Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング782. 小説:小樽の翠690. 異文化のライフスタイル 

2023年09月03日 | field work

 宴の続き。
酒宴が進んだ頃、榊原さんの奥さんのジーナがやってきた。
ジーナ「はーーい、みなさん、ご・き・げ・ん・よ・う!」
怪しい日本語を交えて宴会は盛り上がる。
・・・
ふと・・・
ペーヤン「俺は広告屋だから、今の日本で満足とは何だろうと考えていた。」
榊原「今の日本なら大概の満足は得られるのではないですか?」
ペーヤン「そう、大概の物質的・精神的満足は得られる。だがそれでも得られないものがある。それが異文化コミュニティだよ。つまり榊原みたいな異文化のなかで形成されるライフスタイルかなぁー」
榊原「えっ、私! 、ですかぁーー!!」
ペーヤン「それは海外に行くだけではだめで、現地の親族達とコミュニケーションがあって一緒に暮らせる生活があるということよ。現地妻なんて最高のライフスタイルだよ。」
榊原「うーーん、なりゆきで、夫婦になっちゃいましたからねぇー。」
ペーヤン「切っ掛けはなんでもよいさ。だが夫婦になるというのは容易ではない。先ずフィリピーナから愛されなければならないし、愛されるこちらの人格や資質が必要になる。それがなきゃライフスタイルどころではない。」
榊原「でも、そんな生活を日本人が好むかなぁー?」
ペーヤン「日本は核家族だから、表向きは好まないと言うだろう。だが心の中では羨ましいと思っているはずだ。これは広告屋の深読みね!。」
「でも、その深読みはいえてるだろうね。日本人は核家族でありながら、寂しさのつれづれにで我慢しているんだよ。でも本心は違うだろうな!。外国人ならそんなライフスタイルは、絶対に我慢しないだろうね。」
ベーヤン「異文化コミュニティとの経験や交流が、今の国際社会の満足の1つだよ。もちろんそんなのはヤダという日本人もいる。現地に外国人用のマンション買って住んだりする人間もいるだろう。だがそれでは日本を引きずっているだけで異文化交流ではない。
 やはり現地の人間から愛され、愛されるこちらの資質がある事が大切であり、そして親族の一人として受け入れられ、つきあいが広がる事がポイントだろう。それが異文化コミュニテイが与える満足感だよ。それは現代人の憧れになるかもしれないなあ。」
「異文化交流というわけ。」
榊原「そこまでは考えなったなあ。私はジーナから愛されていれば満足なんですけど・・・。」
ペーヤン「でも今の外国人達は、そんな異文化交流を平然とやって楽しんでいる。アメリカ人と東欧人のカップルがいたり、フランス人が中近東の女とカップルだったり、日本人とドイツ人のカップルがいたりといった具合に、国際的に容易に行き来出来る時代を大いにエンジョイしている。国によって価値観が違う。価値観の違う者同士がカップルになったほうが面白い時代だ。それが異文化交流の醍醐味だよ。
 日本みたいに70すぎたら孫の面倒でもみててよ、という退屈なライフとはあきらかに違う世界だ。80すぎて大統領選に立候補する時代だ。人間は死ぬまで働き、誰かの役に立ち、ラブラブでいたい。いま、それらが実現できる時代なんだよ。既に世界はそんな風に動いている。」
「そうなると日本人だけが穴の中の小さな家に閉じ込められて抜け出せないでいる状態といってよいかもしれない。」
榊原「安部公房の小説『砂の女』で・す・か・・」
ペーヤン「そう、それ、それ!!」
ジーナがピアノの演奏でアメリカのポピュラーソングを歌っている。
・・・
小樽も夜が更けてきた。
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