最近観たい映画が全く来ません。
土曜日、日曜日がなぜか様々な会議が入ってくるということもあって映画館からだんだん縁遠くなってしまいます。
「マイバックページ」や「東京公園」が実は観たいのですが、広島までしか来ていないようです。
広島までわざわざ映画を観に行くほど、時間の余裕とスタミナはないものですから、ついついDVDということになってしまいます。
そのDVDもなかなかいいものに会えない。
そこで今回は「阪急電車」を観に行ったということです。
この映画は原作が「阪急電車」有川浩著・幻冬舎文庫がけっこうお気に入りで映画化を楽しみにしていました。
余談ですが、この本の作者が女性だということを最近知りました。
"ありかわひろし"なのでてっきり中年男性だと思い込んでいました。
ところが"ありかわひろ"と読むそうで、れっきとした女性だそうです。
映画の宣伝だと中谷美紀の白いドレス姿が何度も出てきます。
これだけでも観る価値はあるというものです。
映画のできですが、なかなかいい映画でした。ハートウォームな仕上がりで十分楽しむことができます。
原作を読んでいたのでついつい映画と比べてしまいますが、原作を踏まえていながら別の作品に仕上がっていることに満足してしまいます。
映画というフレームの中で表現するといことで、省略することと焦点化していくシーンがいい感じで入ってきます。
それにしても、中谷美紀、宮本信子、南果歩、戸田恵梨香はそれぞれ小気味良いほど見事な演技でした。
中谷美紀の結婚式での招かれざる客のシーンは彼女でなくては演じきれないと思います。
捨てられた男と、会社の後輩の結婚式に白いドレスを着て参加して堂々と座っている演技は神々しいほどです。
人目もあり、プライドもあるがゆえにそういう場には誰も出る人はいないだろうと思われる場面です。
自分でも愚かしく哀しくなるということはわかっていながら、堂々と白いドレスで座っている女性というのはこういうことなんだと思わせるような女性を演じきっています。
その服装のままで電車に乗りこみ、「討ち入りは成功したの?」と宮本信子から声をかけられ、泣きながら話始める。
その泣く演技がまたいいのです。
これだけ感情を殺しながら、観ているものを引きつける演技は中谷美紀ならではの演技だと思います。
やさしく声をかける宮本信子が上品で言い回しが何ともいいのです。
そして、「そういうあなたのことが好きよ。でも気が済んだ時には仕事をやめなさい。それがあなたのためよ」と言います。
「恨み続けて復讐し続けるのはあなたのためにならないよ」と相手を認めながら忠告するシーンもまたいいのです。
こういう話し方ができるといいですね。
この人の自然な演技で救われている感じがします。
孫役で出ている芦田愛菜ちゃんがまた良い演技をするのです。
勧められて、途中下車したした駅のスーパーで全部服を買い換えて、討ち入りの衣装に向かって「ご苦労さん」と捨ててさっぱりした顔をする中谷美紀も小気味良いのです。
DVで悩む若い女性で戸田恵梨香が出てきます。
ホームで彼氏に突き飛ばされ倒れ込んだ戸田恵梨香に宮本信子が絆創膏を貼りながら「くだらない男ね。やめといた方がいいと思う」と言い放ちます。
傍で泣いている孫に向かって「泣くことは悪くありません。でも自分の意志で涙を止められる女になりなさい」と聞こえるように言います。
このシーンもなかなかいいシーンです。
騒々しいオバサン軍団に引き回される南果歩もなかなか内面的な演技が光っています。
もう二組カップルが出てきます。
この二組もハートウォームな仕上がりに一役買っています。
短い短いロードムービーの感じに仕上がっています。
私としてはもう一場面、3年付き合って結婚も考えていた彼氏から突然別れを告げられた中谷美紀が群衆の中で立ちすくむ冒頭のシーンが好きです。
人はそれぞれ皆
いろんなやりきれない気持ちを抱えて生きている。
死ぬほどつらいわけでもないけれども
どうにもなならない思いを抱えていきている。
そして、その気持ちは誰にも言えないのだ。
この映画はなかなか良い映画だと思います。
まだ始まったばかりなのでぜひ観に行くことをお勧めします。