とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

『母と暮らせば』を観てきました。

2015-12-19 14:52:03 | 映画
https://www.youtube.com/watch?v=hvrs_103jRw

『母と暮らせば』を観てきました。

山田洋次の映画を愛してやまない私としては絶対欠かすことのできない映画です。

映画を観ている時に少しだけ違和感を感じていました。

それは、吉永小百合さん演じる母と、二宮和也さん演じる息子の二人の会話のシーンがあまりに多く、二人芝居の舞台を見せられているような気がしていました。

原田芳雄さんと宮沢りえさん演じた井上ひさしさんの戯曲『父と暮らせば』(黒木和夫監督映画化)をオマージュとして作られたという影響からなのかもしれません。

私の勝手なイメージからすると山田洋次作品は引きの映像の素晴らしさだと思っています。

写真好きの私は、山田映画の映像からかなり影響を受けていると思います。

でも、最初に感じた違和感は途中からは感じなくなってくるくらい場面に引き込まれていきます。

日々の幸せが奪われていく小さな家庭のドラマを描いて、戦争の悲惨さを訴えた『母べえ』ちょっとした恋愛ごとを描きながら、迫り来る軍国主義を描いた『小さいおうち』普通に暮らす人々の笑いや涙を映しながら、戦争について考えさせられた山田洋次監督の戦後70年を迎えた2015年の映画だということを考えずにはいられません。

山田監督が描いているのは、何の前触れもなく、一瞬にして原爆によって命を奪われた人々の悔しさ、突然消えた最愛の家族や恋人を焼け野原で探し続けた人々の悲しみー。

スターリンは「一人の人間が死ぬと、それは悲劇だが、百万人が死ねば、それは統計だ」という迷言を吐きましたが、統計にしてはいけない一人ひとりの悲しみ、痛みを感じることのできる映画だと思います。

直接ストーリーに入るのはまだ観ていない人たちに迷惑だと思うので、気になったシーンや台詞だけ紹介します。

1945年8月9日、長崎で助産婦をしている福原伸子(吉永小百合)は、たった一人の家族だった次男の浩二(二宮和也)を原爆で亡くします。

それから、3年後、伸子の前に浩二の亡霊がひょっこり現れます。その日から浩二はたびたび伸子を訪ねてきます。

浩二は母親のことを気にしながら、恋人の町子(黒木華)のことを気にかけています。新しい幸せを見つけてほしいと願いながら、寂しい気持ちは母も息子も同じです。

楽しかった家族の思い出話は尽きることがなく、二人が取り戻した時間は永遠に続くように思われたけど……。

突然現れた浩二が、母に対して「僕んこと探した?」と聞かれ、あの時の長崎の町の恐ろしい光景を思い出し、口ごもってしまう伸子も印象的です。

その雰囲気を変えようと「あんたは元気?」と尋ねます。浩二は笑いながら「僕は死んどるんとよ。相変わらずおとぼけやね」と答えます。秀逸な情景描写です。

「僕の運命さ」と呟く浩二に伸子は「運命?地震や津波は運命だけれど、これは人間が行った大変は悲劇だ」と訴えます。これも、山田洋次監督のメッセージだと感じました。

町子のことが諦められない浩二が「町子が幸せになってほしいっていうのは、実は僕と一緒に原爆で死んだ何万人もの人たちの願いなんだ」と母伸子告げるシーンもウルウルです。

新しい出会いと出発に踏み出すように進める伸子に対して、町子が苦しみを伝えるシーンも秀逸です。原爆の落ちる前の日に友だち2人と丁寧なお別れの挨拶をしようということになり、「ごきげんよう、また明日」と笑いながら別れ、次の日自分は急な腹痛で勤労奉仕を休んだ。

友だち二人は工場の屋根が落ちて下敷きになり動けなくて「助けて!助けて!」と叫びながら焼け死んでいった。

友だちから借りていた時計が気になり、数ヶ月後に訪ねて行き、助かった理由を説明すると激しく非難されたことを泣きながら話す。

こういう時の黒木華は存在感が大きいと思います。大好きな女優さんです。

もう一つ、伸子が助産婦だということもとても示唆的だと思います。

新しい命をこの世へ届けるという存在です。

長崎の地で放射能の影響を受けるだろう時代での助産婦です。

さらにもう一つ忘れてはいけないのが音楽を坂本龍一さんが手がけているといことです。

病気でしばらく活動できない時期を経て、現在では原発反対の運動や戦争法反対の運動に深く関わっておられます。

この映画のテーマに深く感銘し、すばらしい音楽を作られています。私は、オリジナルサウンドトラックを買おうと思っています。

近々もう一度この映画は観に行くと思います。

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