Retriever Legend's blog

散歩好き、本好き、惰眠好き、犬大好きの彼(旦那)の戯言を僕が代弁します。

吉本隆明 論争のクロニクル

2014-06-25 09:44:30 | 読書ノート

「吉本隆明―論争のクロニクル」(添田 馨 響文社)

オウム真理教のテロ事件(地下鉄サリン事件)に係る吉本隆明の立ち位置を確認したく、「吉本隆明―論争のクロニクル」(添田 馨 響文社)に目を通しました。

思想、哲学に係る批評家連中の本は、ほとんど手にしません。何故なら当該思想、哲学の説明(紹介)であったり、批評家自身の解釈であったり、書かれた時代背景(思想家、哲学者、著者自身)の説明であったり等で、時間の浪費と眼精疲労の蓄積だけで意味がない(絶無までとは言いませんが)と考えます。
それくらいなら原典を読むべきだ、と。

本書は、敗戦後からの吉本隆明が係わった論争を網羅しており、吉本隆明と論争相手の思想的立ち位置を丁寧に書き込んでいます。


ただそれだけならば取り上げるまではないのですが、添田馨自身の深い思索の上での洞察、理解、解釈を行い、そのようなに洞察、理解、解釈をした添田馨自らへの立ち位置を透徹した視線で問い質しています。

単に、形而上(認識論、哲学の入り口)の事柄に過ぎませんが、本を読む営為はこのような質でありたいと、再確認させられました。


憲法第9条と第99条と

2014-06-14 09:15:19 | 憲法・非戦・平和

「50年前の憲法大論争」(保阪正康監修 講談社現代新書)

集団的自衛権の行使、更に集団安全保障へと政府・自民党の暴走が加速しています。
マスゴミ、新聞読者の一部に「平和の党」と自称するカルト党に期待する意見が見受けられますが、所詮カルト党です。

店頭で「50年前の憲法大論争」(保阪正康監修 講談社現代新書)が目に止まり読みました。保阪正康は学校の大先輩で多量の著作があり、気になったテーマの著作は購入し目を通しています。思想的には予定調和的に読めるものと違和を残すものとがあります。

本書は、自民党幹事長岸信介ら60名が提出した「憲法調査会法案」の衆議院内閣委員会公聴会(1956.3.16開催)の記録です。

公聴人戒能通孝(東京裁判の弁護人、法学者)は、「内閣は法律が憲法違反であるかを調査することは可能だが、憲法を批判し、憲法を検討して、憲法改正を発議する権利はない。」旨を述べています。

「内閣は、けっして国権の最高機関ではございません。したがって国権の最高機関でないものが、自分のよって立っておるところの憲法を批判したり否定したりするということは、矛盾でございます」等の発言を行っており、『内閣は法律が憲法違反であるかを調査することは可能だが、憲法を批判し、憲法を検討して、憲法改正を発議する権利はない。』旨を展開しています。(主にP72~)

根拠として

憲法第九十九条
 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

内閣法第5条(内閣総理大臣の任務について)
 内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣の提出する法律案・予算・その他の議案を国会に提出し、一般国務や外交関係について国会に報告する。

公聴人戒能通孝の発言から言えることは、内閣には集団的自衛権、集団安全保障に係る憲法第9条等の解釈変更(白色テロ)の権限は微塵もないと。

本書を通読して特に印象に残ったことがあります。

社会党から公聴人に質問にたった茜ケ久保重光( あかねがくぼしげみつ)は、自民党から質問に立った辻政信、大坪保雄らに対して「治安維持法により善良な人民を三年四年と刑務所につなぎ拷問した、この様なことをした諸君は死刑になるのがもっともで公職追放は当然だ」の旨を発言し、戦時中の怨念、憎悪が爆発しています。(主にP238~)

まだメモにもなっていない漠然としたものですが、アヘ首相の白色テロとは別に集団的自衛権、集団安全保障は「資本主義の延命策」では、と。


物質的記述

2014-06-14 09:00:58 | 異形の滓

「脳のPETスキャン画像」(ポジトロン断層法 wikipediaより)


昨日、一年振りに頭のMRI検査を受け、主治医の所見は問題なしとの診断でした。また、「禁煙」を強く言われました。



MRI検査装置の発する騒音に約20分くらい見舞われていました。
頭蓋骨内(脳室)の3Dの白黒映像を見ていて、その騒音時に考えていた事柄は、シナプス伝達が活動しニューロン網を形成していましたが、白黒映像からは何も読み取れません。

感情、思考、会話等の精神活動が活発化すると大脳新皮質のその部位の代謝量や血液流量が増大します。(例えばポジトロン断層法で確認できます。)

脳は、運動連合野,頭頂連合野,前頭連合野、後頭連合野,側頭連合野の働きがあり、思考、知性,感情,意志、理性、表現等は前頭連合野が担っていますが、MRI検査装置の騒音に見舞われていた約20分くらいは、前頭連合野の代謝量や血液流量が増大していたと言えます。

ポジトロン断層法では、シナプス伝達が活動しニューロン網を形成していることは確認できますが、「どのような事柄を考えている」かは分かりません。

逆に、感激、沈思黙考等時には、「前頭連合野のシナプス伝達が活動しニューロン網を形成している」ことは知識として理解しますが、約110種類ある脳内物質(シナプスの伝達物質)すら特定できません。


* *

学生時代に悩まされた線型偏微分方程式により説明される「シュレーディンガー方程式」、「ハイゼンベルクの不確定性原理」等で量子力学が成り立っています。

「光」は、粒子性(光子)と波動性(光波)の性質があり(光量子)、同時に観測することはできません。

また、原子核の原子軌道を占有している「電子」の運動量の範囲、位置の範囲を同時に、かつ、高い精度で測定することはできず、運動量の範囲(位置の範囲)を測定すると位置の範囲(運動量の範囲)の精度が下がり、同時に「範囲」を特定できません。(不確定性関係)

* * *

これらの事は、頭蓋骨内(脳室)の3Dの白黒映像を見て、連想ゲームのように連なって思い起こしました。

「物」は、同時に成立しない二面性の一方だけの特性、性質、形状等で本質とすることはできず、「物」の本質は「同時に成立しない二面性」そのものによらなければならない、と。

物(身体)だけが存在(現実)し精神(心)は物(身体)に還元されるとする唯物論があります。
また、精神(心) だけが存在(現実)するとする唯識論があります。
また、物(身体)は存在(現実)し精神(心)現象も存在(現実)しているが、精神(心)現象は物(身体)の存在(現実)と同一の出来事として説明できるとの考え方があります。

しかし、ひとつの本質(本質的な一元論として)は「同時に成立しない二面性」であるならば精神(心)現象を存在(現実)と同一の純物質的な説明は不要(不可能?)では、と。