Retriever Legend's blog

散歩好き、本好き、惰眠好き、犬大好きの彼(旦那)の戯言を僕が代弁します。

象の孤独 その2/2

2009-06-18 06:32:29 | 酔生夢死
境界の孤独

僕の身体の細胞ひとつひとつに、真核生物のミトコンドリアがいます。
細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーが生産されています。

このミトコンドリアは、2枚の細胞膜(生体膜)があります。

「動的平衡」(福岡伸一 木楽舎)*の203Pに、その成り立ちが分かりやすく書かれています。
大型細胞のちょっとした窪みに、ミトコンドリアが付着し、やがて窪みのある細胞の膜に包まれて、内に取り込まれました。
大型細胞はミトコンドリアを守り必要な栄養素を与え、ミトコンドリアは大型細胞に酸化能力によりエネルギーを作り供給する、共生関係にあります。
* 理工系の人には、「動的平衡」は「定常状態」としたほうが分かりやすいです。

このため、ミトコンドリアには自分の膜と大型細胞の膜の2枚に包まれています。
この二つの細胞の境界は、付着時にも細胞内においてもあります。
この境界も関係性で成り立っています。

同書235Pに、ライアル・ワトソン『エレファントム』の内容が引用されています。

アフリカ大陸で500頭の像の群れが、やがて3頭になり、とうとう1頭の40歳くらいの雌象だけになり、その象も行方不明となりました。
その象を探した結果、海岸の絶壁で水面から顔を出しているシロナガス鯨と会話(低周波による通信)をしているシーンが紹介されています。

陸で最大の生き物と、海で最大の生き物が向かい合うことに、境界の関係性が持つ絶望的孤独が見えます。

僕的には情緒的になりますが、境界は「空」と想念する興味が強いです。



同書240pの図版に用いられた「象鯨図屏風」(伊藤若冲)


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