とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

鎌倉大仏(高台寺)

2008-02-19 22:51:18 | 写真日記
 長谷駅で途中下車することにしました。藤沢方向に向かう時にたくさんの人たちが降りたからです。そういえば長谷寺というのがあったな…程度の感覚です。長谷駅で降りて、人の波にそのまま乗っかって移動しました。新しい店と古い店が同居しているような不思議な街です。お寺に向かう道すがら古い旅館や、一刀彫りの店が軒を連ねて、やっぱり信仰の町だということが伝わってきます。


 


 
 長谷寺へはすぐに着きました。長谷寺と聞くと奈良の桜井市の長谷寺のイメージが強いのですが、こちらのお寺はどんなのかちょっと興味がわいていました。 長谷寺の入り口はちょっときつい石段になっています。上からおばあちゃんが手すりにつかまりながら降りてきます。「そうまでして行きたくなるようなお寺なんだ」とますます期待はふくらみます。

  

 入館料を払って中に入りました。線香の香りがプーンと臭ってきます。でも肝心の建物はとても新しくて、質実剛健な鎌倉建築を想像していたのとはほど遠いイメージでした。勝手に思い描いて方の責任なのですが…。

 本堂の中には十一面観世音菩薩像がありました。長谷寺の観音像は、右手に錫杖(しゃくじょう:つえのこと)を持っています。普通はあまり持っている像はないと思います。そういう意味からはお地蔵様の特徴も併せ持っているのかもしれません。

 長谷寺は花の寺としても有名らしいのですが、一番寒い時に行ったのでは、花の風景はほとんどありません。唯一、蝋梅と白梅が咲いている程度でした。それでも一応撮影はしておきました。

 



 

 高台にあるので本当なら三浦半島や、逗子の方まで見渡せるのでしょうが、関西は大雪という天候でしたから、ほとんど何も見えない状況でした。

 帰り際にお地蔵様の大群を見つけました。
 地蔵信仰が厚い感じでした。幼くして亡くなった子どもや、妊娠中に亡くした子どもの供養は、自分には経験がないけど何かぐさりとくるものがあります。

 

 


 「もういいか」という半分がっかりした気持ちを引きずりながら、ここまで来たのだから鎌倉大仏でも見てくるか…という気分で出かけました。大仏のある高台寺までの道のりにはたくさんの観光客があふれていました。
 鎌倉を代表する名所となっている長谷の高徳院の本尊である大仏は、説によると鎌倉幕府第三代執権・北条泰時の晩年になってから作り始めたそうです。5年の歳月を使って完成した時には泰時はすでに亡くなっていたそうです。しかもこの時、建立した大仏は木造だったそうです。
 そして4年後この大仏が暴風雨の為に倒壊したので、あらためて金剛の大仏が造営されたそうです。大仏殿は2度の台風でで倒壊。更に大津波で押し流され、以来、現在の様な露座の大仏となってしまったそうです。けっこう災難続きの大仏さまです。本尊の大仏は阿弥陀如来の形になっています。鎌倉では数少ない国宝でもあります。

 鎌倉大仏は、一度来たことがあるようなのですが、(実は30数年前の修学旅行で一度来た)ほとんど覚えていません。修学旅行は、友と一緒に過ごしたことだけしか覚えていません。「誰かと誰かが二人で話をしていた…」そんな噂だけが飛び交っていたような…。

  


 でも、改めて見るとこれが何とも見事なお姿なのです。こんな整った仏像だったのかと今までの無知を少し恥じました。仏像の周辺では携帯でパチリパチリと撮影する人たちであふれかえっています。外国の方もずいぶん目立ちました。逗子が近いせいかなと岩国周辺に住んでいる人間としては感じてしまいます。

 
 
 大仏周辺から角度を変えて撮影してみました。少しの角度の変化でずいぶん違って見えるものです。

 

   
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江ノ電に乗ってきました②

2008-02-11 21:57:19 | 写真日記
 江ノ電は意外と混んでいてびっくりしました。もっとさびれた電車かと思ったら地域に根ざしている電車なんですね。でも今回乗っている乗客のかなりの人はパンフレットや本を持っているところを見ると観光客なんだと、これもびっくりです。こんな季節外れの時期にこれだけの人が来るとなると花が咲いて観光シーズンになるとすごい人なんだろうな…とあらためて実感しました。

 予想通りすごい狭い所をどんどん電車が走っていきます。電車の窓のすぐ隣が人家の塀です。中でもすごい所は線路を歩いて渡らないと入れないお店もあります。「そういえばこの店テレビで見たことある!」と思わず身を乗り出しました。

