とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

響き合う子どもたち

2006-06-22 22:17:11 | 障害児教育
 タラちゃんは、学校で医療的ケアを受けています。医療的ケアは教室ではなくて、専用の教室に行かなくてはいけません。だから、一日に何度も友だちから離れなければいけません。そこで、ちょっとある考えを思いつきました。タラちゃんがどんなことをしているのか子どもたちに直接見せて理解してもらおうと思いました。タラちゃんの胃ろうからの水分補給を見ることによって、タラちゃんの大変さを理解してもらうことと、それぞれの健康についての思いを強くしてもらおうと思いました。

 格好いいことばで言うと、「生命の大切さに気づき、お互いの障害の差違を理解し、自分の健康に思いを向ける」というところでしょうか。養護教諭にも許可をもらって、希望者を募りました。二人ずつくらいと思っていたのですが、みんな手を挙げたので揃って行くことにしました。

 タラちゃんと一緒に、廊下を歩いているとレオくんが一番よくしゃべります。自分もお腹から注入していることをみんなに説明しようとします。「みんな僕のこともわかって!」とでも言ってるみたいです。

 教室に入ると、じゃまにならない程度で、でもしっかり見える位置に子どもたちをセットしました。タラちゃんもみんなが見ているのでどこか誇らしげです。

 初めに看護師さんがタラちゃんの熱を測ります。看護師さんも廊下ですれ違うことはあっても、仕事をしているのを見るのは初めてなのでみんな怪訝そうな顔をしていました。ロンくんは、学園に帰ると最初に看護師さんが熱と脈拍を測るので、「僕毎日やってもらってるよね」と得意そうに話します。

 次にSPO2を測ります。人差し指に黒いケースをはめると、みんな不思議そうな顔を寄せてきます。この日の脈拍と酸素濃度は適正でした。「タラちゃんは元気です」の一声にみんなほっとした顔をしていました。

 次はいよいよ、お腹についている管にチューブを装填します。みんなドキドキです。「タラちゃんはいつもがんばっているんだよ。」「みんなすごいだろ?」と言うとタラちゃんの服を支えている手がさっと力強く上がります。タラちゃんには経管を意識してもらおうと自分で服を持つように指導しています。片手が少しまひがあるので服を下に落としてしまうことがあるので何度か注意することがあるのですが、この日は違います。誇らしげに胸を張って服をあげています。

 お腹に入っているガスを抜くのに注射器を使うのですが、子どもたちが怖がるかと心配していたのですが、みんなじいっと見入っていました。ここでもレオくんは自分も家でやってもらっていることをみんなに説明していました。

 何度かガス抜きをしたあとで、栄養剤入りの液体が注入されます。本当の注射みたいでみんなドキドキです。静かにタラちゃんのことを見ていました。
 
 終わってから教室に帰ると、香川先生や、瀬川先生に「タラちゃん、頑張ってたよ!」と報告していました。それを聞いていたタラちゃんはガッツポーズで「頑張ったよ!」とアピールしていました。

 今の子どもたちの発達段階で、リアルな現場を見せるということで少し抵抗があったのですが、子どもたちはちゃんと受けとめてくれていたようです。これからも何度か挑戦しようと思っています。給食の時も行ってみたいのですが、タラちゃんが欲しがったりしても困るし、子どもたちの指導も必要になるのでこれについては検討中です。

 タラちゃんは何も作っているわけではないので生産しているわけではありませんが、見ていた子どもたちに中に何か発信していたに違いありません。商品価値に換算できない何か有用な価値を生産していると言ってもいいと思います。

 障害をもっている子どもたちの作り出す価値というのは、きっとこういうところから生まれてくるのかもしれないと思いました。 そばで子どもたちを見ていて本当に良い経験をさせてもらったと思いました。
コメント (3)
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