とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

再び嫌われ松子の一生

2006-06-15 22:21:34 | 映画
 一昨日に「嫌われ松子の一生」については感想を書いたのですが、また書きたくなることがでてきたので再びの登場です。

 劇中何度も何度も繰り返し歌われていた『曲げて伸ばして』がやたら気になっていました。少女時代の松子も何度も歌っていたし、エンディングでもまた使われているのです。どこかで聞いたメロディーなのにどうしても思い出せませんでした。映画館を出てからもずっとこの単調なメロディーが何度も頭の中を駆けめぐります。聞き方によってはどこかなつかしい明るい純な曲で、背筋をピンと伸ばして歌っているいいとこのお嬢様的なのですが、聞きようによっては、もの悲しげにも聞こえるのです。あるいは、ちょっと怖いシーンでも使えそうなのです。そのくらい癖になる曲なのです。

 どうしても気になるので映画雑誌を見ていたらありました。テレビの子ども番組の「ロンパールーム」で使われていた外国曲だそうです。原曲は16小節しかないそうです。それを詞も曲も新たに補作していったようです。どおりでどこかなつかしいいような変な感じだったのです。

 一日たっていろんなことを考えました。感想を文章にするといろんなことを後で考えるものです。一昨日は原作を悲惨なストーリーと書いていますが、よくよく考えれば、「悪いことや悪い男ばかりつかんでどんどん状況が悪くなっていく人ってけっこういるよね。」のようなストーリーなのです。悪い方へ悪い方へ向かわせておいて読者に「それはないだろう。でもそんなやつもいるよね」と楽しませる方向へと導くような原作でした。だから、一つ一つにそんな大げさな悲惨さがあるわけでもなく、そのままエピソードとしてミュージカルとして語らせるやり方もあるのかもしれないと思い始めました。

 時代と共に墜ちていく松子に対して、社会が産み落としたというような読後感を持っていたのですが、映画の中で刑務所で知り合った親友のめぐみがアパートに訪ねていくシーンでやくざとつきあうなと説得するめぐみに対して「私はこの人となら地獄でもついていく。それが私の幸福なの。あなたになんか四の五の言われる筋合いは無いわ!」と啖呵を切るシーンで松子の一生は好かれようが嫌われようが松子自身が選択した結果だったんだと思いました。

 また、気になるのは脇を固める出演者たちです。最初に松子が墜ちていくシーンで重要な役割を演じるのが教頭役の竹山隆範(カンニング)です。これが見事なはまり役なのです。びっくりでした。彼はへたくそなリアクション芸人をやめて、俳優として生きていくことを勧めたいと思います。太宰かぶれの売れない小説家として登場するのが宮藤官九郎です。神経症的な役は彼の独壇場です。他にも人の良い理容師として荒川良々が出てきます。彼はどこか存在感があって好きな俳優です。下妻に引き続きの出演です。もう一人、妹役の市川実日子です。この人の演技はどれを見てもヘタウマでよくわからない女優という印象が強かったのですが、この映画に関しては、半ば狂気に満ちた人間を見事に演じています。この人の存在はこういう状況で初めて生きるんだと実感しました。そういう意味でこの監督とスタッフは優れた集団なのかもしれないと思いました。

 結論です。ボクシングのボディーブローのようにじわじわと効いてくるのがこの映画なのかもしれません。一昨日とは評価がすごく違っているかもしれませんが済みません。好きか嫌いか分けると好きではないと思いますが、映像、音楽、カット割り、美術などすべて優れた作品だと言えると思います。
コメント
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