とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

『心が元気になる本』

2010-02-08 23:44:24 | 本の紹介
『心が元気になる本』全3巻 大河原美以 監修 あかね書房 2008年 定価各3000円 

少し高いのですがとてもいい本なので紹介します。

実は私も持っていないのです。
学校の図書室に入れてもらいました。

東京学芸大の大河原美以先生監修の本です。

第1巻が『イライラ、クヨクヨどうすればいいの?』『悩む、いらつく・心の仕組み』です。
第2巻は『自分はダメだと思うとき』『1日の心の働きと悩み』です。
第3巻は『学校に行くのがつらいとき』『いじめ・不登校・性の悩み』です。

 どの本もとてもわかりやすく書いてあります。
児童生徒向けに書いてある本ですが、私たち教師が先に読む必要があると思います。
もちろん、一般の方も読んで参考になることまちがいありません。
年頃の子どもさんをお持ちの方でしたら、すぐにでも読むことをお勧めします。
大変いい本です。

少しだけ、中身を紹介しておきます。
第1巻の『イライラ、クヨクヨ…』です。

はやとくんとみさきちゃんという児童と相談室の山田先生の会話で話が発展していきます。
イラストもまじえて大変わかりやすく書いてあります。

いらいらしないように、なりたい

山田「はやとくんはどんな時にイライラしてくるの?」

はやと「宿題しなきゃいけないんだけど、『宿題しなさい』とか、『早くしなさい』とか
     『ちゃんとやりなさい』とか『がんばりなさい』とか家で言われると、だんだんイライラしてくるんだ」

山田「宿題しなきゃいけないのが自分でもわかっているからこそ、イライラするんだよね」

はやと「『早くやらなきゃ』とか、『ちゃんとしなきゃ』って思うんだけど、うなくいかなくてもっとイライラしてしまう。
    だけど、イライラしていると、『そんなにイライラしないの!』『イライラしながらやっているから、
    ちゃんとできないいだ』ってしかられちゃう。

山田「イライラしてはいけないと思うことが、イライラの悪循環につながっている」

クヨクヨしないようになりたい

みさき「クヨクヨが気になってますますクヨクヨしてしまう」

山田「ちゃんとやりたかったからこそ、失敗した時、クヨクヨしちゃうんだよ」

みさき「いつまでもクヨクヨしていると、元気が出てこないし、やる気も出てこない」

みさき「家に帰っても、わたしがクヨクヨしていると、お母さんまでだんだん暗くなってきて、悲しそうな顔になるの」

みさき「お母さんが悲しい顔になると、自分が悪いことしているような気分になる」
   「だからクヨクヨしちゃいけないって思うのに、お母さんのこと悲しませちゃったと思って
    よけい『どうしよう』ってクヨクヨしちゃう」

みさき「くよくよしていることが気になってますますクヨクヨしてしまう」

クヨクヨも、ぐるぐるまわってる

イライラ、クヨクヨ……「いやな気持ち」って、なんだろう?

イライラしている時、どこか身体が苦しくなってくる。

クヨクヨしている時、心臓のあたりが苦しくなる。

いやな気持ちって身体でも感じるもの

「頭にくる」「腹が立つ」

気持ちが身体の反応とつながっている

気持ちは生理現象

生理現象…生命を維持するために生じる身体の働き

「生理現象って暑かったら汗をかく」

「寒いとトイレに行きたくなること」

心地よい気持ちも、いやな気持ちも大事

生理現象って身体を健康に保つためにある。

怖いって気持ちがあって初めて自分の身を守ることができる。

「いらいらの気持ちも生理現象だってわかるし、
 大事なものなんだけど、やっぱりいらいらしたくない。」

「イライラしていると、集中できないし、よけい失敗するし、
 話しかけられても怒って答えてしまう」

「イライラがおこったときに、それをどうしたらいいかわからない…から困ってる」

そんな子どもたちを前にした時どうしたらいいか一緒に考えられる本です。

 
コメント (1)
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『憲法9条を世界遺産に』

2006-08-26 00:07:29 | 本の紹介
 先日、本屋で『憲法九条を世界遺産に』という奇妙な本を目にしました。作者は爆笑問題の大田光と中沢新一です。「何!憲法を世界遺産に葬り去ろうとしているのか!」という目でパラパラと見ると、そうではなく憲法改正へ向かおうとする潮流に対してアンチテーゼを投げかけるという趣旨の本でした。いかにも大田光らしい言い回しで語っているのでわかりにくいところもありますが、なかなか面白そうな本でした。買ってすぐに読み始めましたが、ひとつひとつのフレーズが面白いので、ポストイットを貼りながら読み進めました。



