うと店の前のベンチでそのまま食べることのできるシステムです。
道路に面したベンチで豆腐を食べるこの光景はありなんですかね?
そして、その3人ともたいまさこをつないでいくのが水の大御所銭湯です。
この店はオトメ(光石研)が経営者なのですが、のれんはいつとなくかかっているし、お湯はどうしてわかしているんだろうか?と疑問になります。
銭湯には、1歳前後のポプラ少年とどういう関係なのかわからないけど、若い男が働いています。
この3人の関係もよくわかりません。
もう一つ忘れてはいけない人にマコト(もたいまさこ)がいます。
この人はどの店にも顔を出して、全員をつないでいく大事な役目を果たしていきます。
銭湯のポプラの面倒もよく見てくれます。
マンションが映るんだけど、そこには未亡人らしき様子も見られないから、もしかしたらずっと独身だったのかも?とも思われます。
でも、ポプラのかわいがり方からすると、前に子どもがいたのかも…とも思われます。
八百屋で900円もするタケノコを買ったり、新鮮な野菜を選んで来て、家で野菜の天ぷらをあげて食べるようすなど、生活に困っている風はありません。
いつもながら正体不明な人を演じています。
夜はビールと天ぷらとそれも塩で食べるスタイル、朝ごはんに出汁撒き卵と暖かい味噌汁朝など、さすがフードスタイリストの飯島奈美さんらしい気配りです。
全体が静寂な世界につつまれています。
その中で静かな生活音だけが響くという映画造りには頭が下がります。
最近、いい人ふうの演技ばかりやっているもたいまさこさんですが、
とことこ散歩していて「こんにちは」と声をかけた小泉今日子に向かって例のしわがれ声で「今日も機嫌良くやんなさいよ」と声をかけただけで、
すたすた歩いて行ってしまう姿に久しぶりに「吉野刈り」の時の意地悪おばさんの雰囲気が蘇ってうれしくなりました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます