Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編481. スケマティックデザインの世界9. 近未来集合住宅の提案1. 建築計画上の疑問が多いプライベートゾーン突き抜け型

2021年08月20日 | Design&3DCG

図1.近未来集合住宅の概念図

 

 さて8番目のクリエイションは、近未来集合住宅(マンション)の提案だろうか。ここでスケマティックデザインの創造プロセスをみてゆこう。見てゆくといっても、つくる過程を書いてゆくわけだから、新たに建築のデザインをつくりながらのブログ執筆である。

 コロナ禍で改めて戸建て住宅の良さを発見したり、中古住宅のリフォームといった事が見直され、住宅が余っている現状では、魅力ある集合住宅が土地の少ない都心以外では成立が難しくなってきている。だがそうなのか、近未来の集合住宅の姿を探ってみよう。

 そこで基本的な考え方を図1でスケッチにした。

 大きな変更点は住戸のゾーニングである。これまでの標準的な3LDKの住戸を図2で示した。

 今のマンションの多くはこのタイプかまたは変形タイプであり、基本的なゾーニングは全て、これと大差がない。例えばゲストで招かれると、玄関から入り、左右のプライベート空間を突き抜け、最奥の南面するリビングルームに通されるという動線である。

 つまりプライベート空間の間を突き抜けてパブリックな空間にいたるといったように、ゾーニングが混在しており、明解さを欠いた間取りである。この間取りは家族の行動が全員同じであればよいが、それが違い出すと、例えば子供が夜中に夜食をつくりにキッチンへくると、物音で隣室で寝ている夫婦を起こすといった具合に、誰かが違う行動を始めたときから不協和音を起こし出すのである。だから生活のなかで我慢と忍従をしいられる間取りである。

 さらにはプライベートな空間は、子供室や主寝室に利用されている事が多いが、この家に招かれると子供達の大音量のスピーカーの音をかいくぐり、登校拒否児童が隠って陰湿な気配の脇を抜け、また年頃の子供達が彼氏彼女とが情事している側を抜き足差し足ですりぬける、あるいは子づくりに励む夫婦室の壁1枚先は外廊下で近隣住民が往来しているといった具合にプライバシーが極めて低い。つまり各ゾーンが整理できないまま混在している。

 こうした建築計画上の疑問が多いプライベートゾーン突き抜け型のマンションが今も数多くつくられ、そして販売されている。

図2.標準間取りの3LDKマンションのゾーニング

出典:イエナカ手帳3LDK https://ienakanote.com/plan/3ldk/

 

 ではどうすればよいか。

 図3は、本来エントランスが横に付いているときに最適なゾーニングになるように設計されたマンションである。横のエントランスを入るとパブリック・ゾーンとプライベート・ゾーンへ向かう動線が二分されている。こうすれば、ゾーニングを突き抜けることがない。

 当時の日本住宅公団の団地建設において51-Cという食寝分離型のプランを発表した元東京大学建築計画学教室の鈴木成文は、晩年に図3のようなパブリックとプライベートに向かう動線がエントランスで分離できる1フロアタイプの集合住宅を提案していた。

 晩年民間マンション業者が、経済コストが安いという理由で勝手に北側にエントランスを設けモディファイした図2のゾーニング突き抜け型マンションが自明の事のように標準的なものだと勘違いされ、一般化してきたのだろう。建築計画学的にみれば、現代人は勘違い間取りで長い間暮らしてきたことになる。

図3.ミオビエント首里のメゾネット型間取り

出典:WEB不動産屋情報

 

 そこで、このブログで提案するゾーンの概念図を図4で示した。

 外廊下から玄関を通ると、真っ先にパブリック。ゾーンであるリビングルームがあり、さらに奥のプライベート空間へ続くとする明解なゾーニングをもった集合住宅である。リビングルームまではゲストが招き入れられる空間でもあり、これをセミ・パブリックな空間と呼んでおくことにする。

 このようにゾーニング上明解な空間にする事によって、戸建て住宅の住みやすいゾーニングをそのまま集合住宅に敷衍してゆくことができる。こうした明解なゾーニングにもとずいて。明日のブログでその新しい間取りを提案しよう。

図4.近未来集合住宅のゾーニング概念図

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