とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

ジョゼと虎と魚たち

2006-06-25 22:58:43 | 映画
 昨日予告していた『ジョゼと虎と魚たち』です。この映画は田辺聖子の短編が原作です。原作を先に読んでいて、肢体障害のジョゼの自由奔放さに惹かれていて、映画化されるということで、ぜひ見たくて映画館に行ったものです。

 肢体障害のヒロインということで、通常の描かれ方だと一歩引いた所で生きていて、もう一人の主人公に引っ張ってもらって、社会に目覚めるというストーリーを予想しがちですが、このヒロインはちょっと違っていて、関西弁でがんがん物を言う、しかもちょっとがらの悪いお姉ちゃんなのです。関西弁で書かれた文章というのは、人情味と生活のリアリティーとちょっとの毒を感じてしまうのは、私だけ?

 さて、映画ですが、深夜の麻雀屋でアルバイトしているいい加減な大学生の恒夫役に妻夫木聡、肢体障害の謎のジョゼに池脇千鶴という配役になっています。映画は深夜の麻雀屋から始まって、客の会話から早朝見かける謎の老婆と乳母車に興味を持たせるとことろから始まる。恒夫は偶然、その乳母車と出くわす。暴走して倒れた乳母車を心配顔で覗いた恒夫に突然現れたのは、包丁を突き出すジョゼの姿。そのまま垣夫はふたりの家に連れて行かれ、朝食をごちそうになる。味噌汁に煮物にだし巻き---どれも美味しい。常夫が少女に名前を尋ねると、彼女はジョゼと名乗った。老婆はくみ子と呼んでいるのに。垣夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つ。その後も何度か家に行くことになる。次第にうち解けていくこととなる。
 
 一方、恒夫には大学にベッドを共にするだけの女友だちと、思いを寄せている香苗がいた。福祉関係に興味をもつ香苗の気をひくために、イスからダイブするジョゼの話も何度かしていた。やがて、香苗とも下宿で一緒に過ごす仲まで発展する。

 恒夫が抜き出した一冊がフランソワーズ・サガンの「1年ののち」。いつもそっけないジョゼがその本の続編を読みたいと強く言う。恒夫は既に絶版となっていた続編「すばらしい雲」を古本屋で探し出し、プレゼントする。「ねえ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」という恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。恒夫の紹介で、助成金が下りて、ジョゼの家がリフォームされることになり、完成間近の家を香苗が見に行く。恒夫はひどく戸惑う。「あの子が恒夫くんの言っていたダイブする元気な子?私もダイブするところ見たいな!」と何気なく言った香苗の言葉を押入れの中で聞きながらうつむくジョゼ。その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねる。ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫ぶ。恒夫は祖母に、もう二度と来ないようにと釘をさされる。

 数ヶ月後、就職活動中の垣夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。工事で知り合った現場主任から、ジョゼの祖母が急逝したことを知らされ、急いでバイクでジョゼの家へと急ぐ。ジョゼは静かに恒夫を家に招き入れる。葬式から最近の暮らしぷりまで、淡々と語るジョゼだったが、垣夫がショゼの行動に口をはさんだ途端に「帰れ!帰って、もう!」とわめきながら恒夫の背中を殴り始める。その怒鳴り声は、いつしか泣き声に変わり、やがて…久しぶりに再会したふたりは、お互いの存在を確認しあう様にひとつになる。ジョゼにとってははじめての経験だった。恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める…。
 
 この映画はラブストーリーのような描き方をしているけど、それを期待して行った人たちは、肩すかしをくらったのではないかと思います。障害者の性愛というものをストレートに描いているし、障害者への差別というようなものも描いていない。唯一描いてのは、恒夫を奪われた香苗がジョゼを罵倒しにくるシーン。「障害者のくせに私から彼を奪うなんて!」「あんたの武器がにくい。」という香苗に対して、ジョゼは「だったらあんた、足を切って来たら!」と言い放つ。そして、互いにびんたの応酬。

 もう一つ、印象的だったのは、リフォームの見学に来た香苗に対する恒夫の混乱ぶり。1対1であれば優しく振る舞われるが、他者特に気になる女性が来た時にジョゼに対してどう向き合うのか?いじめをされている子どもに対して、2人きりだと普通に振る舞えるけど、別のいじめっ子と一緒になるとやっぱりいじめてしまう構図と似ているのかもしれない。

 ジョゼの祖母役の新屋英子さんの存在がとてもすごくて、「いるいるこんなお婆」と思わせる迫力と存在感を示しています。

 もう一つ気になるのが、恒夫の故郷の九州に向かうさいにジョゼと二人で立ち寄る秋穂水族館ってどこやねん?

 エンディングで電動車いすで疾走するジョゼの自立した姿がまぶしいと思いました。結局、ジョゼは幸せだったのか?それはそれぞれで感じとりましょう。

 ぜひ、一度レンタルで借りることを進めます。くれぐれも妻夫木のラブストーリーを想像しててはだめです。
コメント (1)
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