Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング906. 小説:小樽の翠814.クレイマー・クレイマー

2024年09月01日 | field work

 9月かぁー・・、本土は残暑だが小樽は秋の空気を感じる。翠は夜勤のお茶タイムだった。今日は、いつもの晃子さんと札幌の病院から転勤してきたあおいさんがやってきた。
翠:おあいさんの旦那ってどんなん?
晃子:「そうよ、その話し聞いてないよーーー。だって時々小学生の男の子がナースにやってくるじゃん。『ママのお弁当もってきました。届けてください。』っていって帰ってゆくよ。あんなしっかりした子供がいるんだ。」
翠「結婚したのは1年前だよね。子供は当時7歳だった。そっかぁー・・、結婚前に子供をつくったんだ!。」
あおい「実は私の子供ではなくてぇー・・・、旦那の連れ子なの。」
晃子「じゃ、子持ちの旦那に口説かれたんだ。」
あおい「口説いたのは旦那ではなく、あの子なのよ。」
翠「子供に口説かれた!。そのいきさつは?。」
あおい「前の病院に勤務していたとき、私も35過ぎたし、まあ看護師をしながら生涯独身暮らしでもしようと思っていたの。そんなとき仕事で大けがをした今の旦那が病院に運ばれてきたの。それで、いつも小さな小学生の男の子がお見舞いにくるわけ。奥さんの姿はみなかったな。」
晃子「クレイマー・クレイマーかよ。」
あおい「そう!、それそれ。入院カードをみたらスマホの緊急時連絡先があったけど、その子供のスマホなのね。それで私が病棟の検温をしているときにカーテンの後から聞こえちゃった。『ちゃんとご飯食べてるか?』。『うん、夕べはインスタントカレーをつくった。今朝はお父さんと一緒にゆくいつものコンビニで食べて学校に行ったよ』。それでお父さんがよくなってリハビリをはじめた頃かな。私の所に来て『いつも父がお世話になってます。』それで六花亭のストロベリーチョコをもってきたわけ。『これ、皆さんで召し上がってください』だって。すっごいしっかりしてんの。だから私もなんとなく気をとめていたわけ。だからお父さんともときどき世間話をしたかな。」
晃子「そんで子供と親しくなった切っ掛けはぁーーー?。」
あおい「ある時、子供が廊下で配膳車にぶつかって廊下に器や食べ残しなんかが散乱したわけ。それでナースにモップを貸してくださいといってくるから私ついていったの。そしたら子供が不器用そうに掃除なんかしているわけ。偉いとおもったもん。もちろん配膳の叔母さん呼んでかたづけた。そしたら床に血のようにものがついているじゃない。それれで私『足を見せなさい!』ていってみたら擦過傷よね。だからナースにつれていって治療したの。それから子供と親しくなったわけ。病院へ見舞いに来ると小学校の話しとか、お菓子もってきたりするわけ。愉しい子だなって思った。」
翠「きっとお父さん一人だから寂しかったんだろうね。」
晃子「それで嫁になる決心は、どうしたんだい。これじゃ話しがつながらねぇーよ(*^▽^*)」
あおい「退院時に病室にいったら、子供がうつむいて寂しそうな顔をしているわけ。それでお父さんが身支度して帰ろうとすると子供が『看護師さん!。お願いがあります!!、僕のお母さんになってください!!!』っていったの。一瞬回りがシーンとなったもん。」
翠「すばらしい切っ掛けじゃん。」
あおい「それで子供に『こんな叔母さんがママでいいの?』といったら飛び込んで抱きついてきて顔ぐしゃぐしゃにして泣いてんのよ。それから患者さん達から盛大な拍手が起こったもん。それがきっかけかな。」
晃子「オオッ!、泣けてくる!!」
あおい「それが今の旦那。そしたら最近子供が私の腰をさすってお尻に顔を埋めて妹が欲しいというのよ。お父さん、ウグッ!って唸っているもんね。」
翠「この病院は託児室あるよん!。」
晃子「じゃ頑張って毎晩旦那とやるだなぁー・・・(*^▽^*)。高齢出産は女の子ができる確率が高いよん。」
・・・
小樽の空にクッキリと月が見える。空気が澄んでいる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エッセイ768. シャルル・ド... | トップ | ドローイング907. 小説:小樽... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

field work」カテゴリの最新記事