 あまりの景色に面白くなって、取りあえず終点の藤沢に行ってみようかと思いましたが、そうまですると時間がなくなってしまう…ということで、取りあえず海の絵柄がほしいので、七里ヶ浜で途中下車することにしました。

 駅から海岸はすぐそこです。まず、何か食べるお店は?と探しました。なかなかありません。食事であれば江ノ島で降りるべきだったかもしれません。やっと一軒の店を見つけました。でもこれはイタリアンのお店でした。私はどうもこのイタリアンというのがあまり好きではありません。家ではパスタを自分で作って食べることはありますが、外に出てまで食べる気がしません。

 食事をやめて、海岸に向かうことにしました。見るとセブンイレブンがあります。セブンのおにぎり…と思いつきましたが、頭で強く打ち消しました。目を別の方向に向けると線路脇に廃屋だと思われる一軒の家屋がありました。どんないわれで廃屋になったんだろう?と思わぬ憶測をするのが好きです。



 海岸に目を向けるとサーファーらしき人が信号を待っていました。頭にサーフボードを乗せて、信号を待つ姿「これぞ湘南の風景だ!」と感動して、写真を1枚撮りました。



 海岸に降りると、山口では考えられない黒っぽい砂の色と砂粒のきめの細かさがありました。海では数名のサーファーたちが波を楽しんでいます。海岸では、髭をはやした男の人が絵を描いていたり、犬の散歩をしている人がいたり、人は少ないのですが、何となく山口とは違う街の臭いと空気を感じました。このあたりが田舎者の劣等感なのかもしれません。

 天気があまり良くないので海の色も、遠景もあまりよくありませんでした。でもそんなことはわかっていたので、気落ちせずに何枚か撮影しました。一番近くまで来てくれるサーファーは立ち上がってオールのようなもので波を漕いでいます。不思議な光景です。
 
 インターネットで索引するとスタンダップサーフィンという立派なジャンルがあるそうです。専用の幅広のボードとオールがあるそうです。

 

 

 

 続いてまた電車に乗りました。今度の車両は新しい車両で前がよく見える構造になっています。すぐに一番前に陣取って撮影開始です。「こんなおじさんいるよね」「電車撮ってどこが面白いのかね?」そんな感じでしょうか。でももろともせずに撮影を続行しました。線路の感じとか、左右の風景が何とも言えずに何時間見ても飽きない感じです。

 

   

極楽寺駅で下車しました。ここは、前回紹介した青春ドラマの舞台となった駅なのです。毎回のように登場した駅舎がどうなっているか興味がありました。

 何とイメージ通りの駅舎のままです。きっとドラマのままで残してきたんだろうと思います。横にある郵便ポストも昔のままで立っています。いいですね。こういう光景は夢がありますね。インターネットで調べると「俺たちの朝」だけのためにHPを作られている人がいるくらい人気のあったドラマだったようです。

 駅の写真を数枚撮ってから、近くを散策しました。もう頭の中はドラマの一員です。ここらへんが非常に単純なのです。ラーメン屋さんを見つけました。ここらへんで食べないと夜まで食べないパターンになってしまうので、食べることにしました。時間も遅かったのでお客も誰もいません。人の良さそうな親父さんだけです。
チャーシュー麺を注文しました。昔ながらのラーメンで麺はそこそこ堅めでいい感じでした。期待してないところにこういうラーメンが出てくるとうれしくなります。

 

 

    



   
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江ノ電に乗ってきました①

2008-02-11 17:29:21 | 写真日記
 2月9日(土)10日(日)は東京に出張に出かけました。日曜日にある研修会に出席するためです。一日日程では間に合わないということで前泊という日程になりました。「切符は事前に取って、コピーを取れ」「領収書はちゃんと添付しろ」と前からうるさく言われて、最近の公務員バッシングの後遺症もすさまじいものがあると半分イライラしていたら、「代休はいつ取られますか?」と聞かれたので、「一日目の分は…」と答えようとしていたら、「すいません、代休は一日しかないんですよ。移動日については代休ないんですよ」ますます行く前から憂鬱になってしまいました。

 それでも、「それならそれで…一日目は代休もないならエンジョイしなければ!」ということでまた例のごとく撮影旅行にすることにしました。
 宿泊するホテルはいつも利用する中央線沿線が取れなくて、ヤフーで安い宿を検索すると京浜東北線沿いの蒲田しかありませんでした。山手線から飛び出さなければいけません。もう少し行ったら神奈川です。

