Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編369. 試論:ハイブリッド・システム、NikonF3HPを加えて・・・

2018年07月02日 | Photographic Equipment

 WEBをみると撮影機材の講釈はくさるほどあるが、そのシステムになるとあまり記述がない。そこで今の時点において、一人で仕事しなければならないプロ研究者のための写りが良い撮影システムを考えてみた。そこで充電なしで使えるフィルム機材は必要であるとする仮説をたてた。そうした仮説のもとに日沖宗広さんの2册の本(注)を参考にしてシステムを考えてみた。

何故システムなのか?

 いつも述べているがプロ研究者は、撮影機材だけもってフィールドへゆくわけではない。研究資料や特殊な機材など他にも多くの道具があるからだ。私の経験では、過去に壁内部を調査する蛍光X線装置をフィールドへ持参する研究者もいた。だから撮影機材程度なら手荷物になる。そして飛行機の手荷物制限もあり機材も限られてくる。そんな制限下で大概の被写体が撮れる最適なシステムを組む必要がある。それにどんな被写体に遭遇するかは、出かけてみないとわからない。そんなわけでいつでも手元に持参できる撮影システムを想定してみた。

 何故単焦点レンズなのか?

 スチール画像では、ズームレンズ1本あればなんでも撮れるからいいさと考えたら、私は間違いだと書いておこう。ズームレンズは何も撮れないレンズ、本来ビデオ用の機材だ。

 というのも被写体をみながらズーミングしている間に被写体は動くし、最初に焦点距離を設定してから構えるのがズームレンズ本来の使い方だけど、それにしても被写体に応じて焦点距離を一々変えるという操作自体が負荷になる。被写体を注視し一番良いシャッターチャンスで撮りたいのが人間の意識。ここは人間の意識を優先させたい。そこをグチャグチャと焦点距離を動かされたら人間の感覚がついてゆかない。そうなると意識は面倒という判断を下して全てを放棄し、とりあえず連写で記録しておこうという形式的な撮り方しかできなくなってくる。そうした一々焦点距離を設定するという動作が新たに加わることが実は煩わしい。だから単焦点レンズの方が簡単でしょ、ということだ。

 あの人類の撮影に長くつきあってきた歴史を持つライカMシステムでさえズームレンズはつくらない(トリプレットと呼ぶ半ズームレンズが1種類あるだけ)。

何故フィルム機材なのか?

 前述したようにフィルム機材を加える理由はデジタル機材のバッテリー問題がある。ホントにすべてを充電式バッテリーに依存して良いのか?。それは世界中で充電できるのか?。毎日充電なんて可能なのか?。そもそも電気は来ているのか。そう考えるとバッテリー完全依存には警戒心が働く。だからバッテリー依存度が低いフィルム機材があってもよいではないかとする考え方も成り立ってくるのではなかろうか。

 そこで今フィルム機材は限られているが代表的なのはライカシリーズ、リーズナブルでお勧めは1980年代以降の機械式機材ニコンFM2やFM3など。手元のニコンF3は、ボタン電池で1~2年位持つのでバッテリーに負荷をかけない。そして、いまそのフィルム機材は中古しかないが大変安い(古くてよければF3+MD4で4万円以下か?)上に、リバーサルフィルムの色がすこぶる良いのです。

 手元にフィルム機材の典型であるNikonF3+MD4(モータードライブ)があったので、これを活かしてハイブリッド・システム化を試みた。MD4を付けたのは、デジタル機材と同等の感覚で使いたいとする全くの個人的嗜好だから、これはなくてもよい。しかし実際ニコンF3+MD4は、これまで世界のあるゆるフィールド(北極とか宇宙へ)で活躍した実績が多々あるけど。余談だが、これみよがしに甲高い音で撮った!、という実感を味わうことはできるだろう。

ハイブリッド・システム化の前提条件

 現在私の手元にある機材でハイブリッド・システム化を試みた。広角、標準、望遠系を必ず入れる、F2以上の明るいレンズを加える、可能ならば接写機能を持たせる、飛行機の手荷物限度7kg以下(ウクライナ航空の機内持込手荷物限度)、以上を前提条件とし、デジタルテレコン2倍を含むフルサイズ換算の焦点範囲(括弧書きはフルサイズ換算の焦点距離)、実際に使用する状態で計測した総重量(含むバッテリー)を加えた。

