この映画は、テアトル徳山という小さな映画館で1週間だけ上映された映画で、見損ねた作品でした。
TSUTAYAで発見した時は、すでに誰かに借りられた後で、しかも小さなTSUTAYAなので1本しか用意されてなくて、借りるのも苦労でした。
鉄道オタクの映画ということで、ぜひ見たいと思っていました。
このテのお笑いムービーが森田芳光監督の遺作になるとは思ってもみませんでした。
出演は、松山ケンイチ、瑛大です。この二人は出演作によって見事に演じ分けることのできるなかなかの若手俳優だと思っています。
電車マニアにはたまらない九州の電車が次々に出てきます。
それだけではなく、随所に森田芳光ワールドのコミカルな遊びが見られます。
この映画を観ると、連休のどこかには九州までカメラをさげて出かけたくなります。
ストーリーをかいつまんで紹介すると…
車両が一台、ボックス席のローカル線でデートらしきカップルが座っています。
彼女のことそっちのけでヘッドフォンで音楽を聴いている若者小町(松山ケンイチ)がいます。
窓は全開で、彼女は髪を抑えるのに必死です。
怒った彼女は次の駅で降りてしまいます。
そんな小町が、少し離れた席の小玉と目が合います。
小玉はアジア系の二人の外国人と楽しそうに話しています。この外国人はなぜか、妙な関西弁で受け答えしています。
小町は大手建築会社の社員だけど、建物よりもとにかく電車が好き。
一方の小玉は、町工場の二代目です。そこで働く外国人の面倒も見る人の良い電車オタクです。
小町は住んでいるマンションを出なければいけなくなり、小玉の社員寮に住まわせてもらうことになります。
二人でアパート探しをしているうちに、別の電車オタクの住むアパートへつれて行きます。
その部屋のすごいこと…シートだけでなく電車の部品がたくさん飾ってあります。もちろん、窓からは電車が見えます。
そこで、小町は電車に乗っても電車の音を聞くのではなく、車窓から見える景色を見ながら音楽を聴くのが喜びだといいます。
小玉は電車の部品や金属製品、車両の構造や工場などを見るのが楽しいという告白をしあいます。
一つの趣味があっても楽しみ方は千差万別、でも楽しむという気持ちは同じ。そういう場面を観客に見せて、電車オタクワールドに誘います。
そういう私は電車を撮影するのが好きです。車窓から見える線路も好きです。先頭車両から見えるカーブなんか最高です。
小町は社長(松坂慶子)の気まぐれで九州へ転勤になります。
小玉は見合い相手にふられて傷心の旅へ…もちろん行く先は九州。
二人の行く先は豊後森駅です。ここには鉄道遺産があります。ここで、中年の調子の良いおじさんに巡り会います。
この出合いが後にいろんな出来事に発展していくことになります。
この後の展開はある意味、植木等のサラリーマンシリーズに出てくるようなお調子者パターンなのですが、
これは、森田芳光ワールドと観るべきでしょう。あえてクレージーキャッツ的お遊びを加えていったのだと思います。
私は基本的には、いい加減な人物描写は好きではないのですが、ここまでいい加減にされると付き合うしかないか…と思わされます。
登場人物の名前は全部電車の名前になっているところからも、「こんな人間いないやろ!」の世界の連続なのです。
小玉の見合い相手のお母さんがなぜか伊東ゆかりなのです。
その伊東ゆかりが「小指の思い出」のエピソードを持ち出したり、小町と付き合うのかと思わせるあずさはサンダーバードJrと結婚することになったりなど…
これでもかと思うほど、どたばたの連続です。
登場人物の仕草に効果音を使って舞台演出のような笑いも作り出します。
とにかく良くも悪くも森田芳光ワールドです。
のんきに映画を楽しんで休日を過ごしたい人には最適な映画です。
九州まで電車を観に行きたくなってしまうこと請け合いです。