 どうして議論するのかというところでは、大田氏は『今九条がかいせいされるという流れになりつつある中で、10年先20年先の日本人が「何であの時点で憲法をかえちゃったのか、あの時の日本人は何をしていたのか」…そうならないための自分とこの世界に対する使命感のようなものがすごくある』と述べています。

 宮沢賢治についての論究もかなりつっこんであって、『あれほど動物や自然を愛し、命の大切さを語っていた賢治が、なぜ田中智学や石原莞爾のような日蓮主義者たちの思想に傾倒していったのかがわからない。…賢治の作品を信頼するけど、戦争は否定したい。そこが相容れない』と述べたあとで、『彼の作品の中には、正義や愛があふれているけれど、正義こそが結果として人を殺す思想にもつながっていく。そこを深く見つめ直さないと、もう一度同じことが起こる』として、宮沢賢治こそ。憲法9条の問題を考えるキーパーソンだとします。



 社会はディスコミュニケーションでできているが、賢治は他人の苦しみが自分の苦しみと同じであるような状態をつくりたいと思っていて、そんな時に宗教的思想にのめりこんだのだとします。人々が一つの理想郷に向かって邁進していく姿は大変危険な状況だと思います。最近で言えば『郵政民営化』路線が示している通りです。

 大田氏は『大田光の私が総理大臣になったら…』の番組でマニフェストとして『憲法九条を世界遺産に』というテーマを出したそうです。でもバラエティーだからということで『自衛隊の駐屯地を田んぼにする』に変えられたそうです。




 今の日本の憲法は『世界の憲法の珍品』だとします。『戦争していた日本とアメリカが戦争が終わったとたん、日米合作で無垢な理想憲法を作った。時代の流れからして日本もアメリカも無垢な思想に向かい合えたのはあの瞬間しかなかった。すぐにアメリカは朝鮮戦争で振り出しにもどっている』とします。

 『戦前世代の人間は、あの憲法はアメリカが作ったから違和感があると言う。でもぼくは生まれた時から41年間、あの憲法の中で生きてきたわけです。それを簡単に変えるな。僕の生きてきた歴史でもある』と述べていきます。これは、実に「我が意を得たり!」という心境です。

 『日本国憲法は、ドリームタイムなんです。…オーストラリアのアボリジニが、自分たちの根源の場所として確保している場所のこと』として、抱き続けていかなければいけないとも記しています。

 更に戦争を発動させないために文化(お笑い)があると続けていきます。
 小泉首相が、中国や韓国に靖国問題の説明をするときに「不戦の誓い」という言葉を繰り返すことに対しても『あのことばは、僕とかみさんがけんかしたときに。「ごめんなさい、もうしません」っていうのと同じくらい軽い。』と切り捨てます。

 そうして、「不戦」と「非戦」を対比します。『不戦という言葉を、もう一歩深めてみると、その本質は自分はやろうと思えばいくらでも戦えますよ。あんたなんかのしちゃいますよ。でも今はやらないよと言ってるののと同じような不穏なポーズが隠されています。』『普通の国の憲法では不戦しか言わないでしょう。我々は軍隊をもつ自衛権も持つ。一朝事あれば他国に攻め込むこともある。でも、それは平和時にはやりません。これが普通の国の憲法です。現実的な思考をすれば国家にとっては不戦しかあり得ない。…ところが、日本国憲法はそうじゃない。非戦だと言っている』これは、本質をついている論法だと思います。



 そして、最後に結論として、『憲法を世界遺産』にして、自分たちの立ち返る場所、反省したり、迷ったり、疑ったりするために世界に宣言して残しておかなければならないとします。

 非常に、ユニークな発想から述べられている本です。通り一遍なものではないと思います。でも、このようないろんな角度から憲法について述べていくことはとても大切だと思います。

 そんな高価な本でもないし、厚くもないのですぐに読める本です。ぜひ読んでみることをおすすめします。
コメント (2)
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