 それなら思い切って南に下ってみるのもいいかと江ノ電コースを考えてみました。江ノ電沿線は行ったことはありませんが、ノスタルジーを感じてしまうのです。それもそのはずです。中学から高校にかけて見た青春ドラマの舞台が江ノ電周辺がよく出てきたのです。 特に「俺たちの朝」というドラマが印象に残っています。勝野洋、小倉一郎、長谷直美、秋野太作の4人が織りなす青春ドラマでした。

主題歌は歌:松崎しげる
作詞:谷川俊太郎
作曲:小室 等

ほとばしる水の冷たさに 今日がかくれている
見えない太陽に 向かって鳥たちは歌い
驚いたように 地平へと羽ばたく
答えを知らぬ 君にできるのは ただ明けていく青空に問いかける事

呼びかける声のやさしさに 愛がかくれてる
小さなほほえみに 渦巻いて友達と出会い
悲しみの夜を 明日へと目覚める
答えを知らぬ 君にできるのは ただ明けていく青空に問いかける事

答えを知らぬ 君にできるのは ただ明けていく青空に問いかける事

 谷川俊太郎らしい実に素晴らしい詩なのです。それに語りかけるような小室等のメロディーが重なる傑作と呼んでもいい曲です。でも、しばらくこの曲の存在すら忘れていました。それが、今回「江ノ電に乗ろう」と決めてからさっと蘇ってくるから不思議です。これが中年おじさんのなせる技なのでしょうか?
 ともかく、江ノ電に乗って極楽寺駅に降りることを目的にしました。
 
 さて、前の日からどうも天気が怪しくなってきました。東京地方は大雪になるかもしれないというテレビからの情報が飛び込んできます。「雪が降っても取りあえず行くぞ!」と決意するものの江ノ電は電車とは言え、ほとんど路面電車状態なのでちょっと心配です。

 まあ、行き当たりばったりということで出発しました。新幹線に乗るまではごく普通のスタートでした。心配はないということですっかり車中の人になってしまいました。広島をすぎたあたりから田んぼにちらちら雪が積もっている風景が飛び込んで来ました。「東広島のあたりは雪が多いんだろうな」ぐらいに思っていたら、だんだん窓の外は雪景色に変わっていきます。岡山駅では屋根の上はすっかり雪景色です。しかも、断続的に降っています。大阪はもう真っ白、京都はもっと真っ白、名古屋はもうそれは雪景色です。

 

 

    

 「エー!これから先どうなるの?」とこの先不安な思いでいっぱいでした。でも、静岡あたりから雪はまったくなく、降る雪もまったく無くなりました。日本列島広いなとあらためて思いました。雪は岡山から名古屋までだけでした。

 いよいよ気持ちは江ノ電に向かいます。切符は東京駅までなのですが(コピーの提出の関係)ですが、新横浜で降りることにしました。横浜線に乗り換えて、横浜まで行って横須賀線に乗り換えて鎌倉に向かいます。横浜駅は意外と混んでいます。ちょっと疲れているし、立ったままだといやだな…と思っていたら2階建てのグリーン車が見えました。「そうだ!滅多にないことだからグリーン車に乗ろう!」と贅沢な気持ちを出してグリーン車に乗りました。ゆったりとした席に大きな窓、すっかりご満悦でした。でも、このグリーン車の券は駅で買うのと車内で買うのではかなり値段の差があるようです。



 鎌倉の一つ前の駅に北鎌倉という駅があります。ここにはお寺がたくさんあって本当は行ってみたいところの一つなのです。車窓から円覚寺が見えた時に「円覚寺舎利殿」と日本史の勉強で記憶しただけの知識が頭を巡らせます。もちろん国宝です。他には奈良の東大寺の南大門、大分の富貴寺と鎌倉時代の建築物の知識だけが出てきます。いつか一度尋ねてみたいものです。

 鎌倉につきました。駅前にはやっぱり人力車が待っています。この頃どこの観光地に行ってもこの人力車はつきものですね。前にも書きましたがあまりいい印象は持っていません。

  

 江ノ電の切符利場で一日乗車券のりおくんを580円で買いました。これで、どこでも乗り降り自由です。鎌倉駅に入ると、駅構内に食べ物屋さんがずらりと並んでいます。そう言えば昼ご飯を食べていないことに気づきました。すでに1時をまわっています。お腹すくよな…と思いながら、立ち食いではさみしいのでやめました。

 電車が入ってきたのでさっそく鉄男くんになって撮影を開始しました。携帯で撮る人やコンパクトデジカメで撮る人などけっこういました。緑色の電車がけっこうレトロな感じを出してこれからの旅の始まりを予感させてくれます。