 ちなみに最新の軽量化された俗に大三元と呼ばれるキャノンシステム(EOS1DXMark2、EOS5DMark4、16-35F2.8L3USM、24-70F2.8L2USM、70-200F2.8L2USM・・・F2.0以上のレンズがない)だと重量5,325gとなり、これよりは軽くすることが条件。さて重さの計測・・調理用の秤っと・・・。

 

 

雑誌社のA氏が取材でエーゲ海へ!

NikonF3+MD4,Zeiss Distagonf2.8/25mmZF T*

OLYMPUS E-M1Mark2,Leica Summilux25mm(50mm)/f1.4,Leica Elmarit Macro45mm(90mm)/f2.8

 コシナ・ツァイス&パナソニック・ライカのレンズによるシステム。写りは綺麗です。焦点距離がほぼ倍々になるシステム。ツァイス・ディスタゴンは1m以内の至近距離を除けば、ピントを合わせなくてもパンフォーカスで撮れるから、広角レンズにオートフォーカスは不用といってもよい。マクロエルマリートは接写もでき、オリンパスのボディはデジタルテレコン機能で180mmのレンズにもなる。当然画像情報量は1/2以下になるけど、使うかどうかわからない重たい長焦点レンズを加えて荷物を増やすよりは、こちらの方がよいのでは。デジタル・ミラーレスなので比較的軽いシステム。まあ雑誌社のA氏がエーゲ海の観光地や美術館やレストランなどを取材するといった具合に。特に料理を撮影するときにこの45mmマクロレンズは活躍するだろう。各国を歩くから3.3kgと比較的軽いシステムにした。

焦点範囲:25-180mm

総重量:3,335g

 

 

 

工芸作家のB氏がインド・中近東へ!

NikonF3+MD4,Zeiss Macro Planarf2.0/100mmZF T*

OLYMPUS EM1-Markk2、M.ZUIKO DGf2.0/12mm(24mm)

Leica SUMMILUXf1.4/25mm(50mm)

  すべてF2.0以上の明るいレンズで構成したシステムだから、美術館や博物館といった暗いところで使えるシステム。マクロ機能のあるツァイスプラナーの写りは秀逸。だからNikonF3とマクロプラナーが重たくても撮りごたえがあるので、持参しても後悔は少ないだろう。オリンパスにはデジタルシフト機能があるからあおり撮影が使えるので物撮りにはよいかも。工芸作家のB氏がインドや中近東へ美術館や個人コレクション見学などの資料収集といった場合の使用をイメージしている。マクロプラナーなら接写も等倍まで近寄れるので小さな工芸品を撮るのには最適だろう。この場合暗いところではストロボが別途必要になるのがフィルム機材。

焦点範囲:14-100mm

総重量:3,516g

 

 

建築家・建築研究者のC氏が近世建築研究のためヨーロッパへ!

NikonF3+MD4,AF Nikkorf1.4/50mm

OLYMPUS EM1-Mark2、M.ZUIKO DG f2.8/7-14mm(14-28mm)、M.ZUIKO DGf2.8/60mm(120mm)

 被写体は動かないのでオリンパスの広角側に高性能なズームレンズを組み入れた。実際ロシアの教会で広角ズームレンズで撮影したが歪曲収差が少なくデジタルシフト機能が使えたので良好な写りだったという経験がある。ここはやはり建築撮影用システムだろう。また望遠側が不足するので135mm単焦点レンズを加えたいところだかオリンパスマイクロフォーサーズには、それがない。そこで水中撮影用に揃えた等倍まで撮影できる60mm(120mm)のマクロレンズを加えた。これは大変小さく軽いので荷物の隙間に滑り込ませられる長焦点レンズだ。フイルム機材は標準レンズでよいだろう。やはりデジタルシフト機能が使える建築撮影システムといえよう。オリンパスのデジタルテレコンで240mmまで使えるので焦点範囲が長い。そうなると建築家・建築研究者のC氏が近世建築研究のためヨーロッパへゆくなどという場合に使える機材となるだろう。そして3.3kgとこれも比較的軽いシステムである。

焦点範囲:14-240mm

総重量:3,379g

 

 

旅行作家のD氏が南米へ!

