「北のカナリアたち」を観ました。
井筒監督の映画と悩んだのですが、今回は吉永小百合優先と東映創立60周年記念作品に釣られました。
一緒に行く人の趣味もあったのですが…。
今回の原作は湊かなえということもあって、サスペンス要素もあるのかな?と思いましたが、ことのほかヒューマンドラマの群像劇でした。
ただ、荒々しい北海道の自然は余すところなく描かれています。
カメラマンが「八甲田山」や「剱岳」の木村大作さんです。
荒々しい北海道の大自然を切り取った力技のようなカメラワークには圧倒されます。
ストーリーをあまり言うのは何なのですが、でもある程度語らないと意味がないので少しだけ触れながら感想を言いたいと思います。
北海道の最北端の礼文島の児童6人の分校に勤めていた女教師川島はる(吉永小百合)はある事件をきっかけに島を追われます。
20年後東京郊外の図書館で働いていて、もうすぐ定年になろうとする時に、突然刑事が二人訪ねて来ます。
教え子の一人が殺人事件の重要参考人にされているとのこと。
しかもその教え子の所に自分の住所と電話番号が書いてあるメモがあったとのこと。
「なぜあの子が…」との思いから、はるは20年ぶりに島を訪れる決意をします。
真相を知るために大人になった子どもたちと再会をする決意をします。
再会をするということは、20年前の事件の封印を解いていくことになるという辛い事実も待っています。
成長した子どもたちは皆、はるが島を追われるきっかけとなった事件のことで、深く傷つき、悩みを抱えて生きていました…。
子役の子どもたちが演じる歌声は実に清楚で美しいものです。
サントラを探して何とか購入したいと思ったほどです。
6人の児童のうち鈴木信人という子がとても気になりました。
将来殺人事件の容疑者として追われる身になるわけですが、この子が困難になると大きな声で叫び泣き出すのです。
叫び出すと教室から飛びだし、海の近くまで走り出すのです。
明らかに発達障害的な行動を示すのです。軽度の知的障害か、発達障害なのか、それとも環境からくるものなのか大変興味を持ちました。
この子が発する音声から音階を引き出し、ロシア民謡の「カリンカ」を歌わせ、合唱まで導く教師の実践のエピソードは面白く感じました。
子どもの奇声と同じ音をピアノで探りながら教師が同じ声を出す。
子どもの問題行動に共感しながら、意味づけをし、正しい方向へ導いていく。特別支援教育のお手本的行動です。
できすぎたエピソードなのですが、ある意味で本質を描き出しているのではないかと思いました。
そこから、子どもたちの合唱に才能に気づき、彼らを熱心に指導していく教師を演じるのが吉永小百合だけに「うーんきれい事過ぎる」とも思えます。
まして、脳腫瘍を患って余命いくばくもない夫を気遣って献身的に勤めているというのは、吉永小百合ならではという面が出過ぎなのです。
でも、彼女には理性では絶ち切れないどろどろとした恋心があったのです…というところなのです。
そこから先のストーリーはさすがに公開して間がないということで、言えないかな?
どろどろとした恋心と、児童たちの互いに対する嫉妬や、夫の突然の死とそこをひもといていくところが、
サスペンス的要素なんだろうけど、今回はそのことより、子どもたちの歌声や大人になってからの子どもたちの純粋な友情のあたりがこの映画の見どころかも知れません。
成長した生徒達を演じるのは、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平といった若手実力派で、皆、好演をしています。
森山未來に至っては見事な演技です。
もう一人、宮崎あおいは目だけで演技できる女優なんですね。吉永小百合と堂々と渡り合っている感じがしました。
大した役ではないし、出演時間も長くないのに存在感十分です。
もう一人松田龍平は何とも言えない怪演ぶりです。何かしそうで、何もしないところがドキドキさせられてしまいます。
唯一満島ひかりさんだけは、彼女の魅力が出ていない気がしました。もう少しはじけた演技が見たかったと思いました。
見方によっては、はる先生と傷心の警官の“不倫もどき”がサラッとしすぎているという意見もあるかもしれません。
本来事件の鍵となるはずが、淡泊に描かれすぎているかもしれません。
吉永小百合の立ち位置や年齢の問題かもしれません。違う女優が演じていたらまた違った演出になっていたのかもしれません。
そういう意味からは評価が分かれるかも知れません。
私個人的には後味の悪い作品を見るよりは、子どもたちの歌声に心を揺さぶれた日曜日ということを良かったと思っています。
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