  
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キネマ旬報ベストテンに思う。

2008-02-07 22:04:43 | 映画
 キネマ旬報のベスト10が発表されました。2月下旬号で特集を組んでいました。私は定期購読をしているので、もちろん手にしてじっくり見させてもらいました。
【2007年度日本映画ベスト・テン】
  1位 「それでもボクはやってない」
  2位 「天然コケッコー」
  3位 「しゃべれども しゃべれども」
  4位 「サッド ヴァケイション」
  5位 「河童のクゥと夏休み」
  6位 「サイドカーに犬」
  7位 「松ヶ根乱射事件」
  8位 「魂萌え!」
  9位 「夕凪の街 桜の国」
  10位 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
  次点 「愛の予感」
【2007年度読者選出日本映画ベスト・テン】
  1位 「それでもボクはやってない」
  2位 「天然コケッコー」
  3位 「きさらぎ」
  4位 「夕凪の街 桜の国」
  5位 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」
  6位 「しゃべれども しゃべれども」
  7位 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
  8位 「河童のクゥと夏休み」
  9位 「サイドカーに犬」
  10位「東京タワーオカンとボクと、時々、オトン」
  
 ということになっていました。定期購読者ということもあって、読者選出ベスト10には葉書で応募しました。
 映画に順位をつけるのは好きではないのですが、
 私のつけた順位は、以下の通りです。 
  1位 「それでもボクはやってない」
  2位 「パッチギLOVE&PEACE」
  3位 「天然コケッコー」
  4位 「しゃべれども しゃべれども」
  5位 「夕凪の街 桜の国」
  6位 「やじきた道中てれすこ」
  7位 「オリオン座からの招待状」
  8位 「魂萌え!」
  9位 「アヒルと鴨のコインロッカー」
  10位「めがね」
 キネマ旬報の評価はいつも妥当な線だと思います。ただし、興行的な評価とは異なるのでそこらへんが難しいところですね。
ちなみに興業収入ベスト10ですが
  1位 「HERO」
  2位 「劇場版ポケットモンスターダイヤモンド&パール ………」
  3位 「ALWAYS 続三丁目の夕日」
  4位 「西遊記」
  5位 「武士の一分」
  6位 「恋空」
  7位 「ドラえもん のび太の新魔界大冒険………」
  8位 「どろろ」
  9位 「アンフェア the movie」
  10位「名探偵コナン 紺碧の棺」
…とコメントをはさみにくいようなラインナップになっています。このあたりのところが地方の映画館に不満をもってしまうような原因があるのかもしれませんね。本当の意味での大人の映画館がほしいですね。
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映画「結婚しようよ」を観ました

2008-02-04 00:05:27 | 映画
 映画「結婚しようよ」を観に行きました。
 全編吉田拓郎の歌であふれているという何とも70年代的という映画です。周囲の友だちもみんな吉田拓郎の歌や深夜放送で共に育ってきたこともあり、見逃さずにはいられない映画だと思いました。

 公開初日は体調がイマイチということもあって、2日目の午後の公開に行きました。開場とともに入り、いつものお決まりの最後列の席についていたのですが、入ってくるお客は私と同年代のおじさん、おばさんばかりです。これが、「拓郎効果なのかもしれない…」と思っていました。

 すると、帽子をかぶった見覚えのある男性が入って来ました。見るとカップルです。どちらもきっと知り合いだと思いました。気まずい思いもあって「こっちへ来るな…」と念じていたのですが、あにはからんや、私のすぐ前の席に入ってしまいました。そして、やっぱり気づかれてしまいました。

 さて、映画ですが、監督が佐々部清ということもあり、実にヒューマニティーあふれた映画になっています。出演者も父親役に三宅裕司、母親役に真野響子、長女役には金八先生ドラマで美術教師を演じている藤澤恵麻、次女には中ノ森BANDのボーカルAYAKO、映画の核を握る青年には、映画「学校4」で家出中学生を演じた金井勇太、他にも松方弘樹、入江若葉、岩城滉一、モト冬樹など、新旧相まみえた好演と言ってもいいかもしれません。映画を観ているだけでは全く退屈させられることはありませんでした。
 
 でも、あえて言わせてもらえると私の中では「どこか違う」という違和感がずっとつきまとっていました。大学出てから30年間家族のためだけに一所懸命働いてきた、お父さんを中心にした“幸せファミリー”の物語なのだからそれでいいと言えばいいのだけど、やっぱり違和感があります。