NikonF3+MD4,Zeiss Distagonf2.8/25mmZF T*

EOS1DsMark3,EF50mm/f1.8,EF100-400mm/F3.5-5.6

  ミラーレスがなくEOS1DsMark3のバッテリーが長持ちするので電池の消耗を気にしなくてよいから、海外フィールド調査向きのシステム。これなら一週間以上電気の得られないところに出かけられる。望遠系は容易に撮影ポジションを変えられないことが多いので、ここは100-400mmの高性能ズームレンズにした。本来はサーファーなどを長焦点距離で撮影していたときの高性能ズームレンズだが、解像度と信頼性が高く、日常的な防塵、防滴構造だから熱帯雨林の地域でも心置きなく使えるだろう。

 ニコンF3のMD4がバッテリー切れになったら、モータードライブ用単3電池は世界のどこでも手に入るだろうし、それでもアカン時はグリップを切り離せばよく、それで1~2年は使える。またディスタゴンがiPhoneの1/2サイズまで近寄れるので比較的マクロ撮影も可能。これに前提条件に従いキャノンのF2の明るい標準レンズを加えている。画像はRAWで撮影しておけば、後処理で歪曲収差やレンズ固有の収差を補正してくれる。標準から望遠に力点があるので風景向きか。であればリッチな旅行作家のD氏が、将来豪華本を出すために南米の風土や民族の取材をフルサイズのデジタルRAW画像やリバーサルフィルムで記録するシステムということになるか。

焦点範囲:25-400mm

総重量:5,054g

 

 

世界文化遺産研究者のE氏がインドネシアへ!

NikonF3+MD4,AF Nikkor50mm/F1.4

EOS1DsMark3,EF28-300mm/F3.5-5.6

 これも前のタイプの派生形だから電気の得られないフィールド調査向きのシステム。この特徴はレンズ2本だけのシステムに特徴があり、荷物の点数が少ないし、レンズ交換は埃も入るので外でやりたくない時に向いている。だから旅に出たらレンズはつけっぱなしにできるほうがよいという考え方だ。実際に私が使う可能性が高いシステムだろう。ただし接写は用紙A4版程度まで。

 このシステムの肝はキャノン28-300mmレンズだ。良い言い方ではないがヨーロッパのパパラッチ御用達のレンズだし、実際巷でもこのレンズはほとんど見かけないほど使う人が大変少ないが、モデルチェンジをすることなく今でも発売されている。こういうレンズは、広角だ、望遠だ、と多様なシーンを展開する祭を撮るときには1本で済み便利。祭事必携レンズかな。

 しかし広角から超望遠まで1本の高性能レンズで写せるのがなににもまして便利だし、画質も良くキャノン渾身の1本であり大変重宝している。高性能ズームレンズ2本持つところを1本にするから、結果としてこちらの方が軽いことになる。実際にサンクトペテルブルグの夜の街に持ち出したら高解像度ズームレンズの写りは大変綺麗であった。

 もちろんRAWで撮影し、後で諸収差を補正できるので画質は申し分ない。予備的に明るい標準レンズのニコンを加えた。電気のないところでも一週間は活動できる。どちらもこれまで過酷な環境に数多く持ち出された実績がある。だからこのシステムは、世界文化遺産調査でフィールド研究者E氏がインドネシアのジョグジャカルタ周辺の離島へ出かける時かなぁーと思われる。いやE氏だけではなく、私もニコンを除けば実際に持ち出したシステムである。重量は5kg以下に押さえてある。

焦点範囲:28-300mm

総重量:4,840g

 

 

中学校で地理を教えるF氏が韓国へ!

