福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

旅ひととせ

2006-12-21 01:26:00 | 旅行記

ぐっと冷え込んだ札幌をあとにして、小浜に向かう。朝一番の快速エアポートで新千歳空港、飛行機で関西空港、特急はるかで京都、そして湖西線に乗り換え。

01_24琵琶湖の西側を走る湖西線は結構楽しめます。比叡山に向かって棚田が広がっていて、郷愁を誘います。車窓から、『和爾(わに)』駅の看板が目に入りました。

かつて、私たちの研究グループは琵琶湖の硫黄循環に関する微生物の生理生態研究を行っていました。この地で淡水性の糸状性硫黄酸化細菌Thioploca(チオプローカ)の系統解析を行い、淡水クラスターが存在することを発見しました(Kojima, Teske and Fukui,2003,Appl.Environ.Microbiol.,69:390-398)。

チオプローカは琵琶湖北湖の湖底泥表層に生息しているのですが、ある時、水深が異な01_25る地点にチオプローカがどれくらい存在しているかを調べることになりました。トランセクトと言って、ある地点を起点に側線を決めて一定の間隔(異なる水深)で湖底泥を採取します。底泥を篩でふるって、チオプローカのバイオマスを定量しました。そのトランセクトに一つを『ワニ』と呼ぶことにしました。つまり、調査地点はワニ5m、ワニ10m、ワニ15m、、、と言う具合に。

側線ワニは、元来滋賀県立琵琶湖研究所で伝統的に用いられて来ました。調査当時、「ワニ」は地名から名付けられたものと理解していましたが、実際にその地を訪れる機会には恵まれませんでした。なぜかと言えば、調査地へは琵琶湖研の調査船「はっけん号」で行き、決して「ワニ」には上陸しないからです。

普通電車に揺られ、かの地、『和爾』を通過しました。結局、その地に立つことはできませんでしたが、琵琶湖で調査していた頃のあれこれを振り返る機会となりました。

02_11そうこうするうちに、終着駅の近江今津が近づいて来ました。琵琶湖に目を向けると、えり漁の定置網が見えます。

いつか、青く澄んだ空の下、琵琶湖で再び調査をしてみたい、という意欲が湧いてしまいました。

と言うことで、湖西線の電車の旅は、いろんな意味で印象的でした。さあ、福井県立大学まではもう少し。


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