 公開直後なので、ストーリーの触れないようにして少しだけその違和感について書こうと思います。オープニングでは、都会の雑踏と、ビルの間からの夕焼けそのバックに「落陽」が流れてきます。いい立ち上がりです。これからの展開にワクワクしてきます。

 お父さんは、実直ひとすじ、しかも性格はとてもやさしいお人好しとして描いています。家族で夕食を囲むことを、唯一の幸せと考え、それを家庭のルールにしています。そして、そのルールがいろんな形で崩れてしまいます。そこで振り返りながらさらにいい人へと昇華していくというような話です。

 出てくる登場人物はどの人もどの人もいい人だらけで、屈折した人は誰も出てこない。「そんな社会がどこにあるの?」「ここはどこの国?どの時代の話?」と突っ込みをいれたくなるような…関西のギャグを借りるなら「こんなやつはおらんやろ~!」という世界の連続です。「こんな時代だからこそ、こんなホームドラマを描きたかった」と言うのでしょうか。

 オープニングで路上ライブに三宅裕司が立ち止まります。そこでは、「落陽」を歌っています。その演奏に合わせて一緒に歌い始めます。ここで一つの疑問です。実直一筋で家では家族を愛し、会社では仕事に励んでいるお父さんが、ライブで立ち止まって歌うことがあるのでしょうか?昔プロを目指していて、フォークのライブをしていたけど、訳あってギブソンのギター(J200)は押し入れにしまったまま…という設定の中で路上ライブに立ち止まって歌い始めるということは、今の生活に疑問を抱き始めていると考えるのが普通だと思います。でも、彼の生活はそんな感じはみじんも見せないのです。

 次の疑問です。長女も実にいい性格として描かれていきます。卒業を控えている女子大4年です。親に反抗することもなく、学校が終わったらさっさと家に帰って来て、家族一緒の晩ご飯につきあいます。三宅曰く「反抗期ひとつなく、すごくいい子で自慢ができる娘」だそうです。そんな挫折も何も知らないキャラクターとして描く必要があるのでしょうか。この娘には生活感が全く見られません。生きているというより人形です。

 次女にしてもそうです。バンドを目指していることはわかりましたが、昼間は何をしているんだろう?全くわかりません。フリーターをしている風にも伝わりません。ここらへんの描き方はどうなんだろうと思います。

 もう一人、昔のバンド仲間の岩城滉一です。彼は、ライブハウスのマスターとして登場してきます。このあたりははまり役かもしれません。彼は先に夢をあきらめて就職をしていたけど、夢をあきらめられずに、16年のサラリーマン生活に見切りをつけてギリギリながらライブハウスをしていることまでわかります。でも、このマスターだって生活を描く必要があるのではないかと思います。妻の存在が出てこないのは結婚しなかったのか、お母さんの真野響子に憧れていて、そのまま結婚を逸してしまったのか、会社を辞める時に離婚したのかそんなエピソードがほしいと思います。

 考えすぎなのはわかるのですが、リアリティーの中で初めてファンタジーが存在すると思っています。ファンタジーだけで描くとやっぱり映画館を出たとたんに無くなってしまうバブルになってしまうように思います。

 山田洋次監督の「男はつらいよ」の映画では寅さんの財布の中にはいつも500円しか入っていないのに、宿屋に泊まったり、宴会をしたりというファンタジーもありましたが、寅屋の周辺のリアリティーと、寅が出会う人たちの生活は常に出ていたように思います。それに比べて今回の「結婚しようよ」はファンタジーすぎるように思います。

 設定も、東京郊外の一戸建ての家に住み、専業主婦の真野響子は、趣味のポジャギ(韓国風パッチワーク)に熱中している。そんな絵に描いたような中流家庭でのお嬢様の結婚話なのだから、絵空事に見えてしまうのかもしれません。

 拓郎の歌うメッセージはそんな中流家庭に流れているような曲ではないと思います。拓郎の大ファンだという佐々部清監督ならもう少し掘り下げてくれると思っていましたが、少し残念です。

 劇中歌われている中ノ森BANDの“風になりたい”はいいです。シングルカットして発売しているようです。以前歌っていた川村ゆうこよりはずっといいです。久しぶりにじっくり聞き入ってしまいました。

 結論です。音楽映画だと割り切って観るならご機嫌な映画だと思います。
 結婚を夢見ているか、娘を嫁に出した直後の親ならお涙ちょうだい映画としてもいいと思います。
 ストーリーをじっくり味わいたいと思われる方はマイナス評価なると思います。
コメント (2)
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