NikonF3+MD4,Nikkor50mm/f1.4

SONYα6000,ZEISS Vario-TessarET*16-70mm(24-105mm)

 6タイプのなかでは最軽量のシステム。コストパフォーマンスの高いSONYのボディが優れものだし、小さく軽くある程度の接写もできてツァイスのレンズのヌケや発色は良いのだが、如何せんバッテリー消耗が大変早いという致命的な欠点があり、私の経験では1日2本のバッテリーでも不足を感じた。だから意外にもフィルム機材ニコンF3が役立つ場面が多いのではなかろうか。ズームレンズが標準域もみたすのでニコンのレンズはF2以上の明るい35mmでも85mmでもよいとする自由度があり、ここでは50mm/F1.4にした。ツァイスレンズの接写はA6版程度だろう。SONYはデジタルテレコンバータがないので、望遠側はレンズ通りの焦点距離となる。一番軽量システムだから持ち出す機会が多いけど、バッテリーが難点となれば近場をテーマとする研究者向けでしょう。例えば中学校で地理を教えるF氏が地理研究で韓国などへ出かけるといった具合に。

焦点範囲:24-105mm

総重量:2,130g


まとめると・・・・

 旅先で、今日は広角レンズで間に合いそうだから、これ一本で行こうなどという先読みは先ずやめたほうがよい。そのときに限ってアッ望遠レンズ!!と叫んでも後の祭。旅に出るとどんな被写体が突然現れるかは予測できないから、いつでもフルセットで持参すべきが原則。つまりフルセットでいつでも持ち歩けることが重要。この程度のシステムなら20リットルのリュックに全て収まるだろう。

 それに、空港の手荷物検査機器でフィルムが露光する懸念をよくいわれるが、透明の袋に入れて手荷物で持参すればISO100~400程度のフィルムならば通例は大丈夫というのが私の経験。万一感光してもデジタル機材があるしさ。そのためのハイブリッドでしょうよ。

 海外へ行くときの機材は全て手荷物とすること。預け入れ荷物では電池が預けられません。それにメーカーのロゴの入ったストラップはやめること。機材のロゴ部分にはパーマセルテープですべて目隠しをしておくこと。つまりボロく見えた方がよいわけ。

 世界の傑作を生み出し、そして一番よく使う焦点距離が35mm、28mm、50mmというタイムライフ社の知見を踏まえつつ、最もよく使う焦点範囲を28〜90mm程度にしてあり、地球の上ではそれで十分だろう。重たいレンズを持参しても使わなければ、ないのと一緒、ならば最初から旅には持ち出さない、それ以前に調達する必要もない。それよりかは明るい標準系レンズやマクロレンズを調達した方が実用的。

 ここで提案したシステムの中で、コシナのツァイスレンズの耐久性が不明である。どの程度砂漠とか雨の中で使えるのかが未知数だ。このあたりは実際に旅した人の話を聞かないとわからない。他方で旅に持ち出した実績があるのはニコンF3とEOS。だから重くてもEOSが外せないわけです。

 こんな考え方をすると、この前提条件を完全に満たせる機材は、ライカが最適だがデジタルライカM10ボディは93万円!!!、それに機械式フィルム用機材のM6を加えてという具合になるけど・・・。

 ニコンF3+MD4は私テイストでシステムに加えたけど、このフィルム機材の選択をもっと考えれば、より小さく軽いシステムができる。例えばペンタックスMXとか・・・、そのあたりは各人のテイストで・・・・・・。さらに加筆すると、2台のボディは、同じメーカーであれば、といっても新旧レンズでマウントが一緒のニコンの場合だが、レンズの互換性があってすこぶるよいが、私の手元機材ではできないので見送った。来年あたりニコンがミラーレス一眼レフなどを発売すると可能になるかもな。

 理屈の上では、フィルム機材を加えた信頼できるハイブリッド・システムが使えそうだという見通しはできた。あとは実際に電気のないフィールドへ持ち出してみないとね。ホントにそんな辺鄙なところに行くかなぁー、だからこれはあくまで試論なのだけど(笑)。

 

注)

日沖宗広:プロ並みに撮れる写真術、1991年、勁草書房。

日沖宗広:プロ並みに撮れる写真術2、1993年、勁草書房。

 

SONYα6000、ZEISS Vario-TessarE F4/16-70mm ZA

OLYMPUS E-M1 MARK2、LEICA MACRO Elmarit45mm/F2.8

 

 

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